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コロナの裏で起きている「EC業界のゲームチェンジ」ドミノ現象を説明します

こんにちは、坂本です。

個人的な仮説なんですけど、、いま現在、EC業界で、ゲームチェンジを起こす「ドミノ現象」が起こってる気がするんですね。Eコマース業界の勢力図が変わる予感。

目下、楽天やAmazon・ヤフーなど大手モール同士がしのぎを削る「データ経済圏戦争」が起こっていますよね。そこへきて、コロナ禍で急速にECシフトが進行中。この先、何が起こるんでしょうか?

私の想像では、「データ経済圏戦争&コロナ禍の影響で、消費者の『純粋想起』が書き換えられている」そして「『経済圏戦争の余波』で、モール各社が意図しない形へと、EC勢力図が変わる」と想像しています。個人的な感覚に基づく想像ですが、未来についての雑談だと思ってお付き合いください。

この記事の概要

この記事では、「データ経済圏戦争と、コロナ禍・ECシフトの影響で、お客さんの頭の中が書き換わって、ドミノ的に『ECのゲームチェンジ』が発生。すると専門型ECが伸びて、我々中小のECにもチャンスが巡ってくる」という仮説を紹介します。

順番としては、まず最初に、話の前提となる「ECモールの経済圏戦争」の経過を紹介し、次に「経済圏戦争を起点に、ドミノ的に起こるECのゲームチェンジ」について解説します。

  • (1)「携帯キャリア事業者が運営するECモール」同士の、データ経済圏戦争
    • バチバチやりあっています。その影響で、後述の「ドミノ」が起こります
    • 前回の楽天EXPO記事は楽天の話が中心だったので、その他の陣営と、その後の経過を解説。
  • (2)戦争とコロナ禍の影響で、EC業界を変えるドミノが発生
    • データ経済圏戦争の影響で、モールではない独立系ECの需要が増える、という仮説。
    • 新型コロナの影響も大。ポイントは「純粋想起できるECサイト数の増大」。後述。
    • 我々中小ECにとっても、たぶん前向きな話。厳しい側面もあるけど。

データ経済圏戦争、その後の戦況

コロナの最中も、彼らはバチバチやりあっています。

おさらい:「データ経済圏戦争」とは?

「データ経済圏戦争」ってなんだっけ?というのが、今から説明する「ドミノ」の前提なので、回り道ですがお付き合いください。でも、知っている人はスルーしてくださいねー

現在、ECモールの運営元は、携帯キャリアですよね。楽天の「楽天市場」、ソフトバンクの「ヤフーショッピング」、auの「auPayモール」。ドコモも一応「dショッピング」というものをやってます。

なぜ、携帯屋さんがECモールを運営するのか?以下はその答え。

  • 「ECモールで使えるポイント」は、あらゆる商品を購入できるポイントです。つまり通貨と同じ。だから「自社ポイント」と「ECモール」両方持っている会社は「通貨を印刷することができる」のと同じ。
  • すると自社ポイントでマーケティングできる。「我社のサービスを使えば現金同様のポイントをあげます」しかもそのポイントは「我社の経済圏」の中で使われるので、リピートに直結。良く出来てる!
  • さらに、この購買・行動履歴のデータは、マーケターにとって非常に重要で、「データは原油みたいなもの」なんだそう。原油がないと世の中回りませんが、これからはデータがないと世の中が回らない時代になる。そんな超重要データを掌握できる。
  • この仕組みを発明したのが楽天で「楽天経済圏」と呼ばれてます。いまは携帯キャリアの会社がECモールを持って追随、似たようなことをしています。一般名詞としては「データ経済圏」と呼ばれます。
  • 携帯キャリアがECモール運営に参加してきた理由は、前述の「データが原油」に加えて、携帯料金の値下げ圧力も影響しているのではと(新規事業をやらねば&出遅れたくない)。
  • データ経済圏を持つ携帯キャリア同士が、お互いに似たことをやって競い合っているのが「データ経済圏戦争」です。

という感じ。詳細は、私が今年の頭に書いた記事をどうぞ。

その後の戦局

ちなみにデータ経済圏の作り方には「レシピ」がありまして、

  • まず、共通ID・自社ポイント・決済・ECを用意します
  • そこに、様々なサービスを連結します。味の決め手は金融系
  • 最後に「統一ブランド感」をもたせることで出来上がりです

ちょっとお金がかかりますが、セオリーがあるから、素材が揃うと意外と作りやすいのかもしれません。皆さんもお試しください。

ということで、ここからは、経済圏構築の主要パーツである「決済」「統一ブランド」「携帯」「EC物流」の4番勝負という感じで、各社の動向を簡単に紹介。

※ほんとはもっと濃い情報もあるのですが、色々調べて書き加えてたら大変な量になってしまい・・「いかに三木谷さんと孫さんがお互いを模倣しあっているか」とか業界ウォッチャー的マニア話になってきたので、そのへんはカットして、今日は抜粋版。後日また別の記事にするかも。

「決済」対決

「○○で決済するとポイントが貰える」ということで、決済は経済圏の最重要パーツです。楽天カードとかPayPayですね。国内における決済でのシェアは以下の通り。※参考記事

  • カード決済1位は、楽天カードマン。強い
  • スマホ決済は、コロナ禍による接触回避で利用が増えてます。今後伸びそう
    • スマホの「電子マネー決済」は楽天Edyが1位(Suicaが2位)
    • スマホの「QRコード決済」は公取のチェックが入るほどPayPayが圧倒的

経済圏戦争のプレイヤーは各社どこもQRコード決済をやってて力を入れてきましたが、PayPayの圧勝に終わりましたねー。

従来型の決済であり、今も利用の多い「カード決済」は楽天が抑えてます。
今後伸びていきそうな「QRコード決済」はPayPayが抑えました。

ソフトバンク=Yahoo=PayPay陣営が、楽天カードマンを追い上げている構図

「経済圏としての統一ブランド感」対決

決済とポイントを持ったお客さんは、我が経済圏の中でぐるぐる動いてほしい。楽天カード決済でポイントもらって楽天市場で買って、楽天トラベル使って、、みたいな。だから「経済圏としての統一感」が重要。

  • 楽天の「楽天○○」という統一されたネーミングは、ダサイようにも見えますが、これにより、ユーザーには「楽天経済圏の住人たる自覚」が生じます。楽天○○があるんならそれを使う。わかりやすい。
  • 一方のソフトバンク陣営は、ソフトバンク=Yahoo=PayPay=Zホールディングス=ZOZO≒LINEという・・ブレすぎ。アルファベット略称でも、YだかZだかPだかよくわからない。Tポイントもあるよ。ヤフーカードなど金融系だけはPayPayブランドに統一される模様。ここから自社ポイント強化かなー
  • auもペイをやっています。auが運営するECモールは、Wowma!(ワウマ)ですが、いつのまにか「au PAY マーケット」という名前に変わっていました。狙いはブランド統一感ですが、三太郎の印象が強すぎて、戦略的なメッセージが記憶に残らないのでCMは変えたほうがいいのでは。
  • ドコモは「dなんとか」で統一。決済は「d払い」、ECは「dショッピング」、dポイント、dカード、dマガジン、dTV・・・・統一感はありますが、小粒かも。コンテンツ強いのは特徴的でいいですね。あとECが弱いのでAmazonと同盟組んでます。やっぱりCMの印象が弱いですが。

比べてみると、ここでもやっぱりソフトバンク陣営と、楽天陣営が強い印象。

「携帯キャリア」対決

楽天が負けているのは、もちろん携帯。かなり無理してでも、楽天モバイルをなんとか成長させ、データ経済圏の戦いに負けないようにしたい。という感じがします。楽天モバイル自体の進捗については、前回の楽天EXPOまとめでちょっと触れたので割愛。

楽天の勝ち目について考えますと、よくよく考えてみると、ソフトバンクだって携帯通信事業に「新規参入」したんですよね(2006年)。英国ボーダフォンの日本法人が儲かってないので買収して参入し、大躍進して今に至る。そう考えると、楽天にだって勝ち目はあるんじゃないか。

当時のソフトバンクの秘策は、「ソフトバンクによるiphoneの独占販売」と、「ケータイの通話料を0円、メール代も0円にします」という「0円キャンペーン」でした(そして表現がグレーなので行政指導が入りました)。

楽天とソフトバンクを比べると、

  • 新規参入である点、既存の事業者に対して「圧倒的お得感で対抗」ここまでは似てます。
  • 違うところとしては、当時のソフトバンクは「iPhone独占販売」という飛び道具があったけど、楽天は「楽天ミニ」推しなのでだいぶ違う(2台目として持ってもらう狙いでしょうし、面白いですけどね)。
  • ソフトバンクは携帯電話網が「予め存在する」という安定性があり、楽天は「ゼロから作る」ので色々ありました。

じゃあ、やっぱり楽天モバイルは無理筋?

いや、これ、野球と同じなんです。ホークスをダイエーから「買収」したソフトバンクと、ゴールデンイーグルスを「新しく作った」楽天。携帯キャリア事業を「買収」したソフトバンクと、「作った」楽天。同じ。なので、「50年ぶりの新球団」の時のようにうまくいくか?という目線で見ていただくと良いかと思います。

「EC物流」対決

最後に、ECの物流について少し。前回の記事でも書いたようにソフトバンク陣営はものすごく楽天を模倣してるんですけど、EC物流領域においては、消極的に見えます(真似てない)。

前回の楽天EXPO解説記事で触れましたが、Amazonは元々物流が超強くて、楽天は対抗するために、どんどん力を入れて伸ばしていますよね。2018年8月と比較して、約8倍強になったとのこと。

一方、ヤフーショッピング=ソフトバンク陣営は、違う角度の策をとりました。「ヤマトとの提携」です。

AmazonのFBAだけでなく「楽天スーパーロジ」に商品を預けるEC事業者が増えていくと、ヤフーは不利になる可能性。これに対抗するヤフー・ヤマト連合の勝利条件は、これを防ぎ「楽天への委託を防ぎ、ヤマトのシェアを従来どおりに維持する」、守備的で手堅い戦術を取っているといえそう。

お互いに似た者同士になってきている両者なのに、ここは違ってます。
この判断の違いが、今後どう出るか。気になりますねー。

まとめ

以上が経済圏戦争の近況です。

これらの説明でお伝えしたかったのは、まず、いかに、この「データ経済圏戦争」が、「様々な業界をまたがって発生している大きな企業間競争」であるかという点です。激しいですよね。

日本を代表する経営者同士が、全身全霊をかけ激しく争った結果、副作用として、世の中の消費行動すらも急激に変えていきます。そして、コロナ。

経済圏戦争とコロナ禍の影響により、後述する「EC 業界のドミノ現象」が起こる。と私は予想しています。

この変化は、経済圏戦争のプレイヤー=携帯キャリア各社が「望まない形での変化」かもしれません。彼らは大きな力を持ちますが、止められない軍拡競争と同じで「引くに引けない戦い」からは逃れられません。

以上の事柄が相まって、これからEC業界に、ある「変化」が起こります。

「ECゲームチェンジのドミノ現象」が発生

はい、ここから後半です。

前述した「怪獣同士の経済圏戦争」の影響と、コロナ禍の影響によって、EC業界に「新しい動き」が起こりつつあるのでは・・と考えています。あたかも、恐竜が栄えていた時代の隅で、小さく哺乳類が生まれたような、新しい時代への動き。

これは、ドミノ的に起こっていく現象です。

  • 経済圏戦争によって、ある事象が起こる。
  • それにより、次の事象が起こる。
  • そして・・

ドミノの中で、特に中核にあるのは、消費者の「純粋想起できるECサイト枠数」が拡大するという予測と、それによる業界勢力図の変化です。まだ個人的な・・感覚ベースの仮説なんですけどね。後述します。

以下、ドミノなので、1つめから順番に説明していきます。

1 ポイント&セール合戦の末に「ECモールまたぎ購入」が定着

まずドミノの1つめ。これは発生済です。

「楽天とAmazon」の時代では、強み弱みがはっきり分かれていて、ユーザとしては使い分けは簡単でした。
そこに、2013年、「ヤフーショッピング無料化」。この話、ヤフーの影響が大きいんです。

ヤフーは、「無料」を武器にして出店者数をわーっと積み上げました。当時、あっというまに20万店舗くらいになったかな。次に、しばらくしてから、ポイントをバカスカつけるようになりました。ソフトバンク陣営のお家芸「無料」「物量作戦」です。まず楽天から出店者を奪い、次にポイント大好きユーザを奪ったと言えましょう。

楽天は静観して、当初「ポイントをバカスカつける路線」をしませんでしたが、ポイント格差でどんどんヤフーショッピングが伸びていくので、防衛のために、楽天もポイントをバカスカつけるようになりました。それが今のSPUのはじまりです。Amazonジャパンもポイントが(一応)始まりました。

そして、各社とも、セールイベントをガンガンにやるようになりましたね。お買い物マラソン・・スーパーセール・・いい買い物の日・・サイバーマンデー・・プライムデー・・5のつく日が安い・・5と0のつく日が安い・・ひたすらイベント。おかげでEC事業者のGoogleカレンダーはえらいことになってます。

ポイントとセールの、果てしなき消耗戦。「最初楽天が出遅れて、あとからSPUを開始した」件でわかるように、この戦い、引いたほうが負ける。だから、各社ともやめられない。まるで漫画「キングダム」における兵糧戦。

で我々がECコンサル屋として店舗の売上を見ていると、やっぱり「イベントの日に売れる割合」が年々上がってきているわけです。お客さんはわかっている。学習して、イベントの日に合わせて買っている。お得なモール・時期で賢く買う。まあ、お得に買いたいというより損したくない気持ちだと思いますが。

このように、モール各社のセールイベントや、楽天ヤフーのポイントバカスカ競争が長く続いた結果お客さんのECリテラシーが高くなり、「モールを使い分ける」「複数のサイトを跨いで、買いやすいところで買う」ことに慣れました。 これにより「色々ECサイトがあるなあ」という理解が浸透し、お客さんの頭の中は変わってきたような気がします。

つまり、2強だったところにヤフー=ソフトバンク陣営が参戦し、ECモール「ポイント&セール合戦」が起こり、お客さんが学習し「複数サイトをまたいで買う」習慣が定着しました。

ここまでは、「コロナ前」の現象です。

2 コロナ禍で「ECサイトの純粋想起」が変化

そして、次のドミノが動きます。これは、コロナ禍の影響です。

前提として「純粋想起」の話

まず前提を説明します。
以下のキャッチコピーをご覧ください。

  • バイトするなら   → タウンワーク
  • プロポーズされたら → ゼクシィ
  • コーヒーギフトは  → AGF
  • 新製品が安い    → ケーズデンキ
  • 本気になったら   → 大原

「左側のフレーズ」を聞いたら、すぐに「右側のブランド名」を思い浮かべられますね。お客さんが「○○するときはココ!」「○○といえばコレ!」と即座に思い出せる状態といえますね。これを純粋想起といいます。覚えてください。

反射的に思い出せるようインプットされた状態・・マーケティングやブランディングの究極目標。

左側のフレーズを聞いたら、右側のブランドを思い出す状態。
そうなると、プロポーズされたら、ゼクシィを買っちゃうわけです。

事実、この記事によると、「ゼクシィ」という単語は、「結婚」という単語の検索回数を上回ったことがあるんだそうです。すげえ。

コロナで「買い物の純粋想起」が変わった

ここからが本題。

コロナ禍によって「買い物」にまつわる純粋想起が、変わる。と私は考えています。

例えば、自分が買いものするときに純粋想起する店(パッと思い浮かぶ店)が、色々あるとします。
自問してみましょう。

  • 食品を買うなら?近所のピーコックだな・・洗剤を買うなら?近所のトモズだな・・お酒を買うなら?スーパーより品揃え多いから、ちょっと遠いけど、あの酒屋だな・・家具は遠いけどニトリ・・(中略)・・ネットで買うなら?だいたいAmazonか。あーでもギフトとごちそうは楽天かな。嫁さんはヤフーも使うなー

皆さんにもこんな感じの行動パターンがセットされているはず。

食品買うなら → ピーコック。※この人の中では
左側の目的を思いついたら、右側の店舗を思い出す状態。

このように、「お客さんの中の純粋想起によって、○○買うなら → ○○で、という行動パターンが決まっている」わけです。

で、

上記の例では、「純粋想起してもらえるECサイト」は少なかったですね。
ネットで買うなら → 楽天、Amazon

この記事を読んでいるような人は色々思いつくでしょうが、「普通の人」は1つ2つで、メジャーどころしか浮かばないかなと。しかしこれが、コロナによって、書き換わります。

こんな感じ。

  • 食品を買うなら?いまも近所のピーコックだけど、急がないときはネットスーパーも試してる・・お酒を買うなら?酒屋が遠くて、こないだ検索したらエノテカのECサイトがあったんだよね。そういえばリモートワークで椅子買わないといけなくて、Google検索してたらニトリのECサイトが出てきて、買った。そういえば日用品、いまはヨドバシが早いから使ってる。あーでもギフトは楽天かな。ビールについては、毎回買うのが面倒だから定期宅配をやっているメーカーサイトで買ってて・・

リアルの店舗が減り、ECの登場比率が増えていますね。

つまり、こういうこと

簡単に言ってしまえば、「ECへの接点が増えると、思いつけるECサイトの数が増える」。「いろんなECサイトをまたいで購入する行為」には、皆さん既に慣れてますから大丈夫ですしね。

そして、「ECの利用頻度が増えている」ことも大きいんですけど、「お客さんがネットでの購入に流れていく際の『文脈の質』が変わっている」ことが重要な気がするんですよねー

  • コロナ前
    • 「○○買うときは○○」という行動パターンは、リアルが中心で、ECは少なかった
    • 「ネットで買う」は、やや特殊な選択肢だった
    • だから「ネットで買うなら→○○」というざっくり分類だった
    • だから「Amazon/楽天」くらいしか思いつかない(使わない)
    • まず「Amazon/楽天」に訪問し、その先にバリエーションがある状態
  • コロナ後
    • 元々「大手ECサイト同士のセール合戦」の影響で、「ECサイト使い分け」に慣れている
    • 「ネットで買う」は、リアルと並ぶ選択肢になった
    • だから「ネットで買うなら→」ではなく「○○をネットで買うなら→」になった
    • 昔より「Amazon/楽天」以外が視界に入るから、以前からの「ECサイト使い分け」が加速

多くの人には「ネットで買うなら→Amazon/楽天」という純粋想起があります。でも、上記の変化が起こったあと、人々が「『家具を』ネットで買うなら→」と自問した場合、その答えはどうでしょうか。

コロナ禍でECの利用頻度が増え、純粋想起のトリガーの「左側」が細かくなった場合、多くのお客さんにとって「右側」はまだ曖昧。うーん、チャンス到来な感じがします。

コロナ前。「ネットで買うなら」という「大づかみなトリガー」に対しては、「大きなECサイト」として楽天やAmazonが純粋想起される。総合型ECサイトが強い。

コロナ後。リアル文脈の流れで「○○をネットで買うなら」というトリガーになり、総合型ECサイトではなく、「専門型ECを使い分ける買い物」が増えそう。まあゾゾタウンとか大昔から人気ですけど、リアル大手が運営する専門型ECサイトも販促頑張るだろうし、たとえば子供用品の専門ECがよかったら、他の用途での専門型ECも気になりますよね。ドミノ的に、開拓が増えていきそう。

これ、ハワイ観光の進化と似てる気がします。ハワイがよくわからないうちは、ハワイ観光といえばホノルルでワイキキ(=楽天・Amazon)ですが、慣れてくると興味が出て、ノースショアとか、マウイとか、細分化されて掘り下げられていくわけです。あーハワイ行きたい

で、次のドミノが動きます。

3「別にアマゾンじゃなくてもいい」

ECを使う頻度が増え、より使い慣れてくると、「ECといえば → 楽天とAmazon」ではなく、「○○をECで買うなら → 」と、どんどん細分化されていきます。すると「別にアマゾンじゃなくてもいい」という現象が起こ・・

え?気が早い?

まあね、Amazonは品揃え多いし、強い。Amazonは、ちょっとレビューの信憑性がアレですが、UIが洗練され、楽天よりサクサク買えて強い・・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

でもこれ、楽天やヤフーなど「ECモールに対する」アマゾンの優位性ですよね。よく考えてみたら、モールではなく前述の専門型ECと比べた場合、Amazonはそこまで買いやすいわけでもない。と思いませんか?(まあ比較対象にもよりますけど)

Amazonの弱点

たしかに、麦茶とボールペンとおむつ、みたいに雑多に買うときはAmazonが超いいですが、「素敵なソファを買うぞ!」とか「今度の休みのためにアウトドア用品を買うぞー」とか「部活のために競泳水着を買う」とか、「この範囲の中で、きっちり選んで買いたい」というシチュエーションにおいては、Amazonの品揃えの多さは逆効果で、「品揃えが絞り込まれて、かつ接客が掘り下げられている」専門型のECサイトの方が探しやすい。たぶん接客や付帯サービスも良いはず。

これはとても普遍的な話で、以前から存在する構図です。かつてのリアル小売でカテゴリーキラーが成功した構図とも同じですしね。EC業界においても、これはコロナ前からの通説でした。

けど、前述の現象で一般消費者がECを使う頻度が増え、使い慣れることで、専門型ECサイトまで「足を伸ばす」お客さんが増える。きっちり接客してれば、前以上に「専門特化したお店はいいねー」と感じてもらえる機会が増えてくるんじゃないかなー。

まあドミノ現象ですから、「これから」そういう傾向が強まっていくんじゃないかな、と。

遂に、ECに本気になる大手

それに、なにしろコロナなので、リアル大手は、ECサイトに力を入れます。死にものぐるいで。ニトリとかユニクロとかイオンとか・・EC市場に参入する巨大なチャレンジャーたち。宣伝もやります。

昔の常識だと「行動の遅い大手企業は、ECなんか対応できないんじゃないか」と思いきや、もうね、コロナですから本気を出すわけです。アメリカでもウォルマートが、Amazonに対抗して伸びている、というニュースが出てますね。大手は本気になったら強い&早いのです(社長次第でしょうけど)。

お客さん側も、前のドミノ効果で「純粋想起できるEC枠」が増えてるので「Amazon以外が目に入ってきやすい」そこをめがけて、大手が宣伝をする。ECモール・総合型ECサイトから、お客さんを取ることができそうです。これにより、「ECサイト使い分け習慣」が更に加速。

コロナは続く

新型コロナは、第二波が来てるんだか何なんだかよく分からないうちに、秋に突入。秋冬は感染症が増えますし、このままコロナは当面続いていくはず。。

緊急事態宣言すると補償が大変なので、お上としては「感染しないよう注意しつつ経済活動よろしく」路線で、みんな自分の身は自分で守らないといけない。人々は今後「気をつけながらリアルでの消費を楽しむ」。「別にリアルじゃなくてもいい消費」は、ECにシフトする。

お客さんのEC利用頻度は増え、「楽天とアマゾン」みたいな大づかみではない「○○をネットで買うなら」の自問により、専門型ECにふれる機会が増える。大手の宣伝も相まってこれが加速。純粋想起してもらえる店も増える。専門型ECが一定のシェアを確立。

といっても、EC市場のパイ全体が膨れているので、Amazonは今後もヤバイほど売れ続けるでしょうし、楽天などもどんどん伸びるでしょう。ただ、内訳として専門型ECの存在感が増してくるだろう、と読んでいます。

  • withコロナ継続により、お客さんのECへの純粋想起が「細分化」される
  • これにより「純粋想起に基づく行動パターン」がゆっくり確実に、変わっていく
  • リアル大手ECの販促もあり、専門型ECの利用と「ECサイト使い分け習慣」が更に加速。

そして最後のドミノが動きます。

4 中小ECの「本店」に追い風

一番最初のドミノで「モールまたぎの購入が普通」になり、次に「楽天Amazonの検索ボックスしか目に入らない」状態から「色々なECを見る」状態を経て、「色々なECサイトを使い分ける」状態になった。

最後のドミノ。「ECの多様性」に慣れたお客さんは、「中小ECにも目を向ける余裕」が生まれます・・多分・・ちょっとここは私の願望が混ざってますけど。

ここでは、中小ECの本店(モールに所属しない独自ドメイン店)への追い風、について考えてみます。

中小ECの本店が抱えるハードル

昔々から、本店(独自ドメイン店)で売上を伸ばす際の大きなハードルとして存在するのが、

  • 「来店」の問題
    • モノ買う時はモールで検索するほうが早い。だから人が来ない
  • 「面倒」問題
    • いちいち住所と決済情報を入れなきゃいけない。めんどくさい
  • 「不安」問題
    • この店大丈夫なのか、特に住所とか決済の情報を渡して大丈夫なのか

これらが順に、軽減されてきている感じがします。

「来店問題」が「来店経路の多様化」で軽減

自分がネットでモノを買うときの行動を考えてみると、「特定のモールの商品検索ボックス」を起点とした買い物が、以前と比べて減っていると思いませんか。今も主力は商品検索ボックスですが、「それ以外」も増えた、という意味です。

Googleの調べ物をしているうちに、紹介記事や広告を起点にして物色を始めたり。SNSやYouTube経由から始まる「お客さんと売り手のコミュニケーション」が増えたり。「商品サーチにキーワードを入れて検索・比較」も多いんですけど、同時に、それ以外の形での商品との出会い・・あるいは売り手との出会いが増えてきたような。この体験は、従来型のECモールでは設計できない。

背景として、お客さんは実生活の中でも、以前より「行ったことがない店を、ネットを頼りに探していくことが当たり前」=リテラシーが上がってる。お客さんの探索能力が上がっていくと、マイナーな店でも(魅力があれば)来店される可能性が増えます。昔と今のハワイ旅行も同じで、わかんないからワイキキ、ではなく、お客さんの興味の範囲と探索能力が広がって、だから昔はマイナーなエリアの小さい店に行列ができるようになる的な・・あーハワイ行きたい

個人的にも、Google 経由でなんとなく商品を探していると、自然と独立型の小さなお店に行き当たることが多くて。「人から紹介された」「何かのメディアで紹介された」「明らかに良さげ」等の「何がしかの安心感」が担保されていれば、独自ドメイン店で買うことは、全く苦にならなくなりました。

もちろん、「本店構えておいたら、(楽天スーパーセールの時みたいに)お客さんがあっちからどんどん流れてきて勝手に売れる」、ということではありません。待ってるだけじゃ意味なくて「選ばれる必然性」がないと来店されないと思います。「本店に向ける努力が以前より努力が報われる」ようになるのでは、という趣旨の話です。

※モールonlyの事業者さんへ:モールは今後もECの中心だし成長するでしょうが「相対的に」シェアは減り、消費者の購入経路も多様化するだろう、という話です。だから、モール内でも、商品検索からの流入を期待するだけでなく、売上だけを追わず、自分は元々どんな店を作りたかったのかを思い出し、商品が絞られているからこその奥行きのある接客を磨いて、飛び道具も使い慣れていくと、違った道が開けるのでは。私の予想が合っていれば、「価値ある個性」が認知される機会は以前より増えるはず。この話は、次回書けたら書きます。

「面倒&不安」問題は「共通ID決済の浸透・拡大」で軽減

まあ、「中小ECの本店でも買いやすくなった」話は、アマゾンペイメントとかの「共通ID決済」が導入されているのが大前提ですけどね。

前述の、本店の弱点である「面倒&不安」問題については、アマゾンペイメントや楽天ペイ等の「共通ID決済」(AmazonのIDを入れれば、住所や決済情報を記入しなくていい&店舗に渡さなくていいから安心)の導入でだいぶ払拭されます。かなり昔からの鉄則ですけども。

で、共通ID決済としては、Amazonペイメントと楽天ペイがあるんですが、去年の終わりに、PayPayも共通ID決済を始めました。d払いもありますね。

これも、経済圏戦争の一環。独立型EC・本店のための「共通ID決済」も、これからは重要な戦場になるはず。だから前述の「モールへの誘致合戦」みたいに「共通ID決済の導入合戦」も始まることでしょう。導入店舗へのサービス合戦もあるかも。一般ユーザに向けた認知拡大キャンペーンとかあるかも。

以下は、本店(独自ドメイン店)のショッピングカート会社ごとのPayPay対応状況。こぞって導入して手数料で争ってますね。

海外ECの情報もよく届くようになった

あと去年くらいからか、海外の面白いECの情報をよく見かけるようになりました。

「Amazonが圧倒的に強い米国で、Amazonじゃないけど売れてるEC」としての「D2C」の話題が急に増えましたよね。私も以前、勉強会に参加させてもらって、その時のことを記事でちょっと書きました。圧倒的にアマゾンが強い米国で、実はガンガンに伸びている「非Amazonの独立系EC」が沢山あり、「創業10年も経たないうちに年商で150〜400億円」という凄い規模になっています、など。

「米国でアマゾンキラーとして有名なShopify」も、色んなニュースで頻繁に登場するようになりましたよね。アマゾンキラーっていう命名は誰かが考えたんでしょうか。メディアが思わず使ってしまうフレーズですねー。「Shopifyやってます」っていう制作屋さんも増え、以前からの国産ショッピングカート各社は黒船を迎えて幕末状態かと思いますが、切磋琢磨して、本店ECが活性化していく感じがします。

便利なチェーン店だけが飲み屋じゃない

そんな感じで、若干希望的観測ですが、ますます激戦なEC業界において、中小ECにもちゃんと出番がありそうだな、と思いました。

チェーン店の大きなお店は利便性が高くて便利ですが、友達を「お勧めの行きつけの飲み屋があるんだよ」って言って連れて行く時に、すかいらーくとかサイゼリヤには連れて行かないですよね。やっぱり中小の個性的なお店にはその「役回り」があって、人の世の一部として必ず求められると思います。この話は次回改めて。

我々の現場でも、「モール店舗だけど本店にテコ入れ」とか「本店メインでEC強化したい」といったご相談が増えてます。モール店の本店強化って、以前は「楽天のルール変更が色々あって怖いから」でしたが、今はもうちょっと前向きに「逃避ではなく投資」のスタンスで、現実的なご相談になっているケースが多いですね。

※「モールの費用を払いたくない」という売り手側の動機だけでは、現代の「調べ物が上手でスマートで賢いお客さん」にとって「合理的に本店を選ぶ必然性がない」ので、選ばれません。ここは注意。

※我々はECコンサル専業で制作代行はやってないので、方針を伺って壁打ち・論点整理したり修正提案したり制作屋さんなど外注先探しを手伝ったり依頼内容をまとめたりという関わりです。でも「本店やらないほうがいいケース」もあるし、体制整備のほうが優先なケースもあります。

まとめ

また長くなりました・・。なんで短く書けないんだろう<自分
ここまでをまとめると、こんな感じ。

  • 前半
    • データ経済圏戦争は、やはり楽天陣営とソフトバンク陣営が目立ちます
    • ECでは物流が焦点で、経済圏としては決済と携帯が焦点。
    • 「ブランド統一感問題」を頭に入れておくと、各社の動きを楽しめます(CMとか)
  • 後半
    • 楽天Amazonヤフーの宣伝合戦の結果、ユーザは「モールまたいで購入」が当たり前に
    • コロナで一般の人もECに触れる機会が増え、アマゾンと楽天以外のお店が「目に入るようになる」
    • EC頻度が上がり、リアル大手の販促もあり、人々は次第に専門型ECを上手に使い分けるように
    • データ経済圏戦争は続き、彼らの「共通ID決済」競争の一環で独立系ECを支援する(かも
    • 結果として、小規模の独自ドメイン店にもお客さん回ってくる(かも

多様性バンザイ。まあ、ポジティブな話だけでもないですね。僕ら中小のECが、いよいよ本気を出した「ニトリとかユニクロやイオンの直営するECサイト」と比べられてしまうっていう側面もあります。むむ。

次回予告

前回と今回はEC業界動向でしたが、次は、中小EC事業者の皆さん向けの話を書いてみます。

昔、「ECサイトは商品数が多いほうが強い」なんて時代もありましたが、201x年において、商品数の多さ・ロングテール追求という鉱脈は掘り尽くされ、Amazonによってメガショップ路線は既に完成されています。

それに対抗できるお店は、戦略に沿ってテーマを適切に『絞り』、機能やブランドやO2Oなどの『何か』によって、接客を『掘り下げる』必要があるだろうと考えます。で、D2Cは「その一例」だと解釈しています。※専門用語を連呼しましたが、次回また改めて説明します。

というわけで次回は事業者向けに「モールでも本店でも意識してほしい考え方」をお伝えします。割と多くの人が実行できるはず。

P.S.

中小のお店の日常は、こういう先の話・大きな話と、「でも今日やらなきゃいけない仕事」とが混在していますよね。社長や店長は、小回りが利く一方、雑務も沢山やっているから、すぐに忙しくなる。個人的に気分が乗る・乗らないでも生産性が変わりがち。

我々は、そういう人のための「中小EC専門の顧問コンサル」です。まず、壁打ち的に色々話して「将来どうなりたい」とか「今なにが気になる」とか話しつつ、その上で専門知識を使ったサポートをしていきたいと考えてます。

今回のようなテーマも、モール内のことも、販促手法もデザインも、日々のトラブル相談も外注活用も育成も業務効率化も、一通りワンストップで対応しています。専門医というよりは、かかりつけ医。各分野の専門家には及ばないかもしれませんが、何でもよく話を聞いて一緒に考えるのが強みです。相談は無料です。お気軽にどうぞー

カテゴリー: ECの未来

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