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2020年、EC業界の展望と「中小事業者は何を考えるべきか」前編

2020年EC社会の展望

あけましておめでとうございます。坂本です。

年のはじめですので、今年の展望について書いてみます。
去年は、EC業界再編の年でしたね。ECの大手プラットフォーマー(=ヤフーや楽天やアマゾン)にまつわる業界ニュースが沢山ありました。

しかも、昔はEC業界メディアを通して動向を知っていたのが、今では大手の新聞とかNHKとかNewspicks等を通して知るようになりました。 これは、ECが名実ともに「一般的に報じるニュース」としての市民権を得たということだと思います。

しかし、大きな話で語られてしまうと、 我々中小事業者が具体的にどうすればいいかがよく分からなくなりますよね。話も大きいし。なので、一連の動きを、我々事業者の観点に引き寄せてまとめてみました

この記事でお話しする順番としては、(1)まず「大手プラットフォームの動向」を解説して、(2)そのあと「今年、我々中小企業が何をすべきか」について書きます。私たちは、どのような時代認識の中で、何を目指すべきか。そして、それを実行するために、どんな力配分をすべきなのか。あと、近々この記事に関連したセミナーをやりますので、後編で案内します。

長い話なので、前・後編の2部構成になりました。今回は、前編として(1)大手プラットフォーマーはどうなるか、を書きます。後編「この事象を受けて、我々中小事業者はどのように考えるべきか・何をすべきか」については、近日中にお届けします。

※1/16追記:後編をリリースしました。前編と併せてぜひご覧ください。
2020年、EC業界の展望と「中小事業者は何を考えるべきか」後編

大手プラットフォーマーはどうなるか

ということで、まず大手の動向、世の中の動向から。

EC業界のニュースを、何か大手のメディアとかを通して知ることが増えましたよね。ただ、ああいうニュースって「話が大きくてよくわからない」「よくわからなくて不安だけが募る」なんてこと、ありませんか。ニュースに疲れていませんか。

ただ、ああいうのは、プラットフォームを運営する「巨人達の戦い」であって、巨人の足元で仕事をしている私たち「普通の人間」・・中小企業の戦いは、また別の所にあるように思います。私たち中小事業者が考えるべきメインテーマは、大手同士の争いとは別の所にあります。 だからあんまり深刻に考えないほうがいい。

とはいえ、 状況を把握しないと判断出来ませんから、まずは「巨人戦争」の戦況を説明します。

EC業界の裏にある「大きな動き」

実は、ECプラットフォーマーの動向を語るためには、EC業界の背景にある「より大きな動き」を理解しないといけません。

背景にあるのは「携帯キャリア」「データ経済圏」

前提の話をします。
現在の EC モールは携帯キャリアが軸になっていますよね(ソフトバンク、au、楽天、ドコモ)。

  • Yahoo!ショッピング・PayPayモールはソフトバンク傘下ですね
  • 楽天はこれから携帯キャリアになろうとしてます
  • auはWowma!というECモールをやってます
  • ドコモは出遅れてるなーと思ったら、、Amazon との提携を発表しました

なぜでしょうか?

ECモール同士の戦いは、実は、「大きな戦争」の一部です。
その戦争とは、「経済圏同士の主導権争い」です。

ということで、EC動向の前提となる「巨人たちの経済圏戦争」について解説します。
坂本の個人的な独断と偏見で書いてますが、だいたい合っているはず。

ドコモ・アマゾン提携の記事はこちら
ここから先の話の前提になるので、今ささっと読んでおいて下さい。短いです。

データ経済圏とは何か

携帯キャリア各社は、携帯電話事業そのものでの成長は見込めなくなってきています。某官房長官から値下げの強い要望を受けてたり、格安スマホも広がってたりで。料金プラン変更のニュースもよく見かけましたよね去年。

一方で、携帯キャリア各社は、目先の事業としては厳しいけど、データ経済圏を構築して「未来っぽい世の中」の基盤となりえる可能性もある

彼らは「既存の顧客データベースを活かした商売」に進出しようとしてます。これを「データ経済圏」と言います。元祖は楽天ですね。楽天経済圏。前述のドコモ・アマゾン提携の解説記事にもある通りです

鉄道会社の話と似ています。昔、鉄道会社は単なる輸送業者でしたが、車社会にシフトする中で「沿線で街や観光地を作る」事業へとシフトしましたよね。西武がスキー場作ったり、東急が街を作ったり。「桃太郎電鉄」的なアレです。彼らは、「手持ちの資産」を活かしつつ「別業態へとシフト」したわけです。鉄道会社は、鉄道から派生した「沿線」を事業化した。携帯キャリアは、携帯電話から派生した「顧客データベース」を事業化しようとしています。

顧客データベースを事業化するとはどういうことか?

人々は、スマホを使って決済(買い物)しますよね、この買い物履歴データを取れます。人々がどこにいるかの位置情報も持っている。ポイントを発行して、それをエサにして顧客を店舗に送客したり、行動結果をまたデータとして蓄積できる、しかもこれから5Gだからデータ益々貯まる、、

データが貯まるといろんなことがわかります。

このようにして溜まった顧客行動データベースは、「何でも分かる」魔法のデータです。たぶん未来の世界では、この「魔法のデータ」がないと仕事が出来なくなる。それはたぶん、水道とか電気みたいなものです。 というわけで、携帯キャリア同士の戦いとは、いわば「世界を支配できる聖杯」だか「金の玉璽」だかを奪い合う、三国志(ドコモを加えると四国志)の戦いなのです。

実際、中国アリババ社は個人の行動や財布の中身を把握して「個人の信用スコア」を算出してます。支払遅延とかすると、スコアが下がります。ちゃんとしている人かどうかが分かるので、与信など色んな用途で活用されています。信用スコアが高い人は融資が通りやすいとか合コンでモテるんだそうです。まあ日本ではプライバシーの問題がありますけども、個人は特定できないように暗号化しつつムニャムニャして企画や分析や販促に活かすみたいな感じかなと。

そういえば去年は某求人会社が、内定辞退予測情報を販売してましたね。あれはNGですが、あんな感じで、データは役に立つし需要があるわけです。

ということで、携帯キャリアは、携帯事業自体は落ち目だけど。未来に広がるチャンスもデカイ。幸い、金ならある!するとどうなるか。金をばらまいて準備をするわけですね。

※こういう未来社会のイメージを明確に持ちたい方は、坂本のざっくり説明よりも「アフターデジタル」という名著がおすすめです。なお、文章は読みやすくわかりやすいのですが、中国が既に未来で、日本とのギャップに気が遠くなったり怖くなったりする方も少なくありません。メンタルとご相談の上でお読みください。すごい本です。

主戦場は「ポイントと決済」

ベルマークや交換できる商品はたかがしれています。が、ECのモールのポイントであれば、出品されている商品を何でも手に入れることができます。1万円分のポイントがあれば1万円分の商品が何でも買える。ということは、つまりECモールのポイントは現金と同じです

現金を印刷することは違法ですが、ECモールのポイントなら自由に扱えます。現金を印刷してばらまいてマーケティングできる!

しかも、そのポイントを手に入れたユーザは、ECモールなど自分の「経済圏」の中でポイントを消費しようとします。だから、「現金を印刷できる」だけでなく、その「現金を使えるのは我が経済圏」だけ!鳥山明先生の作品が読めるのは週刊少年ジャンプだけ!という囲い込み作用が発生。ドラゴンボールを読みたいがために、山下たろーくんも読んでしまうわけです。恐ろしく強力な仕掛けです。

決済の話・・・あちこち情報出てますから、ここでは簡単に。まず、いまや世界はキャッシュレス化している。管理もしやすく、色々いいことづくめ。日本は遅れている、だから政府は進めたい。税金取りやすいし。いまスマホを使った決済サービスは乱立されているけど、いずれは、中国みたいに幾つかに収斂されるはず。だから、ここも戦場です。各社で競い合ってます。

で、ポイントとキャッシュレス決済をくっつけるとこうなります。

  • 毎日のお買い物で〇〇ペイ決済すると、〇〇ポイントが貯まります!
  • 〇〇ポイントが貯まると、〇〇モールで買い物できます!
  • すると、やっぱり〇〇ポイントが貯まります!
  • しかも〇〇ポイントは、毎日のお買い物でも使えます!
  • (その裏で、魔法のデータがどんどん貯まっている)
  • 以下繰り返し

で、この〇〇部分を、楽天系統のブランド名に読み替えたり、ヤフー&ソフトバンク系統や、au系統で読み替えたりすると、全部同じですよね。(ちなみにauのポイントはpontaと統合されました)

※ちなみに私、前職が楽天です。もう時効だろうから書きますが、楽天に入社する前、まだ楽天スーパーポイントが存在しなかった2001年、三木谷さんとの最終面接をしました。私は面接の場で「民間通貨」についてお話をしました。つまりECモールにおけるポイント発行です。なぜそんな話をしたかというと、私が楽天の前に勤めていた会社が日韓合弁のITベンチャー(社長が韓国Naver社=今のLINEの親会社の出身!)で、ネット上にバーチャルマネーを作ろうとしていたのです。この会社は失敗したんですけど、いま地域通貨とかあるし、ネット上でポイント発行できたら面白いと思うんですよねーっていう話をしました。そのころ楽天にはポイントが無かったので、つまり楽天経済圏のアイデアは私の発言が少し影響を・・してるかも・・しれません!

※余談。ちなみに賭博破戒録カイジにおける「ペリカ」も同じ仕組みですが、ペリカの場合は、労働への対価もペリカで支払われますので、更に先を行っているような気がします。デジタル経済圏を持つどこかの会社がランサーズ買収してペリカ=ポイントで支払いはじめたら経済圏が拡張されますね。ペリカ払いならクラウドワークスよりも報酬が多くなったりして。源泉徴収いらないかも?妄想です。わからない人すいません。

EC業界と経済圏戦争

というわけで、経済圏戦争の覇者になると、「日本を支配する聖杯」を手に入れることが出来ます。覇者になるための、大きな条件がECとキャッシュレス決済。というわけです。たぶん。

経済圏戦争とECモールの関係

ところでなぜEC事業が、携帯キャリア・データ経済圏の構築において大きな戦場になっているのでしょうか。それは、「後発でも簡単に楽天みたいなECモールを作れる」ことがわかってしまったからです。

いやいやまさか。でもホントです。

なぜかというと、モールの実態は「店舗の集団」だからです。多少大げさに言うと、店舗にとっては「データをコピペするだけで別のモールに出店することができる」からです。楽天店のデータをヤフー店に持っていけばヤフー店の出来上がり。

いわば、蕎麦の出前をする坂本屋が、出前店舗紹介のプラットフォーム・・出前館とウーバーイーツと両方に店舗登録して、近隣には自分でチラシを撒いておいて、どこから注文が入っても同じように対応すれば、「そば屋の実店舗は1つのままで多店舗展開」して入り口を増やせますよね※。ネットショップも同じです。

在庫も受注処理も問い合わせ対応も出荷も店舗なので、直販と比べて、モール側には負担が少ないです。「ウチにも楽天みたいな店を作ってくださいよ」「サービスしますよ」と声をかければ展開ができます。

で、これを活かしたのがヤフーです。ヤフーショッピング自体は前からあったんですが、楽天を模倣した経済圏構築の動きの中に組み込んで、無料出店だ!EC革命だ!ってやったわけですね。

※ちなみに、実店舗1つのままで、そば屋の出前と「カレー丼専門店」の出前を両方登録すると、実店舗1つのままで更に店舗数が倍増ですw

ソフトバンク得意の「物量作戦」で楽天を猛追

もう時効だろうから書きますが、実は私、Yahooショッピングが無料化されるちょっと前、2013年くらいかな?ヤフーのエラい人から話を聞きたいと言われて会ったことがあります。

楽天に追いつきたいんですよねー、みたいなことを仰ったので、いや簡単ですよ、楽天店舗にヤフーにも「コピペ出店」してもらえれば簡単にお店の数は増やせますよ(=さっきのそば屋の話)、けど楽天からヤフーに切り替えて買い物してもらうことを浸透させるのはかなり大変だから、むしろヤフーならGoogle ショッピングみたいな検索サービスとして「amazonや楽天の横断商品検索を提供する」とかの方が面白いんじゃないでしょうか!なんて言ってました。

そのときは、楽天で買っている人がヤフーショッピングに切り替える理由はないでしょーと思ってました。。当時はそんな感じの解説記事を書きました。2013年の記事です!

ところが!ヤフーは楽天よりもポイントをたくさんめちゃめちゃつけますっていう、太平洋戦争における米軍の物量作戦みたいなシンプルで強力な方法によって、ユーザの乗り換えを進めていきました。そして、楽天が仕組みを整え教育機関を作りコツコツと増やしていった店舗を、「同時並行コピペ出店」という形で簡単に獲得することができるわけですね。なるほど。参りました。

まあ、物量作戦ですから、実際マネできるかどうかでいうと、どこまで金を突っ込めるかが論点です。ヤフーは昔からショッピング事業をやってましたが、全然大したことは無かった。しかし、孫さんやデータ経済圏のビジョンと、ECモール事業が1つの絵に繋がることで、「無料化して店舗獲得してポイントバカ付けしても採算合うんじゃないかな」という話になり、実行したということでしょうね。いまなら後付けで語れますが、2013年当時は分からなかった。。悔しい。。

ちなみに、Yahooというかソフトバンクは、ソフトバンクが携帯電話事業に参入した際も0円というポスターを作って大々的なプロモーションでお客さんを集めてたし、遙か昔、YahooBBによって、日本にブロードバンドを一気に広めた際も、モデムという機械を駅前とかで無料で大量に配布するという方法で派手に進めました。物量作戦はソフトバンクグループのお家芸なんでしょうねー。

各モールは、なぜ日用品ECを重視するのか

ネットショップの人と話していると「楽天がアマゾン化してるけど自分の良さを見失ってるのでは」「こだわり商品を売るモールでいいじゃないの」「アマゾンみたいにするのやめようよ」っていう方がよくいらっしゃいます。

気持ちは分かります。楽天市場といえば中小店舗だ。なんなら楽天はクラウドファンディングの会社を買収して、店舗に参加を促し、小さな事業者から素敵な商品が生まれてくる震源地になるべきだ・・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

が、ここまでのお話をご理解いただければ、その指摘はあたらないということが明白ですよね。「ポイントと決済を中心とする経済圏を作るための重要な部品」としてのECモール、そして出店者・・・だと考えれば、話が変わってきます。発行するポイントや決済が、消費者の日常に馴染むこと。ポイントが通貨になること。そして「聖杯」を手に入れる。そのためには、日用品と利便性こそが本丸です。毎日の買い物で使ってもらうことこそに意味があります。

ちなみに、単純に「ECモール事業」としてだけ考えた場合も、「モールにとって日用品や型番商品は大切」なんです。なぜかというと、接点を維持できるからです。

「日用品をよく買いに行く売り場」で「こだわった商品が置いてある」という状態であれば、後者を買う可能性もある程度高いです。でも「たまにしか行かない」売り場には、どんな商品が置いてあろうと見る機会自体が少ない。むしろ「本来は日用品しか置いてない売り場」だけど、そこにこだわった商品が置いてあったら「ちょうどいいからそこで買おうかな」という状態になるかもしれません。

ややこしいかな。簡単に言うと、ECモールっつうのは「赤字とか利益ゼロの型番商品のセール」を目玉としてお客さんを呼び込んで、その「集まったお客さん」をアピールして、非型番商品のお店からは「広告費を払ってもらう」みたいな商売です。実は、モール側の立場で見た場合、「流通の取れる型番商品の安売り店舗」と「粗利が高くて広告出稿しやすい非型番商品の通販屋さん」は相互補完関係なんですよねー。

※余談。理屈としては上記の通りであるにも関わらず、楽天は、やっぱり中小の、オリジナル性のある事業者を支援するスタンスを、いま現在も続けています。全モールを比較しても、ポイントばらまきではない「地に足着けた支援」といえば、圧倒的に楽天です。3980円送料無料の件で最近あれなところはありますが、長年EC支援業をやってきた身としては、楽天のこのスタンスは評価されるべきだと思います。まあポジショントークですけどね。元楽天ですから私。

経済圏戦争の戦況

はい、経済圏戦争、別名「魔法の聖杯」の獲得レース、ただいまの戦況です。

いまのところ、以下の記事にあるように、「元祖・経済圏」こと楽天が一番強いようですが、これをヤフーが猛追している構図ですね。リンク先の記事をご覧下さい。

戦況としては「合従連衡で包囲網が成立し、楽天帝国がピンチ」。漫画キングダムでいうと31巻くらいの感じ、包囲された街で、若い頃の始皇帝が怯える民衆に相手取って名プレゼンをするシーンですね。あれくらいの包囲網です。分からない人はスイマセン。

追うヤフーについても、これまで苦労してきたんだろうと思います。かつてのドル箱であるポータル事業は、スマホ時代に変わると共にgoogleに食われ、もうポータルという時代でもないですから、時代の変化に追われるようにして爆速での革新を進めてきました。追う側も必死なんだろなと。googleに追われたヤフーが楽天を食っている「玉突き」の構図。

余談ですが、古代ヨーロッパにおける民族大移動と似ている気がします。モンゴルにいた超強い騎馬民族「フン族」がヨーロッパに侵入して、ゲルマン族が住んでいた土地を追われ、仕方なく代わりにローマ帝国に攻め込んで、ローマ困っちゃう的な状態。サイヤ人みたいに超強いフン族=google、追われるゲルマン族=yahoo、慌てるローマ=楽天!

そうそう包囲網といえば、織田信長もキングダムみたいにライバル大名たちに包囲されたことがあって・・(長くなるので自粛)

ローマ帝国も、秦帝国も、信長も、ピンチを切り抜けました。
楽天帝国はどうなりますかねー。。

今後の動向予測

ということで、我々の業界が今年どうなるかについて考えてみます。
「これを受けて、中小事業者がどうすべきか」については、後編でご提案しますね。週明けにお送りします。

「プラットフォーマーによる直販」が増える

もはや皆さん「そりゃそうだろ」としか思わないでしょうが、「大手による直販」がさらに増えるはずです。

まずプラットフォーマーによる直販。店子を差し置いて、テナントが直販して売上を作るという話。アマゾンはよくやってますが(怖い話もよく聞きますね)、楽天やヤフーもこの色を強めるでしょうね、と言う話。

前述の「蕎麦屋のコピペ出店」で説明した通り、ポイント発行や決済との接続やらを考えると、モール型のほうが立ち上げはしやすいです。が、直販と比べてモールは、収益性において劣ります

よって、プラットフォーマーの観点でいうと、立ち上げ時点では無料とかポイントとかクーポンとか「EC革命」とかでお店を集めておいて、立ち上がった後は直営比率を上げていくのが合理的ですね。

楽天で言えば楽天24が代表ですが、ネットベビーやケンコーコムなどを出展者を買収して直販店舗とするという動きがあります。ヤフーはロハコがありますよね。去年ゾゾがグループに入りました。買収の狙いは純粋に流通高の次上げだけでなく物流ノウハウの入手も狙いの一つなのではないかという意見があります。

なので、直販がんばるんだろうなーと。

あと、ヤフーが「ゾゾベースをFBAみたいに運用するから、そこに在庫預ければペイペイモール出店させてあげますよ」って言いそうだなー。妄想ですけど。ペイペイモールについては後述します。

「自前出荷か、物流を委託するか」の判断に迫られる

お客さんにとっては、いろんなものがワンストップで買える方が便利です。
当たり前ですが、昔より今のほうが、更にこの傾向は強まりました。なぜか?

現代のECは、常習的に日用品をスマホで買っているわけです。頻繁にダンボールが届く。

常習的にECを使うお客さんには、「できればあの商品もあの商品もまとめて買いたい」っていう心理が生まれる。

いつも買っているわけですから、こうなるとお客さんの心理としては、「そういえば、ついでに高いワインを買いたいんだった」「ついでにマニアックな文具を買いたいんだった」。日用品を買うついでに、日用品以外の商品もできればまとめて買いたい訳ですよ。

で、大型の直営店とか、アマゾンFBAに在庫預けたみたいに「多品種をまとめて出荷出来る店」は、この需要にフィットします。文具とワインとトイレットペーパーを同梱できますからね。

お客さんはネットショップを行脚したくない。めんどくさいから。いやーだってスマホをタップするだけで、実店舗の行脚するわけじゃないんだから、我慢してネットショップ1店舗1店舗で買ってくださいよ・・と思っちゃいますが、お客さんはワガママな王様なのです。やれやれ。

だから在庫預けちゃって、他店の商品と一緒に出荷してもらうほうが、お客さんは嬉しい。しかも、今後の物流は、スピードの観点から「在庫を全国の各拠点において、そこから短距離で配送していく」という形になっていくことが考えられます。

一方で、特に力のある型番系ネットショップは「自前で物流体制を築き、ここまで磨き込んできた」という強みと自負があります。その自らの強みを放棄して、物流を委託するのか。でもそれは、自店舗をコモディティ化することにならないか。でも、自前の物流はいつまで競争力を保てるのか・・・このジレンマが、一部の店にとって、今年の課題になると思います。

ちなみに、メーカー系ネットショップについては、この「日用品と同梱して出荷できるほうがお客さんが嬉しい」という市場環境が、「大手EC事業者への卸事業」へと展開できる可能性が出てきます。この話は後述します。

一部モールで「中小店舗が掲載されなくなる」

このたび、ヤフーショッピング内に「PayPayモール」が誕生しました。 モール内モールみたいなかんじです。これがやばい。

paypayモール何がヤバイって、普通の店がサーチ結果に「載らない」んです。一定以上のクオリティを保つ大企業・大きめ店舗だけが出店できます。そして、従来のヤフーショッピングから強力に導線を貼って誘導します。

ヤフーショッピングで検索すると「ペイペイモール出店者の絞り込み表示」へ誘導。
ペイペイモールで検索すると、ヤフーショッピング出店者は「載ってない」。

結果どうなったかというと、PayPayモールに出店できた人は順調に売れて、「ヤフーショッピングだけ出店」だと、売上が激落ちくんという人が多数。これからペイペイモールのプロモーションをどんどん出すでしょうから、この動きは強まるでしょう。

なんつうか、この、ペイペイモールの動きは象徴的ですねえ。これまでは「楽天検索でなかなか検索で上位に上がらないなー」などと言えていましたが、ペイペイモールでは「そもそも表示されない」わけです。なにそれこわい。

・お客さんがほしくなる→モールで検索→たまに検索結果に表示される→時々選ばれる
・お客さんがほしくなる→ペイペイモールで検索→(表示されない)→(絶対売れない)

ちなみにペイペイモール出店している人は、○○や○○○のライバル店の商品を○○して○○○すると、上手にライバルの売上を奪うことが・・書くのやめておきます。世知辛いなあ。

かつてヤフーは EC 革命という名前で、楽天と出店者の関係を地主と小作人に例え、「我々が革命を起こします!出店無料!」と言ってモール作ったあとに、貴族限定の囲い込み施策を打ち出すあたりが、何と言うか・・すごいですね。自分の言葉に振り回されない。

※余談:君子豹変す、という言葉があります。経営者としての才能って、もしかしたら「合理的な判断のみで物事を考え、感情とか自己矛盾は一切気にしない」力なのかもしれない、と思います。「よく観察して正しく判断する」だけなら割と誰でもできるけど、自己一貫性とかの感情がブレーキを掛けて、判断を鈍らせる気がします。ここではヤフーを悪者っぽく書いてますが、悲しいけどこれ戦争なのよね、とも思います。

ちなみに、どうやらYahoo 内での一定以上の実績があれば中小店舗でも paypay モールに出店できる可能性があるそうで「ぼくもPayPayモールに出店したいです」「それなら楽天よりヤフーで頑張って売ることだね」という会話がされているか定かではありませんが、この「分割統治」手法は、ヤフーにとって上手に機能しそうな気がします。

公取がブイブイ言わせる

経済圏戦争にはレフリーがいます。そう、公正取引委員会=公取です。今年は、公取がブイブイい言わせそうな気がします!政府も関与を強めてますね。

近年GAFAに対しての国際的な締め付けが強まってるのと同じように、その流れを受けて、国内でもプラットフォーマーに対しての監視が強くなっています。従来とは、解釈や公取の勢いが変わってきているのかなあと思います。

公取だけでなく、政府主導で関係省庁が集まって「デジタル市場競争会議」をやってるんだそうで。以下の記事をご覧ください。聖杯の中身である「個人情報の扱い」についても言及されてますね。

この会議は、たとえば、「ECモールの検索順位を決めるアルゴリズム」が不透明はよくないよね、順位の決定基準を公開してくれよ、という連絡があったようです。ただ、Googleの検索順位決定アルゴリズムは公開されてませんしねえ。

ただ、プラットフォーマー規制やりすぎ、という意見もありますね。以下の記事はわかりやすいです。テレビでおなじみの岸先生。さすが。

何しろ「日本を支配する聖杯」ですから、どの会社が握るかについては、政府とか経産省とか総務省もチェックしてて、コントロールしたいんでしょうね。

で、たぶん各社はこの空気を忖度してて、日本に税金払わなかったアマゾンが最近になって税金収め始めたのはドコモと組んで聖杯レースに参加したからだろうし、ヤフーとLINEの経営統合において「世界に打って出るためです」という主張をしてみせるのも、公取になんか言われる気配がするからだと思います。ヤフーとLINEが組んだら国内向けですよねえ。皆さんしたたかです。

楽天3980円は延期される(気がする)

さて、楽天ですが・・この状況で「3980円送料無料」やるんでしょうか?

楽天といえば携帯電話事業のほうが最近話題ですが、つい最近、こういうニュースが出てました。どっちかというと、楽天市場よりこっちのほうが待ったなしですよね。5Gサービス開始時期は、だいたい各社とも春ごろから開始のようです。

携帯電話事業とタイミングを合わせているのかはわかりませんが、楽天市場では、出店者に向けたカウントダウン的な告知が淡々と進行しています。

・「共通の送料無料ライン」の導入予定日が、2020/3/18(水)に決定
・導入後は、注文金額が3980円を超えた場合、システム上で自動で「送料無料」になる

昔、とある大手弁護士事務所の人から聞いたんですけど、楽天の顧問弁護士はかなり強い弁護士だそうです。規約変更とか値上げとか、色んな修羅場を切り抜けてきていますし、リーガルチェックは細かくされているものだろうとは思います。ただ、前述の通り、公取のスタンスも変わってますからね。

そう考えると、個人的な予想ですけど・・・・商品画像ガイドラインの本適用が割とゆっくりペースだったのと同じように、楽天の携帯電話事業のスタートが遅れているのと同じように、やっぱり楽天の3980円送料無料に関しても、当初発表よりも遅れていくかもしれないなと思ってます。個人的には。楽天側にとっては悩んで悩んで練り上げた計画でしょうけど、状況が変わってますし、計画と心中するのは本末転倒ですから。やり通すよりも、君子豹変で柔軟に手放しつつ次を狙うしたたかさが大事ではないかと思います。。

まあ私はヤフーショッピング動向の予測を外してますからね(自嘲)。話半分で聞いてください。こういうときは、例によって「発表を鵜呑みにせず」「周りを見ながら進める」のが賢いだろうと思います。業界のお友達の間で、色々情報交換をされていくと良いのではないでしょうか。どう転ぶかは分からないので、やる前提で準備はしなければいけないですけどね。

出店者側としては試算やらシミュレーションはしとくのが必須だと思います(というか配送料も上がってるこの市場環境で利益管理やらないのがおかしい)。利益管理の話については後述します。あ、excel出来ない人はヤバいので危機感持ってください(小規模店舗には結構いるんですよ・・)。

上記は弊社で書いた記事です。この記事の中で、具体的に何すべきかのご提案を色々書いてあります。まだの方はご一読ください。

  • 送料を商品価格に転嫁する
  • 送料転嫁で「まとめ買いが損になる」問題への対応
  • 「送料転嫁のリスク」を考慮する
  • 送料対応だけでなく、先々を考えて値上げする
  • 「売上低下によって起こる問題」に備える
  • ちゃんと考えて同梱促進をする

など。

まとめと次回予告

我々中小が、自分達の身の振り方をどうしていくかを考えるには、「今後の世の中がどうなるか」を知る必要があります。

そこで、今回の前編では我々に直接関係のない「巨人たちの争い」についてご説明しました。
後編では、具体的に中小はどうあるべきかご案内します。

前編のまとめ

  • 現在の EC モール各社は携帯キャリアを中心に 競い合っています。
  • この裏にはデータ経済圏の覇権争いがあります。
  • 政府も注目するプラットフォーマー同士の争い「巨人たちの聖杯戦争」ですね。
  • 楽天が作った元祖・経済圏が、ヤフーを中心に猛追されているというのが現状です。
  • そして、ECモールは「覇権争いの中の重要なパーツ」です。
  • この覇権争いにおいて、EC モール各社は「立ち上げ」においては、コピペ出店で出店者を集めます
  • ただ、モールより直販のほうが儲かるので、「ECが立ち上がった後」は直販比率を上げて行くと言う動き方をします(しています)。
  • 今後、ますます大手による直販の比率は上がっていくので、我々は「ポジショニングの見直し」を求められます。

後編の予告

後編では、そういう厳しい現実の中で、我々中小事業者はどうあるべきか、どうしていくか、についてご提案をします。

内容は、こんな感じです。

  • 「聖杯戦争」の時代で、「中小事業者」はどうあるべきか
  • 「中小規模の事業」は生き残れるのか?
  • モール各社とどう付き合っていくべきか?
  • メーカー型店舗の取るべき「意外な」施策
  • 仕入れ型店舗の取るべき施策
  • アマゾン全盛の米国で伸びている「非アマゾンEC」
  • 採用困難な時代での運営体制とは。特に地方!
  • まず、何からやるべきか?

乞うご期待!

PS
厳しい話も多く、読んでいて疲れた方も多いかと思います。ただ、時代が変われば難しくなることがあると同時に、新しく生まれるチャンスもあるはずです。目をつぶって震えていても何にもならないいので、怖くても目を開いて、立ち向かいましょう。

PPS
この件で難しいのは、全員一律に使える「皆さんこれさえやればいいですよ」という回答を出せないということです。メーカー型・仕入れ型の違いもあれば、「競争の激しい商品」や「誰にも知られていない商品」など市場の成熟度によっても違うし、組織でやってる場合と一人や夫婦でやってる場合とで、また変わってきます。

個別のお悩みにについては、弊社コンサルティングの方でご相談を受けられます。気になる方はご連絡ください。相談は無料です。サービス名称は未だ楽天向けとなっていますが、実際は本店や各モール向けの支援もしています。まずはご相談ください。

PPPS
※1/16追記:後編をリリースしました。前編と併せてぜひご覧ください。
2020年、EC業界の展望と「中小事業者は何を考えるべきか」後編


カテゴリー: ECの未来, EC戦略論

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