オバケから解放されて、「良いチーム」に!【ヤッホーブルーイング植野さん×坂本対談・後編】

こんにちは、川村です。
お待たせしました、先週の続き、「ヤッホーブルーイングのうえぽんさんと当社 坂本の対談」の後編です。
今回は、自分も含めてチームみんなが忙しい!でもなんで?!と思っている方に是非読んでいただきたい「生産性の上がる業務整理」とその成果についてのお話です。
今回も、ヤッホーブルーイング・通販団の皆さんの前向きさと、うえぽんさんの誠実な人柄が光るトークとなっております。そして、最後に、「コマースデザインはゴーストバスターズ」という結論になりました。どんな意味か?は最後まで読めばわかりますので、お楽しみに。

前回のおさらいと今回の見どころ

まず、簡単に前回のおさらいと今回の見どころについてお伝えします。

前編は、新任のリーダーが「全く自信がない中で徐々にリーダーとして自分のスタイルを見つけていく」というお話でした。
リーダーになった人が「プレイヤーとしての役割を(ある意味)手放す」「お互いの役割や達成基準を言語化して、約束する」などの話がありましたよね。今回初めてこの記事を読む方は、ご興味があれば前編から是非お読みください。

さて、今回は・・・

「仕事は大好きなんだけど、残業が多くて『なんとなくずっと忙しい』。楽しいんだけどなんかモヤモヤしてスムーズに仕事が進まないな」という状態から、「業務効率化を達成して、自分たちはお互いの業務を把握できていて、周りからも良いチームだなぁと言われるようになった!」になるまでのお話です。

  • 混沌とした業務を、すっきり整理して生産性UPした話
    • 忙しさの理由は「オバケ」だった
    • 「オバケ退治」で生産性UP!
    • 「我々は良いチームだね」
  • 足元を固めて、成長路線へ!
    • 「言語化」により、チームの共有知を確立
    • 「売上を考えて行動できるチーム」が業績を伸ばす

混沌とした業務を、すっきり整理して生産性UPした話

弊社のコンサルティングでは、本店やモール店への販促と同時に、業務改善やチームマネジメントのお手伝いをしています。今回は、業務コンサルティングの話を中心にします。

忙しさの理由は「オバケ」だった

坂本:業務効率化や状況整理のお手伝いもしましたね。やる前と後では、どう変わりましたか?

植野さん:やる前は、「何で忙しいんだろう?」っていうのが分からないから、「なんかオバケがいるんじゃない?」って思ってました。なんで忙しいかわからないけど、「忙しい」ということだけは感じているし、追い立てられているし。見えない「オバケのせいで」忙しいってことにしてました。

でも、実際業務を洗い出して分析したら、意外と大したことないかもって?いうのが分かった。問題点が明らかになることに加えて、「問題視まではしていないけど、普段から気になっている、喉の奥に刺さっていた小骨のような引っ掛かり」がとれるような感じもありましたね・・だから今は「安心感」がありますね。

坂本:最初、「まず今やっている仕事を全部整理してみよう」と指示された現場メンバーの受け止め方は、どんな感じでしたか?

植野さん:他の業務が忙しい中で、「この状態でやる?」みたいな。笑
「こっちは今、目の前にあるこれが大事なんだ」「これをやらなきゃ評価にもならないし」とか。大事なのはわかるけど・・

坂本:やっぱり、短期的な締め切りとか目標達成に対しての焦りとかが強いと、「一旦、整理してみよう」っていうアプローチは遠回りに感じますよね?

植野さん:そうですね、「何に繋がるのかなあ」「これで売上が上がるかなあ」と。

坂本:今ではどうなっていますか?忙しさの正体が分かった。みんなで「オバケなんていなかったね、こうなってるんだね」って話した。そこで何が起こりましたか?

植野さん:業務の全貌が見えるようになってこれ大事!っていうマインドに変わりましたね。今まで忙しいから、PDCAのPDばっかりやってたけど、Cやらなきゃダメじゃん。CあってのAじゃん、とか。あとは、分解したり人を増やしたりと打ち手を打って業務を減らし、時間を作っていくみたいな所が良かったかな。

坂本:それは全員で?もう「遠回りだ」って誰も言わなかった?

植野さん:はい、そこはなかったですね。

坂本:例の「オバケ」が実は「枯尾花(※)」だとわかると、色々進めやすくなりますね。けど、それまではオバケに取り憑かれているんですよねー。「回り道なんかしてる場合じゃないよ、ケケケ」とか、「長時間働けーーー」って後ろで囁いてるんですよね。

※註:「幽霊の正体見たり枯尾花」わかってみればオバケの正体なんて拍子抜けするほど大したものではない、という意味。

植野さん:「仕事なんか、無限にあるよ~~~」みたいな。でも、きれいに整理したらオバケが消えちゃった!

坂本:いやーよかった!あ、仕事を整理してオバケ退治できるなら、僕らはゴーストバスターズっていうことか。笑

「オバケ退治」で生産性UP!

坂本:これ以降、業務の生産性は上がりましたか?

植野さん:上がりましたね。仕事を整理して空けた時間に、新しい仕事が入ってきてるんで、「忙しさ」自体は変わらないかもしれないけど、「仕事を増やす」ことができているってことは純粋に生産性が上がっていると思います。

坂本:振り返ると、「仕事に余裕があったから、効率化ができた」わけではなく「全然余裕がなかったけど、あえてやった」。急がば回れを実行したんですよね。

植野さん:そうですね。ヤッホーブルーイングは恵まれてるなあって思うのは、みんな「お客さん」を主語にして仕事をしてるんですよね。「お客さんのためにもっといいアウトプットをしたいから業務の整理をしようね。」みたいな。目的が「お客さんのために」なので、メンバーが目線を合わせやすいっていうのはありますね。

坂本:時間は誰でも一緒で限られていて、仕事の熱量がどんなに高くても一日を35時間にはできない。だから、ヤッホーブルーイングの皆さんのように前のめりに仕事をしてる人たち程、これが重要だと思いますね。時間を作ることでより生産的な業務に充てることができるんじゃないかと思います。

「我々は良いチームだね」

坂本:他の部署や社内での評判はいかがですか?

植野さん:「通販(チーム)はアウトプット量多いよね」みたいなことは、結構あちこちで言われてますね。あとは「通販はとにかく動きが速い」っていうのも。情報量も多いし動きも速いと。そういう評価は、やっぱり余計な仕事を落として、集中させていった効果なんじゃないかと思います。

坂本:生産性の高さを他部署からも認められる・感じられるようになった、ということですね。

植野さん:そうですね。それでも、まだ「すごいいろんな事やってて忙しそうだね」っていう風にも思われているようですが、そう言われても、チームの中にいるメンバーは、闇雲に「忙しくしてる」のではなくて、しっかりアウトプット出してるっていう自負はみんなかなりあると思うんですね。

坂本:なるほど。もうオバケの呪いからは完全に開放されてますね!笑
メンバー間の連携や知識の共有みたいことは増えましたか?

植野さん:以前は、「誰が何してるかって分かりにくいね」という問題はあったんですよ。でも、今は割とみんなが何やってるかってちゃんと把握できてて、休みたい人がいれば、ちゃんとみんなでフォローできる状態になっていたりとか。そこは他の部署よりもちゃんとできてるっていうのは、チームで話してました。「みんな何やってるか分かるし、フォローし合えてるし、我々良いチームだね」みたいな。

坂本:これ「リーダーが思っている」でなくて、「みんなでそう思える」っていうのはいいですね。「もともと仲が良いからいいチーム」っていうのではなくて、「チームの業務を全員で共有し、個々に把握してコントロールできているからいいチーム」っていうのが、すごく良いですね。

「コントロールできてなくてオバケに支配されている状態」と比べると、自分でコントロールできていると、自信とか安心とか助け合いとかにも自然と繋がっていきますね。

足元を固めて、成長路線へ

「言語化」により、チームの共有知を確立

植野さん:そうそう。そして出てきた言葉を、きちんと「言語化」して残していくことも、コンサルの中での重要な提案でしたね。御社の中でもノウハウとして、ドキュメンテーションされたコンテンツが色々溜まっているじゃないですか。それはやっぱりいいなと思って。

今までは、もっと属人化を良しとしていたというか。属人的でも問題ないんじゃない位に思ってたんですけど、ただ、メンバー間で担当が変わったり、新人が入ったりという中で、属人的な状態だと、色々な情報が個々に閉じてるので、全部一から考えなきゃいけなかったり、ということも多くて

教える時間があればいいですけど、忙しいとあんまりフォローもできなかったり。季節のイベントの事例だったりとか、打ち手の記録だったりとか。こういうのを「言語化」してドキュメントに残してくこと、私はすごくフィットしてるなあと思っています。

坂本:企画なんかも、「ダメだった企画」があってもそれが共有されてないと、また同じ事やっちゃったりとか。逆もありますよね。新人が「こんないいこと思いつきました!」って意気揚々と報告したら、「それ、もうあるよ」とか。車輪の再発明的な。

植野さん:ありますね。だから、きちんと「言語化」して皆の共有知を上げることで、成長や仕事のスピード感も変わると思うんですよね。

坂本:ひとりでやると大変ですが「誰かの知恵を共有化することをみんなで手伝っていく」みたいことが出来ると、ひとりひとりはそんなに責任やプレッシャーも感じずに済みますね。

見ているとヤッホーブルーイングの働き方的にもこの方法が合ってるんだろうなあって思います。「なんとなく頭の中にあることを話すことで口から出して、壁打ちして明らかにしていく」っていう。一人でずっと煮詰めて考え続けるっていうよりは、軽い粗い状態でアイデアを持ってきて、せーので出して、みんなでパーッと議論しながら、形にしていく方が早いのかなあというのは凄く思います。

「売上を考えて行動できるチーム」が業績を伸ばす

坂本:ECの業績も好調ですね?販促をガンガンご提案するのではなくて、仕事の整理に時間を使ったので、一見遠回りしていますけど。

植野さん:おかげさまで順調です。現状をしっかりと定点観測しながら、PDCAを回せるようになってきています。

坂本:定期宅配サービス「ひらけ!よなよな月の生活」も順調に伸びていますし、「全社の中でのECの立ち位置」としても、今後ますます期待される役割を担っていくでしょうし、これからさらに楽しみですね!

そろそろまとめますが、

  • 仕事が行列作ってるから、とにかくその行列を捌かなきゃいけない・・と思いきや、実はオバケだった!
  • 遠回りしてオバケ退治したら、売上まで伸びた
  • だから、遠回りでも業務の整理は大事!

ということですよね。

植野さん:中長期で考えたら、絶対そうですね。ホントにやってよかったです。

坂本:じゃあ、我々は「業務のオバケ退治屋さん」だということで。

植野さん:ゴーストバスターズ(笑)!

坂本:ゴーストバスターズ頑張ります(笑)!

(対談ここまで)

解説&まとめ

では、最後に、坂本から解説&まとめをします。

皆さんご存知と思いますが、ヤッホーブルーイング社では、ECやwebの施策も色々ものすごい勢いで取り組まれてまして・・ECのチームだけでも、かなり多くの施策がどんどん進んでいます。

そして、この実行力を支えているのが「余力」なんですよね。業務整理により余力が生まれ、余力が実行力と成果を生んでいます。今回は、そんなお話でした。

EC事業者が忙しすぎる問題

私たちはEC事業のコンサルタントで、創業から10年ちょっと経ちます。坂本の楽天時代から、長年販促の手伝いをしているうちに、見えてきたのが「EC事業者は忙しすぎる」問題です。

「売上を伸ばそうにも、そもそも時間がない」「売上が伸びたら忙しくなって、そもそも時間がない」「メンバーが増えたことで混乱してしまって、そもそも時間がない」・・・結局いつも時間がない。

どんな良い施策があっても、それ以前に「そもそも実行する余裕がない」という現実に多く直面してきました。結局、販売よりも「実行」が課題なんですよね。

実行力が欲しい。余力が欲しい。

皆さんはすでに十分働いていて「これ以上労働時間を増やす」力押しアプローチは不可能です。

実行力を高めるには、大きく2つの要素がある。と思います。

(1)メンバーの活躍
(2)業務の整理と効率化

まさに今回の前編と後編です。

メンバーの活躍

社長・店長などマネジメント層が、十二分に働いているなら、リーダー層(中間管理職)が活躍できているか。メンバーが迷いなく業務に邁進しているか、が大切です。

迷うのがムダってことではないんですが、組織や業務が混沌として、ベクトルが分散してロスが生じているケースが多いんですよね。

「うちはまだ人を雇う段階ではない」という方もいらっしゃると思いますが、社員じゃなくて外部のパートナーでもパートさんでも、考え方としては大体同じです。

役割として何を期待しているか、何をどうしてほしいのか、いつまでにやってほしいのか、きちんと言葉にしていくことが必須です。前編に書いたとおりですが、ぜひ注意していただきたいところです。

「言わなくてもわかってくれる」なんて思わないことが大切です。仕事でもプライベートでもこれは同じですよね。

業務効率化(整理)

で、もう1つが、今回案内した、「業務効率化」です。

業務効率化というと、何かすごいツールを導入するとか、最新のマネジメント手法を導入するとか考えてしまいがちですが、実際は「整理整頓」が基本です。

我々EC業界の仕事には、こういう特徴がありますね。

  • 受注処理や出荷や日々のページ更新や商品登録などルーチンが多い
  • 変化が激しすぎて、「突発の仕事」も多い
  • 歴史が浅いから、業務分担や業務方針や手順や判断基準や目的や締め切りが曖昧

忙しくバタバタ故に、体制が未整備ですが、他業種と比べると成長している。だから、体が大きくなっているのに小さい服を着ているような・・。本来のポテンシャルが発揮されず成長が制限されてしまいかねません。

よくある症状は「ベテランの人が自分でやらなくてもいいような作業を無駄に抱えている」「鶴の一声で着手し、やりかけで止まった仕事が多い」。メンバーは「今後の方針がよくわからないから目の前の仕事だけやる」と思っている。

どうすればいいのか。

最新の何かにより「収納用品のすごいやつを導入すると部屋が一気に片付く」なんてことはなくて、「いま部屋の中に何があるかはちゃんと把握して、整理整頓していらないものを捨てて、いるものを正しく並べる」という地道な動作で随分と状況が良くなる気がします。

地道ですが、だからこそ再現性が高い。まずはそこが基本かなと。
未来のために、今日の整理整頓を始めましょう。

おわりに

私が力説するまでもないですが、ヤッホーブルーイング社は、この先、未来に向けて、ますます存在感を増していくはずです。すごいスピードで次々実行をしています。一連の対談で、その実行力を学ばせて頂きました。

我々中小ECも、未来に進むために、「実行力」が必要です。

私、今年の頭に、「2020年の展望」についての記事を書きました。コロナの影響で、今年のEC業界は想定外の展開になりましたが、「我々が考えるべき重要な問題」は以前と同じです。

「これからの世の中で必要とされるお店のイメージ」や「いま有効な施策・打ち手」は色々ありますが、一番大事なのは「それを実行する余力はあるのか?」です。理屈がわかったところで、実行できるのか?

「新しいことをしたいんだけど時間がない」という話をよく聞きます。
その一方で、本店が売れた・伸びた!という、新しい動きも良く聞きます。

世の中の変化は待ったなしで、我々はいろんな新しいことをしていかなければいけません。でも、行動している人・成功している人の「成果」ばかり見ていませんか。

ぜひ、成果の背景にある「実行力」にも目を向けてみて下さい。
2020年、後半戦も頑張りましょう~

PS

こんなお手伝いが必要な方は、気軽にお声がけくださいね。

当社は「なんでもコンサル」で、業務改善だけに留まらず、モール販促でも本店でも卸でも実店舗でも、なんでも対応しています。

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この記事を書いた人

川村 トモエ
コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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