打ち手がないのではなく、本質を見失っているだけ。売上停滞の突破口は「顧客研究」にあり

こんにちは。コマースデザインの亀田です。
今回は「売上のマンネリを感じている時に、どうやって打破していくのか」というお話。マンネリの突破口となる「顧客研究」について、ご説明します。

この「顧客研究」という考え方の根底には、「我々は最初から顧客のことを理解できているわけではない。だから、話を聞いたり調べたりして、もっと研究して理解をしないといけない」という思いがあります。そして、それが更なる売上を生み出す糸口にもなります。

というのも、実は「売上を伸ばそうとすればするほどお客さんから遠くなり、お客さんを理解しようとすると自然と売上が伸びる」という構造があるのです。なかなか皮肉な構造ですが、本文の中で詳しくご説明しますので、ぜひ最後まで目を通していただけると幸いです。

「顧客研究でポジティブな変化が起きた」実際の事例

今回のテーマについて、具体的にイメージしやすいように、実際の事例をご紹介します。
事例を参考にしていただき、「これ以上は売上伸びないよ」「やる事はやり尽くした」「売れないのは商品のせいだ」という状況を打破していくことについて考えていただければと思います。


あるお店の社長さんがメンバーにこう聞きました。

社長:「みんなー、どうやって売上を伸ばしていこうか?」

社長の呼びかけに対し、メンバーからは次々と売上アップ施策案が出ました。

メンバー1:「安売りがいいと思います」
メンバー2:「ポイントつけるのがいいと思います」
メンバー3:「クーポンがいいと思います」

それぞれ案は出たものの、似たり寄ったりな施策です。
そこで、社長はもう1度聞きます。

社長:「いやー......他に案はないの?」
メンバー:「この商品はもうこれぐらいしか手がないかと。厳しいですね。」

この状態は、社長からすると悔しいものです。
社長は「うちの商品はやればできる子なんだ。もっと上手に案内したら売れると思うんだけどなぁ」と思っているのに、メンバーは「いやいや、他が安くて品質が良いですからね」という消極的な意見。なかなか切ない状況です。

しかし、このお店が「顧客研究」に着手したところ、お客様の共通の悩みや課題が見えてきました。その結果、新たなコンテンツのアイデアが生まれ、売上アップにつながったのです。

他にも、マンネリ商品の打開策として新商品を開拓したり、これまで見落としていた「替えのパーツ」需要を発掘したりと、顧客研究から得られるヒントは豊富です。
中には、「(それを買っている)お客さんは、なぜそれを買うのか?」を研究した結果、月商5万〜10万円程度だった商品が、わずか2ヶ月で月商6,000万〜7,000万円を達成するような爆発的な売れ方をする事例もたまにあります。
こうした事例は、顧客研究の重要性を物語っています。
自社の商品やサービスに自信を持ちつつも、お客様の声に耳を傾けることで、新たな可能性が見えてくるのです。

売れない状況を打破するための心得

私が1番お伝えしたいのは、「商品を売るためには安売りする or たくさん販促を打つ、それぐらいしかない」という姿勢はやめていただきたいということ。シンプルに「お客さんを見つめていきましょう」という話です。

これを実践するために心得ておくべきことについて、先にお伝えしておきたいと思います。

多くのお店が陥りやすい「隣の花は赤い」現象

唐突ですが、「最新の他社のマーケティングテクニックを習得し研究してみたものの、自分のお客さんのことは全然見ていない」というのはいかがなものかと思います。

お客さんと会話する機会もなく、お客さんが日頃何に悩んでいるのか、どんなレビューをくれているのかも全く見ていない。ただ「どうしたら売れるか?」だけを考えて、「他社ではどうやって売っているのか?」という表層的な知識をネットから調べて、「〇〇をしないとダメなんですよ」みたいな、何マウンティングなのかよく分からないような言動をするのは、正直に言って全然ダメだと思うのです。

そんな先端事例に捉われるのではなく、実際に買ってくれているお客さんは「なぜ、当店を選んでくれてるのか?」を考えて、「お客さんは日頃〇〇で悩んでいたり、〇〇に不便さを感じているんだ。それで、うちの〇〇なところを評価してくれてるのか」という、いわば自分のお給料を出してくれている、目の前のお客さんのことを誠実に理解していこうとする方が、よほど売上につながるのです。

でも、人間はつい他所のいろいろ脚色された成功事例を研究したり、お客さんのことを見ないまま穿った見方をしてしまいがちです。「いやー、この商品はこんなに高いと売れないですよ」とか「他社の方が良さそうですよね」とか「うちの会社はこんなもんだよね」みたいな、狭い了見に閉じこもってしまう心理があると思います。

自分が素晴らしいモノを作っているのに、あるいは仕入れて売っているのに、「こんなんじゃダメだよね」という隣の花は赤い現象に陥ったりすることがある。そういう心理状況を打破するためには、やはり「顧客研究」がとても重要だと思います。

では、なぜそもそもこのようなことが起こるのでしょうか?
売上アップ施策もマンネリ状態で、新しい施策が思い浮かばない、お客さんの話を聞けば色々ヒントが見つかるのに、他社の成功事例ばかりを見てしまうのはなぜなのか?
この問題構造について、解説します。

お店は「売る」のではなくて、「買ってもらう」ことしかできない

まず多くのお店は「売上を伸ばそう」と思っていますよね。しかし、「売上を伸ばそう。どうしたら売れるかな?」と考えれば考えるほど、お客さんからは遠ざかる構造があります。

お客さんの行動は「買う」、我々の行動は、「売る」です。でも、「売る」という言葉はすごく変な言葉で、どんなに売ろうとしても、お客さんが買わなかったら売れないのです。

だから、「売る」というのは正確に言うと「買ってもらう」ということで、あくまでお客さんが「買うこと」が主体です。つまり、「売る」のではなく、我々は「買ってもらいやすくする」ことしかできません”。

買ってもらいやすくするためには、お客さんがどういう理由で、何と見比べて買ってるかを理解するのが大事だし、そこに我々はアジャストすることしかできないのです。

にもかかわらず、「どうしたらもっと売れると思う?」とか「他の売上アップ方法はないかな?」と、あたかも「自分が何かしたらお客さんが買う」みたいな、お客さんを受動側に置いた施策をしているとうまくいきません。こういう人は売り手が主体と捉え、「お客さんに何か言うと、お客さんが操られて買う」という世界観になっているのではないかと思います。

心理構造の問題になりますが、皮肉なことに、「売ろう売ろうとするほど、お客さんの買う行為が遠ざかっていく傾向」があるのです。

方法論ばかりに目が向くと、さらにお客さんは遠ざかる

売ることが上手く行っていないと、「どうしたら、もっと売れるんだろう?」「きっと、他所でもっと上手く売っているお店があるはずだ」と焦って研究し始める人もいます。さらに、こういった情報は世の中では需要があるので、メディアや書籍は「こうしたらもっと売れる!」という、売れるための方法を量産します。

方法論に従って実践すると、いろんな人がいっぱい見に来てくれます。でもそれをすると、なおさらお客さんが離れて行ってしまうというジレンマも起こります。

「このお客さんは、どうして買ってくれないんだろう?」ではなく、「他所のお店はどうやって売上を伸ばしてるんだろう?」「どうやったら、売上を伸ばせるのか他社を見に行こう」と目の前のお客さんを無視した行動を起こすから、ますますお客さんから離れていくわけです。

マンネリ販促のドツボにはまると、謎の誤解が生じる

こうしてお客さんがどんどん離れていくと、販促もマンネリになります。このまま続けていくと、「十分やるべきことはやり尽くしてる」「自分はこんなに努力してる。売るためのことを考えて、他社の売るための方法も研究した。でも、売れない」「もうこの辺が限界だな…」という悪循環に陥り、謎の誤解に行き着いてしまいます

マンネリを突破するための2つの対策

ここからは、マンネリ突破の対策についてお話をしていきます。

突破口となる対策は2つあります。
ひとつめは当たり前の話ですが、「お客さん側の気持ちになろう」ということです。ただ、当たり前なようで、それが簡単にできない場合もあります。
そこで2つめの施策として、「顧客研究」のお話をします。

対策①:お客さんの気持ちになる方法とは?

ひとつめの「お客さんの立場になって考えよう」について、実際にどういうやり方があるのか、ご紹介したいと思います。

とある研修でのワンシーンです。

まず、講師がアパレルの商品ページを見せます。

講師:「さあ皆さん、どうしたらこの商品がもっと売れるかを考えてみましょう」
受講生:「こうしたらいいんじゃないかなぁ」

とアイディアは出たところで、講師が続けます。

講師:「では皆さん、次に自分がお客さんだったら、この商品ページはどうなったら買いやすいか考えてみましょう」
受講生:「ここがこうなると、買いやすいよね」

とアイディアがいろいろ出てくるようになります。

つまり、この研修では「お客さん側の視座にならないと、何が重要か見えない」ということを伝えているのです。本当にすばらしい内容で、実際そういうものだと思います。お店で、スタッフの皆さんと一緒に試してみるのも面白いのではないでしょうか。

対策②:「顧客研究」の方法とは?

お客さんの視座になるのは大事ですが、四六時中「どうしたら売れるかな?」をやり尽くしてきた人は、「もはや、お客さんの視座になることができない」というシチュエーションもよくあると思います。

新人さんや取引先、ECではない別部署の人に見てもらうことは、まだできるかもしれませんが、自分の売ってる商品を、商材としてしか見ることができない状態にまで煮詰まってしまってる人も多いと思うのです。そこでおすすめしたいのが「顧客研究」です。

例えば、ペット用品を売っているECのチームがあるとします。内部にあまりペットを飼ってる人がいないのであれば、他部署のペットを飼ってる人に話を聞いてみたり、実際にペットと暮らしてみたり、張り付いてみたりする。あとは、ペットと暮らしてる人の情報を探してみるのもいいでしょう。例えば、老犬と暮らしている人のブログを読んだり、X(Twitter)を見たり、直接インタビューをしてみたり….これらが「顧客研究」です。

少し話が細かくなりますが、「ビジネスエスノグラフィ」という言葉があります。「エスノグラフィー」というのは文化人類学のこと。例えばアフリカの〇〇部族に張り付いて1年ぐらい一緒に生活して、その部族の文化を徹底的に理解するというのが、文化人類学です。

この文化人類学的アプローチをビジネス用途で使ってみるのです。年老いた犬と暮らしている人は、「どのような気持ちで、どのような生活をしているのか?」「その心理構造はどうなっているのか?」と研究することが「ビジネスエスノグラフィ」です。

とにかく、よく調べていくことが大事です。
念を押しますが、これは「お客さんのことを理解することが大事だよね」という精神論ではありません。「これをやると、いろいろ売上アップのヒントが出てきます」という話です。

成功事例から分かる「顧客研究」がおすすめな理由

成功しているお店は、お客さんの生活を研究することを怠らない

例えば、冒頭でご紹介した事例の「ポイント」か「クーポン」しか言わなかったメンバーが、「こういうコンテンツがあると問題解決するんじゃない?」などの鋭いことを言い出したのはなぜかと言うと、やっぱり、お客さんの立場、お客さんの生活を研究した結果なんですよね。

他にも、「新商品ないなあ」と煮詰まっていた所、実際にお客さんと一緒にちょっと生活してみたり、研究したり、インタビューした結果、「車体しか売れないと思ったけど、このパーツかなり需要があるんだ」と気づき、パーツを売り出したら利益が上がった事例もありました。その会社はメーカーでしたが、卸先ではメーカーのパーツは扱えないのです。というわけで、卸先と価格競争をする必要もなく、売上源になったのだそうです。

2ヶ月で月商6000万円に成長した売れ筋商品の裏話

また冒頭で、月商5万〜10万円程度だった商品が「2ヶ月で月商6000〜7000万円も売れる商品になった」という事例をご紹介しました。

この事例について、もう少し詳しくお伝えします。

あるお茶屋さんで、なぜか4月や5月にとてもよく売れるお茶がありました。
「なぜ、この時期なんだろう? 冷たいお茶というわけでもないしなぁ」と不思議に思って、店主はお客さんにインタビュー取材をしてみました。

店長「なぜこの商品を買ってくださるのですか?」
お客さん「母の日用に買いました。このお茶は、お湯をかけるとお花が開くところがおもしろいなと思って。母の日に贈ると、花束を贈るよりもちょっとひねっている感じがしていいでしょう」
店長「確かにそうですねぇ....なるほど」

この商品は、お湯をかけると花が開くタブレット状のお茶なんですが、店長はここで閃きました。

このお茶と透明ガラスのティーポットをセットにして売り出したのです。満開になったお茶の花とガラスポットの写真を綺麗に撮って「母の日限定〇〇茶」と言ってアピールしたところ、母の日シーズンの2ヶ月で、毎年月商6000-7000万円ぐらい売れる商品になりました。このような驚くべき売上アップにつながったリアルな事例もあるのです。

売上アップの答えは、目の前のお客さんが持っている

自分のお店の商品を眺めながら、「あのお客さんに、どうやったら売れるかな?」と考えても、煮詰まるばかりです。その煮詰まりから脱出しようとして他社の事例を研究し、「他社はこんなにすごい。それに比べて、うちは全然ダメだ」と自分を責めてしまう。このような行動は、どんどん正解から離れていくと思います。

答えは、常に目の前のお客さんが持っています「売上を伸ばす」でも「売る」でもなく「買ってもらう」です。我々にできることは、「買いやすくする」ことしかできません。そして、お客さんが「買う」というのは、「自分にとって役に立ついいモノだ」と思えば買ってくれるわけです。

ということはつまり….

  • 「どうやったら、我々はお客さんのために役に立てるだろうか?」
  • 「どうやったら、お客さんは快適で、喜んでくれるだろうか?」

上記を真摯に突き詰めさえすれば、必ず利益が出る….とまでは言い切れませんが、ここを外して最新事例を研究するのは、逆に正解から外れる行為でしかないと思います。

常に、打ち手はあります。マンネリというのは、たぶん見落としている「何か」があるはずです。それは大抵の場合、お客さんの生活への理解だと思います。

まとめ

熱く語ってしまいましたが、大切な考え方なので、最後に二言で締めくくりたいと思います。

「売る」のではなく、「買ってもらう」「買いやすくする」こと。
それはつまり、「お客さんをもっと理解しよう」「お客さんのためにがんばろう」ということです。

商売を続けていく上で、是非このことを心に留めておいて頂ければと思います。

P.S.

経営者やリーダの立場の方は、商品愛はあっても、どうしても直近の目標や数字が気になってしまうのは当然のことだと思います。
しかし、だからといって何より大切にすべお客さんから目を逸らしてしまうのは、本末転倒です。とはいえ、売上をあげようと仕事熱心な人ほど陥りやすい罠でもあります。

どうすればマンネリ状態を抜け出せるのか、お店によって打ち手や正解は異なります。「現状に頭打ち感を感じている」「状況を変えたいけど、身動きが取れない」とお感じの方は、弊社がお役に立てるかもしれません。ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

亀田 直人
大手印刷会社にて人事を経た後、営業として、店頭を中心とした様々な企業の販促支援に従事し、紙から鉄まで多様な企画・制作に携わる。色数や印刷方法など、「成果物の完成度」にズレがちなクライアントの要望をそもそもの目的に合わせ整理し直すなど、「成果とコストの見合った効果的な提案」を得意とする。趣味はサッカー(ポジションはGK)、二児の父。

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