楽天「3,980円送料無料」から、「私達の居場所」について考えてみた

楽天送料無料ライン統一

※8/13:記事公開後のブログへの感想や相談を受け、「これからどうすべきか」について記事末尾に追記しました。PS部分をご覧ください。

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こんにちは、坂本です。
最近は社長業で多忙だったのですが、これからはブログ書きたい所存です!

今回は、例の「楽天全店舗で、3,980円以上送料無料」の件について、考えていることをつらつら書いてみます。

  • 1:どんな話なのか、一応おさらい。
  • 2:今回の発表に至った背景にある楽天の動向や意図を考察
  • 3:店舗はどうするべきか・注意点について
  • 4:今後のECと、私達の「居場所」について

個人的な考えで書いてます。当たっていること外れていること、色々あると思いますが、多角的に書いてますので、試行錯誤の参考になれば幸いですmm

改めておさらい。「楽天3980円送料無料」とは

先週の楽天オプティミズムで、送料無料ラインの統一が発表されました。

送料無料ライン統一の要点

  • 全店舗で、3,980円以上の買い物は送料無料とする
    • メール便・クール便(冷蔵冷凍)・大型宅配便は対象外
    • 縦、横、高さの合計が160センチ以内の宅配便が対象
    • 国内全域対象。離島、山間部を含む(ドローン飛んでも送料無料w)
  • 3,980円未満の場合は、店舗ごとの個別送料が適用される
  • 「3,980円未満で送料無料」にするのは自由にどうぞ
  • 「5,000円以上送料無料」とかは禁止
  • 楽天による費用負担はしてくれない模様
  • これらは、2020年の2~3月ごろスタート見込み

詳しくは日経の記事をどうぞ。

送料無料ライン統一の経緯

もともと、今年1月に発表されていたことが、具体化された形です。

ワンペイメント、ワンデリバリー、ワンタリフ。これら3施策の「ワンタリフ」が、本件です。1月時点の発表についても、弊社で特集記事を書いていますので、ご存じない方は合わせてどうぞ。

※ワンタリフ(送料統一)が発表された時点では、「送料負担を、店舗と楽天のどちらでどの程度負担するか」は検討中だったと思いますが、今回の発表では、楽天負担についての話は出ていません。
※つっても楽天直営店でもまだワンペイメント(楽天ペイ)未参加だったりしますし、構想は道半ばではあります。

楽天側の意図

楽天の背景を理解しておくことで、変化がある程度予測できるんではないかなーと考えます。「知ったこっちゃねえよ」という方もお付き合いください。

ショッピングモールの宿命

アマゾンと比べると、楽天は送料バラバラでわかりにくい問題。直販ではなく出店者中心の「ショッピングモール」である楽天には、宿命的な課題です。

楽天で商品をカゴに入れて、決済する瞬間に「なんだこの送料、たけえ(画面閉じる)」という状況はありませんか。他にも、送料高い。決済バラバラ。届くの遅い。UIもバラバラで分かりづらい・・・

でも、かつて、EC が普及していない時代には、インフラやオペレーションの一部を出店者にも負担してもらう、いわば「共同負担型」のモール形式が最適解でした。楽天と店舗は本当に、パートナーとして伸ばしてきました。

が、いまは時代が変わったわけです。アマゾンのように中央で管理をするほうが強く、かつて強みだった「共同負担型」のショッピングモールであることが昔ほど有利ではなくなってきました。

なんというかネットがない時代はスカパーが正解だったけど、今はネットで番組を配信するDAZN(ダゾーン)が出てきて、「わざわざアンテナ設置するのは意味あるのか?」みたいな感じです。作った仕組みが陳腐化する。辛いけど、今の時代には、よくある話。

で、そこへの対策として、ワンペイメント・ワンデリバリー・ワンタリフの話が出てきたわけです。それが今年の1月

楽天の、過去の苦労

もともと楽天は昔から、この件については色々悩んだり工夫してきたんですよね。

楽天プレミアムって知ってますか?
Amazonプライムみたいに「年会費を払うと送料無料」になるんではなくて、送料分がポイントで返ってくるサービスです。

あまり広まってないですが、ポイント還元で送料の負担感を緩和したい苦肉の策だったのかな・・策としては面白いですけどね。わかりにくいからな。
「送料をポイントで倍返し」なら、わかりやすくお得感あってウケるかも(妄想

あと、10年くらい前に「楽天物流」っていう子会社を立ち上げて、FBAみたいな物流代行しようとして、上手く行かず大赤字で解散(吸収合併)してたり。

現在は、楽天スーパーロジスティクス(RSL)というサービスとして提供されています。

現時点の評価については、大きい店からは「大波が来たらパンクしがち」、小さい店からは「安いから助かる」という話を聞きます。利用者の皆さんどうですか?

2021年には、楽天市場の流通の半分くらいを配送する目標なんだとか。

あと、今年10月から自社回線での携帯電話サービスを開始しますよね。
来年6月には、5Gサービスを開始予定。料金も結構安くしそうな気配です。あちこちと契約して、コンテンツも力を入れてますよね。カードやペイメントも広がっています。
この経済圏の中で、楽天市場も連動させて、未来を作っていきたいんでしょうね。

今後の展開

とにかく、楽天としては、長年の懸案を解消すべく、ワンなんとかをゴリゴリと進めているわけですね。で、3,980円以上送料無料にすると。

そうなると、「昔の楽天」に合わせて事業と体制を作り込んできた店舗は、当然この変化に苦しむことになりますよね。じゃあ、我々はこれからどうするんだ?という話を、このあと書きます。

ちなみにアマゾンは、2,000円以上で送料無料ですけどね。ほぼ倍違います。まあ世間から期待される分野がちょっと違うので、大丈夫ではないかと。日用品は楽天の直販で2000円とかで送料無料にして、その他の「楽天らしい店」は3,980円送料無料という構図になるのかな。想像です。

※あと、アマゾンも無敵ではなくて、何しろレビュー汚染がひどいですからねー。。こないだ、アマゾンのレビューで「スーパーセールで買った」というフレーズを見かけて、「何だそれ」と思ってgoogleでフレーズ検索したら、楽天の某店舗のレビューが引っかかりまして、なるほど楽天からレビュー文面をコピペしてるのかとw 面白いので、楽天の方、誰か調べてみて下さい。

楽天出店者はどうするべきか?

ただ、これらは、楽天の都合ですからね。店舗は店舗で、自分の問題を解決しないといけません。
楽天の実験では、「送料無料ラインを3,980円にすると、購入額が15% アップした!」ということですが、アフィリエイト仕様変更の結果は想定と違ったわけですし・・まあ話半分かな。。

店側にとって一番大切なのは、この機会に値付けを見直して、利益を維持することだろうと思います。以下、やるといいかなーと思うことをさみだれに書いてみます。

送料を商品価格に転嫁する

値上げするしかありません。3,980円以上の商品は送料分値上げ・・送料分だけじゃないですね、もっと考えてやるべきです。後述します。

送料転嫁で「まとめ買いが損になる」問題への対応

送料を載せた場合、たとえばその商品を2個買うと、 そのままだと2つぶんの送料を払うことになりお客さんが損をします。

対策としては、「まとめ買いすると割り引く」ような案内が必要だと思います。2個セットまとめて買うといくらにするとか、クーポンとか。こういう割引は、普通に実施しても客単価向上に効果的なので、うまくいきそうな気がします。
※本当の意味での割引じゃないので、ちょっと気が引けますけどね。。

「送料転嫁のリスク」を考慮する

たとえば、送料を転嫁することで「メーカー希望小売価格以上に値上げ」するとメーカーに怒られそうです。早めに事情を伝えて考えてもらったほうがいいかも。

「お客さんへの説明」を考える・・難しいけど

あと、お客さんが気づきますよね。特に「価格が明白な仕入れ商品」の場合。
複数モール展開してる場合も、問い合わせが来ます。
「お問い合わせ頂きましたモール間の価格差について、ご説明します。楽天が3,980円送料無料っていうので、当店は送料をのっけております。」

うーむ。送料を乗せていくと、ユーザーから「送料分を乗せてるだけじゃないか」という指摘が入るはずです。六年前ぐらいに話題になった「二重価格問題って覚えてますか?楽天ゴールデンイーグルスの日本一セールの際に、「元値を過剰に釣り上げることで割引価格は大きく見せる」という一部店舗の手法が、悪い意味で話題になりました。シュークリームが物凄く高いアレです。覚えてますかねー。あのときの「元値は釣り上げて割引を自称する」のと、今回の「送料を乗っけて送料無料を称する」という構図は、よく似ていますよね。あんな展開になったらやだなぁという心配があります。これは店舗ではどうしようもないので楽天の仕事だと思いますが。今から心配です。送料無料ではなく「送料込み」っていう表現にしたほうが正確ですけどねー。うーむ。

送料対応だけでなく、先々を考えて値上げする

10月に消費税の増税がありますね(消費増税対応の解説記事も近々リリースします)。配送運賃もきっとまだ上がりますよね。
だから、 楽天のこの件のためだけでなく、EC事業で全体的に値上げを考えるべきだと思います。

弊社では、コンサルティング先でよく価格改定のお手伝いをしていますが、ガチの型番商品でなければ、意外と値上げうまくいきます。
あと、 単発で値上げをするだけでなく、常に「利益を把握・管理できる状態」でいる必要があります。

これについてはおすすめの記事があります。値上げや利益管理についての記事を書いたところ、結構好評でした。 よろしければ合わせてお読みください。

「売上低下によって起こる問題」に備える

値上げ、広告削減、商品絞り込み等による「減収増益」で利益が伸びるケースは本当に多いです。ただ、 トップラインが下がることによる問題もありえますよね。

まず売上が落ちると、モールでは検索順位も落ちますから、販促のテコ入れも必要です。ただ、 販促のテコ入れ策は本当に色々やり方がありますから、 闇雲に手をつけるのではなく自分にとって最適な施策を厳選して、計画的に、全力で実行することをお勧めします。
あと販売数が減ったり、商品の動き方が変わるから、在庫の持ち方も改める必要があるかもですね。

ちゃんと考えて同梱促進をする

さっきgoogleのサジェストキーワードを見ていたら、「楽天 送料無料 いつから」なんてキーワードが出てきたんですよ。 期待されてますねw 分かり易い金額だし、時期が来たら楽天でも宣伝しそうですね。

で、お客さんたちの頭に3,980円というラインが浸透すれば、楽天で買う人はみんな、3,980円めがけて必ずガンガン同梱してくると思います。

つまり、「同梱提案」が重要です。同梱する確率がすごく上がるわけですから、丁寧にやる価値があります。
ただし、この商品を一緒に「買って欲しい」という、「店都合の同梱提案」はもう通用しないし、機会損失でしかなくなります。 いかに、ユーザーが「一緒に買いたくなる」組み合わせを提案ができるかがキモなわけです。

ちなみに弊社では「同梱パターン分析をして回遊導線を作る」という策をよくやります。結構うまくいきますよ。

遠隔地問題を検討する

北海道や沖縄に商品を送る際の送料・・どうするんでしょうか・・普通にやると、店舗負担ですか。「ごめんなさい」して遠方への販売を断る?それとも侠気で送料をかぶる?「遠隔地配送サービス券」とか謎の商品を設定する・・だめだろうな。

いっそここは楽天さんで負担したらいかがでしょうかw ソーシャルグッドな感じがします。離島の人とか嬉しいでしょうね。

システム対応を検討する

多モール展開しているお店は、商品マスタがあり、そこから各モールへ商品データを出力する仕組みを持っていますよね。
先般の楽天の「商品画像ガイドライン」対応で、楽天に関してのみ第一画像を変えて出力しますよね。今後は「価格」も同様に、楽天に関してのみ、価格を変えて出力することになると思います。

これからどうする?ECモールを俯瞰して考える

プラットフォーマーとの付き合い方

このところの楽天の動きの激しさから、「もう楽天に付き合うのが疲れたなぁ」という方も多いと思いますし、そんな声も聞こえてきています(私はブログを書くのに疲弊気味w)。

昔は楽天一強でしたが、今は色んなモールがありますね。ただ、どのモールも、各社の都合があり、「あとから規約や取引条件を変えてくる」ことが必ずありますよね。
もっと言うとECに限りませんね。youtuberだって、報酬額をyoutubeに握られているわけで。

じゃあ、これからは本店(独自ドメイン店)の構築でしょうか。
でも結局、Googleやネット広告やSNSというプラットフォームに振り回されるのは同じかなと。facebookがアルゴリズム変えたり、インスタがいいね数を非表示にしたり、がガンガン起こるわけです。
彼らも必死なんだろうと思います。でも、振り回されるのは疲れますよね・・。

かといって、特定のプラットフォームに依存しないために、あちこちのプラットフォームに手を広げ、仕様を調べ、動向を追い続けるのも・・落ち着かないですよね。

私たちに「落ち着ける居場所」はあるのでしょうか?

我々の「居場所」はどこにあるのか?

「お店」のことを、覚えていてくれるお客さんが増えるといいな、と思います。

少ない人数でもいいから「楽天で買った」「Amazonで買った」「ネットで買った」ではなくて、「あの店で買った」「いい店だった」と思ってくれるお客さんがいて、その記憶の中にいられれば。商売は続けられるはず。

だから、私達の本当の「居場所」は、どこのプラットフォームでもなく、お客さんの記憶や体験の中にあるべきではないかと思います。

自分が、お客さんに対してどんな価値を提供し、どんなお店だった、と思ってもらいたいか。そのために何ができるか。
どんなプラットフォームを通してでもいいから、お客さんに価値を提供することで、店として、人として、覚えてもらえればいいのかなと。

今も、これから先の未来においても、私たちは(ショッピングモールに限らず)、様々なプラットフォームの上でビジネスを行っていくことになります。その差異、プラットフォームから上手に集客したり、売上を作るというテクニックは大事ですが、それ以上にプラットフォームが変わっても、店として、あるいは人として覚えてもらえていることが、お店にとって最も大切になってきています。この記事を読んでみてください(ちょっと古いですが)。

意味のある店になる!

そうやって、「記憶される」ことを1つの目標に置いた場合、かつて楽天は、いわゆる出品型の売り場と比べて「店としてお客さんに覚えてもらえる」「発信のしやすい」プラットフォームでした。今後もそうあってほしいと思いますが、変わってきていますよね。

ただ、私達は、プラットフォーム側がどうなろうが、楽天のあり方に左右されることなく、「店としての自分のアイデンティティと存在意義」を、もっと確立させるべきだと思います。
(店よりサービス業として定義するほうがいい人も多いですね)

そのために必要なのは、 自分自身の形をねじ曲げることなく、ねじ曲げられることなく、なるべく、そのままの姿で、そのままの魅力で、なおかつお客さんから支持を得られる、そういうポジションやスタイルを、作り上げることだと思います。変えられないために自ら変わる

そして、我々中小事業者が、十把一絡げで置き換えの効く軽い存在でなく、「多様な価値」を体現する存在であり、お客さんが価値を感じる存在であるならば、プラットフォーマーも、我々をより尊重することになるだろうと思いますし、これからがそういう世の中になっていくと信じたいです。

プラットフォームを使う。使い分ける。プラットフォームに振り回されるのではなく、明確な価値とビジョンを持って、使う側でありたいなと思います。

世間はこれからお盆ですね。来年のオリンピック終わりまで、色々バタバタが続いて大変ですが、夏バテしないで頑張りましょうねーー。

PS(2019/8/13追記)

「これから何やったらいいと思う?」と複数の方に聞かれたので、追記します。 この問題の対応には、おおよその正解はありません。なので、各店ごとの状況を鑑みて対応を考えなければならないのが悩ましいところです。

まず、「送料無料ライン3980円」が実施されたらその影響をモロに受けてしまいそうな人(地方のお店、型番系の商品など)、複数のケースで料金シミュレーションしてみましょう。お客さんの反応や諸々を思うと、送料分をそのまま乗せることに抵抗がある方も多いでしょうが、まずはとにかく悩まずに考えましょう。ここで立ち止まってしまう方は、宜しければご相談ください。私たちは、これまでも多くのお店の価格変更を一緒に考えてきました。あなたの力にもなれるかもしれません。

実際、「送料無料ライン3980円」が三木谷さんのいう通りのタイミングで始まるかについてもまだわからないところがありますよね。先の「商品画像ガイドライン」適用の本格化も結構遅れましたよね。あれに比べて今回の方が対応も難しいですしね。。そういえば例の携帯参入も10月はスモールスタートとのことで、時間がある程度かかるのを見越して「一旦早めの日程でアドバルーン上げてみる」という傾向かもしれません。これだけの発表なので、中止になることはないと思いますが、サンキュッパ対応への切り替え時期については、楽天からの続報を待ち、様子を見ながら進めるのが現実的かなと。

そして、目先の価格設定はともかく「この先の自分の居場所」について考えたい人。今回の一件に関わらず、最近「未来のための壁打ち相手」としてのご相談が増えています。今日ちょうどクライアントさんと話していたのは、例えば、いわばブロガーが本を出したり、YouTuberがテレビに出たりするように、「プラットフォーム内での露出をテコにして、外への影響力を持つ」方向と方法論について。

「疲れた」「プラットフォーマーに振り回され続けてこの先があるのか」。何かしらここがスッキリしないと、モヤモヤしますよね。。。もちろん気にしない人もいると思いますがw たいていは目の前の仕事に集中しづらいものです。しかし、先に繋がる「芯」が通ると、確信を持って日々の業務に取り組めるし、ぶれなくなると思うんですよね。少なくともそのクライアントさんと話していて、そんな手ごたえを感じました。

目先の対応をどうするかだけでなく、「もっと先」を見ることが、目先対応における判断力をも高めてくれるんだなぁ。山頂からのきれいな景色を想像できなければ、苦しい山登りもできませんよね。。このように、「激変する楽天に上手く対応しながら、モールを越えた影響力を確立する」といった先を考えるための壁打ち相手、山登りのパートナーがほしいという方も、お声がけください。

色々あっても、時間が経つと少し冷静になってくるものです。さて、これからどうしよう。と思ったら、ひとりで考えずに、是非ご相談ください。

カテゴリー: EC戦略論

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