こんにちは。コマースデザイン代表の坂本です。
今回は、たまっている仕事や厄介な仕事が一瞬で片付いてしまう、魔法のような仕事の仕方、つまり「華麗なる手抜き」について。
華麗に手を抜く上で最も大切なポイントは、実は考え方にあります。
日頃から「手抜きできる方法が何かあるのではないか?」と考える習慣があると、仕事はとても早くなります。「前向きに勇気を持って、手抜きについて考えていこう!」と、皆さんに呼びかける気持ちでこの記事を執筆しています。
ではここから、華麗に手を抜き、仕事を圧倒的に効率化させるズルい方法や、その考え方についてご紹介します。
- 目次 -
はじめに
本記事では、華麗に手を抜いて、難しい問題をサクッと解決した鮮やかな事例を、以下の順にご紹介します。
- 1.有名な事例
- 2.あまり知られていないが、マネしやすい具体的な事例
- 3.考え方のヒントになる事例
そして最後に、手を抜かないで真正面から正々堂々と突撃し、ムダに手間をかけてしまう心理について解説。「こういう傾向があるから気をつけようね」という注意喚起をします。こちらについては、「手抜きはすごく効率的だから日頃から考えよう」という啓発活動と捉えていただければと思います。
事例から「華麗なる手抜きのコツ」を考えよう
それでは早速、具体的な事例を見ていきましょう。
我々がすぐに真似できるような事例ではありませんが、歴史的なエピソードが2つあります。実際にそのようなことが起こったかどうかはさておき、有名なエピソードで分かりやすいので、ご紹介します。
1.有名な事例
まず、みなさんも一度は耳にしたことがある、歴史上の人物の事例をご紹介します。
エピソード1:コロンブスの卵
アメリカ大陸にたどり着いた、初めてのヨーロッパ人だと言われる、コロンブス。
彼の有名なエピソードが「コロンブスの卵」です。この言葉は有名ですが、「コロンブスの卵は、どのような内容なのか?」はあまり知られていないんですよね。そこで分かりやすくご紹介します。
コロンブス「皆さん、この卵を立てることはできますか?」
周りの人 「できません」
コロンブス「できないですよね。実は簡単なんですよ。」
コロンブス(卵の先端部分を潰して平たくして…)「はい、立ちました!」
周りの人 「えっ!ズルくないですか?」
コロンブス「地球の裏側に行ってアメリカ大陸に着くということは、そういうことなんです。」
このように言ってコロンブスはドヤった、というのが、コロンブスの卵のエピソードです。
ポイントは「できない、無理」と言っている人たちは、「卵を潰す」という選択肢が最初から思い浮かんでいないこと。
これに対してコロンブスは、「別に潰してダメとは言っていないよね」とゆで卵の先端を潰して、暗黙のルールに縛られなくていいことを見せています。
エピソード2:ゴルディアスの結び目
もう1つ、「ゴルディアスの結び目」というエピソードがあります。これはアレキサンダー大王という人の伝説です。古代ギリシアの半分を世界征服した、チンギスハンのようなすごい人です。
どんなエピソードかというと、とある所にパズルがありました。
神殿に荷車が縄でグルングルンに結びつけられていて、「この結び目をほどいた人は、世界の王者になるであろう」みたいな謎の伝説がセットで添えられている…という状況です。
周りの人「過去に何人もチャレンジしたけど、その結び目をほどく者はいなかったという伝説があるんだって」
アレキサンダー「へえー、めちゃくちゃ簡単じゃない?」
アレキサンダーはそう言って剣を取り出し、結び目をバサッと切ると、
アレキサンダー「はい!ほどきました」
周りの人「おいおい。ほどけてはいるけど、そうきたか…!」
そしてその後、実際にアレキサンダー大王は世界の覇者となったという伝説です。
エピソードの共通点からわかること
この2つのエピソードに共通していることは、
- 「暗黙のルールを考えて、それに縛られていないか」
- 「実はそんなルールなんてないのだから、先入観を取り払って幅広く選択肢を考え、大胆に手抜きしよう」
ということですね。みなさんも「自分の中で無意識のルールを作り、それに縛られてしまっていないか?」を、ぜひ意識してみてください。
2.真似しやすい事例
次に、我々が真似しやすい事例もいくつか紹介します。
エピソード3:Amazonの企画書
Amazonの創業者で、社長のジェフ・ベゾスさんの会社運営の事例です。
Amazon出身の方が、「Amazonはこういう風に仕事をしているんだよ」という本を何冊か出しているのですが、その中の一つに載っている、Amazonという事業が生まれたときのエピソードです。
企画書と言えば、「すごい事業を作るからには、分厚い企画書を書かなければいけない」と思いがちですよね。
暗黙のうちに、
- 「すごい事業を作るなら、すごい企画書を書かなければいけない」
- 「事業のすごさと企画書の分厚さは比例する」
と考えてしまいがちですが、ジェフ・ベゾスが最初に書いたAmazonの企画書は、レストランの紙ナプキンにその辺にあったペンでパッと書いたものだそうです。
それが今でも伝説の企画書として、語り継がれています。興味がある人はぜひ検索してみてください。「こんな事業を作ったらうまくいくんじゃない?」という簡単な図解を書いたものが、実際に非常にうまくいったという事例です。
エピソード4:ヤフオクの企画書
Amazonと同じように、スーパー手抜き企画書なのにすごい事業ができた、有名な事例があります。
それは、孫正義のヤフオクの事例です。
孫正義はヤフオクを作る際、たった1行のメールでヤフオクを作ったそうなんです。
どのような流れだったかと言うと、彼は開発屋に、「これと同じものを作ってください」とeBay(アメリカのオークションサイト)のURLを載せてメールを送りました。そして日本版eBayこと、ヤフオクが誕生したわけです。
つまり、「同じものを作ってください」という手抜きをしたことになります。「これをパクれ」ということですから、分かりやすいですよね。
これらの事例から、「すごい企画を作るには、企画書をきちんと書かなきゃいけない」と思いきや、「全くそうでもない」ということを感じていただければと思います。(企画書を書く機会は、実際はそんなにないかもしれませんが…)
エピソード5:Amazonは新商品やサービス開発方法
他にも、本を読んでいておもしろいなあと思った事例があるので、ご紹介します。
一般的に、新しい商品やサービスを作る際には、
- まずプロトタイプを作り、お客さんに販売する前にモニターを募集する。
- モニターに使ってもらって声を集め、ブラッシュアップする。
- 作り上げた新製品を売っていく。
と考えがちですよね。しかし、どうやらAmazonはそうではないらしいのです。
では、「Amazonはどうやって新商品やサービスを作っているのか?」と言うと、商品も何もない状態でプレスリリースを書くんだそうです。そしてプレスリリースを書いた後、FAQを書く。
この2つを行って、その商品にニーズがあるかどうかを判定し、「いける!」となったら、真面目に考えるんだそうです。
ネットショップの仕事で言うと、「新商品を作る前に、商品ページを作って売る」みたいな感じですね。社内向けの企画書ではなく、お客さんが見る商品ページのような形で、「こんな商品ができました。買う?」と、まずはお客さんに見せてみる。
坂本「こんなの作ったよ」
お客さん「めっちゃほしい!」
坂本「ごめん、この商品はまだないんです。でも、ほしいという気持ちは伝わりました。考えます。」
という感じです。プログラムのアプリを作ったり、ウェブサイトを作る際も、同じことが言えますね。
紙とペンでモックアップを書いてみて、実際にノートPCの上に紙を置いてみて、実際のWebサイトだと思って「フムフム」と言って見てみる…という方法です。
この方法は色々なことに応用がきくと思います。「ちゃんとプロトタイプを作らなきゃ」と考えるのではなく、「まずはハリボテでいろいろ動いてみる」ということが、華麗な手抜きの1つの方法ではないかと思います。
こういうことをマーケティング用語で、「ドライランテスト」とか「ドライテスト」と言います。興味があったら検索してください。実在しない商品を売ってみて、
お客さん「ほしい!」(と思って、購入ボタンを押す)
店長さん「ごめんなさい、こちらの商品は販売していません。」
というように、実際には販売していないけれど、「購入ボタンを押した」ということがコンバージョンレートになり、実在しない商品のコンバージョンレートが測れるという方法です。
「モラル的にどうなんだ?」という話はありますけれどね(笑)「嘘をついても怒られない友達相手に試す」など、工夫できるかと思います。
お伝えしたいことは、具体的な方法ではなくて、こうして「大変な仕事をスキップして、手を抜くための考え方はいろいろあるよね」ということです。
3.人の心を動かす事例
次は、「自分ではなく誰かにやってもらう」事例をご紹介します。
エピソード6:トムソーヤのペンキ塗り
「トムソーヤのペンキ塗り」というエピソードがあります。トムソーヤは、アメリカの昔の小説ですね。
親から「ペンキを塗りなさい」と、仕事を振られた主人公。木で作った塀か何かにペンキを塗る仕事を頼まれて、「面倒くさいなあ」と思いながらもやっています。
「何とか手を抜きたいなぁ」と思った彼は、とても楽しそうにペンキ塗りを始めました。そこに、彼のお友達が通りかかります。
友達 「何をしているの?」
トムソーヤ「めっちゃ楽しいけど、俺しかやれないからね。ああ、楽しい!」
友達 「ええ、教えてよ〜!」
トムソーヤ「これは、こうやってこうやるとこうなって、とにかくめちゃくちゃ楽しいんだ!」
なんて、思ってもないことを言うわけです。
友達 「ねぇ、ちょっとやらせてよ」
トムソーヤ「うーん。やらせてあげてもいいけど、料金がほしいなぁ。」
と言って、ビー玉やコマなど、子供のオモチャをもらいます。
トムソーヤ「じゃあ、やらせてあげてもいいよ。君はこっからここね。やりすぎないでね。」
みんな面白がって、ペンキ塗りをした、という話です。
「やりたくない仕事を楽しく見せて、他の人にやらせる」というズルい話ですが、「自分ではない誰かにやってもらう」という点で参考になる事例ですね。
また、事業という視点でも、セルフサービス化は一つのブレイクスルーになると思います。こちらの記事で、「相手を巻き込むペンキ塗り経営」について、詳しく説明しています。ご興味のある方は読んでみてください。
4.セルフサービス化の事例
ではここから、事業にセルフサービス化を取り入れた事例を見てみましょう。
焼肉屋の場合
当たり前ですけど、焼肉屋は肉を焼いていますよね。
一般的に考えたら、肉を焼くのは従業員の仕事です。レストランのスタッフが肉を焼いて持ってきますよね。
これをセルフサービス化すると、「焼くのが楽しい」という前提にして、お客に肉を焼かせることで、サービスを成立させます。
焼肉屋さんは原価が高いので、儲かる商売かということは置いといて、サービスコストはかなり割愛できますよね。これは、回転ずし屋さんにも同じことが言えます。
スーパーマーケットの場合
スーパーマーケットも同じです。お客さんが自分でカートにピッキングして、決済の場所まで持ってくるわけです。
通常ならスタッフが倉庫をグルグル回って、日々ピッキングして梱包していますが、スーパーマーケットという概念は、「倉庫の中をお客さんがグルグル歩いて、自分でピッキングして決済する」というセルフサービス化を取り入れていますね。
このようにお客さんに「自分でやらせればいいじゃない」ということを、何か楽しいメリットとつなげることによって、「事業としても成立する」ということがあり得るわけです。
マッサージ屋の場合
私が出張中に見かけた、マッサージ屋さんの事例です。
講演をよくするので腰が疲れやすく、マッサージ屋さんに行くのですが、とあるマッサージ屋さんの価格が安かったので、「安いですね」と言ったところ、こんな答えが返ってきました。
「ここは、学校を併設しているんですよ。 マッサージが学べる学校を作り、学びに来た学生は、実際に現場で練習をすることができます。 そのため、マッサージ料金を安くできるんです。」
これはどういうことかと言うと、学生さんに教えてあげてお金をもらう。さらに、学生さんに安く働かせて儲ける、という構造です。
ズルいですけど、学生さんにメリットがあるし、マッサージも普通より安いのでメリットかなあと思います。これも立派な華麗なる手抜きの一つですよね。
セルフサービス化を成立させるコツ
こうしたサービスを成立させるには、完全に自己都合で、一旦妄想してみることから始めてみましょう。そしてその後に「この妄想を、お客さんのメリットになるような見せ方や考え方に変えられないかなぁ」と考えていきます。
例えば、
「ペンキを塗りたくないな…」
「自分でマッサージやるのが面倒くさいしやりたくないから従業員を雇うけど、なるべく高い賃金を払いたくない。できれば従業員からもお金をもらいたいなぁ。」
「お客さんに自分でピッキングして働いてもらいたいな。」
なんて妄想があったとします。
こうした妄想に「手抜きを前向きに捉える」ということが、大事なポイントになってきます。
5.「システム化の罠」の事例
最後に、私が実際に経験した事例もお伝えします。
私がついやってしまいがちなことに、「何でもシステム化する」ことがあります。多少プログラムが書けるので、すぐに「これはシステム化できる!」と考える癖があるんです。
ただ、システムを作るとなると、簡単なやり方をしても結構回りくどくなりがちですよね。だから、よく社員の人から「それ、手動でよくないですか?」と言われるんです。
実は「効率的にやらなければ、と感じることでも、案外手動やローテクニックでいい」ことも、あるあるな事例です。「ローテクで慣れて、どこがポイントか分かってきたら、後からシステム化したらいい」と考えると、ここでも華麗なる手抜きを叶えることができます。
「華麗なる手抜き」を実現する上で大切な心得
エゴを叶える工夫
「華麗なる手抜き」を実現する上で、大切なポイントがあります。
それは、一般的にはあり得ないエゴを、まずは妄想すること。
「商品を作るのが面倒くさいから、一旦先にページを作って売れるかを判断してから、作りたい」
「従業員からお金もらえたらいいなぁ」
そして、その妄想を成立させるための工夫を考えるということです。
自分にブレーキをかけない
こうした手抜きは、「言われてみれば、そうだよね」ということが多いですが、案外、私達は真面目にやろうとする心理バイアスが働いている気がします。
これはいわゆる「夢見るバンドマン」に近い心理ではないかなと思います。「まだ本気は出していないし、まだチャンスはある」と思いながら、ずっとやり続けている、みたいな状態ですね。
「いけるかいけないか、早めに白黒つける」ことをせず、「この商品は売れるかもしれない」「この商品ができたら売れるかもしれない」と言いながら、ずるずると先延ばしにしてしまう。
これは、「この商品はダメだった」という、残念な結論に至ることを後回しにするために、きちんとやろうとする心理なのではないかと思います。
コロンブスの卵の事例のように、自分で自分にブレーキをかけているケースは、実は多いのではないでしょうか。
「これができたらすごいぞ!」と思いながら、「大したアイディアではなかった」とわかることを後回しにしてしまう…。皆さんがどうかは分かりませんが、私自身にはこういう経験があります。
だからこそ、「”実はアイディアがダメだった”ことを明らかにしたくなくて、先延ばしにしていないか」を自分に問いかけながら、そうでないなら早めに白黒をつけること。
そのために、大胆にお他の人に仕事をお願いしたり、人が喜んで手伝ってくれるようなアイディアを考えてみたり…色々と工夫をしてみるといいですね。
まとめ
たくさんのエピソードと共に「華麗な手抜き」をする上で大切な考え方について、解説しました。
我々は知らず知らずのうちに、「常識」というブレーキをかけていることが多々あります。だからこそ、この記事で紹介したようなちょっと非常識な方法で、「打開する方法はないかなぁ」と考えてみてください。
その時は完全に自己都合で、「こうなったらいいのにな」と1回妄想してから、実現する方法を探ること。このような考え方の習慣を持っていただくと、仕事が一瞬で早くなるような裏技を見つけられるかもしれません。
P.S.
…ということを言われて、頭ではわかっていても、なかなか慣れ親しんだ自分の仕事のやり方って、変えられないですよね。
こういう時にいると役に立つのが、第三者の存在です。
社内のみなさんは、現在の仕事の仕方に慣れているので、我々のような外部のメンバーが首を突っ込むことによって「これって実は、やらなくてもいいんじゃないですか」「簡略化できるんじゃないですか」というように、客観的な視点からアドバイスを提供できます。
「社外の人の目線も活用しながら仕事をする」と、新しい伸びしろや手抜きポイントが見つかるかもしれません。実際に「手抜き」で、業務を効率化した事例もあります。
弊社は、このような感じで EC事業のコンサルティングを行っています。
弊社にご依頼いただくと、日々のコンサルの中で「華麗なる手抜き」のヒントが見つかるかもしれません!ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
カテゴリー: EC業務の効率化