「楽天ペイ」って結局何?これだけは押さえておきたい!3つの影響

今日は、「楽天ペイ」(楽天市場決済)の話をします。

現在、楽天出店者への「楽天ペイ」導入が始まっていますが、内容は把握していますか?
楽天ペイとは何か、知らない方に向けてざっくり説明すると、

(1)楽天全ショップの決済方法が統一される
(2)対応クオリティの均質化のために、楽天市場が決済業務を代行する

という仕組みのことです。楽天市場の全店舗に導入されます
楽天ペイが導入されると、業務フローの変化や、場合によっては料金が上がります。

私たちの周囲では1%程度のコスト増となるケースが多かったですが、ぜひご自分で試算してください(後述)。

なので、切り替わる前に、早めに把握しておくに越したことはありません。でも「よく分からないから、後で見よう」と、放ったらかしのままにしている楽天店長さんも多いのではないでしょうか?

そこで今回は、「忙しくて読む暇が取れない」という方に向けて、楽天ペイで「便利になる点・変わる点」や「お金回りの懸念点」など、重要な情報をかいつまんで紹介します。

※追記:「楽天ペイ切替え時に注意するポイント」「後払い決算導入の注意点」について、別記事にまとめました。以下からご覧ください。

はじめに

いま何が起こっている?

楽天ペイは、全店舗同時に一斉導入ではなく、少しずつ導入されます。実はいま、出店者に向けて、順次声がかかっています。

楽天から声がかかると、そこから約1~3ヶ月で導入されます。独自の受注システムを使って受注処理をしていて、「声がかかったタイミングでは、どうしても導入できない事情がある店舗」に対しては強制対応されません。ただ、最終的には全店舗で導入です。

ちなみに、「全店舗への導入完了はいつ頃か」については、はっきりとした案内が見つかりませんでした。なので、導入が早まる可能性も見据え、まず起こることを知っておくことが必要です。

受注業務が効率化されるが、経費は増える

楽天ペイの案内が出た当初、某店長さんからこんなリアルな声を聞きました。

入金サイクルが短くなって、資金繰りが少し楽になるので、楽天もいいことするなあと思ったんですが、手数料がけっこう増えるので、できれば、導入を先延ばししたい感じです。

つまり、店舗にとっては、受注業務がスッキリしたり、資金繰りが楽になる半面、(場合によって)若干のコストアップが懸念されるわけです。

また、RMS内での受注処理の流れが大きく変わるため、導入に際しては、事前に内容を把握し、実際の業務フローに落とし込んでおかないと、混乱も予想されます。

楽天ペイ導入で大きく変わる点は3つ

「楽天ペイ」を導入し、店舗運営者にとってインパクトの有る変化は、この3点ではないかと思います。

  1. 受注処理の仕組みが変わる
  2. それにより、手数料など、料金体系が変わる
  3. お金の流れ(支払サイト)が変わる

業務フローが変わったり、コストが上がったりといった影響がありますので、早めに把握しておくことが肝心です。
それぞれが店へ及ぼす影響について、順にポイントを見ていきましょう。

1.受注処理の仕組みが変わる

まず、楽天ペイ導入により、受注処理の仕組みが変わります。

これまでは、注文後の決算手続きやお客さん対応など、バックヤード対応の一連の処理は、店舗が行うものでした。

ですが、楽天ペイの導入後は、下図のように変更になります。変更点は、「決済周りの業務(※)」を、楽天側で代行するようになる点です。
※決済周りの業務:具体的には「決済手続」「決済」「返金」処理です。

店舗にとってのメリットと懸念事項について、説明します。

楽天ペイ導入のメリット

作業負荷の軽減

店側の一番のメリットは、決済手続き作業が楽天に移るため、作業負荷軽減が見込めることではないでしょうか。

例えば、銀行前払い決済の注文が入った場合、 これまでは、店舗が行っていた入金確認や、過不足があった際の督促・返金作業も、楽天ペイの導入後は楽天側が対応します。これまで人力でひとつづつ潰していた業務が減るのは、助かりますよね。

また、決済関連の「問い合わせ窓口」も楽天市場に一本化されるため(※)、決済関連業務全体を通して楽になることが期待されます。
なので、これまでこういった業務に時間を割かれていた方は、浮いた時間を別の業務に使えるようになるかもしれません。

※お客さんが決済周りの問い合わせを店舗にしてきた場合
店舗は対応できず、お客さんに楽天の問い合わせ窓口を案内するフローになります。

不正注文が減る

さらに、楽天側で全顧客の注文処理を管理することで、ブラックリスト客を感知する精度が上がり、不正注文を減らしていけるようです。
店舗側からすると、不正注文を事前に察知できることで、ブラック客に費やす諸経費や対応コストを減らせるのではないでしょうか。

楽天ペイ導入の懸念点

ただ、現時点では情報不足な点もあり、不安に思っている店長さんの声も聞きます。
当社でよく聞く、代表的なものを挙げておきますね。

対応のスピード感が読めない

不正注文のジャッジやクレジットカードの処理が楽天側に移行された場合の、対応スピードが読めません。
このため、楽天側の処理が完了し、「注文確定」ステータスとなるまでは、たとえ「あす楽」注文であっても、店側は出荷作業を進めることができないという懸念があります。

楽天側のステータス反映が、ほぼリアルタイムで完了するのか、はたまた数十分のバッファタイムがあるのかは未知数です。。
「タイミング次第では、発送業務に遅れが出るのではないか」という懸念の声も上がっていますが、実際のところ、どのぐらいのスピード感なのでしょうね? 情報をお持ちの方がいれば、ぜひ教えてください。

「後払い」でトラブルがあった際の保証が未確定

「後払い」については、共通の決済方法となる予定が発表されました。しかし、代金未回収などのトラブル保証の内容がまだ詰められていないようです。
2017年12月1日現在、このように案内されています。

Q:楽天による後払い決済でユーザの未払いが発生した場合は、店舗の負担になりますか?
A:店舗様にご負担いただかなくて済む方法を検討しております。決定次第、週刊サポートニュース等でご案内します。

楽天からの今後の詳細発表を待ちましょう。

受注処理システムの改修が必要

楽天ペイの導入後は、「注文確認OK」「決済OK」「発送完了」など、決済状況や発送状況のステータスを変更することで、受注フローが進んでいきます。

ですから、受注処理システムを導入している場合(RMS以外で受注対応をしている場合)は、RMSと受注システムとの間で、都度ステータスを連携する必要があります。

つまり、システムの修正が必要です。どんなスケジュールでどう修正する予定か、事前に開発会社に問い合わせておきましょう。

なお、独自開発のシステムの場合は、各々で改修する必要があり、その費用は店舗運営者持ちです。この予算確保も必要です。

2.料金体系が変わる

ここでは、料金体系がどう変わるかについて、説明します。

上述した通り、楽天が決済手続きを代行してくれる代わりに、店舗は楽天に手数料を支払うことになります。

従来は代引き手数料などは、店舗が各運送会社に納めていたため無課金でしたが、楽天ペイ導入後は変わります。

コストを試算しましょう

具体的な変更点は後述しますが、ざっくりと捉えて、現在よりトータルで1%くらいコストアップすると思っていた方がいいかもしれません。

この1%という数字は、私の周りで実際に試算した店から聞いた数字の平均値です。
中にはコストダウンとなる方もいらっしゃるでしょうから、まずは試算をしてみてくださいね。後ほど、楽天の公式資料を紹介します。

運送会社の料金も上がっている所に更なるコストアップなので、コストは厳しめに見ておくとよいかと思います。

すべての決済手段に対して課金される

楽天ペイ導入後は、すべての決済手段に対して課金されます。下図のように、料金表に基づいた利用料がかかるようになります。

従来は課金されなかった「銀行振込」「代引き」や「後払い」などの決済方法も、楽天ペイ導入後は課金対象となる点、注意しておきましょう。

客単価が安いほど課金率は上昇

なお、客単価が低いほど、楽天ペイの課金率は高まります。 具体的な料率は下図を参照してください。客単価の安い店ほど、利用料が増える懸念があります。

廃止されるコストもある

増えるばかりでなく、減るコストもあります。

従来徴収されていたクレジットカード決済の諸経費が無料化され、下記の費用が不要になります。

  • カード決済の月額費用 :3,000円
  • データ処理料     :15円/件
  • キャンセル処理料   :5円/件
  • マルチ決済の精算手数料:700円/回

3.お金の流れが変わる

入金タイミングや請求・支払サイクルが、下図のように変わります。

入金タイミングが一本化

黄色いラインを引いたように、お金の流れが一本化されることで、 把握しやすくなります。

特に、利用割合の高いクレジットカードで、入金サイクルが短縮化されることで、キャッシュフロー改善の期待が持てます

現在の請求・支払サイクルとの比較

必要かどうか分かりませんが、念のため「請求・支払サイクル」の変更点を掲載します。

請求・支払いの仕組みが上図のように変わるため、税理士にも事前に情報共有して、留意する点がないか確認をとっておいた方が良さそうです。

「楽天ペイ」導入前にやるべきこと

社内で事前にイメージトレーニングしましょう

楽天ペイの開始タイミングは店舗の同意の上となるため、突然切り替わることはないですが、切替時に慌てないように、全社で新フローでのイメージトレーニングを実施し、不明点は早めに潰しておかれると良いでしょう。

この記事を社内で回覧されると良いと思います。

受注システムを確認しておきましょう

楽天ペイの切り替えタイミングは基本的には、楽天から打診されます。
前述のように、システムが対応できないなどの「同意できない事情」がある限り、強制対応されないようなので、切り替えられない人は、連絡がきたときに楽天と話し合ってみてください。

楽天の公式資料をチェックしましょう

本ブログでは、ざっくりと大事なポイントのみを取り上げましたが、出店者向け資料も読んでおきましょう。「楽天ペイ」についての詳細が、RMS内で公開されています。
≫「楽天ペイ(楽天市場決済)」Q&A(※要RMSログイン)

内容に疑問があれば、担当のECコンサルタントまで問い合わせるのが良いと思います。

問合せ窓口をチェックしましょう

「楽天側の窓口営業時間が分からない」「何か決済関連のトラブルがあっても、窓口が閉まっていてはお客さんを待たせてしまうのでは?」という不安がありますよね。

この点については、まだマニュアルに明記されていなかったのですが、確実な筋から聞いた情報によると、通常のサポート窓口と同じ営業時間のようです。

■窓口営業時間
・出店者向け  :平日9~23時/休日9~18時
・一般ユーザ向け:24時間365日

この時間帯であれば、大概は連絡が付きそうで、安心できますね。

まとめ

楽天ペイが導入されると、業務フローと料金が変わります。
便利になると同時にコストアップになる(可能性が高い)という事を理解しておいてください。公式の資料を見て、ちゃんと試算しておきましょう。

この件に限らず、立て続けに起きている送料値上げを皮切りに、色々なコストが上がっていますよね。もう、「よく分からないが、沢山売れば利益は出るだろう」という勘頼みの運営は危険です。真剣に数字と向き合い、「利益を作っていこう」「コストを減らそう」と考える必要があります。

多角的に店舗運営を見直し、利益確保に取り組もう

以下の先日のブログ(ヤマト・佐川の送料値上げ対策)でもご紹介したように、コスト分を単純に値上げするのではなく、多角的に見直していく必要があります。

というと、何だか難しそうですが、考え方は概ね決まっています。上記ブログ記事で丁寧に説明していますので、ご覧ください。

毎日忙しいですが、もう後回しにはできません。早急に店舗の体質を改善する必要があります。弊社のコンサルティングでは、売上アップだけでなく利益確保策の支援もしています。お悩みの方はお早めにお問い合わせください。

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この記事を書いた人

味藤絵美子
有名EC企業にて、店舗の立ち上げから店長まで一連の運営業務を経験し、実績を重ねる。その後、食品メーカーに転職、衰退した人気店の建て直しに尽力。2年間でアクセス数4倍、転換率2倍とし、再成長させる。メーカー型、仕入れ型、大規模、小規模共に経験している守備範囲の広さが強み。ネットショッピングが大好きで、女性ならではの柔らかい物腰の中に、鋭いお客目線が光る。

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