ファッションECに必要な写真とは?ユーザーが求める8つのカット

ファッションECに必要な写真とは?ユーザーが求める8つのカット

ファッションECの場合、「商品写真が一番大事」なのは言うまでもありませんよね。

しかし、美しいモデルが着ている「なんとなく雰囲気のある写真だけ」では、商品を買うことができません。

では、どんな写真を撮ればいいのでしょうか?撮影ポイントをネットで調べると「キレイな写真の撮り方」や「ポージング」などの情報ばかり、撮るべきカットについてまでは情報があまり無いようです。

そこで今回は、ファッションECサイトの運営経験から「買い物でユーザーが知りたい8つのカット」について、シャツを中心にご紹介していきたいと思います。

チェックリストも用意しましたので、ぜひ自店舗の商品写真と比較し、何が足りないか確認してみてくださいね。

はじめに

この記事を書いたきっかけ

私は、ネットショップ向けのコンサルタントをしています。ある日、ファッションジャンルのお店を運営するクライアントさんが、「ウチはモデルがいないし、良い写真が撮れないんだよね」と、つぶやかれました。

この方に限らず「モデル撮影ができない」ということで、商品写真のクオリティーに自信を持てない方が多いような気がしています。確かにモデルがいるほうが、「それっぽい」感じにはなります。ただ、売上に直結するかというと、そうともいえません。

そこで、以前ファッションECサイトの運営に携わっていた経験から、低コストで「ユーザーが求めている写真」を撮るためのコツをまとめてみようと思いたちました。

ベテランの方にとっては、当たり前の内容かと思います。ただ、スタッフの方に撮影をお願いするなど、多くの人を巻き込んで仕事をするためには、「買い物できるためには、最低限どんなカットが必要か」というガイドラインが明文化されているほうが、新人さんも慣れが早くなるし、仕事がスムーズに回りそうですよね。

もしお役に立ちそうなら、社内で回覧してみてください。この記事が少しでも参考になれば、うれしく思います。

大前提は「気になる要素をしっかりおさえる」

具体的なお話の前に、まず大前提についてご案内します。

商品写真を撮影する際、モデルやポーズより大切なのは、「ユーザーが気になる要素」つまり「購入判断に必要な情報」を、しっかり撮影出来ているかどうかです。

ネットショッピングでは、実店舗のように手に取って商品を確認できません。だからこそ、ユーザーの「ちょっとわからないな」という疑問を残さないように、丁寧に商品を紹介することが大事なのです。

撮影枚数が増えると手間も増えますが、

  • 商品の雰囲気を掴む「イメージ写真」 (着用写真)
  • 細かな仕様を伝える「ディテール写真」(着用写真 or 物撮り写真 ※)

この2つからなる「最低限撮影すべき型」を押さえて、ユーザーに不安なく商品を購入してもらいましょう。詳しくは後述します。

※物撮り写真とは:人が着用していない置き撮り写真

ファッション商材の「着用写真」はタダでも撮れる

ファッション商材は基本的に、人が着用している写真をおすすめします。

理由は単純で、着ている方がユーザーに「服の正確なシルエット」を伝えやすく、購入者も「その服を着た自分をイメージしやすい」からです。

しかし、着用写真が大事と言っても、「うちにはモデルがいないから」「撮影する場所がないから」と、着用写真を諦めている方も多いのではないでしょうか?

そんな方へ、「予算をかけずに着用写真を撮る方法」を以下ご紹介します。

モデルより素人で「リアルさ」を狙う

まずはモデルについて。

以前、私はコレクションブランドの担当をしていたことがあります。その際に「とっても美人でスタイルの良い外人モデル」の着用写真を使っても、思った以上に商品が売れなかった経験がありました。

商品写真のモデルと聞くと、「背が高くて・細くて・美人な人」というイメージもありますが、自分とかけ離れすぎているイメージ写真は、もしかすると「自分が着たらこうはならない」「スタイルがいいから着こなせる」と、ユーザーをかえって消極的にさせてしまうのかもしれません。

それを象徴するのが、ここ数年流行っているInstagramやWEARの人気ではないでしょうか。一般の方(素人)のコーディネート写真は、とてもリアルで「自分もこうなりたい」とイメージがしやすいのかもしれませんね。

撮影イメージ
出典:wear.jp

また、InstagramやWEARで人気のユーザーさんには、上記写真のように顔を出していない方も多いです。

ここまでの話をまとめると、

  • 着用写真は、一般的な平均身長や体型で構わない
  • 着用のイメージができれば、顔をだす必要もない

つまり、ショーモデルのようなモデルを用意する必要はなく、社内のスタッフで十分。写真を「撮る人」「着る人」最低2名のスタッフがいれば、着用写真を用意できるということです。

顔出しについての補足

「顔出し写真」「(顔下でトリミングせず)頭まで写真に入っている写真」の方が、全体感を掴みやすいメリットはあります。

壁さえあれば、どこでもスタジオ

撮影する場所については、この写真のようにシンプルな壁さえあれば十分です。
撮影イメージ
出典:wear.jp

公園や海など、雰囲気を追求したロケをしても構いませんが、あまり背景がごちゃごちゃしていると、商品が目立たなくなってしまいます。壁にもレトロな壁や、無機質な壁、シンプルな壁など色々あるので、商品のイメージにある壁で撮影してみてください。


いかがでしたでしょうか?ちょっと撮影のハードルが低くなった気がしませんか?
それでは、いよいよ具体的に「どこを撮るか」について説明をします。

イメージ写真に必須の4つのカット

撮影時間で費用が変わるようなモデルを使う場合に限らず、前述のように、素人(社内のスタッフ)が壁で撮影する場合でも、撮影は短時間で効率的に進めていきたいですよね。

そこで、着用写真では商品のイメージを伝えるために「最低限、ここを撮っておきましょう」という4つのカット(正面・側面・背面・全身)をご紹介します。

1)正面

何を売っているのか伝える「真正面 寄りのカット」は、商品写真の顔です。商品の見た目がわかるよう、シンプルなポーズで撮影しましょう。

撮影イメージ
出典:uniqlo.com

人気色だけでなく、全色で撮る

人気のカラー1色だけ着用写真を撮り、他のカラーは物撮りというお店もありますが、やはり着用と物撮りでは感じ方が異なり、モデル着用カラーから在庫切れしていくことが多いです。カラーによって在庫が残らないよう、なるべく全色で着用写真を用意しましょう。

撮影イメージ
出典:uniqlo.com

色別で着方を変えてもOK

正面写真では、以下のようにカラーごとで着用の仕方をわけると、商品の様々な印象を伝えることができます。

例1

羽織としても使えるシャツの場合は、ボタンをすべて締めた写真と開けた写真を用意すると、着回しできることが伝わりやすくなります。

出典:UNIQLO

例2

最近は裾インのコーディネートも多いので、このように黒はシャツイン、茶はインしないというようにカラーバリエーションごとに着方を変えても構いません。

※注意:全ての正面写真をシャツインにしてしまうと、裾を出した時のイメージができなくなってしまいます。着方を変えない、シンプルな正面写真の撮り忘れには注意しましょう。

撮影イメージ
出典:zozo.jp

2)側面

試着室の自分をイメージしてみましょう。まず正面の姿を鏡でみてから、360度自分の姿を確認しませんか?

正面だけ、正面&背面だけ、という写真のお店も多いですが、忘れられがちな側面カットも見せることで、ユーザーが少しでも商品を360度イメージしやすくしておきましょう。

撮影イメージ
出典:muji.com/jp/

※注意:側面の写真は特に姿勢が目立つので、猫背には要注意です。

3)背面

側面と同じく、360度イメージを掴むために大事なショットです。バックプリントがあるのに、背面を撮り忘れているお店も時々見かけるので、うっかり撮り忘れに気をつけましょう。

撮影イメージ
出典:zozo.jp

髪の毛に注意

背面を撮る際は、この写真のように髪の毛が商品にかからないよう注意しましょう。ショートヘアのモデルさんだと、「うっかり髪の毛がかかっていた!」という心配がないのでおすすめです。

出典:uniqlo.com

4)全身

着丈によって、商品の着用イメージは大きく変わります。「思っていたより長かった…」という返品がないように、全身写真で商品を着た時の自分をイメージできるようにしましょう。

撮影イメージ
出典:dholic.co.jp

全身写真をトリミング活用する場合

全身で正面・側面・背面を撮影し、上記1~3のような商品写真を用意する場合、裾ギリギリでトリミングしてしまうと(右図)着丈がわかりにくくなってしまいます。着丈がイメージしやすくなるように、少し足も入るようにトリミングしましょう。

撮影イメージ
出典:uniqlo.com

ディテール写真に必須の4カット

ここまでは、着ている自分をイメージさせる着用写真について、説明をしてきました。ここからは、撮影できていないお店も多い特に差がつく「ディテール写真」です。ディテールは、モデルが着用したまま撮影しても、物撮りで撮影しても、どちらでも構いません。

どんなデザインか、ボタンか、素材か、というディテール(細かな仕様)は、前述のような引きの着用写真からでは、詳しくわからないことが多いです。ディテールは撮れば撮るだけ丁寧になりますが、あまり細かく撮りすぎるととても手間がかかってしまうため、慣れるまでは、厳選した以下4つのカットを参考に撮影してみてください。

※注意:高単価商品ほど、ディテールにこだわって作っている商品が多いです。チェックリスト(後述)を側におき、撮り忘れに注意しましょう。

1)首周り

襟の形やネックの種類も、服選びの大事なポイントです。正面からきっちり撮影しておきましょう。
撮影イメージ
出典:dholic.co.jp

着用写真のように「360度撮影した方が良いのでは?」と思われるかもしれませんが、特に目立った特徴がなければ首周りは最低限「正面だけ」で大丈夫です。

意外と気になるボタンの仕様

ボタンは特徴のあるものが多く、また「ボタンのようで実はスナップだった」ということもあります。気にされる方も多いため、変わったデザインの場合は、首周りのカットとは別に、寄りで1カット撮影しておきましょう。


出典:dholic.co.jp

2)袖周り

袖周りの撮影をしていないお店も多いですが、ボタンやジッパー、リブなど特徴も多いポイントです。

撮影イメージ
出典:muji.com/jp/

細かな工夫を見逃さないガゼットに注目

ガゼット(前身頃と後身頃の合わせた裾の部分を補強する布)、ワンポイントをいれるなど、個性をだしている服もあります。ガゼット単体で1カット撮影してもOKですが、この角度から撮影すると、袖周りと一緒にガゼットも写すことができるのでおすすめです。

3)生地感

「イメージと違った」と思われることが一番多い要素は、服の生地感です。薄いのか厚いのか、光沢はあるのかないのか、ニットなのか綿なのかサテンなのか、写真でみてどんな生地か伝わるよう特に意識して撮影しましょう。

※ボタンの写真と一緒に生地感が伝われば、まとめて1枚でも大丈夫です。


出典:muji.com

4)プリント

Tシャツ等で忘れないように注意が必要なのは、プリントの寄り画像です。「プリントTなのにデザインがよくわからない」とならないようにしっかり撮影しておきましょう。

※着用画像からトリミングでもOK。

撮影イメージ
出典:dholic.co.jp

(番外編)物撮りで、仕様の違いをひと目で伝える

これは着用ではなく、物撮りでしかできませんが、このようにカラーバリエーションごとの仕様違いを並べると、パット見て比較が出来てとてもわかりやすいです。

撮影イメージ
出典:zozo.jp

まとめ

自店舗の写真と比較をしてみて、いかがでしょうか?「どこを撮れば良いかわからない」という疑問は少しでも解決できたでしょうか?

イメージ4つ・ディテール4つ、計8つのカットをご紹介しました。要は冒頭でお伝えしたように、「これはユーザーに伝えたほうが良さそうだ」という点を撮影すれば良いのです。

チェックリストを参考に最低限のカットを撮影し続けて頂くと、「ここも撮った方がいいかも?」と撮るべきポイントを徐々に掴めるようになってくると思います。商品を手に取れないユーザー目線を意識することで、「このお店すごくわかりやすい!」と思ってもらえるよう、商品情報を充実させていきましょう。

ファッションEC用「撮影チェックリスト」

今回ご紹介した内容を、チェックリストにまとめてみました。印刷して手元に置いていただくと、撮影時に撮り忘れがなく、スムーズに作業が進みます。

簡易的なチェックリストですが、下記からダウンロードいただけます。ダウンロードに際しては、お手数ですが、メールアドレスのご記入をお願いします。

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P.S
このように、弊社コンサルティングでは、手間とコストをかけない改善策をたくさんご用意しています。お悩みの方は、ぜひ弊社までお声かけください。

最後にお礼を・・・

本来であれば、私が撮影をした写真を用意すべき所、今回は以下のサイトの画像を引用させて頂きました。ありがとうございました。(登場順)
https://wear.jp/
https://www.uniqlo.com/jp/
https://zozo.jp/
https://www.muji.com/jp/
https://www.dholic.co.jp/

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この記事を書いた人

小堤 理絵
前職では、大手ファッション通販サイトにて、営業とコンサルティングを担当。メンズ・レディースファッションはもちろん、子供服、下着、インテリア、コスメの運営経験もあり。共感力が高く、ユーザーへの“伝わりやすさ”を重視しつつも、「店舗に寄り添った提案」を心がけている。海街育ちで、趣味はボディーボード。

EC事業コンサルティングを行う「コマースデザイン株式会社」の社員ブログです。

値引きや広告に頼らない販促施策を中心に、小さな会社や1人事業のための業務改善・組織運営術など、経営全般にわたって支援をしています。

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