【後発店舗の運営戦略 #1】「自己客観視」を身につけよう

こんにちは、坂本です。

今回は、これからECに参入しようとしている方・最近ECに参入した方に向けて、「後発店舗のネットショップ戦略」をお伝えします。

すでに世の中にはたくさんネットショップがあり、ライバルが多くて入り込む余地がないように見えるかもしれません。だからこそ、後発のネットショップには「後発ならではの方法」が必要になります。ここでは、「ライバルが多い中で、後発店舗がどう立ち回るか」についての考え方を紹介していきます。

全4回のシリーズ記事です。第1回目の今回は「自分の店を客観的に見る」姿勢について学びます。何をするにもそうですが、まずは「自分自身がどういう状態かを知る」ことが大切。埋もれないお店になるための第一歩です。どうすれば客観的な目線が持てるのか、ここで覚えておきましょう。

1:埋もれないために必要な「自己客観視」

埋もれないお店になるためには、「まわりにどんな店があるか」「お客さんはどういう視点で店を見比べているか」を感じ取る力が欠かせません。

そのような力があってはじめて、「そのお客さんから見て、自店舗はどう見えているか」「自店舗はどうふるまうとよいか」の判断がつくからです。これを「自己客観視」といいます。店員さんが鏡を見て身だしなみを確認するのと同じで、仕事の基本です。

まずは「周りをよく見る」

とある実店舗の話です。

あるところに、焼肉店が多く並ぶ「焼肉の町」がありました。その町には、焼き肉目当てのお客さんがたくさん訪れています。

そんな中、周りに埋もれてしまって売れない焼き肉屋がありました。他のお店と同じようなことをしていますが、売れません。店主が悩んだ末、周りにはない「女性向けの焼肉店」に改装し、メニューなども改めたところ、人気店になったそうです。

なぜこのお店が売れるようになったか、わかりますよね。
周りに同じような店がたくさんあるのに、自分も同じようなアピールをしていては、他店に埋もれてしまいます。後発店舗こそ、自店と競合店を比べる視点・・自己客観視が大切なのです。繰り返しお伝えしているように、「すでにたくさんライバルがいる中に店を出す」「他店と見比べられている」という自覚を、必ず持ってください。

親バカ現象に注意

「そんなの当たり前」だと思いましたか?でも、実際にこんなことがよく起こっています。

お客さんから、「甘さ控えめ」「小分けで子供達に配りやすい」といった特徴で、評判になっているお菓子があるとします。

しかし、売り手側は、商品への愛情とこだわりが爆発しているが故に、「当社の風林火山製法が評判です」とアツくなってしまっているような状態。

いわゆる「親バカ」ですね。一生懸命「風林火山製法で人気です!」とアピールしても、誰にも響きません。本当の魅力は他にあるのに・・。

前述の焼き肉店の例でいうと、本当は「体育会系大学生に人気」の店が、「うちも若い女子に来てほしい!」などと願望が先走って女性向けにリニューアルしたら、当然売上は落ちますよね。
※むしろ、体育会系大学生が団体で来るように考えるべきで、彼らに向けて、たとえば「祝勝会ならロース特盛無料」「残念会なら白米食べ放題」などを提供すべきです。

そのように、お客さんが求めていない機能をアピールしてしまったり、個人的に思い入れのある部分をアピールしてしまったり・・。いろいろ悩んだ挙げ句、変な方向に行ってしまう方が少なくありません。

そして、本当にアピールすべきポイントを見逃して、売れるはずのものが売れなくなっているんです。

なぜ思い込みが起きてしまうのか

人間は、思い込む生き物です。あなたが当事者の場合は、よほど意識していないと、冷静な「自己客観視点」よりも、思い入れ・思い込み・願望が勝ってしまうものなんです。

実店舗でもそうですが、お店の改善を考えるときは、ついつい「自店舗とお客さん」だけに注目してしまいがちです。それは、あなたの視界に入っているのが「自分の店とお客さんだけ」だからです。

でも実際は、商店街があって、そこにはたくさんの店があり、お客さんはその中を歩いていて、「その中の1つ」としてあなたのお店に訪れているわけです。だから、売上を伸ばしたければ、まずは「店の外に出る」ことです。「店の外」から自店舗を見てみましょう。

たくさんある店の中で、自分の店はどのように見えているか。外から自分を見ると、どう見えるか。これが「自己客観視」です。何をするにせよ、「自店舗の外」からの視点を踏まえないと、判断を誤ります。

それでは、次に「客観視点の持ち方」について、具体的にご説明します。

2:客観的な視点を持つには

価格・品質で負けても大丈夫

「あなたは他店と比べられています」と言うと、途端に自信を失って「自信がない」「どうせ価格や品質で負けてしまう」など、うなだれてしまう方が多いようです。でも、もし本当に魅力がなければ、あなたの会社は存在していない(すでに潰れている)はずですよ。自信を持ってください。

実際のお客さんは「価格」や「品質」といった、シンプルな基準で商品を選んでいるわけではありません。これからそれを説明します。

※「自店舗の強みを発見する方法」については、次回ご紹介します。これまでまじめにご商売されていた方であれば、必ず何かしらの強みが見つかります。また、「競争が激しすぎて手の打ちようがない」場合の対処方法も、このシリーズの中でご紹介します。

「幅広い比較基準」を想定する

例えば、あなたの近所には、ケーキ屋さんがいくつかありますよね。

もし仮に「みんな美味しいケーキを買う」のなら、「地元で一番美味しいケーキ屋さん」に全ての売上が集中し、それ以外のケーキ屋さんは存在しないはずです。しかし、実際はそうでもありません。そこそこの味のケーキ屋さんも存在します。

あるいは、「みんな安い商品・コストパフォーマンスのいい商品を買う」のなら、「地元で一番コスパがいいケーキ店」に売上が集中するはずですが、実際は違います。
もし「みんな知名度が高いケーキ店で買う」のなら、それ以外のケーキ屋さんは存在しないはずですが・・と、これも結論は同じですね。

つまり、人気店とそれ以外では、売上に差があるものの、「100かゼロか」ではありません。お客さんは、意外と色んな店に分散します。なぜなら、人が商品を選ぶ際の「比較基準」は、「価格 or 品質」のような単純なものではなく、非常に多岐にわたるからです。

たとえば・・

・珍しい種類のケーキだから
・ヨーロッパでは伝統的なケーキだから
・デコレーションが可愛らしいから
・デコレーションが大人っぽいから
・メッセージプレートが面白いから
・ラッピングがかわいいから
・かわいい人形が載っているから
・個包装で配りやすいから
・甘すぎないケーキだから
・お酒に合うケーキだから
・子供の苦手な材料が入ってないから
・子供の好きな動物モチーフだから
・お年寄りでも食べられそうだから
・自分が好きなケーキだから
・贈る相手の好きなケーキだから
・豪華なホールケーキで盛り上がりそうだから
・急いでいて、ここなら間に合うから
・おいしいから
・安いから

などなど。まだまだあるはずです。

家族の誕生日、職場の送別会、おやつ、クリスマスやバレンタイン、お詫びの品・・・など、様々なシチュエーションや、相手と自分の好み、予算、上記にあげた様々な条件などが、幾つも複雑に絡み合って、お客さんは「これを買おう!」という判断を下しているわけです。あなた自身もそうですよね。

つまり、人気店が売れている理由も、「知名度が高いから」「品質が高いから」「価格が安いから」といった単純なものではありません。実際は、このような「お客さんの比較基準に対応できているか」です。もちろん、全ての基準で満点を取る必要はありません。この中の「いくつか」が得意であれば、十分売上が立つはずです。

こうやって色々想定してみると、自然とアイデアが浮かんできませんか?具体的な施策は後ほど紹介しますが、今のところは「ウチの店は、価格や品質は一番じゃないけど、こういう角度だと一番かもしれないな」「こういうお客さんにはテコ入れするといいかも」などと、想像を膨らませてみて下さい。

「多様な比較基準」の実例

楽天などのレビューでお客さんの声を読むと、どういう用途で商品を探したか・選んだかがよく書いてあります。他店でも参考になるので、たくさん読んでみて下さい。「多様な比較基準」を実感できるはずです。







※出典:楽天市場

「お客さんの視界」を想定する

加えて、「視界」という概念も意識して下さい。

当たり前ですが、お客さんは「世の中の全てのケーキを把握した上で選んでいる」わけではありません。知っているもの・目に見えたものの中から選ぶことしかできません。知らない商品・目に見えない商品は買いようがないんです。

たとえば、

・歩いていて通りがかった
・テレビや雑誌・Webメディアで見た
・インスタでバズっていた
・友達から評判を聞いた
・チラシをもらった
・ネットで検索したら表示された

・・・など、「お客さんの視界に入った中からでしか買えない」んです。

つまり、ライバルは「視界の中にある店/商品」だけです。視界の外は意識する必要がありません。視界の中で一番になればいいんです。しかも、前述のように、お客さんの比較基準は様々です。

こうやって考えると、「有名じゃないから勝ち目がない」なんて、随分短絡的だと思いませんか。だから、自信を持ってください。探せば勝ち目はあります。そして、自店と他店をフラットに見比べられる勇気を持ってください。

3: 実際の買い物に当てはめてみる

以上の話を、実際のお客さんに当てはめて考えてみましょう。

実店舗の場合

親が「子供の誕生日ケーキを買う」ところを想像してください。この親御さんは仕事をしていて、「仕事帰りに購入でしたいから、駅から家までの間にある近所のケーキ屋さん」で「自分の子供にピッタリの」ケーキを探すとします。

  • 条件1:駅から家までの間にあるケーキ屋さん(家から遠いと帰るのが遅くなるため)
  • 条件2:子供の誕生日らしいケーキ、自分の子供が喜ぶケーキ

条件1にピッタリの近所の駅であっても、「雑誌でも有名な、フランス帰りの一流のパティシエが作った、本格カカオのビターなチョコレートケーキ」だとしたら・・選びませんよね。条件2に合わない(子供の誕生日にそぐわない)からです。

また、いくら条件2にピッタリの「子供が喜びそうな誕生日ケーキ」があったとしても、この場合は遠くの街に買いに行くことはできません。家に帰る時間が遅くなってしまって、条件1(仕事帰りに買う)に合わないからです。

そういうわけで、「味はそこそこ」「値段もそんなに安くない」というケーキであっても、「自分の子供が好きなアニメキャラクターのケーキ」があれば、それを買うはずです。というわけで、やはり、「品質や価格」で買い物されるとは限らないのです。

※条件1は立地の問題のようですが、「予約できます」「ちょうどの時間に届けられます」というケーキ屋さんであれば、立地は関係なく通販やデリバリーでも検討範囲内に入ります。
ただし、その存在を知らないと注文しようがありません。路上の実店舗は自然と目に入りますが、通販やデリバリー店舗は何かを見ないと目に入らないので。つまり、これらの店は「実店舗前提で考えている人の視界に割り込めるかどうか」が勝負所になります。

ネットショップの場合

さて、ネットショップの場合です。ネットでは、広告やメールを見て買うこともありますが、検索して商品を探すケースが一番多いですよね。

このときも、実店舗と同じメカニズムが働いています。つまり、「自分の視界に入った商品」の中で、「様々な比較基準が絡み合いながら、そのときの事情に沿った商品を選ぶ」わけです。ここでいう「視界」は、「検索結果画面」です。たとえば「誕生日ケーキ 子供」で検索した場合は、その検索結果画面に表れたお店(商品)を比較し、そこから選びます。

ネットは、実店舗と比べて、断然「視界に入ってくる商品」が多いのが特徴です。なぜなら、ここで更に、再検索ができるからです。子供向け誕生日ケーキの検索結果画面を眺めて、「誕生日ケーキ キャラクター」「誕生日ケーキ アンパンマン」などと検索し直すことができます。よくやりますよね。

ECは比べられる商品が増えるので、実店舗よりライバルがものすごく多いです。
駅前ではキャラクターケーキを売る店が1店舗しかなかったとしても、ネットでは全国のケーキ店と比較することになりますね。その一方で、実店舗と比べると来店するお客さんも多いので、一長一短です。

ということで、自己客観視を身につけて、お客さんの多様な選択肢を考慮すると、自店舗が決して「高品質・低価格・有名じゃないから勝てない」といったことはなく、見る角度によっては大いにチャンスがある・・ということがお分かり頂けましたでしょうか。

今後は、これまでと違った感覚で、お客さんや自分の買い物を観察できるのではないかと思います。今後は常日頃から、意識的に自己客観視をしたり、「多様な選択基準」を感じ取るようにしてください。

まとめ

以上、今回は、自店舗を正しく把握するための「自己客観視」をご紹介しました。

お客さんは常に、あなたの店と他店を見比べています。だから、自店舗だけ見ていても答えは出ません。色々な選択基準を知り、自分の店が「どのような観点で見比べられているか」を知っておきましょう。

とはいえ、自分自身を客観視することは、なかなか難しいものです。

「うちの店の強みって?どうしてお客さんに選ばれてるんだろう」
「これから、どの方向に伸ばしていけばいい?」

当事者には分かりづらいものです。ぜひお手伝いさせてください。

私たちは、第三者の客観的な観点から、対話とデータを通してあなたのお店を分析し、進むべき方向性や施策を立案して、店舗運営をサポートしています。ご興味ある方は、以下のページを是非ご覧ください。

カテゴリー: EC戦略論

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