コマースデザインのコンサルティングの特徴「壁打ち」とは?

こんにちは。坂本です。今回は「壁打ちのススメ」です。

弊社のコンサルティングの特徴の1つに、『壁打ち』という習慣があり、大変好評です。
どういうものかというと、壁役の人に「自分の頭の中にあること」を色々としゃべっていきます。壁役は、話を聞いて、質問をしたり整理をしたり、(たまには自分の意見も言いますけど)話の相手役をします。
そうすると、相談者の方の、自分の考え・感情・やりたい方針・「実はこれはやめたいと思っている」といったことが、段々と明らかになっていきます。いわば、自分の考えをまとめるサポートが「壁打ち」です。

コンサルティング会員の皆さんは、弊社のコンサルタントが壁役になり、日頃自然とこういった壁打ちをしています。今度コンサルタントと話す際は、この記事の内容を参考にしながら、改めて自覚的に壁打ちをしてもらうと、より有意義な時間になるかもしれません。

弊社のコンサルティングをご利用になったことのない方は、今後の検討の参考にしていただきたいと思います。
また、この記事を参考に、スタッフの方やご家族などの身の回りの方に「自分の考えを整理する相方」をしてもらうのもいいでしょう。

今回はそのような参考になればと、まず「壁打ちとはどういうものか?」を説明し、「なぜ壁打ちが有意義なのか?」の理論的な背景と、「当社がコンサルティングに壁打ちを導入した理由」についてご紹介します。

壁打ちとはどういうものか?

「壁打ちとはどういうものか?」というと、弊社のコンサルティングの現場では、まずは近況を聞いていくケースが多いですね。「最近どうですか?」という質問から始めます。

それぞれのコンサルタントのスタイルにもよりますが、「前回このような話でしたね」とか「最近どうですか?」という質問をして、前回の続きと近況を話しながら、

  • 「最近、この辺が気になっている」
  • 「こういうことがあったんだよね」
  • 「こんなことがあって、こういう風に困った or こういう風によかった」

という風に、出来事ベースで頭の中に浮かんだことを言っていただきます。

そうすると、壁役の人は、

  • 「それってどういうことですか」
  • 「どう思ったんですか?」
  • 「~さん的には、これはいいことだったんですか?悪いことだったんですか?」
  • 「もしこのままだったらどうなんでしょうね?」

といった質問を投げかけていきます。

このやりとりによって、何を目指しているのか?具体例を元に説明します。

具体例:ダイエットの「壁打ち」

ダイエットを例に、実際の会話例をあげて説明します。

  • Aさん「何か最近体重が増えたんだよね」
  • 坂本 「ご自分ではどう思っているんですか?」
  • Aさん「まあ、ちょっと気にはなるかな」
  • 坂本 「どういう風に気になるんですか?」
  • Aさん「ダイエットを意識しているんだけど、気づいたら太っていて。でも、太る理由は自分では分かっていて、間食は止められないんだよね」
  • 坂本 「なるほど、間食を止められないことを、ご自分ではどういう風に考えているんですか?」
  • Aさん「いやー、止められれば止めたいんだけど、気付くと食べているみたいな感じ」

という風なおしゃべりをしていく中で、相談者の方の考えや思いを確認していきます。

  • 坂本 「自分ではどう思っているんですか?」
  • Aさん「実は止めたいと思いながら食べるから、気分は決してよくないけど、どうしても食べちゃうんだよね。ストレスとかで」
  • 坂本 「なるほど、ストレスがあったんですね。どのようなストレスですか?」

このように、言葉のキャッチボールによって話が段々と具体化されていくわけです。そうすると、

  • 坂本 「食べる以外のストレス解消策って、何かありそうですね」
  • Aさん「そうですね」
  • 坂本 「昔はどういったストレス解消策をしていたんですか?」
  • Aさん「昔は、ストレスを感じた時はジムに行っていたけど、引っ越したから行かなくなったなあ」
  • 坂本 「なるほど。では、今の近所ではないんですか?そういうストレス解消するような運動する施設とか」
  • Aさん「いや、調べていないだけで、調べてみるとあるかも」

みたいな感じですね。
今回はプライベートな雑談の事例ですが、漠然と思っていることを糸口にして、いろいろ掘り下げていくと、「気になっていて、自分としては本当はこうしたい」という意思や真因が段々と明確になっていきます

特徴1:会話をリアルタイムに文字起こしして、見える化

弊社のコンサルティングの現場では、会話の過程で、コンサルタントが画面に会話の内容を書き出していきます。

  • 「つまり、こうで、実は本当はこうしたい」
  • 「では、どうしたのか?」
  • 「以前は、こういう風にしていた」
  • 「ということは、何かいい方法があるかもしれない」

というように話しながら会話の内容を整理していきます。

  • 「自分はどう思っていて、自分はどうしたいのか?」
  • 「じゃあ、具体的にどうやってそれをするのか?」
  • 「その解決策を実行するのか?」

解決策を実行する段階になったら、他店での事例や、そのコンサルタントが知っている話とかの情報提供もしますけど、概ね、7~8割ぐらいは「ご自身の考えで、方向性が見えてくる」のが理想かと思います。

私達はECの専門家ですので、私達がいろいろなお店で見ている情報や経験、手持ちのノウハウをご提供しますけど、「ノウハウありきではない」ということが大事なポイントかと思います。

特徴2:壁打ちは、いわば医者の問診のようなもの

壁打ちは、言ってみれば問診です。

もしも、お医者さんが咳が出ている人を見て、「はい、風邪薬をどうぞ」「咳止めをどうぞ」というように、相手の話を何も聞かず、説明もしないで薬を処方したら、かなりマズイお医者さんですよね。

我々は、こういったヤブ医者にならないために、きちんとヒアリングをしています。
相手が「どう思っているか」を聞き、表面に表れていない所まで踏み込んで、話を伺っていきます。そして、いくつかあり得る優先度を考慮し、「その中でどれが最優先か」を「私達はこう思いますけど、ご自分ではどうですか?」と対話しながら方向性を決めています

コンサルタントは、このような感じでやり取りしています。
以上、簡単に説明しましたが、壁打ちの参考イメージが伝わるといいなあと思います。

特徴3:漠然とした考えや気持ちをぶつけると、効果が出やすい

コンサルティングで壁打ちを受ける際には、「明確な意思を持って臨む」より、「こんなことが気になっているんだよなあ」という、漠然とした気持ちをぶつける感じで使っていただくと、分かりやすい効果が出ると思います。

「検索順位を上げたいです。どうしたらいいですか?」というのは、壁打ちの出番ではないですね。
モールSEOとかGoogleSEOのやり方をお伝えするだけで、あまり話に広がりが出ません。

でも、実はモールSEOとかGoogleSEO以前に、実は検索順位を上げたいのは、「新商品の売上を伸ばしたいから」だったりします。とすると、

  • Bさん 「新商品の売上を伸ばすためには、どうしたらいいんでしょうね?」
  • コンサル「前回の新商品では、どうやったら売上が伸びましたか?」
  • Bさん 「モニターアンケートしたなあ」「そう言えば、モニターアンケートのことを忘れていた」

という風にいろいろ見えてくるわけですよ。
そのような感じで、How Toの施策を教えてもらうのではなく、漠然と「こういう風にやりたいんだよね」「こういうことが気になっているんだよね」という話をすると、壁打ちの中で方向性が見えてくるのではないかと思います。

壁打ちが有効な理由

ここからは、「なぜ、このような壁打ちが有効なのか?」について、理論的な背景を簡単にご紹介します。

壁打ちには、「思考の外在化」の効果がある

壁打ちには、「思考の外在化」の効果があります。

「外在化」とはなにかというと、外に存在する状態にすること。要は、頭の中で考えていることを外に出して、見える形にすることです。

人間の思考というのは、1人で考えている時って案外フワフワしていて、言葉になっていないんですね。
イメージ的な「何となくいい」とか「何となく嫌だ」「何か気になる」とか、「嫌だ」「気になる」までもいっていない「なんとなく」の嫌悪感や、興味がある感じ、「いいなあ」とか。

そういうフワッとしたイメージが頭の中にある状態だと、なかなか考えは進まないんです。
頭の中でグルグル回転するだけで、「ああでもない」「こうでもない」でまったく前進しない。

では、これを先に進めるためにどうしたらいいかと言うと、外在化するといいんです。
どうするかと言うと簡単で、「言葉にする」「言語化する」というだけのこと。

「なんか嫌だなあ」と口にしてみるわけです。あるいは、文字で書いてみる。

「なんか嫌だなあ」と文字で書いてみると、「なぜ?」という言葉が出てきますよね。
なぜかと言うと、「こうだから嫌だなあ」「嫌だなあって言うのは、どういう風に嫌なの?」と聞かれると、

  • 「こういうことがすごく心配で、リスクだと思うから」
  • 「この先このままいくと、こうなってしまうリスクがあるから」

という風に、どんどん具体的な言葉になっていくわけです。頭の中にあるイメージが言葉になっていくんですね。

イメージを外在化すると、芋づる式に言葉がでてくるようになる

言葉にしないと、思考というのはまとまらないので、「言葉にするためにはどうしたらいいか」と言うと、イメージを外在化するわけです。

キッカケだけでも、「なんか嫌だなあ」という思いを、いったん文字にしてみる。口に出してみる。
そして誰かに聞いてもらう。

そうすると、芋づる式にどんどん自分の中から言葉が出てきます
芋掘りの芋を掘っていくと、小さい芋が最初に出てきます。更に掘っていくと、つるに連なった形で、どんどん次々に芋が出てきますよね。あのような形で、

  • 「自分は本当はどう思っていたのか?」
  • 「自分は本当はどうしたいのか?」
  • 「そして、実は自分はやり方を知っていた。あるいは、以前やった成功方法があって、実はそれを忘れていた」

という感じで、どんどん言葉が出てきます。
このように、「自分の頭の中に眠っている思考の芋」を掘り出していく。芋掘りみたいな仕組みで、壁打ちというのは機能しています。

人間は話すことで「自分が何を考えているか」が分かる

人間というのは「社会性動物」と言いまして、猿と同じで、群れの中で生きるように設計されています。
一匹狼という言葉がありますが、「なぜそのような言葉があるか」と言うと、狼も本来は1匹ではないからですね。
狼も群れで生活します。猿も人間も群れで生活をします。

よって、「人間1人で考える」というのは非常に不自然な状況でして、言葉を使って、周りの人としゃべることで自分が何を考えているか分かります

鏡を見ないと、「自分が今どのような顔をしているか」もよく分かりませんよね。
なので、誰かに話を聞いてもらう、鏡になってもらう。壁になってもらうことで、自分の思考が具体化されていき、外在化されることで、「どうしたらいいか」「どうしたいか」「どちらに進めばいいのか」がどんどん自分の中から出てきます。

これが、壁打ちの不思議な効果です。

コンサルティングに「壁打ち」を導入した理由

私たちはコンサル屋なので、壁打ちというカウンセリングで終わらせず、クライアントの相談内容に応じて、具体的な施策を処方する「投薬」ももちろんします。

投薬もカウンセリング(壁打ち)も両方やっているところが、私たちのコンサルティングの特徴かなと思います。

施策を提案しても「本人の納得感」がなければ効果はでない

では、なぜコンサルティング会社なのに壁打ちもやっているのか?

その背景として、我々が「これが最適解だ」「これがいいだろう」というベストな施策を提案しても、ご本人が納得しなければ効果がでないからなんですよね。

逆に、ご本人の話を解釈して「どういうことですか」と問い返すだけで、本人がそこから気づきを得て、実践していくと、うまくいくことが多いです。相談者の中に実はすごい答えが埋まっていますし、外部から安易に解決策を与えることが、必ずしも結果につながるわけではありません

特に日々いろいろなことを試行錯誤しながらやっている方は、この話がよくわかると思います。

一方的に「正解を与えるコンサル」ではなく、共に実現する

コンサルティングを依頼する際、「自分はお手上げして、相手の頭に委ねることになるんじゃないか」と躊躇する人もいるのでないかと思います。当社のコンサルの場合、そのようなことは全くないです。

私たちからは見えないことも多いので、みなさんから見えていること・考えていることを話して頂き、こちらから見えていることや知見をあわせ、「脳みそを合体させてやるのが正解」だと思っています。

だから当社は「顧客の理想を、共に実現する」ことをビジョンとして掲げています。

まず、相手の理想を理解し、共感すること。その理想には、お店や店長さんの価値観や自分らしさが含まれています。
「何に悩んで、何を願っているか」を確認して合意し、共に実現すべく、様々な手段と順序を話し合います。
私たちは、相手の理想を起点にし、「自分たちのよかれ」を押しつけることはしません。

カウンセリングやコーチングだけでは限界がありますし、逆にコンサルティングだけでも限界があります

「正解を与えるコンサル」に対する私の疑問から、このようにコンサルティングの方針を変更しました。
そして、今これが非常にうまくいっています。

まとめ

まとめます。私達のコンサルティングでは、「壁打ち」という習慣を大切にしています。

壁打ちでは、「何となくこうしたいんだよね」「新商品がもうちょっと売れるといいなあ」といったフワッとした願望や危機感、そういったものを口にしていただきます。
それに対して壁役のコンサルタントが、「どうしてですか?」「どう思っているんですか?」「去年はどうでした?」「確かにこの前も、こんなことを言っていましたよね」というように、さまざまな質問を投げかけ、言葉のキャッチボールをしていきます。

このように対話を進めていくと、徐々に頭の中や状況が具体化されていきます
結構な割合で、「本当は自分はどうしたいか」「どうしたらいいか」ということを、みなさん知っているんですよね。ただそれが頭の奥の方に埋もれているだけなんです。

壁打ちをしていく中で、「自分は本当はこうしたいと思っていたんだ」「忘れていたけど、こういう解決策を自分は知っていたな」ということを、いろいろ思い出していきます。
その思い出していただいたことに、我々のノウハウや他店での事例などと絡めて方針に変えていきます。
「こういう風な方針が言えそうですね。どこから行いましょうか?」など、ここからは具体的なコンサルティングが始まり、専門家の知識でいろいろご提案していきます。

壁打ちは、ご自身の頭の中にある記憶やイメージ・感情から方針が生まれるので、非常に納得感があります
納得感があるということは、実行もしやすくなります。

案外「検索順位をあげるには?」「転換率をあげるには?」という具体的な質問をするより、一見遠回りな壁打ちから入った方が、実は的を射た方針が出てくるものです。

壁打ちの経験がない方は、「人に意思決定を委ねる」とか「自分の身の振り方を人に決めてもらう」という不安感が、もしかしたらあるかもしれません。警戒心が強い方には少し難しい方法かもしれませんが、最初は不安でも、やっていくうちに段々慣れていきます。こわがらないで、是非お試し頂ければと思います。

P.S.

変化の激しいこの時代、ひとりで考えるのは煮詰まりやすいので、今回ご紹介した話しながら頭を整理する「壁打ち」は、非常におすすめです。私も、社員や外部顧問の方に、定期的に壁打ちしてもらっているほどです。

弊社のコンサルタントなら、日本全国のEC事業者のみなさんに、ウェブ会議を使って「話しながら考えをまとめる」お手伝いができます。どこに住んでいても壁打ちができます。相談相手が必要な方、確信を持ってEC運営をしていきたい方、こういったサービスに興味のある方は、以下のページをご覧ください。

カテゴリー: 判断力と実行力

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