長時間労働の原因と対策:「社員が育つ職場」を作るには?

こんにちは、坂本です。

最近、「働き方改革」「長時間労働の規制法案」が話題になっていますね。

そんな中、知人含め色んな経営者の方が「でも長時間労働も仕方ないよねぇ」というお話をされているのをよく見かけます。なかなか表では言わないんですが、長時間労働やむなし、と見る方も少なくないんですよね。私もいち経営者ですし、お話はよく分かります。

そこでこの記事では、(中小企業経営者が言いがちな)肯定派の主張を読み解きつつ、中小企業経営の現実から、長時間労働の対策・生産性向上策を考えてみようと思います。善悪の対立軸になってしまうと解決策が見えませんから。

「長時間労働は修行である」という主張

否定派の意見は「長時間労働は、効率が悪いし体調を崩す」です。
一方、肯定派の意見はこうです。

  • 長時間労働することで力が付いた
  • 楽しんで長時間労働してるんだから制限は不要

分かります。
これを仰る社長さんが本当に多いw

でも、これらの主張は、よく読むと主語が違います。否定派の主張は「従業員が」長時間労働するのは良くない、肯定派の主張は「自分は」長時間労働が有益だった、です。

ハードトレーニングとしての長時間労働

経営者の方はだいたい「ガンガン働いて力が付いた」「だから長時間労働は大切」と仰います。確かに自分もそうでした。

人間は、己に適度な負荷を掛けることで成長するんだと思います。仕事も筋トレと同じで、徐々に負荷を高める必要があるし、低すぎる負荷は成長を妨げる

その人が成長して、あるいは元々力があって、通常業務で負荷が足りない場合は、(本人が自分の意思で)仕事を深掘りしたり広げたりして、負荷は自然と高くなる。結果として時間が長くなることも多いと思います。本人が筋トレしたいのに、「重いバーベルは危ないから禁止」というのは変な話です。

ただし、それは「能動的」であることが前提です。

「巻き込まれ型事故」としての長時間労働

仕事の場合は「良かれと思って拾い続け、あるいは巻き込まれて、負荷が大きくなって、身動き取れなくなった」というケースも多いですよね。

その場合は早めに負荷を取り除くのが大事かなと思います。「これもやっといて」で、気がつけばベンチプレス150kgになって身動き取れない。ほっとくと肋骨折れます。これは、筋トレではありません。事故です。

人が良かったりマジメだったりすると、どんどんバーベルの重さが増える(=担当範囲が増える)ので、トレーナー・・じゃなくて上司は、潰れないように様子を見たり話を聞いたりする必要がある。もちろん、本人も早めにヘルプを出すことが必要。(衰弱するとそういう発想も出来なくなるわけだけど)

受動的ななまま、成長や気づきと関係なく、どんどん負荷が加算されている状態です。潰れます。

原因:トレーニングのつもりがオーバートレーニング

つまり、ハードな仕事は有益ですが、ついつい本人の能力を超えた負荷になってしまい、かつ本人も周囲もその負荷をコントロールできないため、長時間無理に働く結果になる、というのが長時間労働の原因では無いかと思います。

それは、トレーニングを越えて、オーバートレーニング状態です。※筋トレを休みなくやり過ぎると、強くなるどころか筋肉が縮小してしまうという現象を指します。

対策:会社側が「トレーナー」になりませんか

仕事の負荷と「成長」を関連づけて語るのであれば、筋トレ同様に「その人の能力に応じた負荷のコントロール」も考慮すべきではないかという話です。考えて、段階的に調整すべきではないでしょうか。

「強いカラダになるためにはベンチプレス150kg(=長時間労働)も必要だよね」というマッチョな発言は、果たして競技者としての発言なのか、トレーナーとしての発言なのか。前者なら立派。後者ならヤバイ。

腕立て出来ない人に無理やりやらせて、出来ないから叱り飛ばして、見本を見せて、またやらせて出来なくて・・という状態になっていませんか。

能力の発達段階を考慮して、適切な負荷になるよう調整していく必要があると思います。伝え方も段階によって違ってきます。

※まあ寮住まいの高校野球選手じゃないので、部下を完全管理下に置くわけにはいかないし、そうすべきでもないですが、せめて「上司部下で頻繁に面談して、今の課題は何だと思っているか・どう取組んでいるか・コンディションはどうか」などはヒアリングすべきではないかなあと思います。

「中小だから育成する余力が無い」という主張

とはいえ、「中小だから育成する余力が無い」という会社も多いかと思います。なので「当社は育てる余力が無いので、自ら考え、自主的に己を磨いてもらう必要がある」というケースですね。それは分かります。

でもそれ、入社する前に言いましたか?

原因:そもそも採用方針がズレている

労働時間含めガンガンに働く必要があるというのが現場の実態なら、実態に沿った選考が必要です。そういった層に向けた採用メッセージを考えるべきです。つまり、採用条件を正直に書いたらどうでしょう、って話。

「当社はハードな修行を重視します」「余りゆとりのない職場ですが、ハードなので力は付きます」「裁量を持って働けます」「若い時期に力を付けたい方に最適な職場です」など。

そうではなく、「わきあいあいとして楽しい職場です」などと実態と違ったメッセージを使ってて人を連れてきて、地獄の猛特訓に放り込んでみて、生き残った人だけが強靱な戦士になる・・というのは、北斗の拳における修羅の国、あるいはタイガーマスクにおける虎の穴です。生き残りは強いかもしれませんが、その背後には死屍累々。

人が沢山居る時代ならともかく、採用が難しくなる時代にそんなことをやってはいけません。社会的損失です。

そういえば、大学時代の友達が入社した会社が、かなりのブラックで。マジメだから振られるがままに仕事を受けて、潰れ、入院しました。その会社の人は誰も見舞いに来ませんでした。病室で衰弱しきった彼の姿を今も覚えています。彼はそのあと仕事を辞め、もう正社員にならない、という判断をしました。色々話しましたが頑なでした。彼は優秀でした。違う会社に入っていたらどうだったかな、と今も思います。

雇用において「生き残ったやつが強い」という価値観は、社会の迷惑です。 「結果として」自然淘汰は起こるものですが、なるべくそうならないよう、採用や育成(特に採用時点)を頑張るのが会社側の義務じゃないかと思います。

対策:魅力的で正直な求人を作りませんか

そんな話をすると、こういう話を頂きます。

「うちは中小企業だから待遇イマイチで正直に書くと応募が集まらない」云々。 いや、これは単に「伝えようとする努力」の問題です。

騙し売りや安売りじゃない「正しいセールス」ができる社長さんであれば、そのセンスを採用メッセージで発揮すれば解決すると思います。ほんとに。安けりゃ売れるわけじゃないのと同様に、待遇さえ良ければ人が集まるわけじゃないですよ。

勤務開始後の負荷についても、事前期待のコントロールしておけば大きな問題にはならないはず。伝え方です。

まとめ

生産性を高めよう

最近「労働人口が減っていく我が国においては、生産性向上がとっても大事」という話もよく聞きますよね。

つまり、我が国が抱える問題は、「新入部員が少なくて練習時間も限られる公立校の部活が、どうやって上手にトレーニングして、スポーツ推薦バンバンの競合校に勝つか」と同じなわけです。つまり、昔とは状況が違う。

だから「ワシの若い頃の練習量と練習メニュー」の踏襲とかしてる場合じゃなくて、「(その頃の良さは残しつつ)弱点をカバーする新しい工夫」を考えていかなければならない。正解がない状態での手探りは苦しいものですが、痛い目を見て、試行錯誤し、日々新しい工夫をします。過去の成功体験にとらわれず、色々変えていかないと・・AIが背後から迫ってます

あと、もうひとつ。戦略の失敗を人力でカバーしようとすると、特攻隊になります。これが「ブラック」の構造だと思います。どうしても改善が難しいのなら、それは社員や仕組みではなく、「事業そのもの」が老朽化していて、そろそろ改革が必要だよ・・というサインかもしれません。

対策のまとめ

ということで、長時間労働への対策は、どうすればいいのか。
まとめます。

(1)負荷をコントロールし、段階的に成長できる体制

  • 1-1 まず生産性を高め、無駄を省いて、余裕を作ります。
  • 1-2 その上で、筋トレと同じように、初心者には小さな負荷、上級者にはハードな負荷。これにより、「常にちょっとキツイ」負荷で、無理なく継続的に成長できる状態になります。

(2)現場の実態を踏まえた、正直な採用メッセージ

  • 2-1 欠点は魅力でもあるので、中小ならではの魅力を上手に表現した採用メッセージを作り、応募を増やします。たとえば層が薄い会社は「年功序列を待たずして重要な仕事を任される」と言い換えられます。
  • 2-2 その上で、会社の厳しいところも正直に伝えつつ、同時に希望が持てるような選考をします。これにより「中身に沿った人材を募集しているから採用後も無理がない」状態になります。

(3)解決しないなら事業構造の問題

  • 戦略の失敗を人材とやる気でカバーしようとすると、特攻させるしかなくなります。特攻しないと戦えないのは、既に戦略が誤っている・事業が老朽化している状態のはず。付き合ってくれている従業員に感謝しつつ、何かを根本的に改める必要があるかもしれません。

と、そんな感じで頑張れば、色々状況が良くなっていくように思います!

それをいうお前はどうなんだ

弊社は今10年目で、紆余曲折ありましたが、こうなれるよう進んでいる途中です。思い返せば、当初はかなりの過負荷で、オーバートレーニング状態でした。これを、業務効率化と並行して、従業員への負荷をコントロールし「段階的な負荷が重くなっていく体制」に変えたら、社員が自然と成長してくれるようになりました。

いまでは社員はとても成長していますし、弊社の働き方はテレビから取材されたり、感心されたりはします。残業は月5~20時間くらい。時間濃度が高いから楽ではないと思いますが。(会社自体もそれなりに成長してます)

なのでこのブログでは今後、弊社での働き方や仕事の進め方についても、未熟と知りつつ恥を忍んで色々発信しようかと思っております。はい。

PS
弊社のコンサルティングでは、売上アップだけでなく、教育や採用や体制づくり、業務効率化など「実行体制の強化」についても支援を行っています。
事業の無理をヒトでカバーすると、ブラックになります。「ちょっと無理してるな、根本から改めないと・・・」と言う方にも、お役に立つかもしれません。利益率や業務効率向上、あるいは新市場の選定などのお話にも、お付き合いできます。ウェブ会議を使ってお話しながら、「御社ならではのスマートな体制」を作っていきましょう。
興味のある方は、以下からどうぞ。

カテゴリー: EC事業の組織論

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