「楽天EXPO 2020」まとめました!まさにキングダム状態…強敵達に対峙する楽天の戦略を読み解いてみた

この記事は、公開から1ヶ月以上経過しています。弊社では他にも記事を公開しています。このジャンルの最新記事はこちらのページからご覧ください。

こんにちは、坂本です。毎年恒例、楽天の戦略共有イベント「楽天EXPO」がオンライン開催されたので、要点について解説します。

今年1月と比べて、新しいニュースは特にありませんが、実は、楽天とEC業界にまつわる「大きな流れ」を感じさせる内容でした。「対アマゾンを意識したモール強化(3980送料込など)」と「対ヤフーを意識した経済圏戦争」の2軸で読み解くと、わかりやすくなります。

楽天出店者はもちろん、EC業界の人は要チェックですよー。

はじめに

今年はコロナ禍のため、オンラインで開催。視聴無料&オンライン開催ということもあり、三木谷さんの講演時には、18,000人が参加していたようです。

1月のカンファレンス(※)と比べて、ぱっと見では新しいニュースはありませんが、背後にある「大きな流れ」を念頭に置いて深読みしてみると、以下の2つの動きが同時に起こっている、とわかります。

※2020年1月の「楽天新春カンファレンスの記事」はこちら。

楽天の取り組む「二正面作戦」

  • Amazonへ対抗し、モールの弱点を克服しようとする「ONE○○」施策
  • ヤフー等へ対抗し、楽天モバイル・Edyを強化する「経済圏戦争」

「楽天は二正面作戦で戦ってるんだなあ・・!大変だなー」という印象を持ちました。

「二正面作戦」とは、「同時に2つの大きな戦いを抱えている」状態です。この全体像を理解した上で今回のEXPO発表を読みとくと、流れがよくわかりますよ。

ということで今回は、まず、この「全体感を整理」して、その上で「EXPOの各トピック」を解説していきます。

(1)対Amazonの「EC事業防衛戦」

楽天の戦い、1つめは、EC事業の防衛戦です。

国内ECのトッププレイヤーだった楽天は現在、Amazonなど競合他社にEC事業を削られています。

出店店舗の力を借りる「ECモール型」として楽天市場は成長してきましたが、Amazonなどと比較すると「モール型ゆえの不便さ」がありますよね。そこを競合に突かれているという状況。つまり、モールの弱点を強化して防衛する取り組みをしているわけです。

  • 主敵:Amazon
  • 焦点:「モール型ECの宿命的な使いづらさ」を克服できるかどうか。
  • 作戦:ONEシリーズ(Oneペイメント、Oneタリフ、Oneデリバリー)で使いやすさUP。
    • 例の「3980円送料無料(込)」施策もこの一環。

ちなみに、一番怖いのはAmazonですが、ユニクロやヨドバシなど専門ECも怖いはず。これらの新興勢力に対しては、「ジャンルごとのマーケティング施策」を強化することで対抗していきます(後述)。

過去の参考記事

弊社のブログでは、以前から、楽天EXPOや新春カンファレンスの過去の発表内容を解説してきました。

3980だけでなく、「商品画像の文字入れルール」の件もありましたねー。「楽天が強引に進めるONE施策と、振り回される出店者」という構図で語られがちですが、これらは「Amazonを主敵としたEC事業防衛戦」の話だったわけです。

(2)対ソフトバンクの「経済圏戦争」

楽天の戦い、2つめは、EC事業を含む「経済圏」同士の戦争です。

楽天ビジネスモデルの本丸は、楽天市場と、共通IDや共通ポイントやカードや楽天Edy決済etc.を組み合わせた「楽天経済圏」ですよね。データ経済圏とも呼びます。

ここをまるっと模倣しにきたのがソフトバンク陣営。携帯電話事業を土台とし、そこにYahooショッピング、PayPay、ZOZOなど、資金にものを言わせて経済圏を一気に構築しつつあります。

  • 主敵:ソフトバンク(ヤフー)、au
  • 焦点:第4のキャリア・楽天モバイルが成長し、他の携帯キャリア勢への反転攻勢を取れるかどうか。
  • 施策:楽天モバイルの積極拡大、楽天Edyなど経済圏を構成する各パーツの拡大

過去の参考記事

楽天経済圏について、一瞬おさらい。楽天と言えば市場だと思いがちですが、実際は最も重要なのは、共通IDと楽天スーパーポイントを基盤として、様々な楽天○○事業を組み合わせて運営すること。この「経済圏」が楽天の強み。

これに対して携帯キャリア事業者が経済圏を模倣すべく、それぞれにECモールを作り、店舗の誘致合戦をしています。なぜ携帯キャリア各社がそれを模倣し、ECモールを運営してデータ経済圏を作ろうとしているのか・・等は、以下の記事を参照してください。

この記事で伝えたいこと

このように捉えた上で、EXPOの発表内容を読み解いていくと、楽天が何に取り組んでいるのか、何を守って戦っているか、よく分かると思います。「二正面作戦」における、いわば「東部戦線」と「西部戦線」として、それぞれの戦局が浮かび上がってくるわけです。

1回では書ききれないので、シリーズ記事で解説しますね。

  • この記事では、楽天EXPO発表内容を踏まえ、主に前者(EC事業防衛戦)の話が中心。対Amazonとしての「ONEシリーズのその後」を解説。
  • 次回の記事では、経済圏戦争や「コロナ後のECがどう変わっていくか」など、EC業界の全体像・未来像について紹介します。

余談

軍事的な「二正面作戦」は戦力が分散するのでNGだそうですが、楽天のこの件は相互に関連しています。

  • 対アマゾンの防衛戦として(ONE作戦により)楽天市場を強化すると、Yahooショッピングへの差別化になる
  • 経済圏戦争の施策として、楽天モバイルやEdyなどを展開して経済圏を拡張するのは、経済圏を持っていないアマゾンジャパンへの差別化になる

なので、二正面とはいうものの、これら二つは連動しています。片方の戦局が好転すれば、もう片方へもプラス効果があるという関係性ですね。なんかキングダムみたいだな・・

1:「EC事業防衛戦」の動向

ではここから、EXPOの発表内容を順次解説していきます。

コロナによるECシフトで、流通総額が急増

出店者の皆さんは御存知だと思いますが、コロナの影響で、楽天市場の流通総額(売上)は大変好調です。まあ他のECサイトもそうですけどね。

2020年6月流通が過去最高に。楽天スーパーセールも好調。ギフト商戦の勢いも最近すごいですよね。欠品とか商品足りないとか出荷しすぎて腰が痛いとか。。

弊社はコンサル会社なので、クライアントの皆さんの売上の昨年対比を計算したところ、この半年の平均は昨対172%でした。すごい。フォーマルとかリアルイベント用品とかスポーツとか、ダメージを受けてる会社もちろん多いんですけど。でも7月から全体的に急に売れてきた気がしますね。

参考記事
ウィズコロナ時代への対応(下期に向けて)

楽天としては今後も新型コロナによるECシフトは継続していくだろう、とみているようです。新型コロナで困る店舗へ支援しつつ、関連需要の取り込みを目指すとのこと。

  • 「コロナ需要型」の継続的取りこみ
    • 例:エンターテインメント、在宅勤務用の家具、衛生用品など
  • 店舗への支援
    • コロナ相談窓口を設置し、商品の入荷遅延や在庫不足に関するユーザー対応、楽天への支払い、経営支援制度に関する情報提供など。

流通は好調だけど、Amazonと比べると・・

ただ「楽天と、アマゾンなど他社と比べてどうか」と考えると、アマゾンほどは伸びてないかなー。。

この状況下で一番ECにシフトする必然性が高いのは日用品です。だから、AmazonはECシフトで、これ以上に伸びていることでしょう。楽天は伸びていますが「他社と比較して、十分にお客さんを取り込めているか」と考えると疑問が残ります。ただ日用品に弱いのはモール型であるがゆえの宿命的なもので、なんとかこれを打開したい。

関連記事

ONE施策の続き

ということで、「モールの宿命的な弱点を克服ないし緩和しようとする作戦」が、以前から紹介しているONEシリーズ施策です。

モールの宿命として決済・送料・配送がバラバラなのでこれを統一していくということですね。それぞれワンペイメント(決済統一)、ワンタリフ(送料統一)、ワンデリバリー(配送統一)という名前で発表されました。これらが順次導入されていきます。

今回の楽天EXPOでは、もうONEなんとかという呼び名は使っていなかったですが、過去からの流れのある話なので、この記事ではそのままその呼称を継続します。

ONEペイメント

お客さんの決済を全店共通にする「楽天ペイ」については導入完了済。
この時も相当話題になって、すったもんだありましたが、なんだか遠い昔のようです・・

ONEタリフ

最近までホットだったのがこれですね。

つまり「3980円以上送料無料(込)」を全店舗に導入するのか、どうなのか。楽天ユニオンとか楽天友の会とか「公取と対峙してでも」とか、いろんな話題がありましたよね。

ちなみに、「3980」のこれまでの経緯はこちら。

  • 昨年10月:3980に反対する一部出店者が、任意団体「楽天ユニオン」を結成
  • 1/22:楽天ユニオンが、「3980一律導入は、独占禁止法違反にあたる」として公取に調査請求
  • 7/22:最終的に、公取とケンカせず、全店強制導入は撤回。ただし新規出店者については必須に。
ワンタリフの現状
  • 送料込ライン導入店舗は「約80%」(2020/8/16時点)
  • ユーザの満足度上がっている
  • 楽天としては参加店舗をサポートしていく、支援金も出す(後述)
2020年下期の施策
  • 使いやすさの向上
    • 「あと〇〇円で送料無料」表示を開始
    • 送料込みライン導入店舗ロゴの露出拡大
  • 認知度の向上
    • 楽天市場内:継続的なキャンペーンの実施
    • 楽天市場外:TV,デジタル広告等プロモーション
  • 店舗の拡大サポート:安心サポートプログラム第2弾(2020/10/1~12/31)
    • 申込期間:9/15~10/15
    • 申込条件:5月以降に「共通の送料込みライン」を導入した店舗
    • 支援内容:注文単価3980円(税込)以上の送料無料注文を対象に、メール便は100円/件、宅配便は250円/件
    • ※支援金額上限あり。第1弾(4/1~6/30)と同じ
3980ライン統一は、必須ではなく任意に

今回のエキスポで触れられていなかったですけど、結局、「出店者全店舗に強制導入しない」ということになっています。※新規出店者に関しては必須

  • 「楽天市場」送料無料化強制せず 一律導入見送り、今後も継続(2020/7/22、yahooニュース)
いちECユーザーとしての所感

3980の分かりやすさについては、もはやモールをまたいでGoogleで検索して楽天とアマゾンとヨドバシとか見て見比べて買い物するのが当たり前になっているので、あろうがなかろうが関係ないかな。。ただ、一般のお客さんにとっては良いのかもしれません。効果あるのかないのかなは、ちょっとまだわかんないなあという感じですね。

ONEデリバリー

やっぱり、モールの宿命としての「拠点から一括配送ができない問題」は、こまごました日用品の買い物において不利。ギフトとか産直を買うには楽天すごくいいんですけどねー。

今年冒頭の「経済圏戦争」の解説記事に書いたとおり、「経済圏を前提としたECモール」としては「ギフト・産直に強いモール」じゃ不十分なんです。なので、やっぱり物流が楽天の鬼門というか本丸というか。物流を頑張って追い上げたい。

EXPOで発表された内容としては、楽天の物流・・楽天スーパーロジについて「継続的にやってますよ」「導入増えてますよ!」「安いですよ!」とアピールされた感じです。

楽天スーパーロジスティクス(RSL)の成長
  • 利用店舗数が増えている
    • 2018年8月から約8倍強に。取り扱う物量は約9倍に。
  • 利用店舗の売上成長率が高い
    • 「70%以上の商品」をRSLから出荷する店舗の流通は、前年同期比35.9ポイント
  • いろいろなアピール
    • 物流関連コスト削減、配送に関わる人件費削減になるよ
    • あす楽するよ、丁寧な梱包だよ
    • まとめて配送(予定)
    • などなど

※将来の理想は「複数店舗の一括まとめて配送」ですけどね。Amazonプライムと同じように複数店舗の商品を楽天の拠点からまとめて送ることができれば、Amazonに対しての不利な箇所はすっかりなくなるかなと思いますが・・これまで「競争力の源泉として自社の物流体制を整えてきた店舗」からすると、他のモールや本店の存在もあり(RSL→他モール分の出荷もできるとはいえ)乗り換えするのは悩ましいところです。

物流拠点の更なる拡大

千葉習志野(20206月稼働開始)、神奈川中央林間(2021年上期)を追加

  • 大阪:枚方
  • 兵庫:川西・尼崎
  • 千葉:市川・流山
  • 神奈川:相模原

ジャンル特化型の施策

楽天やアマゾンといった「総合型ECサイト」は、特定の商品・・例えば、アパレルや家電など商品を購入することに「特化したECサイト」に関して比べると、「買い物のスムーズさがが劣る」場合がままありますよね。一般論として。

  • ジャンルごとの利便性アップ
    • そういうわけで、各商品ジャンルごとのカテゴリトップをそれぞれにジャンルの特性に応じて使いやすいようにアップデートしたり、強化していくそうです。
  • ジャンルごとのイベント
    • スーパーセールは全ジャンル共通ですが、それとは別に、ファッションジャンルで、「Fashion The SALE」というイベントが開催されたようです。食品ジャンルの「グルメ甲子園」は前からやってますね。

これはアマゾンなど総合型ECサイトへの対策というよりも、ZOZOTOWNなど専門型ECサイトへの対策だと思います。

ONEシリーズは効果出てるのか?

さて、ONEシリーズ推進の結果はどうでしょうか?成果につながっているのか?

たしかに流通高は絶好調ですが、新型コロナの影響が大きいですからね。

ONEの取り組みが成果出ていますよ!という話題として、「NPSならAmazonに勝ってる」というアピールがあったようです。※NPSとはネットプロモータースコアの略で、10点満点でお客さんの満足度(正確には「紹介したいと思えるかどうか」)を数値化する方法です。

  • 送料込ライン導入→参加店舗80%越え、NPS値も向上
    • ヘビーユーザー:+9.9ポイント
    • ライトユーザー:+6.7ポイント
    • 「送料がわかりやすくなったと思った:50%」

比較対象としてAmazonのNPSを出して(資料には明記されててませんでしたが、どうみてもAmazonのこと)、「Amazonよりも我々はNPSが高い」というアピールをしていましたね。つまりお客さんの満足度において、楽天はアマゾンよりも上である。との主張です。

サクサクとした利便性においてはアマゾンの方が全然強いわけですが、サービスの勢いや魅力を測るものさしは色々ありますからね。NPSを使うのは、やや苦しくはありますが、正しいなと思いました。

余談:アマゾンレビュー問題

実際、Amazonのレビュー汚染は本当にヤバイ。件数もヤバいし内容もヤバい。。

以下は脱線です。
ちょっと前に話題になった「中国から謎の種が届く件」って知ってますか?

あの「謎の種」のカラクリについて、実は「ワルい事業者がAmazonなどのレビューを操作するために、日本に謎のタネを送ってる」んじゃないかっていう推測記事がありまして。推測ですけど、これは確かに、、そうかも。。面白い記事なので、興味がある方はぜひどうぞ。

そんな感じで、Amazonは「楽天と比べると」早いしサクサク買いやすいですが、レビュー汚染はそのままですし、他にも色んなECサイトがありますしね。ECにおいては、Amazonは絶対王者ではなくなっていく予感がしてます。いま面白いことが起こってるんです。これは次回の記事で。

コロナで、リアルの大手事業者のEC強化も伸びていきますし・・米国ウォルマートのECが伸びている、という事実は、「リアル大手が今後強力な競合になる」という示唆をしています。

2:「経済圏戦争」の動向

ここでは、「楽天EXPOで紹介された楽天の経済圏戦争にまつわる話」をしていきます。「共通IDとポイント」を中核に置いて、その周りにECや決済やモバイルを拡充していくという動きですね。

この「経済圏の構築合戦」については、楽天よりソフトバンク陣営の動きが激しいので、そっちは次回記事で案内します。

楽天モバイルの件

EXPOを視聴した店舗さんいわく、三木谷さんの「皆さん楽天モバイル買ってください」というアピールが強かったとのことでしたw

ただまあ、楽天モバイルに力を入れるのは重要なことです。「データ経済圏戦争」の関係上、楽天と戦っているソフトバンク連合などに対抗するために、やっぱり楽天モバイルは絶対伸ばしたいんだろうなー・・と感じました。

  • サービス開始から3か月で、契約申込数「100万回線」を突破
  • 通信基地局の整備は、前倒しで進行中。2021年3月までに「人口カバー率70%」を達成予定
  • 5G商用サービスは、9月末までに開始予定
  • 今後、楽天モバイルダイヤルアプリ「Rakuten Link」を軸にしていく
関連記事

ポイント、決済、共通ID

次回の記事で改めて解説しますけど、楽天はやっぱり共通IDとポイント、そして「ブランドの統一イメージ」は圧倒的な強みですねー。ソフトバンク陣営は、ソフトバンク・ヤフー・PayPay・ZOZO・LINEとかブランド名がバラバラですからね(基本PayPayに寄せていくみたいですけど)。

EXPO発表では、楽天ポイントの利用額がどんどん増え、ポイントのばらまきもどんどん進めているよ!とのこと。他の記事でも書きましたが、お客さんは「ポイントが貯まれば貯まるほど、その経済圏に所属する度合いが高まっていく」傾向があるので、これは楽天が得意技を発揮している状態と言えます。

ポイント施策
  • 楽天経済圏は、オンライン&オフライン共に拡大。
  • 市場での楽天原資のポイントキャンペーン費用も、昨対20%以上増加
楽天Edy

最近PayPayに逆転された感じですが、楽天EdyはSuicaと提携していますね。これはすごい。
どう対抗していくのか楽しみです。

モバイルとECのクロスユース

こういうアピールがありました。母数を考えると当然のような気もしますが。

  • 楽天モバイル携帯のユーザ→楽天市場の利用率「62.9%」
  • ソフトバンク携帯のユーザ→Yahoo!ショッピングの利用率「26.7%」

3:その他、出店者のための様々な改善

本件、私は「楽天の二正面作戦」がテーマだと思っているので、それを踏まえた構成で説明してきましたが、楽天によると今回のEXPOのテーマは「Walk Together」とのこと。「店舗と一緒にモールをきちんとやっていきたい」という趣旨。政治的なセールストークのようにも見えますが、「本心からトゥギャザーしているかどうか」が分かるのが、このパートです。

実際、楽天って意外と店舗のための施策を行っていて、メリットがあるものも多いんですよね。出店者の日々の業務がはかどる改善も発表されています。

楽天って、色んなメディアから無駄に叩かれたり持ち上げられたりしていますが、AmazonやYahooと比べると、楽天の「トゥギャザーしようぜ!」は一番の美点だと思いますね。ルー大柴っぽいけど。

ちなみに、前述した、以前からのONEなんとか施策が続いているのに「ONEという表現があまりされなくなった」理由も多分ここで、「そもそも多様性を生かすための統一性(ONEなんとか)」であるからONEを強調するのは主客転倒なので減らす。今後は多様性と統一性を止揚した表現としてwalk togetherを強調する。いう判断なんだろな。と想像しました。ルー大柴っぽいけど。

改善方針

基本的には、前回(新春カンファレンス)の時に発表された方針を踏襲するようです。

多様性と統一性。

以下はその時の弊社解説記事。

この辺は「出店者には有益だけど細かい情報」が多いのですが、出店者の方は楽天から直接説明があるでしょうから、ここではざっくりと説明する程度にします。

リリース済の施策

すでにリリース済のものは、たとえば以下の通り。

  • 店舗の要望で開発されたR-Backofficeの改善
    • 受注管理機能で受注の一括処理ができるようになった(5月)
    • 電子領収書の発行機能ができた(6月)
    • 店舗側の設定で、「前払い」の支払い期限を選択できるようになった
  • スマートフォンとアプリのUI/機能統一と改善
    • 色々新しい機能ができました

スマホの件は、「スマホ回遊性改善の裏技」が使えなくなったので、むしろその対応に追われた人は結構多かったと思いますがw お疲れさまでした。

今後のリリース

これからの方向性については、詳しくは出店者向けの案内を見ていただくとして、ざっくりいうと

  • RMSの高速化
    • RMSを抜本的に変える(=システム移行)
    • CSV更新速度や編集画面のレスポンスを向上するなど色々
  • RMSの機能向上
    • 同梱候補を表示するなど、受注系の改善色々
    • RMSデータ分析を更に改善、いろいろと情報を増やす
    • R-Messe活用推進、顧客とのやり取りをやりやすくしていく
  • 店舗の仕事をやりやすく
    • RMSスマホアプリの利便性UP
    • 店舗が楽天から受け取る情報を、もっと受け取りやすく
  • (前述書いた)ジャンル施策の強化
    • マーケティングだけでなくUIも強化

などなどなど。
かいつまんで書いてます。

余談

データ経済圏などの仕組みによって、そのパワーが大きくなってはいますが、プラットフォーマーは、悪い言い方をすると「巨大な虚業」です。まあ、我々コンサルも虚業ですね。

ECにおいて、世の中的に大切なのは、「お客さんの満足」であり、「店舗・セラーがいい仕事をするかどうか」です。プラットフォーマーは(コンサルも)そこを支える「裏方」の存在に過ぎません。

「裏方なのに力が大きい」ので、つい傲慢になって出店者に対して強気に出たりしがちですが、虚業なんですから、主役である出店者へのリスペクトを忘れては絶対NGだと思います。(これは自戒でもあります)

で、それが現れているのが、こういった地道な改善かなと。リップサービスやパフォーマンスではなく、「店舗のための施策をどれくらい実行しているかにモールの姿勢があらわれる」ので、比較する際には大事な観点だと思います。

最後に

ということで今回は、楽天が取り組んでいる「二正面作戦」と、「店舗とのトゥギャザー推進」という分類で、 EXPO の発表内容を紹介してみました。大きなニュースはありませんでしたが、何が進んでいるのかの状況が見えたかなと思います。

「キングダム」的な大局観を持とう

それにしても二正面作戦、戦っている相手がすごい。

  • かたや、あのAmazon
  • かたや、あの孫正義率いるソフトバンク

企業規模として大きく劣る楽天が、この二社を同時に相手にしている。

ダブルジャイアントキリング・・いわば現在の日本が、米中両国を同時に敵に回しているようなものですね。。だから、楽天モバイル事業など、1つ1つの戦場には相当ムリがあるでしょうし、空回りもあって当然かなと。

完全に漫画「キングダム」状態。(知らない人はすいません)

想像してください。ローラーで基地局を増やす仕事、3980などONE施策を店舗に説明する仕事、決済の加盟店を増やす仕事、たくさんの営業マンたちによる肉弾戦・・数多くの戦闘、剣戟と流血、ルァァとかヌオオとかファルファル言う音が聞こえてきます。将軍や隊長が部隊の役割を伝え、行けェとか退くなとか檄を飛ばし、その1つ1つの戦闘の、日々の勝利と敗北が、大きな戦略、そして「経済圏」と結びついている。うーんキングダム。知らない人はすいません。

ということで、EC関係者としては、1つ1つの「戦闘」の見え方だけで云々せず、「戦略」の大局観を持って見守っていきたいなと思います。

次回予告

この話には、続きがあります。

今回は楽天の話でしたが、次回の記事では、より大きな動向を解説します。実はいま、「EC業界全体」でも、ドミノ的に起こっている大きな動きがあり、中小にもチャンスが巡ってきた感じがするんですよねー。

内容は、

  • SoftBank陣営を中心に「経済圏戦争」の動向
  • 専門ECなど「新興勢力」が業界に与える影響
  • コロナ後のEC業界で起こっているドミノ的変化
  • 我々中小ECにはどんなチャンスがあり、どう振る舞うべきか

来週中には公開します(ほぼ書き終わりました)。
乞うご期待!

2020/9/10追記:続編を公開しました!下記よりご覧ください。

メルマガ登録まだの方は、登録していただいたらメールでお知らせします。

カテゴリー: EC業界ニュース

コマースデザインfacebookアカウントコマースデザインツイッタ―アカウントfollow us in feedly

こちらの記事もおすすめ