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ネットショップの定番「入口商品」戦術は、ほぼ失敗している

こんにちは、坂本です。

楽天・ヤフー等のネットショップ販促で、定番の施策に「入口商品」を作るという考え方があります。低価格の商品を用意し、たくさんの人に買ってもらい、その中の一部がリピーターになることを期待する・・というものです。

ただこれ、設計が悪いと、ムダな安売りで終わってしまうケースも多いんです。そこで今回は、「入口商品で失敗するパターン」の紹介と「新しい入口商品の考え方」をお話します。

「入口商品」とは何か

ネットショップの「入口商品」とは

「入口商品」は本来、フロントエンド商品と呼びます。これは、単品通販など昔ながらの通販でよく使われていた言葉です。

「フロントエンド商品」は利幅が低くて、その後に買ってもらう「バックエンド商品」で利益を稼ぐ、という仕組みです。これらはセットで設計します。化粧品や健康食品のトライアル商品、ウォーキングデッドや24など海外ドラマの「初回レンタル無料」、デアゴスティーニの「初回半額」などが有名ですね。

昔、私が楽天のECC(店舗の担当営業)だった頃、この手法は有効だからECでももっとやりたいなーと考えました。広めるにあたり、「フロントエンド」はカタカナで分かりづらいから、「入口商品」と呼ぶことにしました。私はECCとしては元々化粧品や健康食品の店を多く担当していたので、単品通販に影響された思いつきです。

そんな経緯で、楽天社内やEC業界で「入口商品」という呼び方を始めたのは、たぶん私だと思います。2006年ごろの話です(もし自分のほうが早いという人がいたらご連絡下さい)。あちこちの資料に書いているうちに自然と広まっていきました。

※ちなみに昔から「お試し商品」の概念はありましたが、「入口商品」のほうが意味としては広いので、別物として作りました。初回限定セールなど幅広い意味で使っていました。

「入口商品」で失敗するパターン

格安の「入口商品」を作ると、よく売れます。それまでどんなに工夫してもピクリとも売れなかった店が、どんどん売れるようになっていきました。リピーターも増えて、売上がどんどん上がっていきます。仕事も楽しくなります。盛り上がります。

しかし。なにかがおかしい。とあるケーキ屋さんいわく「入口商品は売れる」「普通の商品が売れない」そして「入口商品ばかりリピートされている」

考えてみると当たり前の話です。

お客さんがケーキを半額で買うと満足しますし、また買おうと思いますが、「じゃあ次は倍の値段で買いませんか」と言われると、それはいらないわけです。2倍に値上げされて、 むしろ損した気分になります。

「入口商品」がうまくいく条件

そもそも、「入口商品」戦術が成り立つには、一定の条件があります。

いくつかありますが、たとえば「続けないと意味がない商品」であること。ダイエット食品を無料で試して、「美味しかった・続けられそう」と思えたとしても、お試しの1回では痩せませんよね。続けないと意味がありません。

海外ドラマも同様です。第一話だけ見て面白くても、続けないと意味がありません。化粧品も同じです。肌が潤った・・けど、続けないと意味がありません。続けないと意味がないから、リピートするんです。

このように、初回を安くすればリピートしてくれる、という安直なものではなく、全体を見越した設計が必要なんです。

「儲からない入口商品」だけが売れている状態は「成功」とは言えませんよね。利益の出る商品が売れてこそ成功です。そのために大切なのは、前述の「バックエンド商品」や、そこに繋ぐ「引き上げ施策」の設計です。全体を見越した設計がないと、(主観ですが)大抵失敗します。

しかし、楽天やYahoo!などモールでの「入口商品」は、そういった設計を考慮せず「売れない店の景気づけセール」として定着しまった感があります。「入口商品(初回購入のハードルを下げた商品)」を作るべき、というフレーズだけが一人歩きしてしまった感じです。

もう12年前の話ですが、あのころ半端に進めたことを、いまだに反省しています。健康食品や化粧品の方法論が全ジャンルで通じるわけがないですよね。。

※詳しくは黄色本をお読み下さい。もう8年前に書いた話ですけど、基本は変わりません。

「新しい入口商品」の話をします

固定観念を外して考えましょう。

入口商品は、別に安売りしなくてもいいんです。いろんなやり方があります。

たとえば、送料別で「同梱してもらう前提の入口商品」や、一旦入口商品を見せておいて「いきなり本商品を買ってもらう」方法、入口商品というか「目玉商品」をフックに店内を回遊してもらい通常商品を買ってもらう等、色々な戦術があります。

今回は、「新しい入口商品」のヒントについて紹介してみます。
そのまま真似られるものではありませんが、頭を柔らかくするきっかけになればと思います。

事例:「新しい入口商品」の体験談

私には息子がいます。現在2歳半。

私は、彼を風呂に入れる係です。以前、彼は私とお風呂に入るのを嫌がっていました。母親と入りたがり暴れたり泣いたりします。対策として「お風呂で読める絵本」を用意して、気を引くことにしました。効果はてきめん。嫌がらなくなりました。

絵本で「興味が成長する」

ちなみに、救世主となった「お風呂用の絵本」はコレ。車と電車の絵本です。トミカのミニカーと、プラレール(電車のおもちゃ)がたくさん載っています。

パトカーや新幹線など、たくさんの車・電車のおもちゃが載っている「トミカ・プラレール おふろぶっく 」

出典:トミカ・プラレール おふろぶっく

息子はすごい勢いでこれを読んで、いろんな車種を覚えました。道を歩いていても、「パトカー」「救急車」はおろか、「ミキサー車」「ゴミ収集車」までをも、指を差して言うようにまでなりました。今や「消防車」ではなく「ポンプ車」と「はしご車」を区別するレベルです。

毎日お風呂でトミカの絵本を読んでいるうちに、子供はどんどん車や電車(と、トミカ/プラレール)が好きになっていきました。すっかりのりもの好きになった彼は、おもちゃ屋に行ってミニカーやプラレールを見ると、夢中です。ほしい車を手に持ってくるので、少しずつ家にトミカが増えていくことになります。

絵本に擬態した「カタログ」

そんなある日、風呂に入っていて、私は気づきました。

「・・これ、よく見たら、絵本じゃなくてカタログだよな・・」

いろんなミニカーの写真と名前がずらっと並んでいますよね。

車や電車の写真がずらりと並んだ、まるでカタログみたいな絵本

ああ、もうカタログにしか見えない。絵本のお値段は、1300円ほど。全10ページ。カタログ。いい値段のカタログですね。

しかも、父親(私)は、毎日毎日カタログをめくってトミカの宣伝をしているのです。セールスマン状態です。タダ働きですけど。そして、読めば読むほど、子供も親もトミカが欲しくなる。

これ、入口商品ですよね。お風呂に仕掛けられた、トミカワールドへの入口。
トミカ恐るべし。

新しい「入口商品の考え方」

モノより「文脈」

普通、宣伝って、宣伝する側がお金を払って、お客さん側は無料で見ますよね。この話の面白い所は、お客さん側(私)が、お金を払って宣伝を見ている点、そして宣伝する側が、タダで宣伝して儲け、セールスマン(私)をタダ働きさせ、ミニカーがたくさん売れて、儲けている点です。

入口商品は、多くの場合「自社商品を一旦安く売って、次からは正価で買ってもらう」という理屈で説明されますが、この事例では、まったくそうではありません。安く売るどころか、結構良いお値段ですよね。

一方、ミニカーを無料で(もしくは半額で)配れば、次からミニカーをコンスタントに買ってもらえるのでしょうか。そうはならないでしょうね。。

なぜこんな事が起こるのでしょうか。

入口商品とリピート商品(フロントエンド商品とバックエンド商品)の設計は、話がつながっていさえいれば、どんな形でもいいんです。別にセールから始める必要はない。頭を柔らかくして、お客さんの心理を想像して、工夫したいものですね。

ちなみに、我が家は、いまやお風呂マットもトミカです。ジオラマ写真とか載せそうなものですが、例によって巨大カタログです。一貫してますね。確信犯です。しかも、このお風呂マットはトミカの通し番号つき。トミカはたくさんありますが、番号で探せば購入もカンタン!という徹底ぶり。私はほぼ毎日、商品カタログの上で息子を洗っているわけです。トミカ恐るべし。。

乗り物の写真・名前・通し番号までついた、まるで巨大カタログのような、お風呂マット

出典:浴室マット「トミカ」くるま大好き

※そういえば映画「スターウォーズ」のグッズも似た構図だな・・。スターウォーズのTシャツを着て道を歩くと、自分の体を広告媒体にして、無料で宣伝しているわけですからね。うーむ。あ、ディズニーがマーケティングをするようになってから、やたらとタイアップが増えましたね。

買い物は連鎖する

トミカワールドは、更に広がっていきます。

プラレールもミニカーも、いろいろ買って車体が増えてくると、拡張するためにアレコレ派生購入が発生します。線路を買い足し、道路を継ぎ足し、駅やパーキングやガソリンスタンドや警察署や消防署・・・

商品自体に、「買えば買うほど、更に必要になる」という構造があるわけです。すげえ。

ちなみに、ミニカーや電車だけでなく、その脇に置いて遊ぶための人形もありますよ。

プラレールのwikipediaによると、

他の玩具に比べて、女性型プラキッズ(新幹線パーサーや女性客など)が比較的多くリリースされているのは、プラレール「人形あそび」シリーズのコンセプトであった「人形で遊ぶ女児ユーザーを取り込む事」を継承しているためである。

女児ユーザを取り込む!なんというか、売っているのはモノじゃないんですね。プラットフォームビジネスのようです。

というか、もはやトミカ経済圏です。
参った。(プラレールの方が、レールの組み方などで沼な感じもしますが。)

もっとお客さんを観察しよう

うーん、わかったようなわからないような話になりましたが、
あなたの商品をお風呂用絵本にしましょう、って話ではないですよ。

さて、これから、「入口商品」をどう考えればいいと思いますか?

たぶん、入口商品だから安売りしなきゃとか、カタログだから無料で配らなきゃ、というのは思い込みで、いろんな形があり得るってことですよね。お客さん側さえハッピーなら、タダ働きだってしてもらえるわけです。

じゃあ、入口商品とリピート商品の関係を、上手に設計するには、どうすればいいか?

大事なのは、人間観察。特に生活観察だと思います。

「無料であげれば欲しくなる」って、人間を機械や動物のように見ていますよね。観察できていません。

一方、お風呂絵本を考えた人は、たぶん人間の生活を観察していて、よくわかっているような気がします。トミカ好きな子供と親の生活環境、一日の流れ、気持ち、興味、困りごと・・を想定して、このアイデアが出たんじゃないかなあ。想像ですけど。

もう1回言います。大事なのは生活観察です。
もっと、お客さんを観察しましょう。

お客さんの生活を深く想像し、対話してみることは、仮に入口商品のアイデアにつながらなかったとしても、必ず商売のヒントになります。おすすめです。

PS
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カテゴリー: 売れる商品の作り方

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