コマースデザインの坂本です。
前回の記事「2026年のEC業界展望」では、2025年に何が起きていたのか、2026年にどう立ち向かうかを整理しました。おかげさまで多くの方に読んでいただき、ありがとうございます。
▶ 前回の記事: 2026年のEC業界展望:EC業界を襲う「トリプルパンチ構造」とは?
今回は、前回の記事を踏まえて、コンサルティングやセミナーの現場でよく聞かれる質問にお答えしていきます。
前半では「前回の記事のおさらい」をFAQ形式でまとめました。「前回の記事は長くて読めなかった」という方も、ここでキャッチアップできます。後半では「EC運営のよくある悩み」に答えていきます。仕入れ型ECの生き残り方、ブランディング、採用、AI対応、M&A・事業承継など、現場で聞かれることをまとめました。
大変な時代になりましたが、過度に楽観的にならず、悲観的にもならず、現実的な論点整理と対策について考えてみたつもりです。最後までお付き合いください。
- 目次 -
前回記事のおさらい(2026年の展望)
Q. 2025年、何が起きていたの?
A. 「マクロ経済の不調」「EC市場の不調」「楽天の不調」という3つの逆風が同時に吹いた「トリプルパンチ」の年でした。
パンチ①:マクロ経済の不調 円安による原価高と物価上昇。消費者の買い控えが進みました。2021年に1ドル110円だったのが、いまや156円。5年で40〜50円の円安です。
パンチ②:EC市場の不調 経済産業省の発表によると、EC市場の成長率は過去最低(物価上昇を考慮するとほぼ横ばい)。一部の厳しいジャンルでは、右肩上がりの時代が終わり、淘汰が始まっています。
パンチ③:楽天市場の不調 12月スーパーセールは厳しい結果でした。Amazonブラックフライデーに需要を刈り取られた形です。楽天モバイル赤字に起因する「ポイント還元の切り下げ」も尾を引いていると感じます。
詳しくは前回記事をご覧ください。
Q. 2026年、どうすればいいの?
A. 3つの原則を意識すると、対策が考えやすくなると思います。
原則1:自分が1位になれる小さな市場を見つける(ブラックオーシャン戦略)
企業経営の大原則として、シェアが高い方が収益性が高い。不景気の時期も耐え抜きやすくなります。だから自分がシェア上位になると有利です。
それは難しい?いや実は、EC市場は検索キーワードで「細分化」されています。細かい市場がたくさんある。だから、企業規模が小さくても、小さい市場規模でトップを目指せばいいんです。SEOだけでなく、運営体制も磨いて、その市場の「ヌシ」になりましょう。大手が「面倒くさい」と思う市場ほど、中小の安住の地です(ブラックオーシャン戦略)。
原則2:止めるに勝る改善なし(ジェンガ経営)
自分が1位になれる市場を見つけて磨くためには、余力が必要ですよね。なので、従来の業務は効率化する必要があります。イメージとしては、3人の仕事を2人で回せるようにする。崩れない範囲で軽量化して、筋肉質な組織を作りましょう(ジェンガ経営)。いまやAI時代ですから、工夫すると物凄い効率化もできますよ!
原則3:我慢比べを生き残る(残存者利益)
今年前半は踏ん張りどころです。今年の後半には円高に振れて、物価高が沈静化する可能性もあります。また、厳しい市場環境ではプレイヤーが減っていきます。その中で生き残った会社にお客さんが流れてくる(残存者利益)。これも経営の原則です。なので、ジェンガ経営しながら頑張って生き残っていきましょう。
要約だと伝わりづらいところがあるので、詳しくは前回の記事を読んでください。
▶ 前回の記事: 2026年のEC業界展望:EC業界を襲う「トリプルパンチ構造」とは?
Q. 厳しい中でも好調な店舗の共通点は?
A. 「販売」ではなく「オセロの四隅」を押さえていることです。
前回の記事で「二極化」の話をしました。調子がいい店舗の特徴は、「販売」ではなく「オセロの四隅」を押さえていることです。
- MD/生産管理
- 物流
- 利益管理
- 実行体制
そして、四隅を押さえている店舗は、地力で業績を伸ばしているので「まだやっていない販促施策」が沢山ある。それを実行していくと更に強くなる。逆に、販促施策を中心に頑張ってきた場合は、重要な販促施策はやり尽くしていて、残りの販促施策はあまり効かない……という構造です。
つまり、販売よりも手前の「足場固め」に労力を割いたら良いのではないかという話です。これはジェンガ経営の話にも繋がっています。
Q. 円安・物価高はいつまで続くの?
A. 今年後半には緩和される可能性があります(個人的見通しです)。
円安の主な原因は、人口減少などよりもまず「日米の金利差」です。アメリカの金利が高くて日本の金利が低いと円安ドル高、逆にアメリカの金利が下がって日本の金利が上がると円高ドル安に振れます。
日銀はデフレ対策のために長年低金利でしたが、物価高の今も未だに低金利のまま。理由はあるんですが、個人的には「物価高で大量出血しているのに生活習慣病の心配ばかりしている」ように見えます。
去年終わりにやっと少し利上げしましたが、(おそらく高市政権の積極財政の影響で)円安トレンドは変わりませんでした。今年前半は1ドル160円を通り越して、170円に近づく可能性すらあります。。
しかし、米国側で動きがあります。米国の金利を決めるFRBの議長が5月で任期切れになり交代します。FRB議長は大統領が指名するのですが、トランプ大統領は以前からFRBに対して強硬に利下げを求めてきました。となると、FRBが利下げする可能性は高まりますよね。日銀も、前回の利上げが円安是正にならなかったので、追加利上げを見込む声が多いようです。
そして、円安が緩和されれば、「国際情勢が不穏なときは安全通貨として円が買われる」という過去のパターンが復活するかもしれません。これらが噛み合えば、2026年後半から来年には1ドル130〜140円台の円高になり、物価高が和らぐ可能性が・・あるかも・・と思います(希望)!
つまり:
- 今年前半:円安がさらに悪化する可能性
- 今年後半〜来年:円高に転換、物価高が沈静化!かも!
「止まない雨はない」ので、ジェンガしながら雨宿り、ですね。
EC運営のよくある悩みFAQ
ここからはセミナーやコンサルの現場でよくいただく相談について、FAQ形式で解説していきます。
Q. 仕入れ型ECの生き残り方は?
A. 商品を売るだけでなく、「サービス」を提供できないか検討してみてください。
同じ商品を扱っている競合が多い中で、どう存在意義を示すか。ひとつ考えてみていただきたいのは、中間加工やサービスを提供する余地がないかということです。
例えば、顧客にとっての選択支援や専門的なアドバイスを提供したり、無料相談を受けるなど。「特にアピールしてないけど、当たり前にやってるよ」ということなら、それをサービスとして打ち出せないか。そうすると価格だけで単純比較できなくなります。
実際、前述の経産省のデータを見ると、今でも成長率を保っている領域は「手のかかる、昔からEC化率が低かったジャンル」なんです。つまり、手間がかかるからこそ競争回避ができる。まさにブラックオーシャンですね。
こういった付加価値型のアプローチは、特に本店(自社EC)に向いています。
▶ 関連記事: 仕入れECが差別化するなら「エージェント化」
Q. ブランディングって重要?
A. 今こそブランディングがやりやすくなった、と考えています。
AmazonやKindleでマンガを買うとします。昔の人気マンガは有名出版社が多かった。でも今、ネットでマンガを買う時、どこの出版社か気にせずに買っていませんか? AIに買い物を相談したときも、モール関係なく商品を紹介してきます。何と言うか「出自」が問われなくなってきたと感じます。
かつて、Ankerは元々Amazonの出店者でした。アンファーも元々楽天の出店者でした。モールのテナントでも、価値と体験を積み上げることでブランドは作れます。
コツコツとブランディングして「純粋想起」を取っていくことが重要だと思います。「○○といえばあのお店」と思い出してもらえる状態を作る。モールをまたいでAIに選ばれていくことも期待できます。
▶ 関連記事: ブランディングは「集客力」より「引力」
Q. 採用が大変。どうすれば?
A. ECで販売するのと同じくらい、採用マーケを頑張ると全然変わります。
「人が採れない」という声、本当によく聞きます。特に製造や物流の現場。最低賃金の上昇ものしかかります。
弊社は経営全般をサポートするので、実は採用周りの相談を受けることもあります。で、気づいたことがあります。ECで販売するのと同じくらい採用マーケを頑張ると、全然変わってくるんです。
例えば、求人ページの写真を差し替えて雰囲気が良くなるだけで、採用応募者の反応が全然違ってきます。商品販売が価格だけで決まらないのと同じように、求人も給料だけでは決まりません。つまり、商品ページと同じで、会社の見せ方も大事なんです。
余力があれば、CIとか、企業のブランディングを少し考えてみてください。採用だけじゃなくて、BtoBの販路開拓にもつながってくるんです。「あの会社、信頼できそう」という印象は、取引先選びにも影響します。
今どき、コーポレートサイトや採用サイトもAIでスムーズに作れちゃいます(そこに何を書くかはセンス次第ですが)。だから、比較的余裕がある人は、今後のために、商品と企業のブランディングを同時に考えられるといいですね。
Q. AIに選ばれるためには?
A. 商品説明文の「テキスト」を充実させていくことです。
「AIで買い物する時代が来る」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、実際私もAI経由でモノを買うことが増えました。
前提として「調べ物をする際にGoogleを使わなくなった」ので、調べ物の流れでAIに「じゃあその商品を探してください」と聞きます。電球が切れたとかパソコンの備品を買うとか、そういった技術的な質問をしたあとに買う傾向ですね。
ちなみに、ChatGPTが提案するウェブサイトのドメインで、楽天とAmazonは結構上位に出てきます。じゃあどうすればAIが紹介してくれるのか?
答えは、商品説明文の「テキスト」を充実させていくことです。なぜかというと、人間は画像を中心に見ますが、AIはテキストを中心に見るから。モールSEOでは「キーワードを沢山羅列する」のが定番でしたが、今はもう自然文で、意味が分かる形で、たくさんの文章を書いていくべきでしょうね。当然手間がかかるんですけど、そこはAIでやってしまいましょう。「商品説明の詳細情報をAIで作る」業務プロセスを確立した事業者はかなり増えました。弊社の支援先でもよくやってますよ。
ちなみに、最近のGoogleは、シーンを伝える写真や動画が充実すると検索順位が上がる傾向だそうです。楽天であれば、画像20枚分をフルで使い切る。どんな写真がいいかわからなければ利用シーンを伝える、といったことも重要です。
ただ、今のところの考え方としては、AIに紹介してもらうための施策というよりは、「モールSEOのため、商品説明文のテキストに多くのキーワードを自然文で盛り込みつつ情報を増やす。そうするとAIも紹介しやすくなる」という程度がおすすめです。あと、本質的には「オセロの四隅」やジェンガのほうが重要です。
Q. M&Aってどう?事業承継ってどう?
A. 2026年はこの話題がさらに増えてくると思います。
知り合いの大企業役員から、「いいEC事業者があったら教えてね」という話を何度かもらったことがあります。まだ実現はしていませんけど、有望なお店であれば一緒になりたい大企業はいるようです。大手は大手の社内文化があるので、「個性のある強い機動力のあるお店を作るのは難しい」。なので、「買ったほうが早い」とのこと。
ヤッホーブルーイングはキリンと資本業務提携をしたことで、製品がコンビニに置かれるようになりましたよね。他にも大手と一緒になって、これから活躍しそうだな!というケースを見ます。
※一方で、怖い会社に買収されて、幹部社員が全員辞めてしまい、業績も悪化しているというケースも実際に見たことがあります(怖い)
ところで、M&Aや事業承継では「当社がどういう事業をどういう手順で運営しているか」を言語化しないと、仕事を引き継いでいけませんね。
「人に仕事を引き継ぐ」のは、まず定型的な業務から始めます。例えば出荷とか受注処理。次に、判断基準を言語化して判断業務を引き継いでいきますね(デザインとか施策とか)。だんだん難しいことを引き継いでいって、その究極が、「経営そのものを引きつぐ」ということなんだろうなと思います。
つまり、定型業務も引き渡せていない会社では、M&Aや事業承継はなかなか難しいと思うんです。だから、いつか誰かに仕事を渡す可能性があるなら、まずはオペレーションから言語化していき、上位の判断基準も言語化していく。不要な業務をカットしたり、OMS(一元管理ツール)やAIの活用、自動化も重要ですね。
弊社はそのようなお手伝いもしていますが、最近支援先で、まさに事業承継のシーンに立ち会いました。これは素晴らしい事例で、記事化したくなって取材してきました。近いうちに記事化します。大事なのは価値観と思いの引き継ぎなんだな!と思いました。
Q. ECを続けるか悩んでいます
A. やめるのも立派な選択肢です。でも、二択ではないはず。
2020年に書いた記事から抜粋します。
コレを書かないと嘘になるなと思って一応書きます。ネットショップを辞めるのだって立派な選択肢です。負けではない。こういうのは「出口戦略」といいます。
昔、商店街の小さな米屋さんをコンサルしました。色々やって売上は伸ばしたんですが、お米は価格競争がすごいので、やっぱり難しい、とECを閉めることにしました。
その後、報告をいただきました。「ECで学んだスキルでチラシを作ってポスティングしたら、お正月のお餅が沢山売れました。ECを学ばなければ、こういうアイデアも、チラシを作ることも出来ませんでした」とのこと。嬉しかったです。(中略)
別に、古典的なECに拘る必要はないと思うんです。いまの時代、いわば、あれもこれもなんでもECみたいなもんです。EC経験があれば、EC店舗への卸なんかも考えやすいでしょうし、何かしら支援サービスも出来るでしょうし。無駄にはならないと思います。
▶ 引用元: 2020年、EC業界の展望と「中小事業者は何を考えるべきか」後編
物事は常にそうですが、やめるかやめないかの二択っていうことはなく、いろんな選択肢があるはずです。色んな解釈ができます。
誰しもそうですが、自分だけで悩むとかなり煮詰まっちゃうので、誰か信頼できる人に相談していけるといいですね。あと、AIに相談するのも意外と良いかもしれません。
おわりに
前回の記事と合わせて、2026年のEC業界展望をお伝えしてきました。
外部環境がなかなか厳しい、という話をたくさんしました。体調が悪いときに「自分が何の病気なのか」が分かると、体調は悪いままだけど、ちょっと気持ちが楽になりませんか。悶々と悩まずに済むというか。今回の記事も、「なぜ調子が悪いのか」「業界として何が起きているのか」を整理することで、少しスッキリしてもらえたらいいなと思ってます。
外部環境はコントロールできないので、適応していくしかないですよね。コロナの時期もそうでした。コロナでとにかく良かった、という人もいましたが、全然売れなくなっちゃった人もいたんです。例えばフォーマル系の商材とか。
そういう方々は、コロナの時期には「コロナでも売れる商品開発」に取り組んで、コロナが終わると、新しく始めた商材と従来の売れ筋の両方が売れるようになって、結果的に調子が良くなった。支援先で、実際にそんなケースがありました。
止まない雨はないし、外部環境はまた変わります。外部環境に適応しながらコツコツとやっていくと、変わった後はずっと良くなるかもしれません。特に社内の体制を軽量化していく「ジェンガ経営」は、外部環境と関係なく取り組めますよね。ジェンガしながら雨宿りして、頑張っていきましょう。
今年も皆さんのお役に立てる情報を発信していきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします!
PS
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弊社のEC運営本が1冊まるまる頭に入っていて、コンサル的な会話をするように設定しています。AIに相談すると、私が裏でこっそり情報を見ている・・なんてことはありません!騙されたと思って、色々話してみてください。
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カテゴリー: ECの未来




