消費税率の、8%から10%への引き上げまで、残り約1か月!
この増税に伴い、ネットショップでも細かく対応しなければならないことがたくさんあります。
各モールに出店している方は、早い段階から、出店者に向けてアナウンスがあり、ガイドラインが周知されていますので、既に対応を進めていることと思います。
前回(2014年)の増税切り替えを経験した方はよくご存知のことだと思いますが、増税時のネットショップは、いろいろとやらなければならないことが多く、本当に大変です。もし、うっかり先延ばしにしていて、まだ着手してない・・・という方は今すぐ取り掛かりましょう。1か月はあっという間に経ってしまいますから!
今回は、主に楽天市場での対応の流れを題材に、「増税時にネットショップではどんな対応が必要になるのか」「そして今からどんな準備をしていく必要があるのか」を紹介していきます。
準備の対応漏れを防げるように、チェックリストも準備しました。
トラブルなく、スムーズに税率切り替えができるよう、どうぞお役立てください m(__)m
※このブログは主に楽天市場での対応に沿った内容となりますが、基本的な考え方や流れ、注意点などは大きく変わりません。ネットショップ運営者の方はぜひご一読ください。
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- 目次 -
今回の増税「2つのポイント」
周知の事実ですが、まずは今回の増税についておさらいです。ポイントは、大きく2つ。
1.税率変更タイミングは「10/1発送分」から
2.「軽減税率」の適用
それぞれ簡単に説明します。
1.税率変更タイミングは「10/1発送分」から
ネットショップで、消費税10%の新税率が適用されるのは、「10月1日発送分から」です。つまり商品の「発送日基準」となっているため、9月中に受けた注文でも、発送が10月以降なら新税率が適用されるのです。ややこしいですね。予約販売の場合は?入荷が遅れたら?などの疑問も浮かびますね。後で解説します。
2.「軽減税率」の適用
そして、一律で10%に上がるのなら対応もしやすいのですが、「軽減税率」も併せて導入されるというのが今回の増税の厄介なところ。
飲食店では、外食なのか、テイクアウトなのかで税率が変わったり、「おまけつきのお菓子」の、おまけとお菓子の比率によっても、なんんと8%か10%かが変わるという!物議を醸しながらも実施されるんですねー。
基本、「食品」は軽減税率が適用されますが、ネットショップでは、食品ジャンルの店舗は要注意です。商品の中に一部、軽減税率対象外のものが混ざっていませんか?(例:ケーキ屋がロウソクやカードを売っている場合など)
軽減税率対象とそうでない商品、両方を取り扱っていると、対応が複雑になりますので、未チェックの方は早急に確かめておきましょう。
また、食品ジャンルに限ったことではありません。
自店の商品の中に、「食品扱い」のものが混ざっていないでしょうか?(例:エナジードリンクの中でも「医薬品」は10%。「清涼飲料水扱い」は8%。)
こちらについても、詳しくは後述します。
なお、この軽減税率にあたる品目については、政府のサイトで詳しく案内されていますので、該当する場合は必ず正確に把握しておきましょう。
増税対応の「考え方」
今回の本題である「準備」に入る前に、増税対応の「考え方」についてお話しします。
「起こること全体」を洗い出して対応計画を立てる
増税に伴う「金額変更」が、ネットショップ運営上の「どこ」に影響するのかから考えましょう。
ネットショップはWEB上にあるので、もちろんシステムの設定は大前提です。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなどのモールでは作業の差はあれ今回の増税に伴う価格・税率データの何らかの変更作業は、店舗側で行う必要があることになっています。
例えば楽天市場の場合、更新するデータは主に「店舗基本設定」「各商品」「受注情報」の3種類となり、更新必要箇所は最大で「41項目」にも及びます。この更新作業だけでもとても大変ですよね。
これに加えて、増税直前は「駆け込み需要」が予想されますので、受発注業務の対応に追われ、税率切り替え対応の時間が取れないことも容易に想像がつきます。
他にも、お客さんからの問い合わせ対応、自店舗の「仕入れ」など支払い額変更に伴う計算や資金調整まで・・・!
つまり、増税に向けて運営者がやることは山積み。しかも、〆切が決まっていることなので、「間に合いませんでした」では済みません。
全体の流れを洗い出し、対応を検討。TODO化して期日までに完了させるスケジュールを組み、進めるのみです!
楽天出店者がやるべき「増税対応」
それでは、「増税対応」として何をする必要があるのか。楽天市場を例に見ていきましょう。ここでは必要な対応を次の6つの角度から説明していきます。
- 【重要】全スタッフで共有すべきこと
- 「システム設定」に関する対応
- 「サイト変更」に関する対応
- 「受注データ変更」に関する対応
- 「販促」に関する対応
- 「駆け込み需要」に関する対応
それでは、一つ一つ説明していきます。
全スタッフで共有すべきこと
全スタッフが共通認識を持っていないと困るものが多々あります。方針を取り決め、全員に情報を行き渡らせましょう。
取り扱い商品の税率を把握
今回の増税は、軽減税率も併せて導入されます。前回の8%への引き上げ時には、店舗全体で税率を一括変更できましたが、今回は「10%」の商品と「軽減税率が適用して8%」になる商品が混在することもあり、単に「税率を変更すればOK」では終わらないのです。
社内メンバー全員が共通認識を持っておかないと、混乱必至です。
全員がすぐに必要情報がわかるように、一覧表や、対応マニュアルを用意しておきましょう。とはいえ、たいそうなマニュアルを作る必要はありません。要は、間違った対応によるトラブルを防ぐ、都度誰かに確認、という手間やミスを省けるものが共有されていることが重要です。
食品ジャンルの注意点 |
例えば食品を扱っているショップの場合。
食品は軽減税率対象ですから、税率は8%です。では、食品だから対応の必要なしかというと、全くそんな事はありません。
店内で販売している商品に「食品以外のもの」があるのではないでしょうか?
ケーキ屋で「有料ラッピングサービス」や「ロウソク別売り」といった対応をしていた場合、ケーキは8%、ラッピング代・ロウソク代は10%で課税となります。ちなみに、送料に対する課税も10%です。なんてややこしい・・・
その他ジャンルの注意点 |
こちらの人は、その逆です。店内全部が「10%」でない可能性があるので、軽減税率が適用される商品が含まれていないか、ひととおりチェックしておきましょう。特に、「一体資産」にあたる、食玩や、セット商品を扱っている場合は細かい確認が必要でしょう。
全ショップでの注意点 |
「商品品目ごとの税率の把握」だけであればそこまで難しい問題ではありませんが、無形サービスの税率も抑えておきましょう。
例)送料にかかる税率は10%
顧客対応方法の確認
増税に際し、混乱するのは、お客さんも同じ。商品購入時の不明点について、質問が来ることも想定されます。
「クーポンの処理はどうなる?」「10%と8%の両方を買った場合の計算方法は?」「領収書の記載方法は?」なども含めると、把握すべきことが複雑になります。
スムーズな対応ができるように、想定される質問やトラブルへの対応などについては、あらかじめ社内でよく検討しておく必要がありますね。
こちらも全員がすぐに必要情報を参照できるように、簡単なマニュアルを取りまとめておきましょう。
サイトの税率変更タイミングの把握
自店舗の増税切り替えのタイミングについて、社内共有を万全にしておきましょう。
おさらいの部分でも触れたように、新税率が適用されるのは、あくまで「10月1日発送分から」である点に注意が必要です。
例えば9月中に商品を注文し支払いが完了している場合でも、商品の発送が10月にずれ込めば新税率が適用されます。
しかしながら、購入者側の多くはこのような仕組みを知りません。「増税前に注文したのに、何で10%になっているんだ!」といったクレームにならないよう、ネットショップ側でトラブルを未然に防ぐための仕組みを整えていかなければいけませんね。
そのためには、まずは社内、それぞれの担当において「増税切り替えのタイミング」をしっかりと把握しておく必要があります。
【注意】送料などの税率は「10/1受注分」から切り替わる |
また、店舗側で商品税率を変更するタイミングは、多くの店では「9月末」とされるかと思いますが、楽天市場側で一括管理される「送料」や「ラッピング」などに関する税率変更タイミングは「10/1受注分から」です。(9月中に受注された注文では、送料やラッピングに適用される税率は8%で、10月以降は10%になるわけです。)
つまり、商品とサービスの税率変更タイミングが揃わないのです。となると、多かれ少なかれ、受注データの修正は確実に発生することになりそうですね。。
なので、増税切り替えタイミングだけでなく、その前後で実行する対応についても、綿密に社内メンバーで共有しておく必要があります。
システム設定に関する対応
続いて、税率設定に関する準備について見ていきます。
店舗税率や商品税率などの更新作業
増税準備の中でもとくに大変になる、税率や各種金額の更新作業についてです。
こちらは楽天のサービスをどこまで利用しているかによっても変わってきますが、最大で「28項目」のデータを更新する必要があります。(ここに関して、私はてっきり「税率」という1項目だけを変更するのだろうと思っていたのですが、そうではなかったです^^;)
ガイドラインによれば、税率設定の更新期限は「2019年9月末」まで。
それぞれ詳しい設定方法については楽天ガイドラインに載っていますので、詳細はそちらをご確認ください。
なお、RMSのシステム仕様上、税率や商品価格の変更が反映されるまでには最大24時間掛かりますので、この点も注意しておいてくださいね。
導入しているシステムの税率変更
会計システムや受注管理システムなどを導入している場合は、それぞれの税率設定についても修正しなければいけませんね。
対応応報について、ベンダーに確認しておきましょう。
金額修正が必要になるのは楽天内のシステムだけではありませんので、この点もお忘れなく。
サイト変更に関する対応
次に、商品ページなど、サイト変更に関する準備について説明します。
タイミングが決まったら、お客さん向けに告知しましょう。問い合わせも防ぐことに繋がります。
税率表示方法をどうするか決める
税率が変更されれば、当然商品ページ上の価格表示も変更しなければいけません。
ちなみに楽天では、7月16日より、システム側の税表記が「内税」に統一されています。
そのため、商品ページ上の価格表示はこのように変わっているはずです。
- 変更前: 価格 1,000円(税込1,080円)
- 変更後: 価格 1,080円(税込)
なので、商品ページ内で表記する価格もそれと合わせておくと、訪問者も混乱せずに済むかと思います。
商品ページへの注意文言の明記
その商品が「旧税率なのか、新税率なのか」という部分が訪問者に分かりやすいように、案内をサイトに掲載しておきましょう。
既に楽天市場全体での案内は出されていますが、各店舗でも個別の案内を掲載できると親切です。
楽天からも、下記内容をページに掲載するように、推奨されています。
①旧税率で販売している時期 ②10月1日以降の発送の場合、消費税の追加請求を行う可能性があること
①に関しては、実際にサイト表記を変更した後でも、確実に全ページでの対応が完了しているか不安がある場合には、免責として以下のように案内しておくのが現実的でしょうね。
「当店では●月●日に販売価格を新税率に変更しました。 しかし、ページによっては、旧税率での価格表記が残ってしまっている可能性があります。 ご不便をお掛けしますが、正しい金額は、当店からの注文確認メールで最終確認をお願いします。」
商品ページの価格表示の変更
税率が変更されれば、当然、「サイト内に含まれる価格表示全般」も変更しなければなりません。
商品ページに「税込み価格の入った画像」を使用している場合は画像ごと差し替える必要がありますので、作業工数が多いかもしれませんよ。順次進めておきましょう。
受注データ変更に関する対応
税率を変更する必要のある注文データはどれか、前もって社内で定義し、関係するメンバーに周知しておく必要があります。
税率切り替えタイミングをまたぐ注文が入ったら、場合によっては、その受注データを「最大13項目を手動で」修正しなければいけません!
具体的にどういうことか?ケース別で考えて確認しておきましょう。
データ修正の必要がないケース
まずは問題ないケースの事例です。
①商品の税率データを「9月28日」に10%に変更する
②税率変更が完了後、「9月29日」に注文が入る
③「10月1日以降」に発送
この場合は①9月28日に税率を更新し、②9月29日に受注、③10月1日以降に発送しているので、とくにデータを修正するような場面はありませんね。
データの手動修正が必要なケース
さて、こちらが修正が必要になってしまうケースです。
①商品の税率データを「9月28日」に10%に変更する
②税率変更前の「9月27日」に注文が入る
③「10月1日以降」に発送
①商品の税率データ更新作業を9月28日に予定していましたが、②更新前の9月27日に注文が入り、③それを10月1日以降に発送する場合・・・。
この場合は商品データとしては8%の情報を持っていますが、10月1日以降の発送なので、適用税率は10%になります。つまり、その受注データを「8%→10%」に税率を変更しなければならなくなり、「最大13項目を手動で」データ修正する必要があるのです。
この部分を理解した上で、税率データの更新作業をいつ行うのか、また税率データ変更中の受注にはどう対応するのかについても、抜けのないよう社内で話し合っておきましょう。
予約販売など、発送⽇が明確でない商品を取り扱う場合
予約販売など、発送⽇が明確でない商品を取り扱っているケースもありますよね。
この場合の対応策ですが、大切なのは「購入者を混乱させないこと」です。そのため、大まかな発送予定日に基づき、「この商品はどちらの税率が適用されるのか」という点についてハッキリ明示されていると、購入者は安心できます。
ただし、場合よっては「8%で決済した予約商品の発送が10月にずれ込む」というケースもあり得るでしょう。その際は「ネットショップ側で増税分を負担する」というのも一つの対応策です。(※この対応は、税法上大丈夫なはずですが、念の為、税務署や専門窓口へ相談いただくと安心です。)
また、「10月発送予定のものが9月に発送可能となった」という逆のパターンも考えられますよね。この場合は「10月1日まで発送を待つ」という対応策が挙げられます。
もちろん、これらのケースにおいて「2%分の追加請求や返金を行う」といった対応も考えられますが、かかる手間やコストを含めてどの対応が最善なのか、よく話し合っておきましょう。
既に受注している定期購入・頒布会・予約販売の注文
定期購入や頒布会、予約販売などの購入客には、前もってお知らせを入れましょう。また、然るべきタイミングでデータを変更しましょう。
販促に関する対応
販促回りでも気をつけるべきことがあります。
「ポッキリ商品」など、税込商品の値付けを再検討
「消費税・送料込みで1,000円!」といった「ポッキリ商品」の価格設定も再検討しておきましょう。
消費税は商品価格と送料の両方にかかってきます。なので、税率が10%に上がった時に、これまでと同じ価格設定では採算が取れないような商品も出てくるのではないでしょうか?
値付けを見直さないことで、利益がジリジリ削られていくというのは、避けたいところです。
ポッキリ商品以外でも、税込でお得に見えるように値付けを行っていた商品全般で、同じことが言えます。
キャンペーン告知時のNGワードを把握
増税前の販促イベントで、売上を作る計画をしている方も多いのでは?気をつけたいのがNG表現があること。
例)「当店が税金負担!」「消費税還元セール!」などはNG。
詳しくは政府ガイドラインをご確認ください。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/tenka_pamphlet.pdf
「駆け込み需要」に関する対応
忘れてはいけないのが駆け込み需要の対策です。これに関する準備について説明します。
適切な仕入れ計画の設定
増税直前は、様々な商品ジャンルでの駆け込み需要が予想されます。販売機会を逃さないように、駆け込み需要を見据えた「適切な仕入れ計画」を立てていきましょう。
ただし!「買い過ぎ」にも注意です。駆け込み需要の反動で、その後は注文が落ち込むことも十分に考えられるからです。また、一時的な大量仕入れによってキャッシュフローが圧迫される問題もあるので、この点は社内で、十分に検討してくださいね。
運送会社とも密な連携を
「適切な仕入れ計画」と併せて、荷物の配達についても忘れてはいけません。前回2014年の増税時を振り返ると、駆け込み需要が集中したことで配送網がパンクしてしまい、大手の運送会社を使っていても遅延が発生する事態となっています。
その上、今は2014年に比べてネットショップ利用者も増えていますよね・・・。なので、運送会社にはさらに大きな負担がかかることが予想されるでしょう。
「注文が受けられても荷物が送れない!」という悲しいトラブルを避けるためにも、運送会社とは密な連携を取っておくようにしてください。
まとめ
今回は増税に向けて、ネットショップで必要な準備について紹介してきました。実際にこれからどんな準備をしていけばよいのか、全体像はイメージできたでしょうか?
2014年の増税でも、その大変さを身にしみて体験してきた方もいると思います。店舗によっては駆け込み注文が殺到し、増税の切り替え間際は「注文対応に追われて何もできなかった・・・」という⽅もきっと多いはず。
恐らく今回の増税も、切り替えの直前期は注文対応でそれ以外の仕事には手が回らなくなりますよ。今からできる準備については、先手先手で対応しておきましょう!
ここまで増税に向けてやるべき準備について見てきましたが、「念入りに準備をしていても起こり得るトラブル」というのは必ずあります。
いざそのトラブルが起こってしまった時に対処ができるように、相談できる窓口も確認しておくと良いでしょう。
(※文字サイズが小さく読みづらい際は、A3用紙に印刷してください。)
P.S.
増税に伴う「値付けの見直し」、「セット商品の再検討」などについても、常にご相談いただける相談相手としても好評いただいています。興味のある方は、以下のページをご覧ください。
この記事を書いた人
- 有名EC企業にて、店舗の立ち上げから店長まで一連の運営業務を経験し、実績を重ねる。その後、食品メーカーに転職、衰退した人気店の建て直しに尽力。2年間でアクセス数4倍、転換率2倍とし、再成長させる。メーカー型、仕入れ型、大規模、小規模共に経験している守備範囲の広さが強み。ネットショッピングが大好きで、女性ならではの柔らかい物腰の中に、鋭いお客目線が光る。