脱属人化のコツは「ちょこちょこ切り分けて渡す」—ナンバー2が研修で学んだ、社長の業務集中対策

コマースデザインでは、3ヶ月でEC事業にかかわる全般的なノウハウを学ぶオンライン研修「EC運営ステップアップコース」を開催しています。

今回お話を伺ったのは、コレクショントイ・キャラクター商品を扱う「トイサンタ」の川崎さん(ナンバー2)と黒田さん(社長)。19年にわたり二人三脚で事業を育ててきた二人が直面した”社長への業務集中”という壁を、川崎さんがどう打ち破ったかをお聞きしました。

ナンバー2と社長、19年の歩み

トイサンタ楽天市場店

出典:トイサンタ楽天市場店

2006年、「黒田さんを社長にしよう」という思いから誕生した「トイサンタ」。当初は3人での立ち上げでしたが、やがて川崎さんと黒田さんの2人体制に。コレクショントイ・キャラクター商品を扱うEC事業を、二人三脚で育ててきました。しかし近年は業務効率が悪化。社長の黒田さんに仕事が集中し、ご本人も「業務が滞っている実感」があったそう。

坂本: まずはお店のご紹介をお願いできますか。

川崎: コレクショントイや食玩を中心に、ポケモンとか仮面ライダー、ドラゴンボールなど、キャラクター商品を扱っています。単品だけでなく、シリーズ全品セットなどを作って売ることで、お客さんのニーズに沿った商品として提供しています。

黒田: 私の方は、社長をやってみたいという気持ちで仕事を始めました。でも正直、事業の詳しいことは何も知らなくて、(ナンバー2の)川崎さんにいろいろ支えてもらいながら、19年やって来ました。

坂本: 19年!二人の関係が長年続いてる理由は、何だと思いますか?

川崎: 辛抱強さだと思いますね。僕はおせっかいなんだと思う。心配性だし。

黒田: いろいろ言い合ったりもしますけど、お互い認め合いながらやってきました。会社が子供みたいな感じで、成長していってるので、それを見守るかたちですね。

業務が社長に集中して、代わりがいない

坂本: 今回、研修にご参加いただいた背景について教えてください。

川崎: 業務効率が悪化していまして。実は、会社が成長して、ここ2~3年で、入荷がすごく増えてきたんですね。今までは僕らが残るだけで何とかなってたんですけど、社員も残業が続くようになっちゃった。特に、全ての確認業務が、社長のところに集中してしまって。いろんなものが重なって、優先順位がつけられなくなることも多い状態でした。それが社長本人もしんどいし、代わりがいないというのが一番困っているので。これはなんとかしないといけないと思ったんです。

坂本: なるほど、社長への業務集中。それと属人化ですね。

川崎: はい。僕もずっと属人化が問題だなと思っていて。要するに、社長に業務が集中するので、本当は社長に受けてもらいたかった。でも、年末は忙しい時期だったので、時間が作れないと。だから、「じゃあ僕がまず受けて、どういう内容だったのかを二人で共有しようか」という流れになったんです。

坂本: 最高のナンバー2ですね・・!

“ポーンと渡す”から”ちょこちょこ切り分ける”へ

業務は切り分けて渡せばいい

坂本: 実際に研修を受けてみて、一番印象に残ったことは何ですか。

川崎: 業務移譲の考え方ですね。部下に仕事を渡す際、一個の業務をポーンと渡してしまうのは心配だったんですけど、ちょこちょこ切り分けて、「これはやってね」と渡せばいいんだなと。そういう考え方ができるようになった。そこが本当に良かったです。

坂本: 具体的にはどう実践されていますか。

川崎: AIを使って、業務マニュアルを「五分間研修ノート」みたいな形で作っています。業務を一個ずつ切り分けて、「この場合はこう、この場合はこう」という内容です。それを新しく入ってきたアルバイトさんとかパートさんに渡して。その人たちが仕事を進める際の手順書として使ったり、終わった後に振り返り用として活用してもらったりしています。

坂本: なるほど、段階的に。

川崎: そうです。黒田も、少しずつですが業務を他のスタッフに任せ始めています。研修の同期の皆さんとのつながりも大きくて。他社では外注をいっぱい使ってるんだなとか、単なる情報として持つんじゃなくて、「実際に活用している人」を知ることができたのも良かったですね。

AIがクッションになった

坂本: AI活用は、元々やってらっしゃったんですか。

川崎: 使ってはいたんですけど、正直、「好きに言葉を入れて会話する」感じだったんです。でも、研修で教わった「型」を使って指示を入れることで、すごく性能がアップした感じですね。精度がぐっと上がります。

坂本: メンバーにも使ってもらってるんですよね。

川崎: そうなんです。特に社内コミュニケーションとかコピーライティングとか、いろんなところでAI活用が進んでます。特に僕は、黒田と話すとどんどん話が長くなって喧嘩になるんで(笑)、ちょっとしたことをAIに投げかけるようになりました。AIだと優しく返してくれるので、相談する感じですね。

坂本: つまり、AIが「コミュニケーションのクッション」になってると。

川崎: はい。社長は壁打ち用のツールとしても使っていますね。もう本当にいろんなところで活用できるようになってきた。

二人で向き合う、これからの課題

坂本: ところで、社長が業務を手放しにくい理由って何だと思いますか。

川崎: やっぱり責任感ですね。「決める」ことが社長の仕事だ、と思ってる。値段であったり、発注の量であったり、お客さんへの対応の最終判断とか。そういったことが、なかなか移譲できない。

坂本: 多くの社長が抱える 「ゴールキーパー感覚」ですね。自分の後ろに誰もいないから全部止めに行く。でも、試しに休んでみたら実はボールが来なかった、という話、よくあるんですよ。

黒田: まさに。少しずつできることを増やしていっているのですが、最後の決めるところが、なかなか。。

坂本: その 「責任」というキーワードが大事なんですね。作業としてはできなくないけど、重たいよね、と。

川崎: だから、係数とかルールを使って「自分で決めなくていい状態」にしようって言ってるんですけど、それは気持ち的にダメらしいんですよ(笑)。

坂本: いや、でもね。結構みんな同じなんですよ。理屈の上では、ルール決めたり算出するアルゴリズムを決めたらそれっぽくはなるんだけど、本当にそれでいいかどうか、最後は自分が責任を感じてしまう。そこが難しいですよね。

忙しさは勲章ではなく、分岐点のサイン

川崎: この19年間、リーマンショックもありましたし、震災もありました。でも、ここまで続いてきたというのは、やっぱり一緒にやってきた関係性が大事なんだと思う。

坂本: 今日のお話を聞いて、すごく印象的だったのは、「自分だけじゃないんだ」という安心感ですね。多くのEC事業者が同じような課題を抱えていて。社長が忙しいのは、実は成長の証でもあります。ただ、その後、組織を変えていく選択ができるか、できないか。その分かれ目があるんだと思う。

川崎: そうですね。やっぱり一人で抱え込んでると、視点も狭くなっちゃうし。こういう研修に出て、他の社長さんやメンバーの立場から物事を見ると、「あ、こういう考え方もあるんだ」って気づけることがいっぱいある。

黒田: 自分たちの課題が、特殊なんじゃなくて、みんなが通る道なんだというのが分かるだけで、ちょっと心が軽くなりますね。

“ちょこちょこ切り分ける”が、最初の一歩になる

ナンバー2の立場から、「まず自分が学ぶ」という選択をした川崎さん。社長を支える人の視点で組織課題に向き合うその姿勢は、同じ悩みを抱える多くの方の参考になるはずです。

「ポーンと渡す」のではなく「ちょこちょこ切り分ける」。川崎さんのこの言葉は、業務移譲への不安を持つ多くのナンバー2・マネージャー層に響く言葉ではないでしょうか。業務移譲に不安があるなら、まずはひとつ、小さな仕事を誰かに渡してみてください。

EC事業を営むみなさんが、忙しさに飲み込まれることなく「幸せな商売」を続けられるよう、私たちはこれからもノウハウや情報を発信していきます。川崎さんのような一歩が、あなたの会社でも起きることを願っています。

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