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小島屋モミーさんがマツコの番組で見せた「偏愛」が、中小ECのひとつの理想を体現しているかもしれない件

先日とあるネットショップの店長さんが TV番組「マツコの知らない世界」で、ドライフルーツの達人として紹介されまして、その過程が大変面白かったので紹介したいと思います。

この方、小島屋の小島さん、通称モミーさん。私が楽天社員時代に一時期担当していました。あれから12年ほど経ちます。今ではたまに会う飲み友達といった付き合いですが、以前から、よく真似られて困る、とか競争が激しい、とかそういった話をよく聞いていました。いろいろ進路を模索されてきた中、今回の件は一つの形として結実したような気がして、大変嬉しく思っています!(詳しくは後述)

今これを読んでいる人の中にも、同業他社の模倣や各業種の消耗戦に疲れている人も多くいらっしゃると思います。簡単に解決できる問題ではないんですけど、何か参考になると嬉しいです。

特に、「偏愛家」としての立ち位置は大事だよなーーと考えてまして、今回は、モミーさんをケースに挙げつつ、偏愛アプローチと、その実践についても書いてみます。「偏愛性」は、中小ECのひとつの方向性のような気がします。

「マツコの知らない世界」の様子

モミーさんは、理知的なしゃべりでドライフルーツについて解説をし、「これおいしくないですか?」を連呼していました。マツコさんのボディタッチが若干多めだった気がします。

TBSのアーカイブはこちら
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/archive/20190305.html

テレビを観ながらツイッターを見ていると、小島屋さんのファンと思しき人達が「ここ知ってる」「美味しいよね」「ここでいつも買っている」っていうことを嬉しそうにツイッターに書き込んでいるということを沢山見かけまして、嬉しく思いました。




勝手に語る小島屋の歴史

ここから坂本の回想シーンに入ります。

立ち上げ期

  • 前述の通り、坂本が楽天時代に担当していました。元々はアメ横の乾物屋さんで、主力商品はナッツとドライフルーツ。ご本人は二代目か三代目です(忘れた
  • 多分オープンしてから半年以内くらいだと思いますが、初めて電話で話した時に言われたのが、「楽天の人はメルマガを出さないと売上上がらないと言ってるけど、自分の所はメルマガ出してないけど売れている。楽天の言ってることは間違ってるんじゃないですか?どうなんですか?」等となかなかパンチのある意見を頂きました。
  • ちなみに、私からは、おそらく売れている理由としては多分、あまりナッツやドライフルーツを販売するお店が少ないから、需要と供給のバランスが丁度良くて、検索経由で売れているんだと思いますよ、というお返事をしました。
  • 10年以上前は「食品は広告とメルマガで売る」ようなイメージがあったんです。実際のところ、(今では常識ですが)検索経由でも全然売れますよね。でも当時は、モール内検索対策の意識もあんまりなかったんです。
  • ともかく、そういった理由で小島屋さんは昔から検索経由で、もっというと「市場の需給バランス」のおかげで、よく売れていました。こういうパターンで立ち上がったお店は多いと思います。

ブーム期

  • 私が担当を外れた後、世の中的にブームが来ました。まず「素焼きアーモンドは体に良い」のブームがきて、ドライフルーツも技術進化で以前よりバリエーションが出来て(とマツコの番組で言ってた)よく売れるようになってきた。
  • EC用の人材を採用しないまま一人でかなりの売上を扱ってたので、「オペレーション構築能力の高さ」も業界では有名でした。
  • 素焼きとかブームになってますね-!と声を掛けましたが、本人としてはむしろ懸念している様子で。かなり早い段階から、モミーさんは問題意識を持っていたようです。事実、このナッツ・ドライフルーツの商材としての魅力や、市場の大きさが知られるにつれ、どんどんいろんなお店が模倣をして、価格競争が激しくなっていきました。(こういうパターンで苦戦するお店も多いと思います)
  • モミーさんはここから脱するべく、対策を実行していきます。

模索期

  • ブームで売れたお店から、いまのお店になるプロセスは、まず体制構築から始まったように思います。
  • 一人でECを回していたモミーさんですが、チーム化をしていきます。制作やデザインのパートナー、本店サイト構築の会社など。雇用についてはかなり慎重だったようですが、1人メンバーを迎えました。皆さんその後活躍されている様子です。
  • あわせて、この辺りから小島さんは独自路線として、「ナッツやドライフルーツを加工した新商品企画」という道を開拓していきます。ナッツやドライフルーツ自体は仕入れですが、社内に加工機械を置いて、あれこれと試食をして試すわけです。上野パンダのナッツケースやお持たせ袋などのデザイン企画も進展しました。
  • 模倣や競争が更に激しくなる中、競争を横目で見ながら、どんどんと企画を進めます。

オリジナル期

  • 多分ここでポイントになったのは、店舗ではなく「個人としての強み」です。実は小島さんご本人は食べ物が好きで、あと文章や喋るのも上手なので、「自分が感じた美味しい物を人に詳しく、楽しそうに説明する」ということが得意だったように思います。
  • 食べ物の好きな店長が、お客さんからの要望を聞いて、あれこれ悩んだり試したりして、ついに新発明が登場する・・という流れで 商品が紹介されます。
  • 前述の通り、元々は「問屋さんの直販」という品揃えの幅や価格競争力が強みでしたが、今では、元々持ってる会社の強みと個人の強みが掛け合わさって、店主の強みが前面に出始めたように思います。
  • つまり、商品がオリジナル化したというよりも、その過程で、「店としてオリジナルになった」ような気がするのです。小島屋三代目として会社に入りましたが、なんというか「初代モミー」になった感じ。もはやこうなると、これまでずっと真似てきた人は「これは真似られないなあ」と思ってるんじゃないですかね。
  • そして、(たぶん)あれこれの取り組みが奏功して「マツコの知らない世界」に出演するということになったんだなーと思って、個人的には嬉しく思っております。
  • まとめると、立ち上げ期からブーム期は「需要と共有のバランスがうまいこと合致して、帆船が風を受けたかのように成長」だったんですが、その後、模索期に「同業の増加により追い風が止まった」そして「汽船となって自力航行を目指した」という流れです。で、自力航行の結果、マツコの知らない世界に辿り着いたわけですね。

偏愛アプローチについて

リアル含め、中小のお店の中には、「偏愛の魅力」を持つ、楽しい店が多くありますよね。

テニスが好きすぎる店長のテニスショップ、黒ビールが好きすぎる店長のビアパブみたいな。これからは、偏愛持ちの人は、「より自覚的に」偏愛を打ちだしていくべきだと考えます。ということで、ここから「偏愛の実践」について考えてみます。

「知らない世界」と偏愛家

ところで 「マツコの知らない世界」って番組名が秀逸だと思いませんか。毎回、知らない世界を知っている人を呼んできて紹介してもらうわけです。要は、「知らない世界を知っている」「偏った人」を呼ぶ番組です。ちなみにモミーさんのドライフルーツと同時上映だったのは、こけしです。こけしを愛している2人の話でした。

皆さんのまわりには偏愛の人はいますか。「偏った何か」を愛している「偏っている人」は、知らない世界を教えてくれるので、話を聞いてて面白いです。そういう趣旨からの番組だと思います。

この番組に限らず、偏愛コンテンツは、(1)人物と、(2)知らない世界の2つの要素から成り立ちます。まず愛すべき「偏愛家」の面白さがあって、その人に導かれて体験する「知らない世界」の面白さです。

思えば、偏愛感のあるEC店長さんって大体テレビに出てるケースが多いですね。私の知っている人だとお風呂の松永さんと、唐辛子の伊藤さんがまさにそれ(知らない人はリンク先参照)。

以前たまたまある飲み会で松永さんと一緒になったときにお風呂について話を伺い、濃かった&長かったので、「ホンモノだ!」と思いました。そういえばモミーさんと同じ集まりでたまに一緒になる飲み友達の通称しのぶちゃんも偏愛の人で、ネットショップで食器などの民芸品を売っているんですが、個人的にはその人が選んで売っている食器で揃えたいなあと思っています。しのぶちゃんのフィルタを通すことに価値があるなと。残念ながら妻が食器を捨てさせてくれませんけど。

なんというか、ロモカメラのようなもので、偏っているからこそ面白い。「正しくない」から面白いのかも。似ているモノマネより似てないモノマネの方が面白かったりしますしね。色眼鏡、フィルタ、偏りにこそ味があるのかなと。

何からすれば良いのか?

さてここからは、偏愛家として商売してみたい方に向けて、試しにハウツーを書いてみます。

  • まず、専門家、できれば偏愛家としての自分を定義します。自分が何者なのか。

私であれば、このブログのタイトルにある通り、ECバカです。分野としては中小専門で、中小の事業者が長く愛されて売れ続けるにはどうしたらいいかについて考え、実践するというのが人生のテーマであり、生業であり、日々考えて研究しています。もちろん、この記事もその一環で書いています。このブログは10年やってます。つまり、マジでやってます。

そんな感じで、偏愛家デビューは、「自分マジっす」を宣言することからはじめるのが良いと思います。

実際、この本によるとプロフェッショナルの語源は「プロフェス=公言すること」から来ているのだそうです。何に対してプロフェスするのか。経営者がやるなら、経営理念と言ってもいいかもしれませんが、これは単に文章にして飾っておけばいいわけではありません。ホントにそのプロフェスに沿って生きることが大切です。あ、この本はオススメなので、是非買いましょう。

小島屋モミーさんの場合は、意識的にやっているかは分かりませんが、小島屋通信として「通販とは全く関係のない上野の近所の美味しいお店を細かく紹介」しています。これは、モミーさん本人の生き方が現れているだけで、所謂マーケティング施策ではないのですが、だからこそ結果として「この人は食べ物が本当に好きなんだな」ということが伝わるという構造になっています。多分。

論拠は、うちの母親が小島屋さんのリピーターで、「小島さんは食べ物が好きで、とても頑張っている」ということを言っていたからですw

要は、まず、自分の中にある「マジ」を見つけ、それを公言することから始まるのかなと。

「二重構造」を作る

偏愛アプローチ型のお店が面白いのは、二重構造を持っている点です。

普通のお店は、サービスや商品をアピールします。で、ここでいう「二重構造」は、サービスだけをアピールするのではなく、「それを紹介している自分が何者であるか」も伝える。プロフェスを示します。いわば、料理が売り物だけど、シェフも売り物になっている。この二重構造。

サービスだけでなく、人格をも認知してもらうわけですね。そして、その人格は固有の世界を持っていて、その世界を案内してくれるという構図です。

そういえば私、7年前にネットショップはモノを売ると同時に「店」を売るべきという話を書きました。

でも、これからは多分、店よりヒトを売る方が良いかも。「専門店」より「専門家」の時代になったように思います。専門家はヒトなので、SNSとも相性が良いし、メディアからの引き合いも強くなりそう。メディア側は、「専門家」を登場させて「語ってもらう」というコンテンツを好むためです。

人格として認知してもらう

「偏愛家として認知される」と、単純に「サービスや商品だけで単純比較されにくくなる」という側面があるように思います。

これ、芸人で考えると分かりやすいです。無名の芸人がM1とかで売れて、そのあと消えていったりしますよね。悲しい。なぜなら、芸は消耗品だからです。ウケても、飽きられる。

だから、芸人が長く売れるためには、芸ではなく人格を認知してもらう必要があると思うんです。つまり「芸人=芸+人」。一発屋と「続く芸人」の違いって、実は芸ではなく人なのではないかという話です。もちろん芸が無いとそもそも始まらないんですが、芸だけ売ると消耗する。人柄が認知されてくると、人柄で笑いが取れるようになる。商売も同じじゃないでしょうか。

むかし華丸大吉の大吉さんのほうが「漫才で結局大事なのは人(ニン)なんだなあと思いました」的なことを言ってた気がする。芸onlyではなくて、人が認知されていることによってなりたつ芸こそが強い、みたいな話です。

芸ではなく人(ニン)が浸透するとどうなるかというと、全国相手で「内輪ネタ」をやれる。内輪ネタは強いです。他と被らない。ウケるし埋もれないし続くし、競争戦略的に考えて、最強だなと。ドラエもんはミッキーマウスと競合しないわけです。それぞれオリジナルなので。

「世界の奥行き」を見せる

単発の物販や、単発のソリューションコンテンツ(〇〇する方法)は、埋もれてしまいがち。ネットには色んな販売者やコンテンツがあるので、「ほかのも見たい」「続きを見たい」と思ってもらうのはとても大切です。そうしないと埋もれてしまうからです。

だから、「続き」への入口を見せることです。シリーズモノのコンテンツには、あるパワーがあります。それは「続きを見たくなる」。 その点、偏愛家が顔と名前を出しながら「その人の持つ『世界』の一部」として語られるコンテンツには、必ず「続き」があります。偏愛家の見せる世界には、奥行きがあるはずなので、それをうまく見せる必要がある。

そうすれば、色んなコンテンツが「その世界の一部」なので、読み捨てられる1話完結の話ではない。すべてのエピソードが1つの大きな世界に紐付いている。かつそれは「コンテンツ」ではなく「生身の人間」に紐付いているので、なんというか、たまたま見たローグワンを経由してスターウォーズ全作見る的な連続性を持っているからです。

だから、事業者が書くすべてのコンテンツは、読者の需要や疑問に答えた上で、同時に自己紹介(=「世界」と「住人」の紹介と、コンテンツへのいざない)であるべきだと考えます。このコンテンツには、自己紹介を含みます(=前述の「二重構造」)。その流れの中に商品やサービスを置く。

言ってしまえば「全てのコンテンツは自己紹介」。所謂コンテンツマーケティングは、売るためではなく、自己紹介、あるいは「世界」の紹介のために行うべき。コンテンツマーケ→売る、のではなく、コンテンツマーケ→自己紹介(世界の紹介)→売る、という流れ。そうじゃないコンテンツは読み捨てられて埋もれる。読み捨て市場はパワーゲームなので、物販の争いから逃げた人が安易にコンテンツに逃げても埋もれる。読んで終わりでもなく売って終わりでもなく「あなたの知らない世界」へのいざないであるべきだなーと。

ただしプロフェスしている自分、「紹介されるに足る自分」でないとコンテンツマーケティングは成立しません。

おわりに

まとめ

需給バランスや外で起こったブームによって大きくなったモミーさんですが、追い風が止まり、競争に巻き込まれそのジレンマの中でもがくうちに、「元々の自分に備わっていた強み」や「自分の好きなこと」を活かし、オリジナルの商品と「オリジナルのお店」を作るに至りました。

お客さんに対して自分の人格を出して、試行錯誤や好み、おすすめを語っていくプロセスを続ける中で、どこかでメディアの人に知られて今回の出演に至ったのかなと。まさにこの番組の名にある「知らない世界」を一生懸命語り、「これ美味しくないですか?」とマツコから美味いコメントを引き出そうとする様は、まさに前めりな偏愛でした。

それを見ていて、我々中小の商売人には、少なからずこのような偏愛性は元々内在されているはずですが、今の時代状況から鑑みると、外に向けて意識的にプロフェスして、発信していくことを考えてもいいのかな、と思いました。

実践するとしたらこんな感じでしょうか。

  • 自分の中のマジを探して、プロフェスしてみる
  • 商売と直結しない点を含め、偏愛を持って生きる
  • 自分の個性を店に載せる
  • モノやサービスを売りつつ自己紹介する(二重構造にする)
  • 「あなたの知らない世界」の奥行きを見せる

「偏愛が愛される時代」になった

昔は、メディアから流される情報も、ヒトの好みも、割と画一的でした。皆で同じ紅白を見て、小林幸子の衣装について論じていたわけですが、現代は多様化しました。多様な生き方があります。

そのせいか、なんとなく、最近の世の中には、「偏愛愛(偏愛に向けられる愛)」の空気が生まれているように思います。皆がそれぞれの偏りを自己開示して、認め合う姿は、まさに博愛だなと。言い過ぎでしょうか。でもマツコさん自体が偏った存在であり、自虐を述べながらくっちゃべる姿は日本的「THIS IS ME」であり、人々に博愛をもたらしていると思うんですよね。言い過ぎだな。

あと偏愛って、セルフブランディングではない感じがします。セルフブランディングはちょっとマウンティング的で、優秀さを示す「自己顕示」っぽい。

偏愛は、自己顕示というよりも「自己開示」に近い感じです。ある種の弱さを示している。そして自己開示には多分返報性があって、偏愛を示すと、お客さん側も心を開きやすいような気がします。

もっと「偏った商売」をしよう

商売においても、多様性が受け入れられるようになってきた気がします。

成功の物差しも多様であるべき。「昨対〇%」みたいなのは画一的な物差しですが、モミーさんが、三代目小島屋から初代モミーになったように、「それぞれの店の成功の形」が有り得るはず。

なぜなら、人間というかお客さん自体が多様であり、非合理的でそれぞれ偏っているので、我々商売人だって、存分に偏って発信していくことこそが正しい、はず。

インターネットの精度は今後も上がっていくはずで、だからマッチングの精度も上がっていくはず。あなたの偏りと誰かの偏りがマッチするようになるはずなので、(セオリーは抑えつつ)みんなで存分に偏っていければなーと思います。これからの中小の商売の楽しみも、強みも、そこにあるはず!

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カテゴリー: EC戦略論

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