こんにちは。コンサルタントの味藤です。
今回は、1月26日に開催された「楽天新春カンファレンス2023」の見どころをお届けします。
我々コンサルタントが、「店舗運営者にとってここがポイント」と思うところをまとめました。
今回の目玉トピックは、戦略共有会の中で語られた「365日配送可能商品が目立つようになる」という情報でしょうか。まだ詳しい情報は出ていませんが、Yahoo!ショッピングの「優良配送優遇」と同じような流れになりそうですね。。
楽天からも録画が配信されていますので(RUx内で配信されています)、イベントの全容と詳細はそちらを確認いただければと思いますが、この記事で要点を押さえてから詳細を追うとわかりやすいので、ぜひご一読ください。
- 目次 -
はじめに
ご案内するのは、以下の4つです。
- 1:楽天SKUプロジェクト
- 2:配送品質向上制度
- 3:システムのアップデート
- 4:三木谷さん講演
今回の一番の目玉は「配送品質向上制度」かと思います。詳細はこれから詰められていくようですが、「365日発送可能な商品にアイコンが付く」ようになり、そうでは無い商品と区別されるようになります。Yahoo!ショッピングで導入された「優良配送優遇」と同じく、毎日出荷可能な商品が優遇される流れになっていきそうですね。。
こうした楽天の変化を踏まえて、店舗運営の方針を考えていくようになるかと思います。
また、楽天運営者が直近で対応しなければならないのは、「SKUプロジェクト」への対応です。今回のカンファレンス後に、RMS内で「移行対応のチェックリスト」がリリースされました。これをご覧いただくと分かりますが、準備がかなり大変そうです。
配送品質向上制度とSKUプロジェクトについては、新春カンファレンスのすぐ後、楽天サポートニュースでも情報が流れています。このサポートニュースの内容もあわせて、「何が起こるのか」を解説します。
1:SKUプロジェクト(2023年4月~)
まずは、SKUプロジェクトについて。
新春カンファレンスでは特に新しい情報はなく、基本的にこれまでの情報のおさらいでした。
※「SKUってどんな内容だったっけ?」という方は、こちらの記事にまとめていますのでご一読ください。近々続報も出します。
※2023/03/10追記:楽天SKUプロジェクトの解説記事を公開しました!
SKUの対応ガイドと移行チェックリストがリリース
1月26日に、楽天サポートニュースでSKU関連の情報が2つ届いています。「まだ見ていない」という方はぜひチェックしてくださいね。
1つ目は、「SKUに関わる情報が探しやすくなりましたよ」というお知らせです。
SKUのガイドページができ、ほしい情報が取り出しやすくなっていますので、活用していきましょう。
- SKUプロジェクト対応ガイド ※要RMSログイン
2つ目は、楽天から「SKU移行のチェックリスト」がリリースされました。
- SKU移行のチェックリスト ※要RMSログイン
このチェックリストを見ると、「これだけたくさん対応しないといけないのか…!」ということがわかります。
ざっと見ても「一体何をしなきゃいけないのか」は非常にわかりづらいと思うので、現時点ではまずは「大変そう」ということを把握いただけるといいかと思います。
SKU移行には、おそらく社内のいろんな部署が関わることになるはずです。
「もしかしたら、受注のデータが少し変わるかもしれない」とか「商品の登録方法が変わるから、制作側も把握しないといけない」とか。一番大変なのは、システムを扱う部署だと思います。
ですから、楽天SKUプロジェクトの内容は、EC運営に関わる全ての方が確認する必要があります。
1月から移行日程の調整がスタート
これまでは、「SKUプロジェクトの移行時期」は2ヶ月スパンでの決定でした。
みなさん、例えば「あなたのお店は2月から4月ですよ」「6月から8月ですよ」といった形で、楽天から案内があったかと思います。
新春カンファレンスの発表によれば、1月以降は具体的な移行日の相談が始まるそうです。
- これまで:2ヶ月単位での時期打診
- 今後 :具体的な日程打診
楽天から「SKUの移行について、この期間はどうでしょうか」という日程確認メールが届くはずですので、必ず確認してください。
「ちょっとその期間は都合が悪い」ということがあれば、別の日に変更も可能だそうです。必ず日程確認メールを確認し、本当にその時期に自分たちが間に合いそうか、対応できるかを検討して計画を立てましょう。
具体的な対応内容は、別途ブログで案内します
早いお店では、今年の4月からSKU化が始まります。楽天店を運営されている方は、
- 「SKU化って、どういうもの?」
- 「私達が何をしなきゃいけないんだろう」「どんな準備が必要?」
- 「どのぐらい大変なんだろう?」
という点が、おそらく一番気になるかと思います。これらについて現在、弊社内でわかりやすく情報をまとめているところです。今後、本ブログでご案内しますので、
- 「SKプロジェクトについて、まだ何も知らない状態」
- 「なんとなく知ってるけど、何をしたらいいかわからない」
という方は、ぜひメルマガを登録いただき、続報をお待ちください。
※2023/03/10追記:楽天SKUプロジェクトの解説記事を公開しました!
2:配送品質向上制度(2024年第2四半期~)
新しく「配送品質向上制度」というものが、2024年第2四半期に始まります。
この制度、品質のクリア基準が高く、結構厳しい内容です。まだ仮説ですが、基準を満たさないと、もしかすると今後は「検索結果での露出機会などが減ってしまう」かもしれません。
ですので、まだ導入は先のことではありますが、配送品質向上制度に自店が乗っかることができるかを検討していけるといいでしょう。
配送品質向上制度の内容
去年Yahoo!ショッピングが優良配送商品の優先表示を始めましたよね。端的に言えば、今回の制度は楽天版「優良配送」のようなものです。
この制度が導入されると、配送品質の高い商品に「配送認定ラベル」(※仮称)が表示されるようになります。
このラベルによって、ユーザーは「安心して買える商品」を絞り込みやすくなります。
ギフトなど「期日通りに届く商品」を買いたい方などにとって、便利な機能ですね。
これはあくまで仮説ですが、
- ラベルがついている商品が、検査結果でより目立つようになっていく、選ばれやすくなっていくのではないか
- 逆に言うと、このラベルがついていないと、売り場で自分たちの商品が表示されづらくなる
ということが今後起こる可能性があると思います。
ですので、可能な限り基準を満たすように対応できるといいと思います。
配送認定ラベルの付与条件
ただし、このラベルがもらえる条件がかなり厳しいのです。
まだ、現時点での「案」とのことですが、その内容をざっくりと紹介します。
1:SKU&お届け日表示に対応すること
まず、以下の2つを満たす必要があります。
- SKUへの対応 (2023年4月~)
- お届け日表示への対応(2023年6月~)
楽天の大きなプロジェクトとして、「SKU切替え」の後に、「お届け日表示」を改善する取り組みが始まります。
お届け日の機能改善の詳細は、次の章で解説しますが、店舗運営者がやるべきこととして、「SKUごとに、発送元の住所と出荷リードタイムを登録する」という作業が発生します。
例えば「赤いTシャツSサイズ」というSKUに対して、発送元の住所とリードタイムを登録するイメージです。
お届け日表示の改善は現時点では任意対応のようですが、配送認定ラベルを獲得したい場合には対応する必要があります。
2:店舗&商品の基準をクリアすること
これを踏まえた上で、以下の全ての基準を満たす必要があります。
※あくまで現時点ではまだ案の状態ですから、今後もしかしたら緩和・変更されるかもしれません。
分類 | 基準のチェック項目(案) | 緩和条件 |
---|---|---|
店舗基準 | 納期遵守率「96%」以上 | ・楽天スーパーロジスティクス(RSL)を利用しており、受注後タイムリーに出荷指示データを連携できる場合、店舗基準が免除される。 ・商品の性質上、 6日以内のお届けが難しい商品は「6日以内お届け件数比率」の母数から除外して計算される(※)。 |
6日以内お届け件数比率「80%」以上 | ||
出荷件数「100件/月」以上 | ||
共通の送料込みライン(39ショップ)の導入 | ||
商品基準 | 午前の注文:365日いつでも「翌日お届け」指定可 | ・土日祝日は、通常注文締切り時間を「最短午前9時」に設定可。 ・年末年始および月1回は休業でも可。 |
午後の注文:365日いつでも「翌々日お届け」指定可 |
※2023/9/29追記:楽天から例外条件の詳細が発表されました。
商品の性質上、「配送品質向上制度」の基準を満たすことができない商品に、例外条件が設けられることになりました。例外対象は、以下のいずれかに当てはまる商品です。
例外商品のパターン | 具体例 |
---|---|
特定の日のお届けが必要なシーズナルイベント商品 | バレンタイン、ホワイトデー、母の日、父の日、敬老の日、ハロウィン、クリスマス、おせちの8イベント |
商品の性質上、基準を満たせない一部の分類に属する商品 | 新作DVD、アパレル、収穫・水揚げが必要な商品、名入れ・オーダーメイド商品など多数 |
「365日いつでも翌日届けられる」、つまり休まず毎日出荷できないと、この品質ラベルは取れないんですね…。
また、「納期遵守率96%以上」というのも、なかなか厳しい条件です。
それに「月100件以上出荷」は、売上規模の小さいお店は満たせない条件ですね。
ほかにも「共通の送料込ラインを導入している」などがあり、店全体でこれらを満たした上で、「その商品を毎日出荷できる」という条件を満たさないとなりません。なかなか厳しいですよね。(出荷業務を倉庫にアウトソーシングしづらい食品、家具、オーダーメイド商材などは特に。)
内容は変更となる可能性もありそうですが、こういった制度が始まることは押さえておきましょう。
365日出荷実現のための楽天の支援策
この制度を始める上で、楽天は支援策を打ち出しています。
お店によって使えるものがあるかもしれないので、チェックしておきましょう。
BOSSの「RMS自動化プラン」(2023年4月~)
一つが、BOSS(楽天スーパーロジへ受注データを連携するサービス)で4月から「RMS自動化プラン」が始まるそうです。
店舗の受注ルールにあわせて、自動で金額変更できるようになります。
- RMS自動化プラン
- 2023/4/1に提供開始。事前申込を受け付け中
金額修正が必要な注文が入るなど、これまでは店舗で注文データを修正してからでないと楽天スーパーロジが出荷できなかったんですが、そこをある程度ルール化して自動で処理してくれるようになるらしいです。
どこまで対応できるのか、ページを見ても詳細はまだ不透明ですが、店側でのデータ修正が発生することで、365日の出荷ができていない場合は、何かしらのやりようがあるかもしれないので、一度相談してみるといいかもしれないですね。
「スピード配送ナビ」ツールの提供
「スピード配送ナビ」というツールががRMS内で提供開始されました。
これは「店舗の配送フローの改善点」を発見するツールです。チェックシートの質問に答えていくと、「あなたの出荷体制の課題は、こういうところにありますよ。こう改善できるんじゃないですか」と提案してくれるサービスです。
- [配送品質向上制度] スピード配送NAVI ※要RMSログイン
チェック項目の例 |
- メール内容:頻度高く利用する文面は予めテンプレート化している
- 配送伝票 :送り状システムを利用して配送伝票を印字している
チェックシートを見ると、「なるほど、こういう対応をすると、確かに出荷が少し楽になるかもしれない」「顧客対応のスピードがあがり、365日出荷できるかもしれない」という気づきが見つかるかもしれません。
3:システムのアップデート
三つ目について、「このあたりは店舗として嬉しい機能改善だな」という点を解説します。
お届け日表示の改善(2023年6月~)
まず一つ目は、お届け日の表示改善について。
現在、お届け日は「1~3営業日以内に発送」くらいの表示ですが、今後はより詳しく表示されるようになります。
主要な配送会社の持っているデータ(「この地域から発送し、ここに届けるならいつ届くか」と言う情報)と紐づいて、自動でお届け日が表示されるようになるそうです。
この機能は、2023年6月に実装される予定です。ただ、自動表示されるようになる代わりに、SKUごとに出荷元の住所を入れたり、配送のリードタイムを入れたり、という作業は必要です。
なので、準備の作業はふくらみます。その代わり、自動で表示されるようになる、という感じです。
トップページのパーソナライズパーツ拡充(2023年~)
これは売り場の話です。
スマホPC共にトップページについて、パーソナライズパーツが拡充されるそうです。詳しい時期は不明ですが、2023年に始まる予定とのこと。
ユーザーのセグメントに応じて、情報を出しわけることができるようになります。
(初めての方にはクーポンAを出す、リピーターにはクーポンBを出す、など)
また、「ユーザーが好きそうな商品」をAIが自動で表示するパーツもリリースされるので、販促に活用できそうです。
定期購入のリニューアル(2023年4月~)
これは前々から話されていたことですけれど、定期購入がリニューアルされます。
時期 | 定期購入の機能追加の内容 |
---|---|
2023/4~ | お買い物かごのリニューアル |
CSV/APIでの商品一括登録を提供 | |
継続的なポイント利用機能追加 | |
2023年以降 | 順次、UIリニューアル |
商品情報を統合 | |
通常価格と定期価格の比較表示 |
これまでの定期購入は、なぜか楽天ポイントが使えませんでした。
今後はポイントも使えるようになり、見た目も改善され、ユーザーがより使いやすい売り場になっていく予定です。
システムも整っていくので、これまで定期購入を使っていなかった店舗さんも、「定期購入にできそうだな」という商品があったら、リニューアル後に試してみるのもありかもしれません。
PC版トップページのリニューアル(2023年6月~)
開発関連としては、もう一点。
昨年末にスマホのみ、トップページがリニューアルされました。2023年6月には、PC版も同じような形になる見込みだそうです。具体的には、1回の更新で、スマホもPCもアプリも同時更新できるようになります。
これに伴い、看板画像やバナーのおすすめサイズについて、楽天から案内がでています。
今後新しく看板やバナーを作る場合、そのサイズにあわせて作っておくと、6月からPC版のトップページが始まったら、見た目よく表示できますので、準備を進めましょう。
その他
- 楽天スーパーロジのサービス追加
- 大型商品を扱えるようになる(180サイズ以上)
- 熨斗シールを貼れるようになる
- メール便翌日お届け対応
- 大型商品扱ってる方は、いくらぐらいでやってもらえるか、見積りを取ってみるといいかも。
- ROOM経由の売上増加
- ROOMが堅調に伸びているよう。「引き続き増えていくんじゃないか」と言う見込み。
- 事例:ファッションジャンルは前年比で180%ぐらい、ROOM経由の売上が増加。
- ライブコマースの強化
- 「2023年飛躍していきたい」とのことなので、何かしら露出が強まる可能性がありそう。
- ライブコマースやれそうな方は、試してみると面白い展開になっていくかも。
- 新しい顧客の開拓
- 楽天の抱える課題は「若い層があまりいないこと」。
- 今夏、eスポーツとコラボレーションして、若年層を楽天市場で呼び込む施策を行う予定。
- 店としては若いお客さんが増えるのは嬉しいので、こういった楽天の動きはプラスになるのでは。
4:三木谷さんの講演
最後に、三木谷さんの講演についても少しだけ触れておきます。
今回は「引き続きモバイルに投資していく」という話がメインでした。
- モバイルが育つと、楽天経済圏を活用するユーザーが増える。楽天ポイントが循環する。
- 楽天市場の流通額も増え、出店者の売上アップにつながっていく。
- だから、楽天モバイルにすごく投資するけどよろしくね。
ということを話されてました。詳しくは各メディアが記事を出していますので、こちらをご覧ください。
楽天モバイル法人プラン開始(1/30~)
また、1月30日から楽天モバイルの法人向けのプランが始まりました。
3Gで月1980円、30GBで月2780円と、かなり安い価格設定です。
「どのぐらい安定してつながるか」という不安はありますが、価格としてはとてもリーズナブルです。
終わりに
以上、ざっくりと楽天新春カンファレンスと、その後サポートニュースに流れた情報を踏まえて、
- 1:SKUプロジェクト
- 2:配送品質向上制度
- 3:システムのアップデート
- 4:三木谷さんの講演
を解説しました。
いよいよSKUが始まります。おそらく準備がものすごく大変です。
例えば、利用中のシステムが8月にSKU対応するのに「6月にSKU切替え」とかだと運営が成り立たなくなるので、注意してくださいね。
当社でも「SKUプロジェクトの全体感」や「店舗がすべきこと」をまとめている最中で、近日中に本ブログで発信予定です。
「配送品質向上制度」については、まだ詳細が固まりきっていないようですが、おそらく楽天も、Yahoo!ショッピングでの「優良配送優遇」の流れにならう形になっていくのではと思われます。大きな懸念は「365日出荷」。これを満たせないと、もしかすると今後の楽天での商売が不利になる可能性があります。
それならば「店休日にも出荷対応ができるように」と、出荷業務を外部委託した場合でも、すべての注文が出荷されるわけではないのが現状のようです。よく聞くのが、「備考欄にコメントがあるなどの一部注文は、店舗運営者が手動処理してからでないと出荷できない」など。こうした対応を乗り越え、365日発送するにはどうするか…。
- 「備考欄でユーザーから色々質問されることへの対応」で店舗は手が食われるので、楽天市場の注文画面が整えばラクになるのでは
- 曜日を考慮せず「5と0のつく日」に売上の山を作るから週末が忙しくなるのであって、山を作るのを曜日で設定する(ex.ポイ活スイスイ水曜日というCMを打つ)と、週末対応しない店もダメージが少ないのでは
などなど。
「すぐ届く」のはユーザーにとってメリットですから、提供できるに越したことはありません。ですが、実際に運営者側で対応ができてこそ、です。
ですので、店舗支援につながるこういった対策を、楽天側も打ち出していってくれるといいのですが…!
楽天運営者のみなさんは、特にSKUと配送品質向上制度を注目して、情報を追いかけていただければと思います。
P.S.
弊社は「中小EC事業の経営全般を支援するコンサル会社」です。特に「楽天を中心に、複数のネットショップを運営している会社」のお手伝いを得意としています。
「モールの仕様変更や新機能に、どう対応していけばいいか」「いま、ウチは何に力を入れればいいのか?」
今回のようなSKU対応のサポートもしていますし、EC経営全般にも知見があります。興味のある方は、サービス紹介をご覧ください。
この記事を書いた人
- 有名EC企業にて、店舗の立ち上げから店長まで一連の運営業務を経験し、実績を重ねる。その後、食品メーカーに転職、衰退した人気店の建て直しに尽力。2年間でアクセス数4倍、転換率2倍とし、再成長させる。メーカー型、仕入れ型、大規模、小規模共に経験している守備範囲の広さが強み。ネットショッピングが大好きで、女性ならではの柔らかい物腰の中に、鋭いお客目線が光る。