2022年のECニュースまとめ。激動の1年をふりかえるコンサルタント座談会

こんにちは、コマースデザイン スタッフです。

早いものでもう年の瀬ですね。今回は「2022年をふりかえった座談会」をお届けします。
今年も、EC業界は色々なニュースがありましたね。楽天SKUプロジェクト、Yahoo!商品画像ガイドラインや優良配送の件 etc
そこで、当社のコンサルタントに、この1年を振り返りつつ2022年のEC業界を語ってもらいました。

はじめに

参加メンバーの紹介

今回の座談会の参加メンバーをご紹介します(五十音順)。

石黒(コンサルティング部 コンサルタント)
これまで100社以上のコンサルティングを担当。EC初心者にも手厚いフォローで「石黒さんの半分は優しさでできている」と、物腰の柔らかさに定評がある。去年娘が産まれ、子育て中。

(コンサルティング部 コンサルタント)
「一人店長→チーム化の経験」から、メンバー育成やEC業務の効率化が得意。実は、某モールで他店舗育成の講師をしていたことも。苗字が珍しいので(えんじ)すぐ覚えてもらえる。

大邉(サービス事業部 ディレクター)
元コンサルタントで、現在はコンサル業務を裏からサポートする黒子役。楽天の超ヘビーユーザーで情報通。楽天をはじめ、SEOに精通している。愛猫の名前はササミ。

亀田(コンサルティング部 コンサルタント)
努力家で当社きっての筋トレマニア。人の成長に立ち会ったり、成長支援したりするのが好き。こどもと一緒にテレビで仮面ライダーを見るのが、日曜朝のルーティーン。らっきょうが苦手。

杉浦(コンサルティング部 コンサルタント)
持ち前の明るさと丁寧に相手に寄り添うコンサルティングで、メキメキ伸びている若手コンサルタント。海のそばに引っ越したくらいサーフィン好き。

味藤(コンサルティング部 コンサルタント)
EC現場経験豊富。楽天に強く、リサーチや情報発信に余念がない。キャンプ・登山・ネットショッピングが大好きで、届いた商品の梱包資材や同梱物をコレクションしている。

三大ECモールの動向

楽天市場

SKUプロジェクトを発表。ついに他モールと足並みがそろう

ー今年の大きなニュースとして、楽天が「SKUプロジェクト」を発表しましたね。

味藤:いよいよ楽天が他のモールに追いついた、という印象です。SKUが多いお店は、どうしようかすごく悩むと思います。

杉浦:カラーバリエーションやサイズ展開の多い製品など、商品数の多いお店はこれから大変です。

ー楽天からの連絡も、徐々にお店に届きはじめたようです。早い店だと4~5月には適用なので、半年を切って期日が迫ってきましたが、その辺りはどうでしょうか。

味藤:まだ導入は先ですし、デモ画面が公開されていないので、「どんな準備が必要なのか読み切れない」というのが大抵のお店の状況かと思います。「やらなきゃいけない」とは思っているんだけど、まだ詳細が分からないので。

槐:もう少し先になると、みなさん具体的に検討し始めそう。

杉浦:対応にかかる手間と、対応方針として「SKU単位にページを分けた方がいいのか」「1つのページにまとめた方がいいか」という点で悩むと思います。

味藤:個人的な所感ですが、「SKUを1ページにまとめる対応には乗ったほうがいい」と思います。まとめられるものは、まとめた方がメリット大きいので。検索結果画面はSKUごとに分かれて表示されますし(※下図参照)、商品ページに入ってきたら、まとまっていて分かりやすいから、良いとこどりになります。

Yahoo!

商品画像ガイドラインの義務化は、インパクト「大」

ーYahoo!も今年は大きなニュースが多かったですね。商品画像ガイドライン、優良配送、PayPayモールとの統合…

亀田:商品画像ガイドラインと優良配送の件を合わせて、振り回されるお店が多く、インパクト大きかったですね。特に、Yahoo!を主戦場にしているお店はだいぶ困っていました。発表当初は、ガイドラインの縛りがとても強かったので。

石黒:ファッションジャンルのサムネイルの文字入れとか、後から緩和されたけど最初は厳しかった…!

亀田:モール依存ってやっぱり怖いです。今でこそ、楽天のサムネイル画像を流用して、運用できそうなルールになりましたけど。

「優良配送」と「投資ありき」。中小には厳しいモールに?

大邉:優良配送の優先表示については、「乗れない店には厳しくなる」という印象を受けました。個人的に大きいニュースだと思います。優良配送もやらないともう勝てない。あと、全店対象になった「プロモーションパッケージ」も、投資ありき感を強めた印象です。

味藤:Yahoo!革命の「無料化」で出店者を増やし、ここで実質有料化になるという。。

大邉:どこもPRオプションやプロモーションパッケージはかけてますしね。「やれば売れる」のではなく「やらないと損する」になってきたのかなと。やってやっと横並びになれる的な。

杉浦:実際、「Yahoo!が売れなくなっちゃいました」という相談は、当社にも多く寄せられましたね。

味藤:地元でがんばっている中小企業が、ECで世の中に発信したかったのに、それができないモールになってしまった印象です。検索結果に並ぶ商品は、資本力のある大手に画一化されていくイメージなのかしら…という、寂しさを感じます。…いや、やれること探したいですよね!

石黒:Yahoo!はそういう方向に振り切っているんでしょうね。「もうYahoo!店には手間を掛けない」という運営者も増えています。ただ、収入が若干あるので退店はしづらい。なので、手間はかけずに置いておくという戦略的放置になる。

Yahoo!の目玉イベント「日曜日の特典」が終了

味藤:もう一つ、Yahoo!で大きかったのが、日曜日の特典がなくなったこと(※2022/10/9に終了)。

亀田:とはいえ、日曜が売れる傾向はまだあるみたいですね。お客さんがあまり把握していないのか。それとも、そもそも「日曜に買う購入習慣」が日常になっているからなのか。「なかなか変わらないんじゃないか」みたいな話も聞きます。これは仮説に過ぎませんけど。

Amazon

ーAmazonはどうでしょうか?

味藤:Amazonは、コンサルティングにすごく力を入れ始めた印象があります。昔のAmazonって、サポート窓口に電話をかけても「片言の日本語でよくわからない」「全然つながらない」という感じでした。今は広告運用へのアドバイスなど、販促のサポートも始まっているようです。

石黒:客層の変化という点だと、「女性客が増えているかも」という話はちらほら耳にしますね。

亀田:最近は伸びる所は伸びていて、Amazonは色々なものが売れるようになってきている印象です。

以前と比べ、ユーザをちゃんと守ってくれるモールに

味藤:これまでのAmazonは、不誠実な出品者が野放し状態だったり、サクラレビューを放置しっぱなしだったりとか、「だまされる消費者が悪い」という印象でしたが、今は消費者をちゃんと守ってくれるようになり始めた。

亀田:一方で、悪質なお客さんも少なからずいるので、消費者だけでなく、お店もちゃんと守ってくれるのかとは思います。

その他のEC動向

若い世代にプチプラが流行(SHEIN、Qoo10)

ー三大モール以外で、今年印象に残ったECニュースはどんなものがありますか。

大邉:中国のSHEINの躍進は、大きなトピックだったんじゃないかと個人的には思います。

槐:今年、原宿にリアル店舗も出しましたね(※11/13に常設ショールーム「SHEIN TOKYO」をオープン)。

大邉:あとQoo10。最近、娘がよく使っていて。若い子がこうしたプチプラモールに流れている傾向はあるのかもなーと肌感では思いますね。

味藤:Qoo10は店にお客さんをつけるというよりも、「タイムセールで特定商品をドカンと売りさばく」用途な印象。出店している人も、在庫処分などに活用しているパターンが多いですね。

大邉:SHEINもQoo10も楽天とかと比べれば規模は小さいですが、「未来のお客さんでもある若い人たち」が、今こういうものに流れているということは、抑えておきたい流れかなと思います。

ふるさと納税の出品者が増加

亀田:大きなところで、ふるさと納税の出店者が増えています。自治体からも営業があるそうですね。デメリットがあまりないらしく、「とりあえず出品する」という話をちらほら聞きました。食品だけでなく、趣味や嗜好性の強い商品など、いろいろな商材がふるさと納税で使われだした印象です。

味藤:デメリットがあるとしたら、出荷オペレーションが普段と変わるので煩雑になることぐらいでしょうか。

ライブコマースの第二次ブーム

大邉:今、ライブコマースの第2波が来ていますよね。1回目はさらっと流れた気がしますけど、最近また少しにわかに聞くようになってきて。

味藤:ライブコマースは、既存の働き方にあわない部分があるみたいですね。「夜8時配信」とかだと、スタッフが残業して対応することになるので、難しかったりする。でも、ライブコマースが主流になってくるのであれば、その辺の勤務体系はフレキシブルにどうぞ、となりそうです。

槐:楽天にもライブコマースありますよね。お話が好きな店長さんが一時期やっていましたけど、最近は聞かなくなりました。今も注力してるのかな。

味藤:楽天のライブコマースは、ページにたどり着かないんですよね。。結局、自分でインスタにあげたり、皆さん自前で集客している印象です。なので、やっぱり「ファンをつけてから」という話になっちゃうんですね。

石黒:「わざわざ自分から動画を見に行って買う」って、よほど好きじゃないとしないですよね。

味藤:昔、流行った「お友達ショップと一緒にやる」感じ(=共催)もやれたら面白いかもしれません。コロナ禍で、店長さんも「つながりたい欲」がすごく強まっていると思うので。

自社EC・メルカリShopsなどへの販路拡大

味藤:「無料の自社ECを出す人」が増えています。コロナ禍で補助金も出やすかったですしね。ただ、出したはいいけど、そこで止まってしまう人も多いですね。テレビコマーシャルを見て、BASEやSTORESで自社ECを始めたけど「集客どうする?」って困っていたり。

大邉:あとは今年、メルカリShopsもニュースになりました。中古ECだとラクマもありますが、ラクマは聞かない。

味藤:メルカリShopsは、出店者が増えているみたいですね。

SNSのショッピング機能の浸透

ー今年、ショッピング機能がついたSNSがいろいろありましたよね。アパレル写真などにタグをつけて、ECサイトに誘導するのがメジャーになりました。

大邉:YouTubeのショッピング機能って、あまり聞かないけど、どうなんだろう…。

味藤:インスタのショッピング機能は、強いファン・フォロワー・拡散してくれる人がいないと難しいですね。

槐:インスタ経由で楽天のページに来て購入する人は、ある程度いますね。

亀田:見た目商材やコミュニティができそうな商材はハマりそうです。例えば、手芸用品だと、材料を購入して、自分で作った作品の写真をアップして、それが2次拡散されて…みたいな特性があると思うし。

石黒:「検索で、GoogleよりもインスタやTikTokを使う」と言う話もありますね。この辺は乗っかりやすそうです。

最後に

2022年は、円安&物価高で、あらゆる物が値上げになった年

大邉:脱コロナで、そろそろECバブルが終わりそうですね。

味藤:バブルがはじけるタイミングと値上げラッシュとが重なるので、余計にしんどい状況です。

亀田:海外に工場がある店が「国内で工場を探し始めた」という動きも色々な所でありました。中国の会社を引き払って国内に移動したとか。完成品を輸入してるお店は、割と苦労しています。半製品だったら関税が低いので、まだいいんですけど。

味藤:今年は、ほぼ100%の店が値上げしました。仕入れているものが全て値上げしてしまったので、ありとあらゆるジャンルで値上げがあったのは間違いなさそう。

杉浦:日本の購買力が弱まって、そもそも素材が入ってこなかったり、コンテナを海外に取られたり。円安は色々な所に影響が出ていますね。

変化が速い中、情報に埋もれず、時代の変化を乗りこなそう

ー今年は、メタバースも大きなニュースでしたよね。こういった新しい技術への取り組みについてはどうでしょう。どんどん変化の激しい時代になっています。

石黒:大手がやっている所に参加して、メタバースECをやってみたという方はいますね。

杉浦:自分達でやるのは大変だけど、乗っかってやるのはできそう。イベントやメタバースモールへの参加とか。

石黒:こういうことは「知ってる・知ってないの差」がどんどん広がっている気がします。今に限ったことではないですが。

ー選択肢として持っていないと、そもそも検討の土台に上がってこないですものね。

石黒:とはいえ「個別に情報を集めて検討して、やる・やらないをさっと決めて、すぐ動く」のは皆さん難しい。Yahoo!の優良配送など「目の前のことでずっと悩んでる」ことって結構あるんですよね。気持ちもわかるんですが、もったいないなとも思います。

味藤:そうですね。どこに乗るのかも含め「これから私達はどうやって運営していくんだろう」と、ちゃんと考えることは大事。

ー選択肢は増えているので、取り組める施策も増えているんですよね。だからこそ迷う面もある。

槐:「情報も選択肢も多すぎる。結局うちの店は何をやればいいの?」という気持ちもわかります。全部キャッチアップするのは難しいですし、現実的ではないですから。

杉浦:全部にのっからなくてもいいですよね。「うちの店はここをがんばる」という所を見つけて、伸ばしていけたらいいと思います。そういったサポートをして、EC事業者の皆さんの力になっていきたいですね。

坂本コメント:自社にとって最適なバランスを考え、運営していこう

こんにちは、坂本です。少し私からもコメントを。

「モールが怖い」と言う話がありましたが、怖いからやらないというわけにもいかないですよね。本店だけで商売が成立するならいいですが、中には本店が向いていない商材もありますし。では、EC事業者はモールとどう付き合っていけばいいのか。

モールに振り回されないためには、本店が作れるなら本店比率をあげること。そして複数モールを運営することで、特定モールに依存せずリスクヘッジすること。本店に向く商材とそうでない商材があり、ケースバイケースなので一概には言えませんが、本店がある場合は本店を旗艦店とし、次に楽天あるいはYahoo!という順番になると思います。本店がない場合は、アマゾンか楽天が旗艦店になり、そこから多モール展開することになります。

とはいえ、力を入れるべきモールとそうでないモールがありますよね。
楽天の人が提案するままに楽天を磨き上げ、アマゾンの人に言われるままにアマゾンを、Yahoo!の提案に沿ってYahoo!を磨き上げていたら、とても時間が足りません。では、どこに力を入れて、どこの手を抜くか。

現時点では、Yahoo!は売上規模の話もあり、優良配送に対応していないとかなり厳しい傾向です。なので、楽天またはAmazon中心で「Yahoo!はついでにやる」という方が多いかと思います。つい最近の動きかつYahoo!は方針転換がよくあるので、この傾向がずっと続くかはわかりませんが。いずれにしろ、メリハリをつけていくのが正解だと思います。

これからは、特定モールに注力した施策より全モールに使える設備や取り組みへの投資が大事です。実際、我々のコンサルティングでも、複数モール運用を前提とした「EC事業全体への提案」が最近増えています。例えば「新商品を企画して作る」「物流を整える」「社内システムを導入する」など。月並みな結論ですが「自分にとって最適なバランス・力配分はなにか」を考えながら、広い視野で経営することが重要なんでしょうね。

過去の延長線上ではなく、自覚的に整えていきましょう。
原価の高騰やコロナ後の需要の変化に伴い、これまで売れていたものが売れなくなったり、売れなかったものが売れたりという変化もあります。適正在庫量の管理や販売予測も、きちんとやる必要があります。ですから、これからは「守りの経営」も重要ですね。

話は尽きないですが、この続きは来年のブログで。それでは皆さんよいお年をお迎えください。

P.S.

弊社では、こういった時代の流れを把握しながら、いまの時代に沿った戦略や将来像を提案しています。
また、「小さな会社が少人数でどう運営していけばいいか」、あなたのお店が目指す理想を実現するためのサポートも実施しています。ご興味のある方は、以下のページをご覧ください。

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この記事を書いた人

コマースデザインスタッフ
コマースデザインは、EC事業のコンサルティング会社として、ECのお役立ちツールECコンサルティングを提供しています。全サービスの累計支援先企業は23,000社を突破しました。「色々な個性を持ったお店が数多くあり、お客さんに豊かな選択肢があるEC業界」を目指し、中小ネットショップ事業者の皆様の「強み」を引き出す支援を行っています。
詳しくは、コマースデザインについてをご覧ください。

EC事業コンサルティングを行う「コマースデザイン株式会社」の社員ブログです。

値引きや広告に頼らない販促施策を中心に、小さな会社や1人事業のための業務改善・組織運営術など、経営全般にわたって支援をしています。

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