「なぜ?」をやめたら簡単に原因究明できた話

「なぜ?」をやめたら簡単に原因究明できた話

理由がわからないときに使う言葉で、「なぜ?」「どうして?」というものがあります。ビジネスでもプライベートでも、この言葉で原因を究明し、事にあたられる方も多いかと思います。

しかし、ときどき、「なぜ?」では、うまく原因を引き出せないことがありませんか。

たとえば、「なぜ、締め切りに間に合わなかったの?」と相手に聞いても、「対応する時間がありませんでした」といった”原因っぽい答え”しか出てこない的な。 ゆっくり時間をかけて考えれば、また具体的な原因も出てくるのでしょうが、とはいえ、忙しいとなかなかそうも行かないもの。

そこで、今回は「なぜ?」と全く変わらない手間と時間で、原因を数倍は究明しやすくする(かもしれない)、あるテクニックをご紹介します。

誰でも、いますぐ簡単にできますので、ぜひ試してみてください。

「何があったの?」

結論としては、「なぜ?」の代わりに「何があったの?」を使います。
たったこれだけで、スルッと原因が出てきやすくなります。例を挙げて、説明します。

親と子の場合(実話)

先日、我が家の娘(6歳)が、突然「一人でお留守番は嫌だ!」とスネだしたんですね。で、最初「なんで?」を使って理由を聞いたところ、こうなりました。

  • 私「なんで一人でお留守番が嫌なの?」
  • 娘「わかんない」
  • 私「前は気楽でイイって言ってたじゃん。急になんでさ?」
  • 娘「ヤダからヤなの」(以降、無言)

理由を知りたかったはずが、反対に理由にフタをされてしまったわけです。
そこで、「なんで?」を「何があったの?」に言い換えてみました。

すると娘氏、少し考える素振りを見せて曰く、

  • 「このあいだお店で迷子になって、一人ぼっちになったのが怖かったから…」

と、ポツリ。本質的な理由がスルッとでてきたんです。

「理由を聞く」のは同じなのに、言葉1つでこんなにも反応が変わったんですね。
(※ちなみに娘は、「絶対に戻ってくるから」と約束した上で、短時間の留守番を数度お願いしたら、元通りできるようになりました)

イヤイヤ、子供の話で…って思いますか?

上司と部下の話

では例をもう1つ。社会人の上司と部下の会話です。

  • 上司「お願いしてた件、遅れてるけど、なんで?」
  • 部下「すみません、間に合いませんでした」
  • 上司「なんで遅れてるのかを聞いているんだけど」
  • 部下「すみません、間に合うと思ってました」
  • 上司「いや、だから、それがなんでなのかって…」

こういう会話に心当たりはありませんか。

上司というのは、反射的に「なぜ?」を連呼するようにできていますよね。
しかし、「なぜ?」だけだと上記の例のように、なかなか理由が見えてこず、さらにイライラを募らせてしまうこともあろうかと思います。

そこで、「何があったの?」の出番です。

言い訳混じりの答えも出てはきますが、「なんで?」と聞くよりも、ずっとスムーズに「具体的な経緯」の情報が出てきやすくなります。たとえば「実は先日、緊急のクレームが入って、そちらの対応を優先していました」 みたいな感じです。

この「経緯」こそが、原因究明のヒントになったりします。

「なぜ?」を「何があったの?」にするだけで、原因の究明が捗るようになるイメージは、掴めましたでしょうか。

「なぜ?」と「何があったの?」の違い

では、「なぜ?」と「何があったの?」は、いったい何が違うんでしょう。
図で整理をしてみます。まずは、「なぜ?」の思考プロセスがこちら。

なぜ

「なぜ?」は、直線的な答えになりがち

このように「なぜ?」は、問われた側の”解釈”を頼りに、1対1で、直線的に答えを目指すニュアンスが強いんですよね。だから、スピード感はあっても、得られるものは「原因っぽいもの」だったり「答えらしきもの」だったりで、何の問題解決にもならないケースに陥りやすいんですね。

が、それに対して、「何があったの?」はどうかというと…

なにがあったの

「何があったの?」は、事実の整理が入る

こんな感じで、もう少し事実に近い情報を、一旦整理してから答えを導き出すニュアンスが強いんです。なので、1対1で詰問するような構造にもなりづらく、問われた側も答えやすいですし、得られる回答も事実ベースなのでそれなりに確かなものが出てきやすい、というわけです。

噛み砕いて言い直すと、「何があったの?」と聞けば、「こうでこうで、こういう事がありました。だから、こうだと思います。」と、一旦、経緯や事実を間に挟んで答えを考えるところが、「なぜ?」の場合は、「こうでこうで」の部分がすっ飛ばされ、大事な経緯や事実を抜きに答えを出してしまいがち、という感じです。

「なぜ?」も「何があったの?」も、目的は答えを得ることにありますが、これは大きな違いですよね。

マーケティングでも使える「問いかけ」

この問いかけは、マーケティングの原因分析にも使えます。

売上が下がった時の原因分析の例

たとえばネットショップの売上が下がったとき。

「なぜ売上が下がったのか?」という言葉で考えだすと、つい反射的に、

  • 業界の成長が鈍化したからかなあ
  • 商品が飽きられたかなあ
  • トレンドが終わったからかなあ

といった「それっぽい」答えに逃げてしまいがちです。でも、これでは具体的な対処はできませんよね。そこで「何があったの?」です。先程の質問を「売上が良かった頃と、今との間に、何があったのか?」に改めて、考えてみてください。

どうでしょう、頭の中でこれまでの経緯が整理され、把握しきれてない「事実」や「可能性」が色々と見えてきそうな感じがしませんか。

まず事実や経緯を整理し、原因を究明する

たとえば、当社のクライアントさんでよく見られるのが、「これまでノーマークだったライバル店が急激に力を付けていて、知らぬ間に特定のキーワードの流入を持って行かれていた」というパターンです。当時よりアクセスが落ちてきている等、事実や経緯に目線が向いていれば、すぐにわかる原因のはずなんですが、事実の整理をすっ飛ばしていると、見落としてしまいがちなんですよね。。

このように、仕事の原因分析の場面でも、「なぜ?」で得られた理由で安心せずに、「一体、何があったんだろうか?」と丹念に確認する習慣を持ってみてください。なかなか答えが見えていなかったあの問題の解決策が、意外とすんなり発見できるかもしれません。

おわりに

以上、「なぜ?」を「何があったの?」に言い換えるメリットについてご説明してきました。

こうして考えてみると、「なぜ?どうして?」は、原因の究明というよりも、自分の安心のための言葉にも思えてきますね(言い過ぎでしょうか)。

これを読んだ今日からは、「なぜ?」と言いかけたら、「な」で一旦止めて、「…にがあったの?」と言うようにしてみてはいかがでしょうか。

自分自身にも、問われる相手にも余裕が生まれ、協力体制で問題解決にあたれるようになるはずです。

PS
弊社は中小ネットショップ専門のコンサルティングの会社です。
「仕事現場での原因分析はできそう。でも何を優先したらいいか自信がない」という方は、弊社までご相談ください。幅広くネットショップを見てきた観点から、あなたのお店の優先課題を一緒に考えます。

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