こんにちは。坂本です。
2025年も気づけばもう7月。今年の前半を振り返ってみると、EC業界の変化がさらに加速していることを実感します。今回は、最近のEC業界の動向について、私と弊社の立場で感じている雑感をまとめます。
年初に「今年は厳しくなる」とブログに書きました。EC業界の成長率が過去10年で最低になっていて、加えて景気の問題から、消費者の買い物が「生活防衛的」になっている。要は、高いものへの出費を避ける傾向がある。その中でどうするか・・という記事でした。
半年経って正直、思った以上に大変な状況になっているというのが実感です。世の中全体的に倒産が増えているようですが、ECも厳しいですね。。最近は特に、楽天比率の高い事業者さんの苦戦が気になります。
これからどうすればいいのか?
今回は、今起こっている状況を整理して、今後どうすべきかについて意見を述べます。
- 目次 -
現在のEC市場で起きていること
(おさらい)EC全体の成長鈍化
EC市場はどんどん大きくなってはいますが、前年対比での成長率が鈍化しており、いま過去最低ペースになっています。
年初のブログ記事で、経済産業省が毎年発表しているレポート(電子商取引に関する市場調査)を使って、この辺を紹介しました。当時の記事はこちら。
もちろん、業界全体の成長鈍化が、すべての店舗に当てはまるわけではありません。実際、弊社支援先には引き続き成長し続けている方も多く存在しますし、支援先全体でも昨対2桁プラスを維持できています。
各モール動向
弊社の支援先では、幾つかのモールや本店でECを運営している方が多いです。販路としては、楽天、ヤフー、アマゾン、本店、卸販売のうち幾つかの組合せです。
売上の比率としては楽天市場がメインという方が多いですが、最近は楽天経由の売上が伸びない・落ちているという声が増えています。額が大きいので気になりますよね。
傾向として楽天は「1アクセスあたりの売上」が減っているのではないか・・という話がよく出ます。集客が前と変わらなくても、前ほど売れない・・といった声が聞かれます。これにはいろんな背景が考えられます。
※楽天の仕様変更、パーソナライズド検索導入、RPP広告自動化、メルマガ無料枠削減、定期購入機能のその後などについてはまた後日別の記事でお伝えします。定期購入は良い感じですよ。
ヤフーは横ばいですが、モールの特性上「気がつくと販促費が増えている」という話がよく出ます。要注意。「アマゾンかつ自社ブランド」という方は好調ですが、運営代行に売ってもらっているなど「自分の店」という感覚がないのも特徴です。
EC業界全体の流通としては本店のシェアは低くモールが7-8割ほどを占めているそうですが、私の周囲では、本店の利益貢献度が安定した方が増えてきました。大変なので安易に勧められるものではないのですが、本店やっててよかったなーという声は増えています。
新しい販路としては、TikTok、メルカリShops、AI経由購入などがよく話題になります。後述します。
好調を維持している店舗の特徴
この状況でも好調を維持している事業者さまには、いくつかの共通点があります。
弊社支援先の中での傾向ではありますが、
- 本店(独自ドメイン店)が強い:前述のとおり、利益貢献度で「本店があるから利益を維持できている」との声が多い
- 独自性の強い商品:ニッチ市場で上位を堅持、法規制のある商品、単純注文ではないカスタマイズ型の商品
- メディア露出力:取材されやすい/バズりやすい、尖った商品やサービスがある
- 卸売の強さ:小売店からの引き合いが強い。自社ブランドがあり、買い叩かれない。
特に、「売上比率の高い楽天が調子よくないけど、本店があるから利益は維持できてますね」というフレーズは、この半年、打ち合わせ中に何度も聞きました。もちろん「誰しも本店をやればうまくいく」っていう話ではないですよ。商材によって「本店適性」みたいなものがあります。本店適性がある&本店が回っている、という両面が大事です。
一方で、本店がなくて楽天などモール主体だけど、ちゃんと伸びているお店もあります。商材特性も影響しているとは思いますが、皆さん「やるべきことをきっちり実行する力」があるように感じます。※実行力については後述します。
新しい販路への「期待と現実」
こういう話をすると「では今は、どの販路に力を入れればよいのでしょうか」という質問が来ます。うーん伸びているのはアマゾンですが、、「出店先として魅力的か」というと、なかなか一概には言えませんね。「ではTikTokはどうですか」「これからはGoogleではなく、AIに紹介してもらうことが大事ですよね。」などとも言われます。
販路・販促どうする?って話題になった時に、最初このあたりがよく話題に出ます。
- LINEギフト
- メルカリShops
- YouTubeショッピング
- TikTokショッピング
- ChatGPTショッピング機能
- 楽天の定期購入機能
- 法人営業(卸)
- ブランドを作る
どれが良いと思いますか?
オススメの販路
「実は、これからのECは、◯◯が正解です!」というとウケると思うのですが、言えません。。
私たちの本業はプレゼンではなく「1対1で支援していくコンサル」なので、何が向いているかはその商売によるという地味な結論になっちゃうんです。
何年か前、D2Cというモデルがあって、いろんなスター企業が生まれ「これこそが正解」ともてはやされた時期がありましたよね。が、最近は「D2C業界が厳しい」と言う話を、中の人(複数)から聞きます。じゃあオワコンかというとそんなことはないし、今も強い会社は強い。
「どの販路がいいか」「どの商品が売れるか」という全員に共通する勝ち筋を探し続けても、答えは見つからないんだと思います。
いろんな選択肢があるけど、どれも「ある条件の人にとっては確実に正解」なんです。
例えばイメージですが・・
- ショート動画で売る → パっと見で引きがあって、ショートな実演販売と相性が良い
- ライブで売る → 低単価・ワクワク感・衝動買いができる商材。(ハマると高値でも売れる)
- ギフトで売る → モノだけでなくパッケージや珍しさや伝わり方など「ギフトUX」が整っている
- アマゾン・楽天型の定期購入 → リピート性の高い日用品で、消費ペースが早く溜まりにくい
- 本店で売る → モールの商品比較検索と別で、情報検索など別ルートからお客さんと接触できる
- 卸す/プロに売る → 既に引き合いがあり、当事者のインサイトを理解しつつ商談ができる
こうやって考えると、どんなにTikTokが人気でも、「明らかにハマらない商品」があるのは見えますよね。
逆に、「自分たちがハマれる販路」が見つかった人々は、平和に商売ができる気がします。
- A社:ECで作ったブランドを、BtoB販路で伸ばして、売上が◯倍達成
- B社:LINEなどSNSで現場感のある情報を発信+ライブ配信で通常日の◯倍の売上
- C社:小ロット多品種のカスタマイズ体制で差別化、企業とのアライアンスも成功
こうやってみると、「単なるEC」ではない伸び方が多いかも。
じゃあ、どうすればいいんだ!
1 まず整理して、状況をコントローラブルにする
どうすればいいんだ・・と思いますよね。
残念ですが、販路や商材については「全員に共通する正解」がありません。
が、しかし。
実は、それ以外の領域で「誰しもが共通して取り組むべき施策」があります。
それは「状況の把握とコントロール」です。
具体的には、
- 売上と利益を可視化 → 分析して打ち手を作る
- 頭の中にある未来を可視化 → 優先目標を決める
- 社内にある業務を可視化 → 簡略化・AI化・標準化・移管する
- 重要業務の進捗を可視化 → 遅延したらすぐカバーする
- ヤフーの手数料を可視化 → 気づくと増えているので削減
左側が把握です。右側がコントロール。
単に把握・可視化しただけだと何も変わりませんが、把握しないとコントロールができません。
昔は商売でも、環境が変わって前提も変わっているので、過去の延長線上ではなく、一旦点検すべきです。
例えば、現状の可視化と方針のコントロール。皆さん、頭の中にやりたいこと・やらなきゃいけないこと・懸念事項がパンパンに詰まっていますよね。でも、頭の中にアイデアや懸念事項を詰めておいても、何も実行できない。
それらを一旦紙に書き出して並べて整理してみてください。何があって何からやるのか。そうすると、「方針」が決まります。優先順位が決まって、取り組みやすくなります。頭の中のもやもやを、明確な方針に落とし込むことで、現実を動かせるようになります。
つい先日、とある支援先の方がいらして、この頭の中の洗い出しと整理をしました。頭の中にあるモヤモヤを沢山書き出して並べ、見ながら話して記録して整理する、考えるという感じです。かなり濃かったので翌日には熱が出たそうですが、すごくすっきりしたとのこと!我々もスッキリしました!!
他にも、
・利益の可視化と、価格のコントロール
・業務の可視化と、分担のコントロール
・売上の可視化と、施策のコントロール
などなど。
構造は全部同じですね。まず可視化。
2 可視化した上で「自分の正解」を見つける
このように、自分たちの事業が今どうなっていて何をしなければいけないのか、外部環境がどうなっているのか、自分は何を考えているのか、、これらを全部書き出して整理すると、それだけでスッキリします。
イメージ先行にならないよう、自分の状況を可視化して、整理しておく。
すると「自分に合った方針」が見つかりやすくなります。
- ある会社は、これから動画コマースかなと思ったが、「まず法人営業だな」と切り替えた
- ある会社は、販路開拓が大事かなと思ったが、「まずコスト削減だな」と切り替えた
足元を整理しないで、「これからは◯◯が正解だ!」「このモデルは成功者が多い」っていう情報に飛びついていっても、、それは自分の実態と合致してないから、当然失敗するわけです。実際、そういったケースを多く見ました。
まず整理。急がば回れですね。
足元を固めて、それから自分に合った施策を見つける。
やらなければいけないことは沢山ありますが、使える時間や人手やお金は有限です。
だからこそ、状況を整理して可視化し、その上で何に注力するか決める。
その一手間が、かつてないほどに重要になっているように思います。
日々の忙しさにかまけて把握しないと、コントロールできません。
だから、まず可視化して、コントロールします。
最近は、この話題でお話しする機会がめちゃくちゃ増えてますね。
弊社コマースデザインの取り組み
支援先で苦戦している方が多いので、、我々も今年はかなり悩みながらやっています!
テーマは実行力。
方針を立てるだけでなく、ちゃんと実行するための支援を重視しています。
「実際に手を動かす」セミナーと研修
そんな中で力を入れているのが、セミナーと研修です。理屈を知るだけでは結果に繋がらない・・という反省から「実際に手を動かす」「やった結果を報告する」という設計が好評。
今年特に好評だったのは:
利益管理セミナー:楽天からダウンロードできるデータをコピペするだけで、2時間で利益の可視化とグラフ化まで完了する実践型セミナー。「すぐ使えるシート」を配って、実際に手を動かすのがポイントです。
AIセミナー:この2-3ヶ月で「徒歩が自動車になったくらいの変化」が起こってきているAI活用について、基礎から実践まで、実践形式でお伝えします。これも、「すぐに使えるテンプレ」を提供することがポイントです。
EC3ヶ月研修:3ヶ月間集中して学んでいただく研修プログラムも強化しています。EC運営全般の考え方と、AIを使った幅広いワーク、そして参加者同士での議論=相互の刺激がポイントです。経営者から新人まで、一緒に学んで議論するという設計も好評です。
「実行力を高める」コンサルティング
そういった考えから、弊社コンサルでは徹底したヒアリングで「状況の見える化」や「その店らしい正解」を見出すサポートをしてます。たとえば・・
進行管理
- 社内で今何が進行しているかを可視化して、流れが止まらないようにどんどん実行していく進行管理
- 業務標準化・AI化・テンプレ化・リモート化と組み合わせて、商品登録や画像制作などが倍速になります。
利益管理
- 原料も運賃も人件費も高騰する中、自社のコスト構造を可視化して、何を修正すべきか分かる利益管理
- 単なる値上げだけではない価格最適化、広告の削減・最適化などを「現場が自走できる形」で運用します。
業務管理
- 既存業務を洗い出して、無駄な仕事やAI化の余地を発見し、重点改善。例えばCSの問合せ量を半分以下にするなど。
- あらゆる業務は「つい昔のやり方でやってしまう」ので、そのまま使えるAI活用やテンプレ活用。
以前より、実行・実践に軸足が移っていますね。
弊社の支援内容に興味がある方は、「5分で分かる資料」があるのでよろしければどうぞ!

まとめ
2025年前半のEC業界は、EC市場や楽天の成長鈍化、コスト上昇、消費者心理の冷え込みという状況が続いています。
しかし、この状況下でも好調を維持しているEC事業者は実在します。
派手な「攻め」は目立ちますし、皆が注目します。でも裏側から支援している我々としては、「攻め」より「守り」、「競争力」より「ライバルの少なさ(独自性)」が大事だと感じます。
大切なのは:
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まず、自分の事業を把握してコントロールする – 売上・利益・業務・進捗を可視化し、コントロール可能な状態にする
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他者からの正解情報に依存しない – 「万能な正解」は存在しない。販路や商材に関する全員共通の勝ち筋を探すより、自社に合った方法を見つけることが重要
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その上で、自分なりの方向性を見つけてチャレンジする – 足元を固めてから、自社の実態に合った戦略を選択し実行する
-
実行力に軸足を置く – 方針を立てるだけでなく、確実に実行できる体制と仕組みを作る。実行はまず「一歩目」が大切
日々忙しい中ではありますが、足元を見直して、トレンドに惑わされないよう、自分なりの正解を見つけていきましょう。
皆さまと一緒にこの時代の変化を乗り越えていければと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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Q. コマースデザインのEC支援は、何をしてくれるの?
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カテゴリー: EC戦略論