こんにちは、川村トモエです。
今回は、当社のコンサルティング会員である、株式会社 高千穂ムラたび(宮崎県西臼杵郡)の佐伯さんにお話を伺いました。
突然のEC担当就任とコロナ禍が重なり、弊社にコンサルティングを依頼された佐伯さん。以前は外回りの仕事が多く、PCに向かうECの業務には苦手意識がありましたが、担当コンサルタントのアドバイスが売上につながったことにより、積極的にECに取り組めるようになったと言います。
ECの成長により、コンサルティング依頼前と比較して、全体の売上は10倍に。背景には、ECの販促施策だけでなく、バックオフィスや製造現場の業務改善を、現場で自ら継続して行っていることもあります。
ECをきっかけに、さまざまな部署の業務効率化が、現場が自走する形で行われている秘訣とは?ぜひお読みください。
はじめに
甘酒どぶろく醸造 高千穂ムラたびさんのご紹介
※出典:高千穂ムラたび公式サイト
川村:まずは、【高千穂ムラたび】さんの、お店紹介をお願いします。
佐伯さん:【高千穂ムラたび】がめざすものは、“ムラのもてなし”を魅力あるものとして、みなさまへお届けすること。活動の場は、高千穂町秋元集落。深い自然に恵まれた生活環境、悠久の歴史が育んだ多様なムラの暮らしが息づく、不思議な魅力をもったところです。自然の産物や農業のめぐみから、どぶろくや甘酒、グルテンフリーの米粉のお菓子「おぬかさん」シリーズなど、トータルとして繋がりのあるムラの魅力を紡ぎ、みなさまの余暇活動や寛ぎの空間、食や人との出会いなど居心地のよい「もてなし」をめざしています。
コンサルティングを申し込んだ経緯
突然のEC担当就任!コロナ禍で「黄色本」に出会う
※佐伯さん、川村、担当コンサルタントの亀田が同席しました。
川村:コマースデザインを知っていただいたのは、宮崎県と楽天市場が共同で主催した初心者店舗様向けの連続セミナーに参加されていて、そこに当社代表の坂本が講師として登壇したのがきっかけでしたね。
佐伯さん:当時、楽天市場に出店したばかりでした。セミナーでは坂本さんが書籍『売れるネットショップ開業・運営 eコマース担当者・店長が身につけておくべき新・100の法則。』(インプレス、以下黄色本)を紹介されていたため購入し、セミナー後はその本を読みながら楽天市場の運営を進めていました。当時は卸売がビジネスの中心だったため、BtoCの楽天市場は「売れればいいな」くらいの軽い感じで取り組んでいましたが。
川村:コンサルティングのお問い合わせをいただいたのは、2020年6月で、セミナーを受講した半年後くらいですか。
佐伯さん:EC担当者が産休に入ることになり、私が引き継ぐことになりました。担当就任から数ヶ月後にコロナ禍となり、卸売の売上が2、3割も落ちてしまい、この先どうなるかわからない危機感を覚えていました。「すぐにECに注力する必要がある」と考え、コンサルティングの依頼先を探しました。
そんな中、黄色本を読みながら取り組んでいたこともあり、「そもそもコマースデザインさんに依頼すれば良いのではないか」と思い至りました。お話を伺い、「安売りをしない」というコマースデザインさんの姿勢が当社には合っていると感じたのが決め手のひとつです。
コンサルティングの依頼をすることはすなわち、EC運用の代行を依頼することに近いと考えていたため、当初は「自分たちも勉強しながら一緒に進めていくやり方」に、驚きを覚えました。今では、そのやり方も当社に合っていたと考えています。
コンサルティングを受けた成果
「苦手意識のある業務こそが、成果につながる」と思ってやる。
川村:コンサルティングを受けて、どのような成果がありましたか?
佐伯さん:EC担当になった当時は、ECに関する知識はほとんどなかったのですが、少しずつ勉強をして施策に取り組んでいくと、どんどん売上が上がり始めました。目標としては、300万円、500万円、と段階的に考えていました。当初は月商100万円程度だったのですが、今では目標以上に大きく成長することができています。最初にご相談した際に川村さんからは、「月商200万円は堅い」とのフィードバックをいただいていましたよね。
川村:売上を「客数×客単価」で分解した結果、やるべきことをやり切ることができれば、第一目標の月商300万円は難しい数字ではないとお答えしました。ただ、売上目標のご相談をいただく際には、無責任なことは言えませんから、慎重にお答えしているところもあります。必ずしも計算式のとおりにいくわけではなく、お店としての力、売る力、マンパワーなどが掛け合わさって、数字になっていきます。ご相談いただいてから約3年で、第二目標の月商500万円を達成していますから、素晴らしいなと思っています。実際に取り組んでいく中で、特に意識したことはありますか?
佐伯さん:私の仕事は、EC担当になる前は商品開発や営業職などを経験して、コロナ禍以前は展示会に出展するなど出張が多く割と動く仕事だったんです。
川村:なるほど。外に出て営業として動き回る仕事から、PCの画面とにらめっこしながら椅子に座ってじっくり取り組む仕事にがらりと変わったわけですね。それでもいざやってみれば、「ものを売る」意味では営業の仕事とつながると感じるようになったのでしょうか。
佐伯さん:自分が「やりたくないな」と感じる作業が売上に直結する気がしていて、いかに自分をだましながら苦手なことに取り組むかを意識しています。そもそもECのことをほとんど知らない状態で担当者になったため、新しい課題が出てくるたびにいったん横に起きたくなるのですが、「…ということは、これをやれば売上につながるんだ」と考えてがんばるのです。
川村:すごいですね!その考え方は!EC初心者の方は、その作業の内容自体がよくわかっていないから施策一つとっても「とっつきにくそう」と感じ、敬遠してしまうというのはあると思います。
佐伯さん:当時の担当コンサルの鳴瀬さん※から、「まずSEOに取り組めばこれくらい売上が上がると思います」とアドバイスいただき、そのとおりに実行したら、本当にトーンと売上が上がったんです。それ以前はほとんど手付かずだったこともあると思いますが。「ちゃんとやれば本当に売上が上がるんだ」という実感が得られたため、意欲がわいて他のことも勉強していったという感じです。
※高千穂ムラたびさんでは、コンサルタント鳴瀬の産休を機に担当が亀田に代わりました。
コマースデザインの支援でもっとも貢献できたこと
教わったのは、「物事の考え方そのもの」
川村:私たちがご提案する販促施策を重ねてやってこられて、今の月商まで成長されました。商品の視点で見ると、当初と比較してお菓子「おぬかさん」シリーズが大きく伸びましたね。ご相談時には甘酒がメインで、お菓子はこれからやっていきたいくらいの段階だったと思いますが。
佐伯さん:プロトタイプを作っていたくらいでしたね。そう考えると、この3年でお菓子は随分と大きくなりました。決算にあたり棚卸をしたところ、お菓子の在庫数が1年前と比較して10倍になっています。それくらい持っておかないとすぐに品切れになってしまうほど好調です。
既存の施設で、さらに効率良く製造するための業務効率化のアドバイスをコマースデザインさんからいただき、バックオフィスの効率化を製造現場にも応用したところ、少しずつ改善されて良い循環が生まれました。お菓子担当のスタッフたちが優秀すぎて、私が何か言わなくとも自主的に効率化のサイクルを回し続けてくれて、毎月製造量が伸びていっているんです。8月に設備投資をして、製造量は2倍になる予定です。
川村:効率化というのは概念ですから、製造現場にも取り入れていただければ成果につながると思います。効率化されて製造数が増えれば、結果的にECの売上も伸びていきますよね。
佐伯さん:そもそも当社は、お子さんのいる女性スタッフも多いため、急に欠員が出ても回るような仕組みにしており、有給休暇を取得しやすい体制になっています。「働きやすい会社」だとスタッフも言ってくれていますね。
そこに、コマースデザインさんの業務効率化の考えを取り入れたことで、ECやバックオフィスだけでなく、製造現場の働き方も変えることができました。以前は時間外や休日出勤をして当たり前でしたが、今では時間外をすることがかなりめずらしく、週休3日も考えられる状況です。先日のスーパーセールでは、それ以前よりも売れているのに、現場はまったくバタバタしなかったんです。
今、会社はとても良い状況になっていると感じます。コマースデザインさんに教わったのは、課題への取り組み方や、社内の時間の使い方など物事の考え方そのものかなと思います。ECはもちろんのこと、それ以外の会社経営に関わることについても相談できることが非常に良いと思います。
川村:週休3日も考えられるというのは、すごいことですよね。「自分が働きやすいと他の人も働きやすい」と暗黙のうちに理解して、相互努力をなさってるんでしょうね。 頭ではわかっていたり、ミッションとして掲げられているよりも、佐伯さんが「やってみたらECの売上が上がった」ように、成果につながることが腹落ちした感覚が、「自走力や、一度やって終わりにならない持続力」を生むんじゃないかなと感じるところではあります。
「“ムラのもてなし”を魅力あるものとして、みなさまへお届けすること」をミッションとされていますよね。自然豊かなムラの雰囲気の中で業務効率化を回しているところが、一見すると相反するようで興味深いと感じています。しかし、自然豊かなムラだからこそ、人手不足に関する課題は身近なもので、むしろ効率化しないといけないのかもしれませんね。その面でお役に立てているなら何よりだと思いました。そして当社のアドバイスを取り入れ、実行し、改善を継続するしなやかさが成長の秘訣だなと感じています。
まず「Do」があるからPDCAが迅速に回り続ける
亀田:佐伯さんは未知の情報への抵抗がないというか、むしろわからないからこそやってみる姿勢があり、そこが長所だと感じています。工場の業務効率化のスイッチが入ったのは、書籍『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』(エリヤフ・ゴールドラット/ダイヤモンド社)をご紹介したのがきっかけでした。
高千穂ムラたびさんの製造現場では、この『ザ・ゴール』を教科書にして業務効率化に取り組まれています。『ザ・ゴール』はよく知られた名著ですが、私たちの紹介から、本を読んでも、それを実行して継続するというのはなかなか難しいことだと思います。
さらには、佐伯さんは「こんなことをやってみて、こんな結果が出たので、次はこうしてみようと思います」とご相談くださいますよね。「本当にこれをやって意味があるんだろうか」と考えて実行に移さない方も一定数いらっしゃいますので、まずやってみるという佐伯さんの姿勢はすばらしい特徴のひとつだと思います。
佐伯さん:やって意味があるのか、といったことを考える前にまずやってみますね。考えたことがなかったかもしれません。
川村:まずDoがあるため、PDCAも自ずと回っていくということですね。それも販促施策だけではなく、バックオフィスや製造現場も並行して取り組むきことで、売上につながっているのだと思います。社内の距離が近いというのも大きいのでしょうか?
佐伯さん:小さな会社ですから、なんでもできる人がえらいという風習はあるかもしれません。欠員が出た時にどの部門にも卒なく入れる人間が私ともうひとりいるのですが、それで重宝されているところはあるかもしれません。
川村:他の現場に入ることで事情をなんとなくのうちに把握し、無意識にバランスをとっているのかもしれませんね。そんなバランサーな佐伯さんが、EC担当である意味は非常に大きいと思います。全体を見ると、従来売上の9割が卸売だったところが、現時点では6割になってきている。そして割合は減っていますが、卸売の金額は伸びているんですよね。
「売上に占める卸売の割合が大きすぎることに、危機感を覚える」とのご相談は良くいただきますが、直販を始めたところですぐに伸びるわけではありません。ECに本腰を入れて3年でこの売上比率になり、全体の売上も伸びているのは、素晴らしい成功例だと思います。
佐伯さん:私たちも卸売が9割を占めていた頃には、正直なところ不安を覚えていました。コロナ禍がきっかけではありましたが、ECに注力した結果、コマースデザインさんに出会え、業務効率化も進んで社内がとても良い状況になってきています。ECの商品が広告のような役割を果たして、お菓子のOEMの仕事も入ってきていて、まだまだ伸び代があると感じています。他のモールも含めて伸びているので、今後はそちらも支援していただきたいですね。
今後の展望
ECで売上が10倍になった。さらなる10倍を目指す
川村:今後の展望をお聞かせください。
佐伯さん:先に述べましたが、お菓子の需要が大きくなっているため、8月に設備導入を行います。そこで最低でも2倍の製造量とするため、製造工程を最適化し、売上と共に軌道に乗せていきたいと考えています。
私たちの会社のコンセプトは「未来のムラづくり」であり、変わらず目指していきたいところです。創業から11年目になり、社員も増えて地元には多少なりとも貢献できていると思います。
最近読んだ本の影響なのですが、コマースデザインさんにコンサルを依頼した当時と比較すると、売上が10倍以上になっています。ならば、「現時点の10倍の売上も達成できるのではないか」と考えているのです。それが実現できれば、結果的に私たちのコンセプトの達成にも近づいていきます。お客様に満足していただく対価として売上が上がるため、そこは目指していきたいですし、利益もしっかりと出して、一緒に働いてくれているスタッフに還元してみんなハッピーになっていきたいと思います。
まとめ
EC初心者の状態から、着実に勉強と施策への取り組みを重ね、売上10倍を達成された佐伯さん。嫌だな、と思うことでも素直に取り組んでいただき、そこにあぐらをかかないしなやかさが光りますね。
売上が伸びると、忙しさの問題がでてきて、バックオフィスが回らなくなったり、人手不足などの課題が出てくるものです。
しかし、高千穂ムラたびさんは、現場で業務効率化のサイクルが回っていることで、負荷が偏ることなく、皆さんが働きやすい会社を実現されています。週休3日は本当に素晴らしい(うらやましい)!ぜひ実現していただきたいですね。
売上アップと業務効率は車の両輪。どちらかに閉じることなく、お店や会社のご状況を多面的に見て、必要なご支援を提供しています。また、ECサイトのみでなく、EC事業においての、メンバーシップや採用、会社経営に関わることもご相談いただいています。ご興味のある方はぜひご相談ください。
この記事を書いた人
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コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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