こんにちは。川村です。
今回は、「自社商品(オリジナル商品)メインのネットショップが”仕入れ”を活用したらうまくいった事例」について紹介します。
オリジナル商品を扱っている場合、仕入れメインのお店からは、「独自性があっていいですね」と言われることがありますよね。比較されにくくてうらやましい、と。でも、実際は自社商品といえ、類似製品と比較されるし、競争は避けられないものです。
そんなときに知っておくと良いかもしれないのが「自社商品と仕入れ商品の組み合わせ」という選択肢。
「自社商品メインのお店が、仕入れ商品をラインナップに加えた結果、売上アップに繋がった事例」がいくつもあるんです!
ポイントは、単純な仕入れで品数を増やすのではなく、お店のコンセプトにそって自社商品を引き立てるための仕入れをすること。
具体的にどういうことなのか、考え方からご紹介していきましょう。
- 目次 -
仕入れ商品で独自のコンセプトを引き立てる
独自商品=競争回避ではない
冒頭でもお伝えしたように、ECでは「自社商品は独自性が高く、競争を避けやすい」 というイメージがあるようです。
しかし、現実はそう簡単ではありません。
例えば、以下のような構造的な背景から、「独自商品であっても競争に巻き込まれてしまうケース」がとても多いのです。(あくまで一例です)
- 商品の開発工数が大きいため、商品数をなかなか増やせない
- 商品数が少ないので、本来の想定よりも狭く、客層も狭いのでコンセプトが立たない
- 競合メーカーのEC参入が増え「コンセプトかぶり」が発生
- よく似た独自商品がたくさんあり、結局価格で比べられてしまう
どうですか?これらは中小規模のメーカーさんからご相談を受けていると、とてもよく聞く話です。心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
仕入れ商品も含めてお店の独自性を出す
こうした中、独自商品メインのお店で見られるようになってきたのが、「仕入れ商品も扱う」動きです。
自社商品のみに絞らず、あえて商品ラインナップに仕入れ商品も取り入れていくということです。これはつまり、仕入れ商品の力を借りつつトータルで独自性を作り出し、上述した「コンセプト被り」などの構造的な問題を解消する意図があります。
仕入れで独自性を作れるの?と思われるかもしれませんが、もともとの「独自商品」や「お店の目利き力」と組み合わせれば、十分にお客さんの注目を集められます。
そして、その結果として、もともとの独自商品も含めてお店全体の売上をアップすることも可能になるというわけです。
※ただ、独自商品と仕入れは商流が異なるので「オペレーションの負荷が増える」といった注意点もあります。そこは留意しておきましょう。(記事の後半で触れます)
事例1:ニッチな独自商品を「広げて解釈」し、専門店化
では、実際に、ネットショップでの具体的な事例をいくつか見ていきましょう。
まず一つ目は、少し長い目で見て大きな成功を掴んだゴルフ用品店のケースです。
こちらのお店は「日光で色が変わるゴルフボール」というユニークな独自商品を企画・販売していました。
「ゴルフコンペの参加賞」や「ちょっとしたウケ狙いのプレゼント」として利用されていましたが、需要は限定的。この商品単体では、そこまで大きな伸びには繋がりませんでした。
しかし、あるとき、店長さんは発想を転換します。
「コンペの景品やギフトとして使われることが多いなら『ゴルフコンペ景品・ギフト専門店』という切り口で、関連する商品を充実させたらどうだろう」と考えたのです。
つまり、既存の独自商品を「ゴルフコンペを盛り上げる景品・ギフト」という、より広いコンセプトで捉え直したわけですね。
それからというもの、このお店は目覚ましい進化を遂げていきます。
まず、新コンセプトに合致するあまたのゴルフ景品・ギフト商品を積極的に仕入れてラインナップを拡充します。そして次に、それらの幅広い商品を見てもらえるよう、お店の回遊性を徹底的に改善。
結果として「ゴルフコンペを盛り上げる景品・ギフト」を求めるお客さんに、いろいろな商品を手に取ってもらえるようになりました。そのコンセプトと様相から、さらに自社商品をも増やすことができました。そして、「ゴルフコンペ景品ならこのお店」という総合店・専門店としてのポジションを確立。独自商品を残しつつも、仕入れ商品の比率の方が高くなっていったのです。
今ではゴルフ専門誌などのメディアからの取材依頼が届くほか、ゴルフ用品メーカーから「独自商品として、こんな商品を一緒に開発しませんか?」といった、タイアップや共同開発のオファーも寄せられるほどにまで成長しています。
長期的な取り組みではありましたが、仕入れによって独自商品の可能性を大きく広げた、示唆に富む事例だと思います。
事例2:地元の売れ筋商品をいち早くEC展開
もう一つは、地域に根ざした加工食品を製造・販売している企業の事例です。
ある日、この企業の社長さんは、地元の卸売業者との雑談で、興味深い情報を耳にします。
それは「観光客向けの土産屋や空港の売店などで、地元産のあるニッチな商品が売れはじめている」というものでした。(※都合上、具体的な商品は伏せます)
社長さんが、すぐにそのニッチな商品で検索。すると、なんとECで販売しているライバル店はほとんど見当たりません。
「うちが先に取り組めば大きなチャンスになるかもしれない!」
そう確信すると、迅速にその商品の取り扱い準備を進め、仕入れ販売を開始。
すると、結果は大成功。具体的な数字は言えませんが、かなり売れました。
売上が拡大した要因として、特に大きかったのが、テレビでその商品が取り上げられたことです。メディア露出で検索数が急増した際にもライバルがほとんどいなかったため、お客さんがたくさん押し寄せることになったのです。
加えて「地元の商品」ということでコンセプトにも一貫性があります。この商品が発端となり、もともと扱っていた独自商品にも波及効果をもたらしました。
リアルな市場の小さなトレンドの種を情報収集力と行動力でいち早く掴み取ったことで、独自商品の売上アップや競争回避に繋げた見事な事例ですよね。
- 独自商品をメインとしつつも、商機と見るやすぐに仕入れを決断したフットワークの軽さ
- 「地元の商品」というコンセプトは厳守し、独自商品の販売にも繋げたこと
- 目利き力によって競合に差をつけ、「仕入れ=価格競争」の常識を覆したこと
など、学べる点が多くあると思います。
独自商品と仕入れ商品を扱う際の注意点
ここまで、仕入れ商品をうまく活用して成功した事例を2つご紹介してきました。
「うちもやってみようかな!」と思った方もいるかもしれませんが、ここで一つ注意点をお伝えします。
冒頭でもお伝えしたように、独自商品と商流が異なることによる、運営オペレーションの負荷が発生しやすいということです。
例えば、メニューが醤油味しかない、一杯入魂のラーメン屋さんを想像してみてください。
もちろん仕込みは大変ですが、メニューが一種類に絞られている分、それを作り、それを売ればいいわけですからオペレーションはシンプルですよね。
しかし、そこからラーメン以外のメニューを増やし、例えば家族で立ち寄れるようなカジュアルな中華料理的な感じのコンセプトで…となっていこうとすると、状況が大きく変わります。
ラーメン以外にも、つまみ、中華総菜…さらにはデザートやアルコール、ソフトドリンクなどなどを用意しないといけなくなり、仕入れのためのやりとりも発生することになります。原材料も増えます。
さらには、カウンターでは料理をのせきれないのでテーブルを増やしたほうがいいかも、改装も必要か。そうなれば大事ですよね。利益管理の問題も在庫管理も多くのことが増え、課題になってきます。
料理系のゲームをやったことがあれば、よくわかると思います。レベルが上がると商品や手順が増えて、お客さんを待たせてしまうようになる、あの現象です。ゲームはあくまで現場オペレーションのみですが、ここに仕入れや仕込みなど裏側の業務もあるわけですから、実態はゲームの比ではありません。
つまり、ドリンク一つ仕入れを増やすとしても、商品を増やせば、毛色の違うオペレーションが複数発生して、仕事が多様化して大変になっていく、というわけです。
ECもこれと同じ構造です。
売上だけを追い求めていくと「あれも増やそう」「これもやろう」となりがちですが、それだけではなく副作用もあるという点は、しっかり押さえて判断するようにしてくださいね。
おわりに
今回は、独自商品メインのお店が、あえて「仕入れ商品」をラインナップに加えることで、お店のコンセプトを強化し、結果として売上アップや新たな展開に繋がった事例を紹介しました。
成熟期を迎えたEC市場では、独自商品メインでも競争に巻き込まれるのはもはや珍しいことではありません。
「オリジナルでやってきたけどちょっと厳しいぞ」
そう感じたときは、ぜひ今回紹介した例を参考にしてみてください。
この記事が、次の一手を考えるきっかけになれば幸いです。
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この記事を書いた人

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コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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