こんにちは。坂本です。
今回のテーマは「EC事業に関わる人のキャリア論」について。
仕事は毎日楽しくできるのが理想ですが、ときには「今のスキルや経験で大丈夫か」「もっと自己成長しなければ」と思い悩むこともあるかと思います。
この件について、私の個人的な考え方をお伝えします。
この話をしようと思ったキッカケは、最近とある方(とあるECチームのリーダー)に「もうすぐ40歳になるんだけど、今後、社会人として何を学んで、どういう風に成長していったらいいんでしょうかね?」というすごく真面目な相談を頂いたことなんですね。
あまり、成長成長とうるさく言うつもりはないんです。気持ちを軽くするヒントになれば嬉しく思います。
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はじめに:「自己成長」にとらわれるのはリスクかもしれない
本題に入る前に前提として「自己成長にとらわれすぎると危険」という話をします。
「自己成長」を追求すると、深い闇に飲み込まれる側面がありまして。これがなかなか恐ろしいのでお伝えしておきます。いきなり逆説的かつECに限らない話になりますがお付き合いください。
「自己成長」の裏にあるリスク
最近、メディアやビジネス書などで「成長」を鼓舞するフレーズを見かけませんか。
・最速で自己成長するには?
・スキルアップしてまわりと差をつけよう
・自分をアップデートしよう
みたいなものです。
EC業界は今後も市場が拡大していくと言われていて、国内外から次々と新しい事業者が参入してきますし、お客さんのニーズもどんどん多様化しています。なので「成長し続けなければ」と感じている人も少なくないですよね。きっと。
確かに成長は素晴らしいことです。成長すれば給料にもはね返ってきます。でも自己成長を追求し続けると、どこかで追い立てられるような気分になってくる。つまり「成長しない自分には価値がない」という自己否定に陥ってしまう。
もちろん、必ずしもこれが悪いというわけではありません。特に若いうちは、敢えて追い立てられるのもいいと思うんです。20~30代前半なんて、特に他者と自分を比較したくなる年頃ですよね。「同期より成長できていないと思い悩み、がむしゃらに働いてスキルや経験を身につける」というように自己否定が原動力になる場合もあります。
ただ、これがネガティブに自分を責める方に向かってしまうと、負のエネルギーの発散に繋がりかねないんですよね。そうなると、ご自身の心身だけでなく、身内や周辺の人(家族や仕事仲間)にも支障をきたすわけで、いろいろと辛いことになってしまいます。
人生折り返し地点で大事にしたい「おおらかさ」
ここから話のテーマに入っていくんですけど。
30代後半〜40代になると、自己成長にとらわれるリスクが上がる気がするんですよね。
この年代は言わば、人生の折り返し地点。ふと立ち止まって考えた時に「人生、このままでいいのかな」と不安に襲われ、精神的に不安定な状態になってしまいがちなんです。ミドルエイジクライシスとか中年の危機とも呼ばれます。
それなりに長く生きていると、パートナーができて家庭を持ち…と人生のテーマが変わってきます。しかし、そんななかでも自己成長ばかりを追い求めてしまうと、自分の立ち位置がわからなくなってくる。「良い社会人として」「良いリーダーとして」「良い夫・妻として」を真面目にやっていたけれど、どれも自分らしくない感じがして、ぐるぐる悩んでしまうんです。もちろん、そうはならない人もいるとは思うんですけど。
これが50代に入ると、急に「自分の人生こんなものだ」と吹っ切れて楽になるとも言われますが。ともかく危機の真っ只中である30代後半〜40代においては、なかなか簡単に割り切るのが難しくなりがちです。(なかには人生の先行きを憂慮して精神的に不安定になる人もいるそうです)
そんなわけで、自己成長にはかえって自分を追い詰めてしまう側面もあるので、程よい距離感を保って付き合うことも大事なんじゃないかと思います。自分の心を守るためにも、うまくいかないことがあってもいいと考えられる「おおらかさ」を持っておけるといいですよね。
では、どうすれば足元すくわれることなく、おおらかに程よい距離感で自己成長していけるのか。次の章から「EC事業者が年齢を重ねながら幸せに成長していくための心得」についてお伝えしたいと思います。
心得1.自分らしさで誰かの役に立つ

EC事業者が幸せに成長するための大事な心得として「自分らしさで、誰かのために」という言葉を紹介します。
この言葉は、当社が理念として掲げているもので、つまり「みんなが自分らしく活躍し、それぞれの形で感謝されている状態でありたいものだよね」という意味です。
人間は社会の中で生きています。EC事業者もスタッフ同士、あるいはお客さんに感謝し、そして感謝される。「あなたがいてよかった」と言ってもらえることで、人は自分を肯定でき、気持ちよく成長していけると考えています。
ただ「何が幸せか」「自分らしさとは何か」は人それぞれ違うものなので、簡単にイメージしにくいと思います。そこで以下「そもそも幸せとは何か」「自分らしさをどう見つけるのか」について考えていきましょう。
働くことで得られる「幸せ」とは?
そもそも、働くことで得られる「幸せって何だっけ」という話をします。
先ほども書きましたが、社会の中で生きる人間が幸せに感じる瞬間って、人から褒められたり、感謝されたりしたときではないでしょうか。ECでもお客さんから感謝の言葉をいただくと嬉しいですよね。
自分がしたことで誰かに感謝されるのは誰しも嬉しいもので、楽天まわりではよく「たまごち(魂のごちそう)」と表現されます。感謝は何度されても嬉しいものですから、たまごちの喜びは底なしと言って良いと思います。
もちろん、お金も大事です。わかります。ただ、国内外の研究でもよく言われているように、お金の幸せって一定のレベルまでいくと、もうそれ以上は幸福度に貢献しなくなるんです。仕事で評価されて収入が上がるのはいいことですが、それは幸せを構成する一要素にすぎない。
その点からしても、自分らしさで誰かの役に立ち、その人に喜んでもらうことが、幸せなのではないかと思うわけです。
「好き」や「得意」を人のために使う経験を積もう
では、自分らしさとは何か。自分らしさはどう見つけたらいいのか。
この記事を書くにあたり、私自身を振り返ってみて気づいた考えがあります。それは「私の得意分野は、私そのものといっていい」ということ。つまり、自分が好きだ!得意だ!と思うことで人に貢献できれば、それが「自分らしさで、誰かのために」の体現になるというわけですね。
程度の差はあれ、誰でも得意・苦手の凸凹はあります。私自身、若い頃は苦手なことで色々と苦労しましたし、空回りすることも多くて悩みました。しかし、今では、苦手が山ほどあることを自覚しながらも得意を中心に生きることで、人生が好転したことを実感しています。
とはいえ、いきなり「得意なことは?」と言われても悩みますよね。自分の好きなこと、得意なことがいまいち分からないという方は、自分が苦にならないことや、周りの人の反応に着目して考えてみてください。
例えばECでいえば、こんな感じでしょうか。
- 意識しなくても人より入力や出荷作業が早く終わる、ミスが少ない
- お客さんの問い合わせ対応が苦ではなく、ずっと話を聞いていられる
- お客さんや同僚から接し方が良いとよく褒められる
意識的でなくても、実は人より得意で感謝されるだけのことをしていた、というのはよくあることです。些細なことでもいいので、自分の様子や周りの人の反応に目を向けて「これはもしかして」と思えるものを整理してみてください。
自分が歩むべき道が浮かび上がってくるのではないかと思います。
心得2.自分らしさを発揮するために苦手を克服する
ここまでで幸せに働くためには自分の得意分野で人に貢献することが大事、という話をしてきました。
ただ、残念ながら得意だけでは通しきれないのが社会でもあります。つまり、苦手ともある程度は向き合っていかなければなりません。ということで、ここからは「どうすれば苦手をうまく克服できるのか」について見ていきます。
足かせとなる「苦手」を克服しよう
得意を自覚できていても、うまくそれを発揮できなければ、足踏みしているようなものです。例えば、以下のような状況だと、せっかくの長所も活かせず非常にもったいないと思いませんか。
- 接客が得意でも、顧客とのやりとりで使うメールやチャットが使いこなせない
- 商品やサービスのアイデアは豊富だけど、実現化の筋道を考えるのは苦手
苦手なことが得意を活かしたい自分の足かせになっている状態ですよね。このように、得意を活かそうとすると、どうしても苦手なことが障害としてついてまわります。なので苦手とも向き合わないといけません。
ここでひとつ参考になる例として、人気サッカー漫画「アオアシ」の話をします。この漫画は、フィールドを俯瞰する特殊な視野をもつサッカー少年アシトが、東京のエリートユースチームの監督に見出されて活躍していくストーリーなんですけど。
序盤、アシトはすばらしい才能がある一方で、サッカーの初歩的な技術は未熟で、しかも独りよがりなんですよね。だから、最初は才能をまったく活かせず、チームで足手まといになってしまう。
そんな彼が何するかと言うと、まず自分の弱点を克服するんですね。
まず蹴ったボールが狙った所に飛んでいかない。ボコボコに怒られながらヒーヒー言いながら直すわけですよね。これは、練習すれば直ります。
ただ、彼には「視野の広さ」という強みがあるんだけど、「チームメイトを見てない」みたいな、強みを帳消しにする弱点があって。これは、練習量の話ではないので、難題でした。自覚がないので。
これとどう向き合うかが中盤のヤマでした。
そういう「ヤバイ弱点」をある程度以上潰した結果、ピースが揃って、「初めて強みが発揮されるようになった」ということです。

世の中的には「人それぞれの多様性の強みを生かしましょう!」と言うんですけど、強みを発揮するための前提条件が必要なんですよね。
例えば、絶対音感がすごいあるんだけど、何一つ楽器を触ったことがないというのは、それは発揮しようがないですよね。
つまり、「自分の得意」を見つけつつ「得意を発揮するために必要な何か」も磨くのが重要なのではないかな、と思います。
ちょっと余談ですが、アオアシに関連するおすすめ本があります。
アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方: カオスな環境に強い「頭のよさ」とは
アシトは壁にぶつかると自ら考え動き、乗り越えていきます。これはサッカーだけでなく、とりわけビジネスシーンでも通用する考え方で、非常に興味深い本でした。気になる方は読んでみてください。
人に頼るときも苦手について「学ぶ」ようにしよう
とはいえ、自力で苦手をすべて克服するのは難しい。EC事業のように業務の領域が広い業界では、それだけ接する仕事の数も多くなりますから、なおさら苦手とのエンカウントが起こりやすいんです。
例えば、EC事業のマーケティングマネージャーが接する仕事を考えると、パッと思いつくだけでもこれだけ出てきます。
- 顧客データの分析
- 会社のアセット、強みの整理
- SEOやSNS運用など新規顧客開拓・コンテンツの制作
- 広告運用・予算管理
- リピーター向けのサービス、顧客ロイヤリティ向上施策
- 部下の相談対応やフォロー
うーん、たくさんあります。しかも実際はこんなものではありません。もっともっとあります。
現場であれ管理職であれ、いろんな仕事を抱えるようになると、間違いなく自分の得意や好きではないものが一定数入ってきます。なんでも得意な人などいませんから当然ですよね。なので、ときには苦手な部分を人に頼って解決することも必要になります。
ただ「誰かに丸投げ」はいけません。それが苦手分野だとしても「どうすればできるのか」ぐらいは勉強するようにしておきたいところです。何も知らない状態では相談のしようもないし、お願いもしづらいからですね。
苦手なことについて学ぶのは大変ですが、自分が得意を活かすために誰かの力を借りるのであれば、せめて勉強はして目線をあわせたり寄り添ったりする姿勢は持っておきましょう。「自分らしさで、誰かのために」は忘れずにおきたいものです。
心得3. 管理職は、弱点はあってもいいけど「埋めてもらう工夫」が必要
マネージャーや管理職など経営的な立場に行きたい方は、特に、この苦手克服というテーマが重要になってきます。
例えば、マーケティングのマネージャーになる人がいるとして。
自分の苦手分野は誰かに埋めてもらえばいいわけですが・・そもそもで、その部署あるいは経営全体の「構成要素」は何からできているかは、できなくてもいいから知っておく必要があります。
なぜなら、構成要素を知らないと「埋めてもらわなきゃ」と気付けないからです。穴が空いたままで、それに気づかない状態です。
弱点の自覚が第一歩
私も経営者をしてまして弱点だらけですが、ただ私が誇れるのは、自分が弱点だらけで、何がニガテかの「自覚」もあるところです。
何しろ電車乗り過ごすとかしょっちゅうやってるようなポンコツなので、こういうカミングアウトをすることに迷いはないし、自分の穴を埋めてくれるっぽい人に全力で頼ることも出来ます。
という事で、いろんな人と関わっていくような管理職的な役割を果たしたいならば、まず「構成要素」をある程度知っておくこと。そして、自分に埋められない要素は何で、それを誰に頼るのか、と考えること。
ポーカーに例えると、あと何が埋まればフルハウスとかファイブカードとかロイヤルストレートフラッシュになるのかと。星座で例えるなら、自分の光る星は、何とつなげるとかっこいい星座になるんだろうかと。
そういうことを、あまり自分を責めすぎないようにして、磨いていくといいかなと思います。
人として弱点も穴もあっていいし、頼ればいいんだけど、「頼るための知識」は必要なのかなあと思います。知らない・自覚がないと頼れないからです。
あとはまあ、楽しいことだけやっているわけにもいきませんので、「全然分からない」「むしろ嫌い」というテーマを、学ばなければいけないときはありますね。人生には「誰にも頼れない・自分がやるしかない」状態。
でも「人並み以上に苦手なこと」を頑張って、自分の至らなさを思い知らされるのは、不快で非効率だとしても、心が磨かれて謙虚になれるような意味はあるはずです。苦労している人の気持ちをわかるようになります。仕事人生は、成長と合理性だけじゃない。特にリーダーは、そういうのが大事だと思います。まあ、私はこう思うという話ですから、参考程度で。。
自分らしい、幸せな働き方を目指して
今回は、EC事業者の方が今後のキャリアで悩んだ際に「どのように考え、どう行動すると良いのか?」について、私なりの考えをお伝えしてきました。
自己成長にとらわれ苦しむ人が増えている気がします。自分の「好き」や「得意」を生かして、人のために役立てること。そしてできない自分を呪うのではなく、自分が得意なことで人に喜んでもらうこと。これらを取り入れてみると、年を重ねながらも自分の納得のいく幸せなキャリアを築いていくことができるかもしれません。
「自分らしさで誰かのために」という言葉、ぜひ覚えておいていただけたら嬉しく思います。
P.S
私たちはEC事業に関わるみなさんに、自分らしく、自分の存在意義が感じられるような仕事をしていただくことを目指して仕事をしています。(これが私たちの「らしさ」です)
EC事業に従事する個人としても、お客さんに喜んでもらうお店や組織としても、どちらにおいても「自分らしさで誰かのために」を発揮していただけるよう伴走します。販促や経営以外のご相談も喜んでお聞きしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
カテゴリー: ECの未来