コマースデザインでは、3ヶ月でEC事業にかかわる全般的なノウハウを学ぶ研修「EC運営ステップアップコース」を開催しています。
本研修で学ぶノウハウは、戦略、販促、分析、組織、効率化、AI活用など幅広いテーマをカバー。実際にご参加いただいた方々からも「独学では10年くらいかかりそうな内容を、たった3ヶ月で学べた」とご好評をいただいております。
昨年は2回開催しましたが、どちらも早々に満員となりました。タイミングによって参加を見送られた方もいらっしゃったのではないでしょうか?
そこで、今後受講をご検討されている方にもご参考にしていただけるよう、受講生のインタビューをお届けします。
今回、インタビューにお答えいただいたのは、第2回(2023年9月〜12月開催)の研修を受講いただいた、千代田繊維工業株式会社 代表の長谷川さんと社員の松本さん。コマースデザインの山本と味藤が、おふたりに研修を申し込んだ理由や、実際に受講してみて感じた手応え、さらに今後の展望まで、詳しくお聞きしました。
- 目次 -
はじめに
播磨の老舗靴下メーカーが立ち上げたブランド「千代治のくつ下」
※出典:千代治のくつ下 公式サイト
山本:まず御社とおふたりのご紹介をお願いします。
長谷川さん:弊社は創業して約75年になる(昭和26年創業)靴下のメーカーで、現在従業員が20人位います。楽天に出店したのは、20年ほど前、自社ブランドを立ち上げたタイミングです。当時、OEM事業が少なくなっていく苦しい状況の中で、私の母親が次の一手として始めたのが、「千代治のくつ下」というブランドです。一時期ブームになった冷えとり靴下など、世の中の流れにも支えられながら、少しずつ成長してきました。そういう意味で母親がブランドを形づくってきたという現状があります。
山本:現在、長谷川さんが代表取締役になられていますが、会社に入られたのはいつ頃ですか?
長谷川さん:6年前に前の会社を辞めて、関西に帰ってきて、この会社に入りました。私は工場の製造から始めたので、当初ECは主に母親が見ていました。
山本:今、長谷川さんは、ECにどのように関わられていますか?
長谷川さん:私はECだけをやっているわけではなく、いろんな仕事を兼務している状況です。ECに関してはメルマガを書いたり、商品の文章や商品名を変えたり、ちょっとしたことの対応はしていますが、メインで携わっているわけではありません。ECの体制としては、私の他に、(店長の)母親、松本がいますが、母親も企画では関わるものの、実務からは現在ほとんど離れている状況です。
山本:松本さんは、ECでは何を担当されているのでしょうか?
松本さん:私は主に受注管理を担当していまして、商品ページ作りに関しては、ほぼ何も担っていない状況です。社長や店長の意見を求められた時に、個人的に自分の意見を伝えることはあります。
味藤:それぞれ明確な役割は決まっていないけれど、メンバーの声を集めながら、企画が進んでいる状況なんですね。
ネットショップで直面している課題
※長谷川さん、松本さん、コマースデザインの山本、研修でファシリテーターを務めたECコンサルタントの味藤が同席しました。
山本:現状の課題は、体制面でしょうか?
長谷川さん:みんな頑張ってはいますが、毎日忙しくて販促をする時間もないし、逆に販促して売れても手が回らないという状況です。忙しいままだと疲弊してしまうので、今少しずつ改善しています。
山本:松本さんが感じていらっしゃる課題は何ですか?
松本:「なんでこれは売れないんだろう?」という隠れた靴下がたくさんあるんですね。「商品ページ作り」についてのセミナーを受けた時に、引き込み動線の話を聞いて、「そういう流れを作れたら…」とは思いつつ、本当に日々の仕事で精一杯というのが現状で、もどかしい感じです。
味藤: ジレンマがありますよね。やりたいことがあるけど、まずその時間をどうやって作っていくんだろう、という状況ですよね。
山本:「まだ魅力を伝えきれていない」という思いもあるのですね。
社長と受注担当者のふたりで研修受講に至った経緯
メルマガ購読、ChatGPTのセミナーを経て、研修参加を決めた
<千代田繊維工業株式会社 代表&4代目の長谷川さん>
山本:そもそもコマースデザインについては、どのように知っていただけたのでしょうか?
長谷川さん:私がECを自分でやってみようと始めた時は、最初は本当にRMSを見るところからだったんですね。それで、いろいろわからないことが出てきた時に検索していたら、御社の記事が引っかかったのだと記憶しています。
山本:検索で見つけていただいたのですね。ありがとうございます。
長谷川さん:「検索伝令くんLight」に登録していたのですが、時々メルマガや記事が送られてきますよね。それを読んでみると、結構自分にも当てはまる事例が多いなという感覚がありました。最初はそんな感じで、その後「ChatGPTのセミナー」にも参加しました。
社長が受注担当者に研修を受けてもらいたいと思った理由
山本:今回の研修を松本さんに受けてもらおうと思われた理由を教えていただけますか?
長谷川さん:本当のところは、最初は私が参加したいなと思ったのですが、ちょうど今、工場の製造の流れを整えたり、海外の展示会にチャレンジしたり、いろんなことに着手している状況で、このタイミングで自分が新しいことを学ぶのは難しいと思いました。自分には無理だなと思ったときに、「松本にやってもらうのはすごくいいんじゃないか」と気づいて、「仮に全部吸収できなかったとしても、何かを掴んでもらうことができれば、価値があるのではないか」と思い、申し込みました。
味藤:松本さんは受注を担当されているとのことですが、どのぐらいの期間、ECに携わってらっしゃるんですか?
松本さん:私は今入社9年目なのですが、最初から受注担当として入りました。
味藤: なるほど。では長谷川さんよりも長く詳しく、お客様のことを知ってらっしゃいますよね。
松本さん:いや、そこはちょっと怪しいのですが。
味藤:でもやっぱり受注担当は1番お客様と接点があるので、「どういうお悩みがあるのかな」とか、「どういう風に商品を探されてるのかな」というところを、松本さんはきっとよく把握されていると思います。長谷川さんは、松本さんが長く受注をやられてたので、学んでいただきたいと思われたのでしょうね。
準備動画を見て「社長にこそ受けてもらいたい内容」だと思った
山本:その後、逆に松本さんから、「社長にこそ、研修を受けてもらいたい」とご提案されたと伺ったのですが、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
松本さん:社長から「研修を受けてほしい」と言われた時に私もびっくりしたんですが、最初に研修開始前の準備動画を見させてもらった時点で、「私が受けるべき内容ではないな」と思いました。ただ、すごく興味深い内容だったので、やめるという選択肢はなかったんです。「絶対社長が受けるべき内容です」と(受講を)交代していただくつもりで伝えたら、まさかの追加申込になりました。
山本:そうだったのですね。長谷川さんは、その時どんなお気持ちで決められたのですか?
長谷川さん:最初は松本に1人でやってほしいと考えていたのですが、確かに私も内容は興味深いと感じていたので。この機会を逃したら、逆にいつ都合を合わせられるのかも分からないし、タイミングも大事だと思いました。自分にちょっと負荷をかけることにはなりますが、やってみようと思いました。
味藤:研修の3ヶ月間は、海外出張も重なっている時期でしたものね。
山本:御社は海外でも事業展開されているのですか?
長谷川さん:今はこれから海外に事業展開しようと動いている段階です。そのタイミングでこの研修も始めたのですが、私はやっぱりマルチタスクはあまり得意ではないんですね。年末はただでさえ忙しい時期なので、最初想像したときは「きついだろうな」と思っていました。
ふたりで受講することで、共通認識を持つことができた
自社の立ち位置を俯瞰してみることができた
山本:直前で長谷川さんも参加されることになりましたが、実際に研修をおふたりで受けてみて、いかがでしたか?
長谷川さん:楽しく知識を身につけられている感覚がありました。大変は大変なのですが、ストレスはなかったです。知りたい情報が詰まっていると思いました。
山本:具体的にどの辺が楽しかったですか?
長谷川さん:やっぱり動画が面白かったですね。坂本さんの説明がわかりやすくて、説明の仕方や指示の出し方も含めて、すごく参考になりました。あと勉強になったのは、「自社の立ち位置というか、構造的なところを俯瞰して見ることができた」ということでしょうか。終始そういうテーマに沿って進めていけたのは、大きかったです。
山本:内容がご興味に沿ったものと感じていただけたのですね。松本さんはいかがですか?
松本さん: そうですね。皆さん、経営者の方とか、がっつり商品ページ作りに携わってる方とか、ほとんどそんな参加者の方々だったので、最初私としては場違い感を感じていました。でも、どんな大きいお店の方でも、型番商品販売も製造業も関係なく、「みんな同じような悩みを抱えているんだな」と思うことはあって、楽しく受講させていただきました。
研修を受けてみて、ふたりが自覚した「問題の根っこ」
味藤:研修の最後に、長谷川さんと面談をさせていただいたんですが、その時に千代田繊維工業さんの今1番の課題は非効率さにあるというお話をお伺いしました。
例えば、商品の呼び名や型番、情報の置き場が定まってないことで、その情報にたどり着くまでにいろんなコミュニケーションロスが生じてる。松本さんも同様の課題を感じられているとお聞きしました。
松本さん: (研修で)チームに分かれて話していた時に、私も意見を言う機会がありました。「商品のカルテ的なものがないから、商品担当者と製造担当者が毎回同じような話をしている」というのをそばで聞いていて、私も「それぞれの担当者の手元に、これまでの履歴があったら、すぐにわかるのに」と意見を出したのですが、最後のまとめで社長も同じことを言っていました。
味藤:確かに複数のメンバーが絡むと、情報が分断されてしまうことがあります。松本さんがおっしゃった「ログ(履歴)を残すこと」はとても大事ですよね。
松本さん:覚えているようで覚えてないこととか、記憶がちょっと曖昧になっていたりすることが多いので、そこをきちんと残せていければいいなという思いで、今社長がそういうシステムを作ろうとしています。
山本:研修を受けていただいて、おふたりがいろいろ考えていく中で、たどり着いた思いが一緒だったということですね。
味藤:いろんな問題がある中で、「1番最初に潰すべき問題の根っこ」は意外なところにある場合もあります。今回御社がたどりついた「情報共有の非効率さ」は、多分最初に潰しこむべきところなのでしょうね。
研修後も活用できるリフレクションシート
山本:研修期間中に、おふたりで講座のテーマについてお話されたりすることはありましたか?別々に進められていたのでしょうか?
松本さん:私は忙しすぎて、後半は課題に取り組めずに終わってしまったので、そのあたりは2人で苦笑いしながらという感じでした。でも最後、終わった瞬間に2人で同じことを言っていたので、顔合わせて笑ってしまいました。
味藤:おふたりで共通認識を持てたのは良かったですよね。これから何か仕事で優先度を決めていく時にも推進力になると思います。
山本:おひとりが勉強した内容を社内に伝えるだけでも、時間捻出が難しかったり、理解する側の負担もありますよね。一緒に研修を受けるというのは、実際どの会社さんもできるわけではないので、貴重な機会だったのではないでしょうか。
味藤:そうですね。今回、お互いの「リフレクションシート」(※研修内容を振り返り、学びを記録するシート)を読む時間はありましたか?
松本さん:私は全くなかったです(笑)。
味藤:リフレクションシートを印刷して見ていただけると良いかなと思います。同じ社内にいても、きっと見え方は結構違いますよね。長谷川さんにとっても、「松本さんにはこの部分がこういう風に映ってるのか」という、違う視点から同じところを見ることができることで、発見もあるでしょうから、ぜひ活用していただきたいです。今回の講座で、それぞれの視点から見える課題を洗い出していただいたと思うので、「これについてどう思う?」と、ひとつずつ話していっていただきたいなと思います。
リフレクションシート |
効率化ツールや業務マニュアル…小さなことから行動を起こせるようになった
山本:研修に出られて何か実際に変えてみたことや、成果を感じられていることはありますか?
長谷川さん:毎週何かしら吸収したことを取り入れていく感覚で過ごしていて、小さなところから取り組んでいます。商品名のワードを入れるとか、今まで大変だなと思ってたことができるようになってきたこともありますし、あとは業務マニュアルを作るようになりました。
味藤:すばらしいですね。
長谷川さん:他には、指示の出し方や復唱など、取り入れやすいところを真似したり、結構いろいろあると思います。
味藤:他のメンバーの方からツールの情報を聞いて、導入してみようと動かれたりもしましたよね。
長谷川さん:はい、EC-UPですね。
味藤:講座の中で「回遊性」というテーマがあったときに、「みんなこれ使っているよ」という話が出ましたね。
長谷川さん:そういう情報も、やっぱり皆さんよくご存知だなと思いました。当然のように話されてる方もいましたが、私たちの間では「なんだろう、それは?」みたいな言葉もありました。
味藤:効率化のやり方は、情報がなければ気付きづらいですよね。周りから情報がもらえる環境もなかなかないと思うので、ぜひ今後も横のつながりは持っていただきたいなと思います。
山本:今まで他のEC事業者さんと積極的に関わられることはありましたか?
長谷川さん:多分、松本は全然ないと思います。
松本さん:そうですね。今回が初めてです。
長谷川さん:私は楽天NATIONSに参加したことがあるのですが、それぐらいです。
山本:楽天NATIONSがリアルで開催していた時ですか?
長谷川さん:いや、オンラインです。
山本:今回の対話会では2週に1回皆さんでオンラインにて集まっていただきましたが、話し辛さはなかったですか?
松本さん:話し辛さは感じませんでした。みなさん携わってる仕事は全然違うと思うのですが、やっぱり考えていることは一緒なのかなと感じられることがあって、良かったです。
ECに限らず、経営や組織運営にも使える技を学べた
山本:先ほど長谷川さんが「業務の指示の出し方も参考になった」とおっしゃってましたけれど、これはECに限らず、経営や組織体制にも関わる部分な気がしますが、いかがでしょうか?
長谷川さん:間違いなくそれはあると思っていて、たとえば製造のところにも結構使える話ですよね。それこそ商品番号の管理の仕方にもつながることだと思いました。実際に坂本さんがしゃべっているときも、本当に伝え方がうまいと感じたので、参考になりました。
味藤:坂本の話し方も、ご参考いただけるところがあったのですね!
山本:今回の講座はECの研修ではありますが、「こんな人が受講してみるといいのでは?」というおすすめがあれば、教えていただけますか。
松本さん:受注管理で商品ページを日々見てる者の立場として、弊社の場合は、新商品ができて商品ページを新しく作っても、そのまま放置してしまうことが多いことに気づきました。ページとページの横のつながりというか、「検索でページに入ってきた人に対して、いかに店の中の他のページに行ってもらえるようなページ作りをするか」という話がすごく参考になったので、ずっとページを作ったままにしているようなお店が受講してみるといいのかなと思います。
味藤: 私もEC店長時代はそうだったので、すごくよくわかります。作るまでが手一杯で、当時は「お客さんがどういう風に買い物するんだろう?」というところまで想像できていなかった。あの時にこういう講座を受けて全体感がつかめていたらよかったな、と思うことがあります。
松本さん:餃子の話(※)はすごいと思いました。言われてみると自分が買い物するときも、そのお店の他の商品も見てみようと思う時と、検索に戻ってしまう時とがあるので、その違いなんだと後になって思いました。
山本: 長谷川さんはどのような方におすすめできる研修だとお考えですか?
長谷川さん:(対象は)結構幅広いと思いますが、やっぱり日々の業務に追われている方におすすめな気がします。
味藤:長谷川さんはかなりご多忙な中、お申込みいただきましたが、超多忙な方にもおすすめはできますか?
長谷川さん:結果が見えるのはこれからだと思うんですが、私にとってはよかったなと思っています。
※餃子の話:講座の中で、餃子を例に「お客さん目線を習得しよう」という話をしました。これは販促の基本スキルですので、気になる方は以下の記事がオススメです。
地域に根差した、息の長いブランドを目指して
ネットショップでも実店舗の接客を活かしたい
<兵庫県加古川市にある実店舗。工場のすぐそばにあり、展示販売&イベントを行っている>
山本:ECを運営していくにあたって、今後の目標をお伺いしたいのですが、例えばもっと売れてもいいなと思っている商品はありますか?
松本さん:まだオンラインショップの方に載せられていない商品もあって、それが個人的に好きな靴下だったりするので、もったいないなと感じています。
山本:どのような商品ですか?
松本さん:メッシュ柄で、まだ名前も付いていなくて、ほったらかしにされている状況なんです。工場の敷地内に店舗があるのですが、そこで販売するときは、お客様に「これもありますよ、どうですか?」とおすすめしたりしています。
山本:店舗は、「千代治のくつ下」の工房にあるのでしょうか?
松本さん:はい、あと神戸三宮にも直営店があるのですが、そのお店と工房には、まだオンラインに載せられていない商品もたくさんあります。お客さんから「こういう靴下を探してる」と言われたときに、「これもありますよ」というお手伝いが、ネットショップでも同じようにできるようなページ作りをしたいなと、いちスタッフとして思っています。
160種以上が全てオリジナル。新しい靴下のアイディアが止まらない
※出典:千代治のくつ下 公式サイト
味藤:「千代治のくつ下」は今160種類ぐらいネットに出てると思うのですが、これは全てオリジナルなんでしょうか?
長谷川さん:はい、そうです。
味藤:すごい数ですよね。「メーカーさんで、こんなにいろんな種類の靴下を作ることができるのか」と拝見していて思いました。
松本さん:日々、店長が出社すると、「靴下が降りてきた!」みたいな感じになって、すぐに新しい商品ができるんですよ(笑)。
味藤:なるほど。どんどん新しいアイディアの靴下が作られているのですね。
山本:アイディアが降りてくる人、作る人、それをどういう風に売っていくかを考える人、売る人。それぞれの役割が大事ですね。
実店舗とネットショップの「商圏の違い」を理解しておくことも大事
山本:実店舗とオンラインとで、売れ筋は違いますか?
長谷川さん:シンプルな柄の靴下はネットでは売りにくいと感じています。例えば「冷えとりソックス」は検索で見つけてもらって買っていただけるけど、リネンのシンプルな無地の靴下は、いろんな会社が作っているので、検索からはなかなか入ってこないんです。当店でのお買い物が2回目、3回目の顧客の方は見つけてくれるのですが…。
味藤:実店舗とネットショップでの売れ方の違いはありますよね。
長谷川さん:はい、違うと思います。そういうのも最近になって、ようやく分かってきた感じがします。
味藤:坂本がよく例に出す「靴屋の話」と同じですよね。実店舗ではアディダスやナイキなど普段履きのスニーカーが売れるけど、ネットは商圏が全国区に広がるので、ニッチなゴム底安全靴が売れるという話。多分それと同じ力学が働いていそうですね。
長谷川さん:そうですね。
山本:実店舗の強みもありますよね。「こういう商品が人気なんだ」とか「こういう商品を探している人がいるんだ」という情報をネットに反映することができると、また違ってくるのかもしれないですね。
味藤:実店舗でお客さんの悩みをリアルに吸い上げられることは、強みですよね。実店舗の販売スタッフさんに「その場合は何を提案してるか?」を聞いてみて、そのままECサイトに反映することもできそうですね。
変化が大きい業界だからこそ、やりがいを感じている
山本:長谷川さんは、会社としてやっていきたいことやEC事業の成長など、今後の展望についてどうお考えですか?
長谷川さん:EC事業を大きくしたいというよりは、会社を安定させたいという気持ちと、あと靴下業界としていろんな課題をクリアしていく必要があると感じています。EC業界も変化が大きいですが、靴下製造業も変化が大きい業界なので、本当に課題は山積みなんです。
山本:「靴下業界は変化が大きい」とは、どのような課題感があるのでしょうか?
長谷川さん:職人さんが高齢化していたり、廃業したりで、原料を生産するところが減っているんですね。値上げだけならまだいいのですが、そもそも国内生産しない糸メーカーも増えています。今後もそういった変化がいろいろとあるのだろうと思っているのですが、でもだからこそ、やりがいがあると感じています。
山本:工房に買いに来られるお客様は、どういった方が多いのですか?
松本さん:地元の方ですとか、通販で買った商品が手元に届いてから、「お店はここにあったんだ!」と来られるお客様もいたりします。「プレゼントでもらった商品が気に入ったから」という方もいらっしゃいます。
山本:工房に靴下屋さんがあるのは珍しいですか?
長谷川さん:この辺りではあまりないですね。
山本:サイトを拝見しましたが、とてもおしゃれですよね。高齢化や原材料のことなど、いろんな課題があるにしても、すごく素敵な工房なので、ブランディングでもっと魅力を伝えられる伸びしろがあるように思いました。
長谷川さん:まさにそういう方向をしっかりやりたいなと思っています。
味藤:お客さんは最初、見た目の印象から「素敵だな」と感じて商品を買うことが多いと思いますが、御社の地域でしかできない編み方とか、職人さんがどういうこだわりや技術をもって作っているのかというストーリーも、後から知るのではないでしょうか。そうしたストーリーを知ってもらうことができると、この産業や職人技術に興味を持っている人にも広がって、長谷川さんが目指されている地域産業の継続性にもつながっていくのではないかと思います。
「理想の状態」から逆算して、今何が必要かを考える
山本:靴下はいただいて絶対に困るものではないですよね。自分ではそこまでいいものは買わなくても、プレゼントで定番の「千代治のくつ下」という形で浸透させていくこともできるのではないかなと思いました。
長谷川さん:おっしゃる通りだなと思いつつ、やっぱり楽天市場などのモールでは、売れるときはすごく売れるし、別のブランドもたくさんあるので、他人を見ていると、どんどん欲が出て、焦ってしまうところもあります。そこをいかに抑えながら、ちゃんとやっていくかというところに難しさも感じています。
味藤:焦ってしまうときこそ、「理想とする目指したい状態」からの逆算を意識されると良いのでしょうね。売れている店の工夫は参考になるので、それをエッセンスとして抽出してマネしてみるのはいいことです。ただ御社の目指したい状態は、事業が長く続いていくことや会社が発展していくことだと伺ったので、「そのためには何が必要か」ですね。
例えば、「千代治のくつ下」というブランドを認知してもらうことかもしれませんし、播磨の地域の編み方をしっかり知ってもらうことかもしれません。「どうしたらその状態にたどり着くか」を逆算していって、いま何が必要だろうと考えていただけると、やるべきことに自信をもてるようになり、焦りを断ち切れるのではと思いますよ。
「立ち寄ってみたい」と思ってもらえる工房に
<兵庫県の高御位山の麓に会社&工房があり、製造から販売まで全て自社で一貫して行っている>
味藤:兵庫に遊びにいった時に「あそこに立ち寄ろう」と思ってもらえるような仕掛けを作るのも面白そうですね。
長谷川さん:はい、それについては、何かしたいなとすごく思っています。
松本さん:会社(工房)のある場所が、車で走っていて見えるところではないんですね。全く知らない人に知ってもらうには、何かアピールしないといけない場所にあるので。
山本: それは逆に、ブランドが浸透していけば、「わざわざそこに行きたい」という強みにもなりそうですよね。
味藤:さっき松本さんが「ネットに出せていないものがある」とおっしゃられていましたけど、もしかしたらそのままでもいいのかもしれないですね。
松本さん:そうなんですよ。「ここに来たらあるよ」みたいな感じにしてもいいかもしれないです。
味藤:そういう仕掛け方もあるので、まずは「理想に向かって何をすればいいのか」を考えていただくのがいいと思います。
山本:そのための時間捻出がまた必要になりますね。
味藤:そうですね。結局そこに行き着きますが、今回の研修でお伝えしたことを、今後もうまくご活用いただければ嬉しいです。
まとめ
「EC運営ステップアップコース」を受講された、千代田繊維工業株式会社 代表の長谷川さんと社員の松本さんにお話を伺いました。
会社として新たな事業展開を模索されている時期と重なり、超多忙な状況下での研修受講。思うように時間が取れない中でも、研修内容をきちんと消化し、小さなことから即座に実践されている姿に感心しました。また、2人で特別な目線合わせをすることなく、研修に参加されていましたが、最終的に全く同じ問題を、最優先課題として捉えていたことも印象的でした。すでに社内システムの見直しや業務マニュアルの作成など、体制改善も着実に進められています。
今回のインタビューでは、研修の成果だけではなく、会社としての今後の展望までお伺いすることができました。播磨の地場産業から生まれた「千代治のくつ下」がこれからどのようなブランドとして成長していくのか、ますます目が離せません。
今後も私たちは、EC事業者のみなさんのご活躍を陰から支えられるよう、EC運営に役立つノウハウや情報を発信していきますので、よろしくお願いします。
P.S.
今回ご紹介したEC運営全般のノウハウを学ぶ研修「EC運営ステップアップコース」は、現在、2024年3月スタートの第3期の参加者を募集中です。毎回すぐに満席となる人気講座で、千代田繊維工業さんのように、経営者と社員の方が同時受講されるケースも増えています。
「研修の詳しい内容を知りたい」「受講しようか悩んでいる」、その他にも気になる点があれば、お気軽にお問い合わせください。先着順となりますので、ご興味がある方は、ぜひお早めにお申込ください。
この記事を書いた人
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コマースデザインは、EC事業のコンサルティング会社として、ECのお役立ちツールやECコンサルティングを提供しています。全サービスの累計支援先企業は23,000社を突破しました。「色々な個性を持ったお店が数多くあり、お客さんに豊かな選択肢があるEC業界」を目指し、中小ネットショップ事業者の皆様の「強み」を引き出す支援を行っています。
詳しくは、コマースデザインについてをご覧ください。
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