こんにちは、コンサルタントの亀田です。
日頃、仕事をしていてよく使う「責任者」や「担当者」という言葉。しかし、それぞれがどのような責任を持ち、どのような違いがあるのか、意外と整理しないまま使っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は「責任者と担当者の違い」と「責任者に求められる責任」について詳しく整理をしてみました。
リーダーになりたい人はもちろん、リーダーを育成したい経営者や管理職の方々にも参考にしていただけると思います。ぜひ、最後までお読みください。
- 目次 -
「責任」に関するよくある誤解
まずは本題に入る前に、多くの人が考えがちな責任に関する誤解を2つ解いておきましょう。
「責任」は役職や肩書きのことではない
「責任」というと、社長や部長など役職に結びつけて考えがちですよね。しかし、実際には肩書きだけで決まるものではありません。たとえ肩書きがなくても、組織の中核人材として責任を引き受けているのなら、その人は立派な責任者です。
責任は役職に関わらず、仕事の内容や役割に応じて生まれるもの、という点はまず押さえておきましょう。
「責任」は重荷ではない
多くの人が責任を「重荷」のように考えていますが、これも誤解です。実は、責任を持つことで、自分の判断で物事を進められる「自由」や「裁量」を得られることもあるのです。
「責任の大きさと権限の大きさは比例する」という考え方があります。平たく言えば「責任が取れるなら、好きにしていいよ」という意味です。
例えば、ネットショップで仕入れ発注をする場合で考えてみましょう。
まず責任を取る人には、裁量(好きにする権限)があります。そのため、自分で判断して自由に商品や数量を決めることができます。「この商品はもう要らない」と思えば、自分の裁量で発注を止められるわけですね。
他方、責任を取らない人です。
こちらには「好きにする権限」はありませんので、指示されたとおりに発注することしかできません。「この商品はもう要らない」と思っても、提言することはできますが、それを決める権限はないのです。
こうして見ると、責任は重荷どころか自由にする権利のようにも思えてきませんか?責任がない方がむしろ重荷を抱えているがごとく自由を奪われているようです。
加えて、裁量がある(=任されている)という感覚は、自己肯定感や自己効力感にもつながります。自分の意志で、自分の存在意義を実感しながら仕事をしたいのであれば、実は責任を取る方が重荷が外れるものだったりするんです。
担当者と責任者の違いとは
さて、ここから本題です。責任者と担当者の違いをもとに「責任を取ること」について具体的に考えていきましょう。
担当者は「実行」に責任を持つ人
担当者は、自分の業務を実行する責任(実行責任、遂行責任)だけを持つ人です。自分に与えられた職務を全うし、やり切ることに対して責任(裁量)を持っています。
具体的には「これをやってください」「ここを直してください」といったオーダーに対応し、指示者へ納品するのが仕事です。指示にそって実行するのがミッションなので、責任の範囲や権限も極めて小さくなります。例えば「目的を達成するためには、こうした方が良いのでは?」と思っても、指示者の許可なく実行はできません。
こういうと「主体性が足りないのでは?」という意見も聞こえてきそうですが、担当者に主体性を求めるのは会社や組織の文化の話であって、責任の定義としては「指示通りにやりました」も間違った挙動ではありません。(きちんと決まったことをやってくれる人材は組織に必要不可欠です)
繰り返しますが、自分の業務の”実行”に対しての責任だけを持つのが担当者です。
責任者は「結果」と「説明」に責任を持つ人
一方で責任者は「結果」と「説明」に対して責任を持ちます。
まず結果とは「担当している役割で何ができたか、どうなったのか」への責任のことです。例えば「売上前年比120%」のように数値で管理をしたり「有名メーカー◯◯社の仕入れを開始」のような形式になったりすることもあります。ここはおそらく理解がしやすいと思います。
ただ、難しいのが説明に対する責任です。これは「結果を出すために考えを尽くしている事実を相手に伝わるように説明できているか」を指すのですが、ちょっと難しい概念なので、このあと詳しく説明します。
まずは「実行や遂行だけではなく、結果と結果を出すための説明に対して責任を持ち、多くの裁量を多く与えられるのが責任者」と理解しておきましょう。
責任者に欠かせない「説明責任」を理解しよう
さて、ここからは責任者にとって、結果を出すのと同様に欠かせない「説明責任」について説明します。
説明責任の概念がわかっていれば、現リーダーは責任者を選びやすくなりますし、これから責任者になりたい人は、成長のヒントにできると思います。
「説明責任」の意味
説明責任とは、「結果を出すために考えを尽くしている事実を相手に伝わるように説明すること」です。考えを尽くしているのが前提なので思考する責任とも言えますね。
単に思考するだけでは誰にも伝わらないので、考えていることの中身を説明しなければなりません。具体的には以下のようなことを、きちんと説明して理解してもらうことで、責任を果たしていることになります。
- 目標に対して、今の状況はどうか?
- そもそも目的は何なのか?
- なぜその方法を選択したのか?
- 今の状況を踏まえて、結果を出すために、今後どうするのか?
上述のとおり、責任者は「結果」にも責任があります。結果は水物であり、どうにもならないこともありますが、結果や状況をしっかり分析すれば、次の対策を考えることができます。
もう一度言いますが、打ち手を見つけて次の行動に繋げるためにも、責任者はどんな状況であれ、考えを尽くさなければならない。その考えを伝え、結果に繋げるのが「説明責任」です。
「説明責任」で組織の連携は密になる
説明責任を果たすと、例えば、以下のようなコミュニケーションが社内で促されるようになります。
- ちゃんと考えて、順調に進めているなぁ(安心)
- その施策なら、こういうサポートができると思う。相談してね(協力・支援)
- ◯◯部と足並みが揃わないと危険だから話し合いが必要だ(介入)
説明責任で情報がオープンになることで、組織の連携も密になるわけですね。「三人寄れば文殊の知恵」というように、一人で考えるよりもみんなで話し合った方が良いアイデアが生まれやすいものです。
このメリットは、経営者から部署のリーダーへ説明するにしても、部署の責任者から経営者や担当者に対して説明するにしても、はたまた担当者から上司や経営者に対して説明するにしても同様に享受できます。
「部下は言わない」「上司には内緒にする」など、説明責任を放棄してしまうと、良い結果が出しにくくなる恐れがありますので、ぜひ取り入れておきたいところです。
「切腹責任」を反面教師にするとわかりやすい
ちなみに、責任者が最も避けるべきなのが「切腹責任」です。これは失敗の責任を自分ひとりで抱え込み、結果を改善しようとせずに、自分の腹を切って終わりにしようとする態度を指します。(当社の造語です)
- 責任者は私なので、他の方は黙って見ていてください
- 失敗したら辞めます
- 自腹でなんとか賠償します
仕事に限らず、政治ニュースなどでも似たような発言をよく耳にしますが、武士ではないのでこれらには何の意味もありません。それこそ責任放棄と同じです。
「いざとなれば私が腹を切ります」ではなく「どの立場でもきちんと説明責任を果たし、社内で連携して結果を出す」という文化を社内でつくっていけば、必要な時に協力を得られ、相互の連携が良くなっていくのではないでしょうか。
どんな結果でも受け止めて、次の改善策を考え、説明し、行動するのが真の責任者です。自分を傷つけるのではなく、常に考えて説明する。このことを心に留めておきましょう。
「説明責任」の上手な実践方法
ただ、責任者が考えを尽くして説明しているつもりでも、相手にあまり伝わらなければ努力虚しく、なかなか良い効果を実感しにくいかもしれません。
そこで最後に、上手な「説明責任」の果たし方について、具体例とあわせお伝えします。
「説明責任」の基本
「説明責任」のポイントは「状況」「目的」「方法」をきちんと押さえて説明することです。それぞれの意味と説明の仕方を簡単に整理すると以下の通りです。
- 状況
- 現在置かれている状況をしっかり認識する
- 「今の状況は、……と認識しています」
- 目的
- 状況を踏まえた上で、「どうしていきたいのか?」「これからどこに向かっていくのか?」を明らかにする
- 「状況を踏まえて、私たちは……に向かって進みます」
- 方法
- 目的を達成するための具体的な方法を考えて説明します
- 「目的を実現するために、具体的に……という方法で対応します」
長くなってしまうのでこの場では割愛しますが、状況や目的を見誤ったまま方法を考えてもハズしてしまうように、結果はこれら3つの要素が密接に関係しあい、噛み合って生まれるものです。
ですから、責任者は3つの要素にそって「今の状況は…」「どこに向かって進んでいるか」「目的を達成するためにどんな方法を選ぶのか」を全て言葉にして説明するようにしましょう。
「説明責任」を果たしているイメージをつかもう
もう少し具体的にイメージを掴むために、実際の説明の例を挙げてみましょう。
例えば、経営者の場合です。経営方針会議などで、経営者が説明している前提で以下を読んでみてください。
今日の◯◯の社会構造において、我が社は◯◯という独自性を持って事業を継続しています(状況)。我々は、お客様に◯◯の価値を提供し、株主や従業員の皆様に利益を共有したい(目的)。そのために、今期は以下の4つの大方針を立て、これを実行していきます。
経営者には「お客様の期待に応える」「利益を上げる」「株主や従業員に利益を還元する」という多くの使命があり、しかも具体的な見通しまで示さねばなりません。普通に説明すれば話も散らかってしまいそうですよね。しかし「状況」「目的」「方法」で整理をすれば、このようにスッキリとわかりやすく説明責任を果たすことができます。
では、責任を持って仕事をしている営業担当者の場合はどうでしょうか?
「現在、目標◯件に対して◯件の進捗であり、数字が足りない状況です。外部環境として◯◯が逆風になっています(状況)。当社の価値は◯◯なサービスを◯◯に提供することです。このコンセプトから外れないよう、逆風に打ち勝たねばなりません(目的)。そこで差分を埋めるために、商談時に◯◯を提案に含めたいと考えています(方法)」
営業担当者の場合も同じですね。説明責任で大事なのは、「状況」「目的」「方法」です。
「周囲の指摘に答える」のも説明責任のひとつ
なお、説明をするようになると、周りから色々と質問や指摘を受けるようになります。経営者であれば株主から、部署のリーダーならメンバーや別部署から、ときに手厳しい言葉を向けられることもあるでしょう。
しかし、誰に何を言われようと「きちんと考えを尽くしています」と真摯に答えていくのも、説明責任のひとつです。
「何かあれば切腹しますから黙ってみていてください」では、都合が悪くなって記者会見を途中で打ち切るのと同じです。説明責任は考える責任であり、考えている内容を周りにきちんと理解してもらえるように伝えていく責任だということを覚えておきましょう。
なお、「状況」「目的」「方法」は、ツッコミの回答にも使えます。
例えば、売上アップの戦略として海外の仕入れを増やすという説明に対し、上司から「今は円安だから海外仕入れは難しいんじゃないか?」とツッコミが入った場合です。以下のように、スマートに回答ができるはずです。
「これから状況は◯◯になっていくとみています(状況)。◯◯になったときに売上を維持するためには◯◯の在庫が必要です(目的)。多少支出が増えても、今やらないといけないと考えています(方法)」
ぜひ活用してくださいね。
責任ある仕事は、やっぱりおもしろい
今回は、責任者に求められる責任についてお話ししました。
自分の責任で何か結果を出そうとするときは、緊張感やストレスを伴うものです。「担当者として、結果や説明の責任は持たない」のも働き方でしょう。
しかし、相応の責任を持ち、自分の裁量で目標を達成した時の達成感はひとしおです。責任ある仕事は、おもしろいし、やりがいがあると思います。
自分の存在意義や自己効力感を求めるのなら、ぜひこの記事を参考に、切腹責任ではなく、自ら責任を引き受ける行動(結果と説明)を仕事に取り入れてみてください。
「ちゃんと考えて行動し、言葉にしていく」という、責任者としての行動を続けていけば、仕事はだんだんおもしろくなり、自分で動かせる範囲が広がっていくはずです。
P.S
とはいえ、小さなネットショップでたくさんの業務を抱えていると、1人が担う責任の範囲も広がりがちですよね。どうしても状況把握が甘いまま物事を進めてしまったり、自分が対応すべきところの初動が遅れたりしまったりなど、心当たりがあるかもしれません。
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この記事を書いた人
- 大手印刷会社にて人事を経た後、営業として、店頭を中心とした様々な企業の販促支援に従事し、紙から鉄まで多様な企画・制作に携わる。色数や印刷方法など、「成果物の完成度」にズレがちなクライアントの要望をそもそもの目的に合わせ整理し直すなど、「成果とコストの見合った効果的な提案」を得意とする。趣味はサッカー(ポジションはGK)、二児の父。