ネットショップのチャリティー企画についてまとめました

震災や災害などの影響により、お客さんの購買意欲が萎縮し、一時的に売上が低下傾向となるお店が少なくありません。
しかし、復興のためにも健全に経済を回していく必要があり、そのためにも一定以上の売上は確保したいところです。

前回のコラムでは、義援金企画(案内バナーのサンプル&文例)をご案内しました。
今回は、「被災地への援助と自店舗の売上を両立する企画」として、店舗ごとに開催するチャリティー企画例をまとめてみました。企画検討のご参考にしてください。

チャリティー企画のパターン

チャリティー企画のパターンをまとめました。

尚、楽天市場では、チャリティー活動のガイドラインが定められています。店舗独自でチャリティー商品を取り扱う場合、ルールが決められていますので、必ずご確認ください。

全商品がチャリティー対象

1つ目は、「期間中の総売上から○%を寄付」というもの。もっとも一般的なやり方です。

お客さんからすると、「普段と同じように買い物するだけで、ちょっと貢献できる」ため、チャリティー活動に参加するハードルが低いです。
店舗のデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 利益率が低い商品が売れても、同じように寄付が発生する点
  • 発表した寄付金額から、売上が分かってしまう点

チャリティー専用商品

リストバンド・Tシャツ・ステッカー・マグネットなど、利益率の高いチャリティー商品を作って、売上の全額ないし大部分を寄付するやり方です。

単価が低いため、単体で「メール便送料無料」にするか、もしくは「送料別」にして、一般商品の購入時に同梱を提案します。事前に注文を取ってから、メーカーに発注するので、配送は遅くなる傾向があります。

  • チャリティーグッズ単体で、「メール便送料無料」にする
  • 通常商品の購入時に、チャリティーグッズの購入を提案する(送料別)

全商品がチャリティー対象となる場合に比べて、お客さんにとってはややハードルが高めです。そのチャリティー商品が欲しくなるかどうかは、売り手のブランドに左右されそうな気がします。
チャリティーグッズのラバーバンド

特定商品/商品カテゴリーがチャリティー対象

新しくチャリティー専用商品を作るのではなく、お店で取り扱っている商品をチャリティー対象とし、「チャリティー対象商品の売上○%を寄付します」というもの。
粗利の高い商品(自社オリジナルブランド等)や、特定テーマ(被災地域にゆかりのある商品等)などの基準で、対象商品を決めると良いでしょう。

「たまっていた在庫品」を安く売って、全額ないし大部分を寄付する・・というパターンも考えられます。在庫処分の売上を寄付する形です。

見せ方としては、まずカテゴリページや特集ページに商品を並べ、「これらの商品がチャリティー対象です」と表示します。
同時に、商品ページで「この商品はチャリティー対象です。ほかの対象商品はこちら」と案内するのが一般的なようです。

選定の切り口 チャリティー商品の具体例
粗利の高い商品 自社オリジナルブランド商品など
特定テーマ 被災地の地産品、被災地域にゆかりのある商品
在庫 たまっていた在庫品(※見せ方に注意)

チャリティー福袋(チャリティーセット)

色々な商品をまとめて客単価を高め(たとえば1万円)、「福袋を1つ買えば、1000円が寄付されます」などとアピール。
福袋やセットにすると客単価が高まるので、寄付金額を増やすことができます。

チャリティー福袋

お客さんによる代理購入

「赤ちゃんのミルクが足りません。信頼できる海外メーカーに働きかけ、格安で購入できるように調整しました。皆さんに『代理購入』をお願いします。皆さんが購入した数だけ、被災地にミルクを送ります」というような形。提示価格は、ほぼ原価になります。

この場合、自店舗でもある程度以上の代理購入ないし、義援金送付を行っていることが前提となります。

お客さんからすると、義援金が何に使われるか明確なので、賛同しやすいです。
一方で、商品選定が難しいところ。復興の段階ごとに、必要とされる商品は変わっていくかもしれません。前述のミルクは、あくまで例です。

寄付の内容

上記のチャリティー商品の内容と、組み合わせます。

例えば「全売上の1%を寄付」とすると、簡単に売上が分かってしまいますが、「1人購入毎に100円寄付」などとすると、寄付金額からはパッと見で売上は分かりません。

売上の一部を寄付

「売上の◯%を寄付」など、もっとも一般的なやり方です。「収益の一部を寄付」する場合や、チャリティー企画や商品限定で「売上の全額を寄付」するケースもよくあります。

注意点として、寄付金額を発表すると、自店舗の売上がわかってしまうリスクがあります。

1個売れる/1人購入ごとに○円

「対象商品が1つ売れるごとに、当店からは50円を寄付します」など。
1人が購入するごとに、でも良いでしょう。

1個売れる/1人購入ごとに現物

同様の形で、「1人がこのリストバンドを購入するごとに、毛布を1枚送ります」「10リットル購入ごとに、水1リットルを送ります」など。

実際に寄付するのは現金でも、金額をモノに換算するとイメージが付きやすいです。
例えば、「この金額は、赤ちゃん○人分のオムツに相当します」など。換算するモノは、ベビー用品店ならベビー用品に、寝具の店なら毛布に、という感じで、自店舗にゆかりがある商品で換算すると良いかもしれません。

「期間内」の売上から寄付

「3月の売上から○%を寄付」などと期間を限定したり、逆に長い期間支援を行う場合は「毎月11日は震災チャリティーDAY」などとします。

寄付依頼の注意点

寄付する相手・時期など、具体的に書いておくこと。
真っ当に寄付をお願いした団体が、関連情報が不明確だったために誤解を受け、ネット上で話題になったことがありました。

寄付金をどの団体に寄付するのか、どんな活動や物資に使われるのかを、明記しましょう。

寄付の明記項目 説明
寄付先 寄付金を送る団体を明記(例.◯◯県◯◯市、日本赤十字社)
使用用途 寄付金の使い道を明記(例.義援金として被災者の方にお届け)
寄付金額 楽天の場合、「寄付金額計算式」の掲載が必須
寄付実施日 or 寄付予定日 寄付を行った日か予定日

また、自店舗で義援金・物資送付などの活動をしていれば、それも載せると良いでしょう。特に物資送付については、然るべき団体と連携して行ったものであるなら、そのプロセスを写真(たとえば、自社商品を被災地に送る段ボールに詰めているシーン等)で掲載すると良いでしょう。

もちろん、チャリティー企画がすべてではありません。
気持ちが傷ついているのは、被災していない人も同じです。そういった気持ちを意識した、「チャリティーを含む優しい販促」が求められているように思います。
「いつもと同じ商品」を売る時でも、ちょっと違った言葉遣いや切り口を考えてみてはいかがでしょうか。

この機会に考えてみて頂きたいこと

購買心理の「萎縮」について

災害が起こった時、お客さんには、「衣食住に困っている被災者や亡くなった人がいるのに、自分は買い物してて良いのか」という心理が、少なからずあると思います。店側も同様です。こんな時に、商売してて良いのかと。
買い手も売り手も、萎縮している空気があるように感じます。

しかし、普通に消費して経済を回していかないと、日本全体がまずいことになります。このような局面において、消費は全く正しいことです。複数の関西人から聞いたのですが、阪神大震災の後も、購買心理の萎縮に起因する倒産が多かったのだとか。。それで職を失ったり、借金を抱える人がいたり。

とはいえ、皆さん優しいですから、「いつも通りの消費・販売」には中々踏み切れない。
気持ちが辛い。

そういった辛い気持ちを緩和する作用が、義援金やチャリティー企画にはあると思います。免罪符に例えたくなりますが、ちょっと違う。売るのも買うのも、正しいことですからね。それにお金は、千羽鶴などと違って、具体的に役立ちますから。

萎縮した気持ちを解きほぐして、少しでも「日常」に戻って頂く。
それは被災者にも、お客さんにも、お店自身にとっても大事なことだと思います。

小売業の「社会性」について

個人的な考えですが、「自分でリスクを取って商売をやるのは、それ自体が社会貢献」です。

ミツバチは花の間を飛び回って、彼らの繁殖を助ける。
誰に頼まれたわけでもなく、ミツバチ自身のためです。でも、花のためでもあり、自然の大きなサイクルの一部でもあります。ミツバチが外敵に襲われても、飢えても、誰も助けてくれません。どこに花があるか、どこに敵がいるか、誰も教えてくれません。ミツバチは自分で乗り越えるし、死んでしまうこともあります。
そうやってミツバチは、ただただ花の間を飛び回っています。だから世の中に花が咲いているわけです。

商売人だって、そうじゃないですか。
結局のところは孤独です。誰も助けてくれない。自分のためにやっている。でも、それが世の中のためになる。世の中のためになっていても、全ては自分の責任。お客さんから感謝されて喜びつつ、ご飯を食べるために頑張る。自分で考えてリスクを取る。市場に受け入れられなかったら、淘汰されるだけ。そんな感じで、毎日バタバタしながら花を咲かせる。

だから、売ることに萎縮する必要はないと思います。
※この話は、昔書いた記事から抜粋しました。 ≫こちら

自店舗の「社会性」を明文化する

自信を持って売るために、自店舗の「社会性」について考えてみませんか。
言い方を変えると、「大義」です。大義名分や正当性。

たとえば、スーツ屋さんが、テレビで震災のニュースを見ながら考える。

  • 「あのお店は、自店舗の干し芋を被災地に送ったらしい。えらいなあ」
  • 「うちの商品は食べられないし、暖まらないなあ…世の中の役に立ってるんだろうか」
  • 「でも、復興のためには経済が大事で、うちの商品は働く人たちの役に立ってる」
  • 「てことは、ウチの商売は、『ビジネスの支援を通して社会に貢献してる』んだなぁ」

のような感じです。

店舗ページに載せるかどうかは別として、自分の中、あるいは会社・チームの中に、こういった大義名分があると、非常時に踏ん張れると思うんです。お客さんのためというより、自分たちのためですね。

普段だったら、ちょっと大げさだったり恥ずかしかったりで、あまり考えにくいテーマです。上っ面で作っても仕方がないですしね。でも、このような時なら、心の底から考えられるのではないでしょうか。
ハラオチする大義が見つかれば、チャリティー企画に限らず、普段の商売を堂々とやれるようになる気がします。例えば、以下のように、パターンはいろいろあるでしょう。

  • 「オモチャの販売を通じて、日本の未来を背負う子供たちの豊かな感性を育む」
  • 「キッチンを便利にする商品の販売で、お母さんたちを支援する」
  • 「○○を通して日本の伝統文化を復興し、世界から尊敬を得る国づくりに貢献する」
  • 「頑張って働く女性に、心の潤いを提供する」
  • 「健康食品を通じて、老若男女問わず人々が元気に生きられる社会」
  • 「介護用品でお年寄りをサポートし、人々が彼らの知恵を学ぶ風土を作る」

弊社書籍をお持ちの方は、「法則43」により詳しい内容が載っています。あわせてご覧ください。

根っこにある体験やシーンを思い出す

別に上記のような文章にすることが、目的ではないですね。
根っこは多分、言葉ではなくて「体験」(海外で着物を着て誇らしかった経験)とか、「シーン」(泣いていた子供の表情が、自店舗のオモチャで明るくなるシーン)とかだと思います。

ですから、まず「シーンを思い浮かべて、次に言葉に落とし込む」という順番が良いかもしれません。言葉は、シーンを想像する(思い出す)ためのトリガーです。弊社書籍の「法則99」も関連するので、ぜひ読んで下さい。

ちなみに、弊社は、「中小ネットショップの支援を通じて、『多様性と人間味のある商環境』を守り、その進化に貢献する」、みたいな感じです(弊社書籍も、このページもその一環です)。


P.S.
本来、このようなご提案はコンサルティング先の店舗に対して行っていますが、今回は、「みんなで前向きに商売したいな」と思って、記事にまとめてみました。
コンサルティングと違って質問・ご相談はお受けできかねますので、予めご了承下さい。

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