社内勉強会レポート:「独自性のあるネットショップ」の作り方とは?

こんにちは、川村です。 先日、ゴルフ景品の専門店「エンタメゴルフ」(株式会社アンバリッド)の古谷社長にお越し頂き、社内勉強会を開催しました。 同社は、ゴルフ関連のエンターテインメント商品で数々のヒットを飛ばし、人気店として注目されています。 今回の勉強会では、「独自性あるネットショップをつくる過程」や「コミュニケーション消費を踏まえた商品企画」などについて話をお伺いしました。 以下レポートさせて頂きます。とてもためになるエピソードがたくさんありました!

エンタメゴルフさんのご紹介

ゴルフバカ店長が厳選「笑えるゴルフグッズ」専門店

ゴルフコンペ景品のエンタメゴルフ

社長の古谷さんは、三度の飯よりゴルフ好き、自称「ゴルフバカ店長」。
ご自身のゴルフ幹事経験から「ウケるゴルフコンペ商品」に特化し、イベントを盛り上げる名脇役の商品を次々プロデュースされています。

たとえば、発売以来、以下のような商品が大人気です。

  • ニアピン賞にぴったりの茶そば「ピンそば」
  • コンペの表彰式が爆笑間違いなしの焼き菓子「(家庭より仕事より)ゴルフが恋人
  • 2017年の流行語大賞を取り入れた「忖度まんじゅう

エンタメゴルフの売れ筋商品

ゴルフ用品店なのに、売れ筋が食品です・・!

他にも様々なオリジナル商品があります!ゴルフコンペに時々参加するという方は、ぜひ幹事さんにこのお店を教えてあげて下さい^^

「エンタメゴルフ」誕生の道のり

まずは、こういった独自の立ち位置ができるまでのお話をお聞きしました。

副業でネットショップを開始

古谷さんはリクルート出身で、元々は営業職をされていました。
飛び込み営業をすることもありましたが、普通のやり方をせず、「どうすれば自分から売り込みをせず、お客さん側から来てくれるか」と日々考えて営業されていたそうです。

その後、家業を手伝いつつ、趣味のゴルフを活かし、副業としてゴルフグッズのネットショップを始めました。
この頃から、ユニークなゴルフグッズを販売しており、当初企画した、「太陽の光で変わるゴルフボール」は、関係者の間で話題になり、テレビ東京の人気番組「ワールドビジネスサテライト」でも紹介されました(「トレンドたまご」枠)。今も売れ続けています!

画像:ゴルフコンペ景品のエンタメゴルフ

EC事業の本格化

その後、43歳の時に副業だったECを本業とし、起業されました。
しかし、ネットショップで色々な商品を販売していく中で、「どの方向に走ったらいいか、分からない」という迷いの時期に差し掛かります。

その頃、弊社・坂本も楽天を退職して独立していたので、お声がけを頂いてコンサルティングを開始。二人三脚でお店を作ってこられました。

ゴルフジャンルのネットショップといえば、ゴルフウェアやゴルフクラブが中心だった中、どのようにして、現在の「ゴルフグッズの企画販売」という独特のビジネスを確立していったのでしょうか。

当初は普通のゴルフグッズ販売店で、初期には売上のために、ゴルフと関係のない仕入れ商品を売ったこともありました。何事も、いきなり理想通りにはいきません。

基本からECのマーケティング手法を学んでは試し、実行体制を作り、アイデアを深め、徐々にいまのスタイルに近づいていきます。

独自性のあるネットショップを作るには?

エンタメゴルフさんは、「独自性のある人気店」に成長するまでに、何を考え、何を実行してきたのでしょうか。お伺いした3つのポイントを、順番にご紹介します。

  • 1)客層を観察して、コンセプトを立てる
  • 2)「コミュニケーション消費」を想定した商品企画
  • 3)「1/100の法則」 で、誰もがオンリーワンになれる

1)客層を観察して、コンセプトを立てる

お店の独自性を模索している段階では、お客さんをじっくり観察することで、進む道が見えてきたそうです。
「いろいろなお客さんの心理や需要を観察して、お店の方向性を考えた」とのこと。

「ゴルフギフトを買う人」の心理

例えば、「ギフトユーザに何を提案すべきか」といった、粗すぎる問題定義からは、何のアイデアも生まれません。

そうではなくて、実際のお客さんをよくよく観察・想定すると、色々な心理が見えてきます。

その顧客観察の中で、分かったことがあったそうです。

「ゴルフ用品を贈る人」は、たとえば「お父さんのプレゼントを探す、奥さんやお子さん」ですよね。

つまり、ゴルフをしない人が「分からないなりにゴルフギフトを探している」ケースがよくあるわけです。ここから、どのようなお客さんの心理を想定できるでしょうか。

  • プレゼントするなら、ゴルフウェアやゴルフ手袋かな…でも、好みが分からないな…
  • 去年ゴルフウェア贈ったから、次は別のゴルフ用品がいいけど、何がいいか分からない
  • このゴルフグッズって、本当に喜ばれるのかな?もう持ってるかも

つまり、ギフトを贈る人はゴルフに詳しくないので、どんなプレゼントが喜ばれるか、全然分からないのです。

では、その事実を踏まえて、お店はお客さんに何ができるでしょうか?

「ゴルフ好きの人に何をあげると喜ぶか分からない」けど、「プレゼントをして喜ばせたい」という人を対象とし、最適なギフト商品や、面白い角度のギフト商品を提案する・・という方針が見えてきますよね。

そのような理由で、同店では、「ゴルフをよく知らない人」に向けた提案を重視することにしました。初期に立てたこの方針は、現在も継続されています。

「ゴルフコンペ景品を買う人」の心理

また、お客さんの中には、景品を探すゴルフコンペの幹事さんがたくさんいました。先ほどのプレゼントを探しているお客さんとは、全く別の客層です。

コンペの幹事さんは大変です。事前の準備から当日の運営まで、かなりの負担があります

  • 仕事が忙しい中で幹事をしている。景品を楽に選んで購入したい。
  • でも、せっかくコンペをするので盛り上げたい。喜んでほしい。
  • 「コンペが盛り上がる景品」を選びたいのに、街のゴルフショップで景品を選ぶと無難でつまらない感じになる。
  • かといって面白い景品を探すためには、あちこちの店を回らないといけなくて大変。

そんな悩みを抱えるコンペ幹事さんのために、お店ができることは何か。
すると、こんな方針が見えてきました。

  • まず、ゴルフコンペ幹事がラクに購入しやすくなる「専門店としての店構え」
  • そして、無難ではなく、面白い・ニヤリとする商品を開発して並べて発信

この「ゴルフ景品専門店」の路線がヒットしました。
今では「初めてのゴルフコンペ幹事で、何を選んでいいか分からない…」「盛り上がる景品を選びたい!」といった、景品に頭を悩ませるゴルフコンペ幹事さんの強い味方となりました。

面白い商品が本当に色々あるので、コンペは盛り上がり、参加者が楽しんで、幹事さんの株も上がります。

当然リピートも増え、愛されていて、なおかつ信頼される店になりました。「ゴルフコンペ景品を買うなら、エンタメゴルフ」という認識が、多くのファンに定着しています。

2)「コミュニケーション消費」を想定した商品企画

「売れる商品」を取り扱っているネットショップは、世にたくさんある。
だが、「面白い商品」「楽しい商品」が少ないのではないか・・。

あるとき、古谷さんはそう感じたそうです。

コミュニケーション消費とはなにか

日々の買い物の中には、実は「商品を買っているけど、モノを買ってない」というシーンがあります。その典型が、お土産です。
弊社(コマースデザイン)では、これを「コミュニケーション消費」と呼んでいます。

たとえば、「北海道に行ってきましたクッキー」を買う人は、北海道に行ったことを伝えたり、あるいは自慢したりするための「きっかけ」や「会話の小道具」を買っている。クッキーを買っているわけではない。

ゴルフコンペは、まさにコミュニケーションのためのイベントなので、ゴルフコンペ景品は当然、「コミュニケーション消費」です。しかし、今までゴルフ業界(ゴルフコンペ用品)には、「コミュニケーション消費」を満たす商品がなかったんですね。

そこで古谷さんは、人が驚いたり、喜んだりするような商品を作ろうと考えます。

商品企画のプロセス

商品企画にあたり、まず最初にお客さんの心理を想定します。

  • コンペ参加者は家庭で「せっかくの休みなのにパパはまたゴルフ」などと言われている
  • コンペ参加者は、コンペ終了後に自宅に帰り、家族に景品を見せる&あげる
  • しかし、「ゴルフのパターマットが当たった」といっても、家族は全く喜ばない
  • 「ゴルフをする人だけでなく、家族も喜ぶ景品」は考えられないだろうか・・

そうして行き着いたのが、冒頭でも紹介した「ピンそば」「忖度まんじゅう」や「トイレレッスンペーパー」という商品でした。

ゴルフをやっている人が笑えて楽しい。
かつ、ゴルフをやっていない家族にとっても(食べられるので)意味がある。

こうした細やかな気配りから、ウケる「コミュニケーション商品」やヒット商品が次々生まれていきます。

その店に行けば、何か面白いものがある。買うものが決まっていなくても、楽しめる。
そんな「ゴルフ✕面白い」というネットショップとして、エンタメゴルフさんはお客さんに知られるようになります。

専門店としての店構えと、オリジナル商品の存在感があいまって、同店は「幹事さんの頼れる存在」となり、ゴルフグッズのEC界では、独特の立ち位置を確立していきます。

「売れる」ことではなく、「喜び」をゴールにする

このように古谷さんは、「どうしたら喜ぶか、おもしろがられるか」「何に困ってるのだろうか」ということを常に考えています。

これはECに留まらず、「仕入先や運送業者・楽天ECCとの関係性にもあてはまる」と、古谷さんはおっしゃいます。

まず相手の話を聞き、常に自分に何ができるかを考える。

運送会社側も苦労しているので、事情を聞いて、協力できることがあれば率先する。

様々な人との関わりの中、このように振る舞うことで、商品企画においても自然と「気配りの行き届いたアイデア」が生まれるようです。

3)誰もがオンリーワンになれる「1/100の法則」

最後に、独自性を発揮するためのヒントとして、「1/100の法則」という考えをお聞きしました。これは店舗運営だけでなく、キャリア形成にも通じる考え方です。

まず才能を見つける

  • 「1万人に1人の才能」を持っている人は、世の中にあまりいない
  • だが、自分の強みを観察すると、誰にでも「100人に1人」くらいの強みならある
  • そのような自分の強みを見つけて、活かす

では、どうやって自らの強みを活かすのか?

  • 残念ながら、「100人に1人」程度の強みは、単体では大したことがない
  • しかし、複数の強みを「組み合わせる」と、それは唯一無二の強みになる

掛け合わせるとオンリーワンになる

ここで、例え話をします。

「100人に1人」レベルのお笑い芸人がいるとします。でもそのレベルでは、M1に出て1位になれるかというと、とても難しい。

でも、仮にその人が「100人に1人」のレベルのツアーコンダクターになったとしたら・・・

「まあまあ笑いが取れるお笑い芸人」✕「ツアーコンダクター」
= 10,000人に1人の「お笑いツアーコンダクター」

更に、その人が沖縄が地元なら、更に掛け合わせて「沖縄で圧倒的No.1のお笑いツアーコンダクター」になります。つまり、ダントツオンリーワンの存在になれます。

強みを集めて、繋いでみよう

このように、1つの才能だけではなく、強みを掛け算することで、独自性が生まれるというわけです。この考え方は、中小企業が生きる道にもつながります。

実際、ここまで紹介したエンタメゴルフの運営スタイルも、まさに古谷さんご自身の強みを集めて組み合わせた結果、オンリーワンになったのです。

そもそも、同じジャンル・同じ商品を扱っていても、運営者が違えば全く違ったお店になるはずだし、ならないほうがおかしい

もし、独自色が無く、マネや劣化コピーになっているなら、それは、「自分の強みを生かし切ってない」から。つまり、まだまだ伸びしろがあるはずです。

これまでのECは模倣合戦で、コンサルタントと称する人が「ここを真似るといいですよ」等と事例を見せ、他の店の模倣を勧めるようなシーンが多くありました。

しかし、これからの成熟時代、それでは生き残っていけない。自分自身の強みを組み合わせて、オンリーワンを目指さないと、埋もれてしまうはずです。

私たちも、EC支援業として、「オンリーワンを目指すお店の支援をしていきたい」と感じました。

まとめ

独自性のあるネットショップを作るためには、どうすればいいか?

  • 1)客層を観察して、コンセプトを立てる
    • 「ゴルフギフトを買う人」「ゴルフコンペ景品を買う人」など、お客さんを細かく分けて、その心理を想定すると、お店の進むべき方向が見えます。
  • 2)「コミュニケーション消費」を想定した商品企画
    • 単なる物販ではない「コミュニケーション消費」にはチャンスがあります。売るのではなく喜んでもらうことを目指すと、独自の商品が生まれるかもしれません。
  • 3)誰もがオンリーワンになれる「1/100の法則」
    • 突出した才能がなく「1/100程度の才能」でも、掛け合わせれば「圧倒的オンリーワン」になります。誰かのマネではなく、自分ならではのスタイルを見つけてください。

これからのEC成熟時代の大きなヒントを頂きました。
他にもたくさん良いお話をお聞きしました!この場をお借りして、古谷さんへ改めてお礼を申し上げます。

ありがとうございました!

古谷さんからのコメント

古谷さんからコメントを頂きました!


坂本さんとはお互い立ち上げの頃から、10年近いお付き合いになりました。
コンサルを受け始めた時、寝ずに全力で頑張ろうと思いながらも、どっちに走ればいいのか思い悩んでいました。

お店のステージや強みに応じて、色々な引き出しの中から提案をしてもらいました。
提案と言っても投げっぱなしではなくて、一緒に悩みを共有して並走してくれました。これからもよろしくお願いします。


PS
「埋もれない店を目指したい」「オンリーワンを探したい」という方は、弊社のコンサルティングをご検討下さい。

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この記事を書いた人

川村 トモエ
コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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